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放送100年を迎え、NHK福岡発ラジオドラマを3月29日にオンエア2025/03/25

放送100年を迎え、NHK福岡発ラジオドラマを3月29日にオンエア

 NHK福岡放送局では3月29日の午後8:05と午後9:05の前後編に分けてラジオドラマ「JOLK〜戦時下を生きたアナウンサーたち〜」(九州、沖縄エリア)を放送する。3月22日に日本でラジオ放送が始まって100年を迎えることから、2023年の秋に同局の一橋忠之アナが企画した。太平洋戦争時の福岡を舞台に、福岡放送局のアナウンサーたちが葛藤する姿を描く。

 脚本はドラマ「相棒」(テレビ朝日系)やアニメ「チ。-地球の運動について-」(NHK総合)などを手がけた福岡市出身の入江信吾氏。現在のNHK福岡放送局アナウンス陣が総力を挙げて取材・番組制作にあたり、登場人物として出演。ほかにオーディションで選ばれた福岡県内の高校生7人も参加している。

 3月9日には、同局内のテレビホールで観覧応募に当選した250人の観客に見守られながら、“一発録り”の収録が行われた。その後、その場でアフタートークショーへ移行し、一橋アナと姫野美南アナ、長年同局の気象情報を担当する吉竹顕彰氏、脚本家の入江氏が登壇。小林将純アナの進行で、制作秘話や作品への熱い思いなどが語られた。

放送100年を迎え、NHK福岡発ラジオドラマを3月29日にオンエア
放送100年を迎え、NHK福岡発ラジオドラマを3月29日にオンエア

【あらすじ】
ラジオが一般家庭にも普及した太平洋戦争時の日本。放送局のアナウンサーは日本軍の快進撃を雄々しく伝え、国民の戦意を高揚させていた。その一方で、重要な軍事情報として統制されたのが天気予報だ。台風が接近しても限られた防災情報しか伝えられず、多くの命が失われた。もどかしさと無力感を抱く福岡放送局のアナウンサーたち。「必要な情報を届けられないのに、自分たちは何のためにいるのか」。戦況は悪化し、ついに福岡県にも空襲警報が発令される。本当に沈黙を貫くべきか、それとも…。

 収録とトークショーを終えた入江氏に話を聞いた。

――収録をご覧になった感想から教えてください。

「最初、公開収録と聞いていたので、ガラス張りのスタジオでやるのかと予想していたんですが、あんなガッツリした箱(ホール)でやるとは。その存在も知らなかったんで。舞台にセット組んで、照明をたいて、音楽も入れて、映像まで付いて、そこまでやるとは思っていなかったことと、皆さんの熱演もあり、自分が書いたとはいえ、それを何倍にもしてくださって、すごくグッときました」

――これまでたくさん手がけられた作品は映像作品がほとんどかと。この作品のような音声のみは初めてですか?

「アニメの派生作品としてドラマCDのようなものは手がけたことがあります。オリジナルの、ラジオ作品としては初めてです」

――音声のみの作品ということで苦心された点は?

「そうですね、やはり、音でしか表現できないのは面白いけれど、制約もあるといいますか。一番悩んだのはキャラクターの数。多すぎると、聞き分けられる限度がありますから、最初5人ぐらいと言っていたんですが、結果的にはだいぶ増えましたけど(※高校生オーディションのレベルが高く採用者数が増加)。なるべく混乱しないように気をつけて書いたつもりではいたんですけど。高校生の方々が入ったことで、声質も全然違いますし、発声もアナウンサーの方たちとも違うし、そういう意味では聞き分けはしやすいと思います」

――例えば、あえて相手の名前を発したりだとか?

「そう、そうです。私が気付いていないところは、(打ち合わせの段階で)一橋アナに指摘していただいたりしました。『先に名前を言った方がいんじゃないですか?』とか。実写だったら不自然だから言わない場面も、ラジオなので、あえて入れるとか」

――場面の表現も難しいですよね。

「場面転換も難しいので、なるべく増やさないように気を付けましたが。放送局と、西部軍管区司令部と、木下(※放送係長の木下精二=一橋アナが演じた役)の自宅とかやっているうちに、咲子(※今岡咲子=姫野アナが演じた役)の自宅まで出ちゃったり。増えていきましたね(笑)。まあ(聞く人に)分かってもらえたらいいなと思いつつ、大丈夫だろうなと思っています」

――放送では2部構成となりますが、そこにはどんな意図が?

「ラジオをやったことがなかったので、最初は尺感がどれくらいなのか、見当もつかなかったんですが。初稿はまだ短かったんです。今の(最終稿の)半分ぐらいかもしれない。そこから『前後編で』という要望があったので、ちょっとずつ肉付けしていったところがありますね。分かりにくいところを、説明を増やしたりとか、場面自体を増やしたりだとか、見せ場を増やしたりだとか。そして、ちょうどいい部分で2部に分かれています」

――(初稿を)ブラッシュアップした結果ということ?

「そうですね。実際、アナウンサーの方たちに通しで読み込みをしてもらって、その所要時間を聞き、増やしていった感じです」

――なるほど、では最後に聞きどころを教えてください。

「聞きどころですか、なんだろ(笑)。自分で、うーん。…この題材って、今まで扱われたことないんじゃないかって。空襲警報の運用って聞いたことがなかったんです、私自身。当時いらっしゃった井上精三(主人公:木下のモデル)っていう方の手記に詳しく書いてあって、空襲警報が発令中はラジオは止まっているし、防空情報は発表できないって。その慣習を、井上さんが軍に嘆願したことにより、日本で初めて、それ(発表すること)が実現したって書いてあって。『そんなことが福岡であったんだ』ってびっくりして『これは絶対使おう』と。これが、この作品の一番強いところかな、と思います。あと、NHKの全国放送のドラマがありましたけれど、東京だけじゃなく、地方でもいろんな苦闘があったんだなあと。そのうちの一つがこれで、ということですので、いろんなパターンの物語が、ほかの地方であってもいいと思うんですけど。ひとまずこの作品を聞いて『地方のアナウンサーたちにも、こんな物語があったんだな』と感じていただけたらうれしいです」

――たくさんの実話がちりばめられている感じなんですね。

「そうですね。(残存するものが)少ないとはいえ、資料を調べましたね。(脚色も)適当なことも書けないですし。とはいえ、フィクションなんで(笑)。そのさじ加減が難しい」

――物語として面白くしないといけませんからね。

「そうです。『ただ戦争になりました。強いものにあらがえずに加担してしまいました。反省しています』じゃ、教訓にはなるけど、救いにも希望にもならないので。そこ、何か入れなきゃな。それが最後の屋上からの呼びかけであるし、それが永い年月をかけて誰かに届いていた、というのを表現したかった。そういう救いみたいなものを入れないと、物語として面白くないというか、やる意味ないなと思ったんで。そこは最初から狙っていました」

 同じく一橋アナと姫野アナにも話を聞いた。

――収録、お疲れさまでした。お二人の演技経験から教えてください。

一橋 「全くありません(笑)。小学校の学芸会以来です」

――久しぶりの演技…、ということですね。

一橋 「久しぶりといっていいかどうか、だから初めてですよね」

――姫野さんはいかがですか?

姫野 「私は中高6年間、放送部でしたので、毎年ラジオドラマを作っていました」

――声で演じることはやってらした?

姫野 「そうですね。声だけのお芝居をやってました。高校以来の演技となりますね。アナウンサーって、演じる機会って、そう多くないので」

――そうですね。そんなお二人が、今日の収録で、思い通りにできたことやできなかったことなど、印象に残ったのはどんなことでしょう?

一橋 「難しかったのは、やっぱり(本番)一発でやらなきゃいけなかったこと。それから、お客さんの前でやるっていうことが、想像以上に難しくて」

――二重の大変さでしたね。

一橋 「なんでこんな難しいことを企画したんだろうって、思いながらやっていました(笑)。もっと普通にスタジオで(場面ごとに収録を)止めながらやれば楽だったのに。すごく後悔しています」

――それは企画者でもある一橋さん自身の責任?

一橋 「だからすごく後悔しています(笑)」

――それは、どのあたりのシーンで感じました?

一橋 「リハーサルまでは、そこまで緊張しなかったんですが、みんなで楽しく、どんどん作ることができていたんですが、本番になって、すごく緊張しちゃったんで」

――最初からですか?

一橋 「はい。まだまだだなと。修業が足らないなと痛感しました。一方で、生でやることの良さってあって、お客さんの反応だったりだとかで演技が変わると思うんですけど、僕以外の人たちは、みんなすごくノッてやっていて、それに引っ張られて、今日は今日の僕の演技ができたと思っていますし。そういう意味ではライブ感が生まれるものはあったなと実感できて、『ああ、なるほど。一発で、お客さんの前でやる難しさと同時に面白さもあるかも』と。今日の放送は今日の中でしかできないわけですから、どれだけ練習して計算してても、相手のお芝居でタイミングも変わっていく。面白いなぁってすごく思いました」

――今日の演技をご自身で採点するなら?

一橋 「うーん、76点(笑)」

――合格点じゃないですか?

一橋 「ぎりぎりかな(笑)」

――では、姫野さんの印象に残ったことは?

姫野 「練習を始めてから今日まで、一番難しかったのは、軍国少女ではつらつとしていた咲子(姫野アナが演じた役)が、戦禍で自分の家がなくなった街の状況を目の当たりにして『なんなんですか? これは』と戦争の現状を受け止める独白というか、そういうシーンがあるんですけれども、そこの移り変わりと、その独白のシーンがラジオとしてどう聞こえるか、バランスがすごく難しくって。もちろん感情を乗せてやるんですけど、でもこれはラジオドラマとして収録して放送として聞かせるわけですから、聞きづらくてもいけないな、と。そのバランスというは最後まで難しかったですね。でも、それを受けて、石橋という局の先輩役に現状への思いをぶちまけるシーンがあるんですけれども、同じかそれ以上の熱量で返ってくるので、そのドラマの中のヒートアップのしかたみたいなものは、やりがいがあるというか、面白い部分だなと思いました」

――それを踏まえて、ご自身の演技を採点するなら?

姫野 「えー、難しいですね。点数ですかぁ。先輩(一橋)が76点って言ってましたからね。それより高いものを出すのは気が引けるな(笑)」

一橋 「あくまで自分のだからね」

姫野 「えー、どうでしょう。ドラマとしては編集も含めて100点になると思います。音声さんとか、いろんな人の協力もあって。自分の演技としては何点ですかね。うーん、90(点)」。

――なるほど。では最後に番組の聞きどころを。

一橋 「今回、戦時下のアナウンサーということなんですけども、たまたまわれわれ二人がお話ししていますが、番組内では何人ものアナウンサーが登場します。で、こだわったのは、主役のナレーターみたいな者がいないんです。冒頭は咲子がナレーションしますが、その次は僕がしていて、その次は中林(※木下の後輩アナウンサー役)がしていて、石橋(※同)もナレーションします。アナウンサーが、それぞれ主人公としてドラマの中で自分の葛藤だったり、それぞれの立場からどういうことを考えているのか、をモノローグで語られるし、その後のシーンでセリフとしても出てくる、という作りにしています。これは脚本家の入江さんに途中から『難しいけれどやってほしい』とお願いしました。なぜなら、いろんな考え方の人がいたと思うんですね。でも、どれが正解ということではなく、みんなが悩んで、正解を導き出そうとしていたんだろうな、と思うんで。その部分を表現したかったし、その部分をぜひみなさんに聞いていただいて『ああ、その時に自分がいたら、この人の考えに近いかもしれないな』とか『自分だったら、ここでこんなことを言えたかな』とか『こんな行動を取れたかな』ということを、誰か自分に近い人がいるんじゃないかな、そんなふうに置き換えながら聞いていただけるような作品にできたらなと思って、そのナレーション部分を誰か1人にしないようにやってみたんで…、全部聞きどころです(笑)」

姫野 「今回は放送100年というタイミングで、このラジオドラマを作り始めていて、これまでの100年を振り返って、これからどうしていくか、私たちは放送に携わる人間としてですし、聞く皆さんもこれからの100年をどう生きていくか、作っていくかということを考え、そういう大きなテーマの中で、作り始めたラジオドラマなんですね。なので、私自身はアナウンサーとしてNHK福岡放送局で働いていて、80年前の同じ場所のアナウンサーたちがどういう葛藤、どういう後悔、どういう無力感を感じながら、その瞬間を生きてきたか、を常に考えながら演じて、ドラマを作ることにも携わらせていただきました。ただ一方で、その先輩たちが情報を届けることに大きな使命感と意義をもって、力を信じて戦時下を生きてきたということも伝わってくる、そういうドラマになっていると思うので、なんか自分だったらどうだったかというのを、聞いている方にちょっとでも思いをはせてもらって、こう生きていきたいな、こうありたいなと思う、なんかそういうメッセージが残る時間になっていればいいなと思いますし、伝わるドラマになったんじゃないかと思っています」

 一橋アナと姫野アナはこの番組を最後に、新年度から異動により福岡局を離れるという。番組はNHKのインターネットラジオ「らじる★らじる」で同時配信と聞き逃し配信を予定している。


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