「地震のあとで」村上春樹の連作短編を岡田将生・鳴海唯・渡辺大知・佐藤浩市主演でドラマ化2025/02/17
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NHK総合では、阪神淡路大震災から30年が経った今年、村上春樹の珠玉の連作短編を原作にした“地震のあと”の四つの物語を描く土曜ドラマ「地震のあとで」(土曜午後10:00)の制作を発表した。4月5日からの放送で全4話の連続ドラマとなる。各話に通底するのは「人間社会を襲う圧倒的な暴力とその影響」。本作のテーマとなる阪神淡路大震災をはじめ、地下鉄サリン事件、東日本大震災、コロナ禍…現在へ続いていく悪夢とも言える負の連鎖である。
ドラマ「地震のあとで」では、原作の舞台となった1995年だけでなく、2025年に至る設定に置き換える。それにより“今”に続く“地震のあと”の30年の時間を描き、これらの連鎖の先に回復を祈る作品を目指す。阪神淡路大震災の影響を、現地ではなく遠い場所で受けた人間たちの“喪失”を伴う奇妙な物語とも言えるだろう。
全4話の主演は岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市が務め、脚本は、村上原作の映画「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允氏が担当。また、ドラマ「その街のこども」(10年/NHK総合)、「あまちゃん」(13年/NHK総合ほか)で震災を描いてきた井上剛氏が演出する。
第1話は岡田主演の「UFOが釧路に降りる」。95年、東京。阪神淡路大震災のニュース映像を見続けていた未名(橋本愛)が突然家を出ていくが、夫の小村(岡田)は妻の行方も分からないまま後輩(泉澤祐希)に依頼された「届け物」をするため釧路へ赴く。妻はなぜ出ていき、どこに行ってしまったのか? 小村は、釧路で出会った不思議な雰囲気の女性・シマオ(唐田えりか)らに奇妙な旅へと導かれていく。ほかに、北香那、吹越満らが出演。
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小村を演じる岡田にとって、村上原作の作品に出演するのは2回目。「原作、脚本を読み込みましたが、未だに自分自身の思考がさまよっている感覚があります。撮影が終わったにもかかわらずです」と素直な気持ちを伝える。そして、「現場では監督と幾度となく会話を重ねながら臨んでいましたが、こうだと言い切れる何かを見つけるために日々撮影していた時が鮮明に残ってます」と撮影の日々を振り返り、「答えのないものほど面白いものはありません。この物語の終わりはないかもしれません。揺れない男が揺れ始めるその瞬間を逃さず見ていただけたら幸いです」と本作の持つ魅力に言及した。
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第2話は鳴海主演の「アイロンのある風景」。11年、茨城。家出して海辺の町に暮らす順子(鳴海)は、流木を集めたき火をするのが趣味の画家・三宅と出会う。自分と同じくこの町に流れ着いた三宅にひかれた順子は、いつしかたき火を共にするように。そして3月11日の明け方、たき火の大きな炎を前に神戸にいた三宅の過去が明かされていく。ほか、順子と半同棲中の大学生・啓介役で黒崎煌代が出演。
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純子を演じる鳴海は兵庫県出身。「私にとって震災は切っても切り離せない出来事で、学校で学び、被災した親族から話を聞いて育ちました。そんな背景もあり、この作品にはいつも以上にご縁を感じています」と本作への出演に思いをはせる。そして、その思いが「名もなき人の声に耳を傾け、順子というあの時確かに存在していた、1人の少女の孤独と向き合い続けた数日間でした。劇中では主にたき火のシーンがあり、実際に海辺で撮影したたき火の火は全て本物の火なので、作品の空気感をリアルに感じていただけると思います」といい、撮影の日々につながっていったことを明かした。
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第3話は渡辺主演の「神の子どもたちはみな踊る」。善也(渡辺)は、宗教家の田端(渋川清彦)が神の教えを唱える宗教団体の熱心な信者である母親から「神の子ども」と言われ育ったが、11年、東日本大震災を機に信仰を捨てた。そして、9年後の20年、善也は地下鉄の中で耳の欠けた男を見つける。それは父親かもしれない男の特徴だった。自分の父親とは誰なのか? 果たして神とは? 善也は男を追いかけていく。ほかに、善也に思いを寄せる会社の同僚・ミトミ役で木竜麻生が出演。
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渡辺は兵庫県神戸市の出身で「ちょうど物心ついた頃に阪神淡路の震災を経験し、神戸の復興の中で育ちました」と半生を語る。その体験があり、「それから現在までたくさんの地震による被害を耳にしてきました。そういうニュースを見るたび、恐ろしいくらい自分に近いことのようにも感じ、それと同時にどこか非現実的でとてつもなく遠い世界にも感じてきました」と複雑な思いを持ち続けていたことを告白。そんな渡辺が本作と出合い、「“共感”するということは、簡単なようでとても難しいことなんじゃなと思うんです。でもこの作品と出合って、“共感”かどうか分かりませんが、人はどこかで生まれながらに感じ取り合おうとしているんじゃないかと思えました」とたどり着いた思いを打ち明ける。そして「実際に“共感”できるかできないかは問題ではなく、誰かの思いを“感じたい”と思うかどうか、それが大切なのかもしれません。原作は20年以上前に書かれたものですが、いままさに映像化される意義のある作品になっていると思います」と言葉を結んだ。
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最終話となる第4話は佐藤主演の「続・かえるくん、東京を救う」。25年、東京。銀行を定年退職し漫画喫茶で暮らす片桐(佐藤)の元へ、突然巨大な“かえる”の姿をした“かえるくん”が現れ、間もなく地震が起こるという。「かえるくん」は30年前にも片桐と共に戦い、東京を地震から救ったと言うが、片桐にはまったく身に覚えがない。そんな2人は“みみずくん”の暴走を止めるべく地下深くへ降り、再びの戦いを始めることになる。ほかに、片桐の同僚警備員で、“かえるくん”の姿は見えず、片桐のことを奇妙に思っている山賀役で津田寛治が出演。
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佐藤は、「難しさと楽しさ、相反する二つが一つのシーンで同時に自分の中に湧き上がってくる不思議な作品でした。それは見る側の皆さんにも充分感じていただけると思います」と第4話のストーリーを評する。そして「ある意味、理解は誤解の総体!」と意味深なメッセージを投げかけた。
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この4編をつづった脚本家の大江氏は「このドラマは登場人物たちの心の『何かが揺れてしまった』後を描いています。知っていたはずの世界がある時を境に知らない世界に見えてしまった、そんな奇妙な肌触りが画面に映っています」と本作の物語を説明。そんな大江は阪神淡路大震災を大阪で経験したと言い、「あれから30年、心の方はどう変化してきたのか。ご覧になった方が、何かこの30年を思う時間になれば幸いです」との願いを言葉に込めた。
震災を描いたドラマをこれまでにも手がけてきた演出の井上氏は、「“連作”だから描ける物語がある。一見関わりのない個々の物語が、地震(や巨大な暴力)のような大きな揺れのあと、それと知らず連なって震えている。連帯ではなく、たまたま共振するような小さな救い──。本作品から感じられたらうれしいです」と、本作を4回の連続ドラマとして撮った理由を明かす。さらに「阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件の“揺れのあと”を描いた村上春樹さんの原作から30年。思えば何かのafterは次の何かのbeforeでもあると知った年…。今そこを描いてみたい、連作で! 新たなムラカミワールド目指しました」と言葉を続け、4話を続けて視聴することの意義を訴えた。
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