東日本大震災から14年目の春に届ける阿部寛主演作「水平線のうた」2024/10/04
NHK総合とNHK BSプレミアム4Kで、2025年3月1日、8日に放送する土曜ドラマ「水平線のうた」(土曜午後10:00、BS プレミアム4Kは午前9:45)の制作を開始したと発表した。
宮城県石巻市と女川町が舞台の本作は、主演に阿部寛、震災ドラマの名作「ラジオ」を手掛けた岸善幸が演出を担当。“音楽を通していとしい人の思いをつなごうとする”主人公たちの姿を、鎮魂の思いを込めつつ、ユーモラスで温かなヒューマンドラマとして、震災14年目の春に届ける。
震災で家族を失い、タクシー運転手として働く大林賢次(阿部)。ある夜、乗車した少女(白鳥玉季)が口ずさんだメロディー、それは妻子との思い出の曲だった。 男はこの楽曲を追い求める中で、曲に込めた妻の思いを知り、やがて少女や音楽仲間と共に、町にささやかな奇跡を起こす。
制作担当は、制作のいきさつと作品に込めた思いを、「音楽家の岩代太郎さんからこの企画の提案をもらってから3年間。時間をかけ、じっくりと準備をしてきました。制作過程において実感することは、東日本大震災から13年が経ち、復興によって風景が修復されても震災被害者の方々の未だ心の傷は大きく、安寧となるのが簡単ではないことです。東日本大震災から現在までに、平成28年熊本地震、令和6年能登半島地震や日本のいたる所で水害被害などが起きていて、この国は絶えず災害に悩まされ、苦しんでいます。この物語がたくさんの人々のもとに届き、ほんの少しでも明るい気持ちになってもらえればと願うばかりです」と発表。
主人公の大林を演じる阿部は、「震災から13年が経った今、過去の喪失と向き合う人々の姿を静かに、しかし深く描き出しています」と本作のスタンスを語る。そして「脚本では、主人公の大林賢次が妻と娘を探し続ける中で、偶然出会った女子高生との交流を通じて失われた絆や未だ癒えない心の傷に再び向き合う様子が細かく描かれています。人の垣根を越えて残る音楽の力、未来を見つめる若い世代と、過去に縛られる大人たちの対比が大きなテーマとなっており、多くの方々に共感していただける作品です。ぜひ、この感動的なストーリーをお楽しみください」と本作がもつメッセージに思いを寄せた。
原案・音楽を担当する岩代太郎氏は、「作曲家である私は『なぜこの世に音楽が必要なのだろうか』と日頃から自問自答しています。その答えと成り得る“音楽の必然性”を探求し具現化しようと頑張っているのです。たとえば私は、音楽が音楽たる真の姿を現すためには、三つの思いが必要だと思っています。それは、<作曲した人の思い><奏でた(歌った)人の思い>そして<聴いた人の思い>です。三つの思いがそれぞれに満たされた時、たった一人だけの思いが数多くの人々と分かち合える思いへと昇華していくのです。だからこそ、音楽は心あるところにしか存在できません。作曲とは静寂から調べを手繰り寄せるようなもの。そんな思いや感覚に導かれた物語が『水平線のうた』でした。こよなく家族を愛していたタクシー運転手が、音楽の力によって失いかけていた絆へとたどり着く。そんな物語を皆さまへお届けしたいと願っております」と音楽が持つ力、それを世に届ける使命をメッセージに込める。
そんな岩代氏の脚本を受け、脚本家の港岳彦氏は「岩代太郎さんの閃光(せんこう)のようなインスピレーションが書かせてくれました」と振り返る。そして、自身の思い出と重ねて、本作への思いをこう語る。「1995年の夏、季節労働者として宮城県女川町のちくわ工場で働いていた。工場の人たちはみんな親切で、わざわざ自宅の招いて食べきれないほどの大量のごちそうを振る舞ってくれたし、おじさんの一人は、幼なじみが女将を務める小料理屋で極上の女川のサンマを食わせてくれた。毎朝『息子があんたと同じぐらいだから』と目を細めながら、焼きたてのちくわを口に突っ込んでくれるおばちゃんもいた。同年代の照れ屋の女の子とはあまり話せずじまいだった。このシナリオは、片思いにすぎないかもしれないけれど、あの夏をずっと忘れないという気持ちで書きました」。そして、「あとホヤも絶品だから!」と付け加えた。
大林賢次(阿部)の家族、音楽教師の妻・早苗(松下奈緒)と10歳の娘・花苗は、東日本大震災で行方不明になったまま。津波で亡くなった人の霊が客としてタクシーに乗るという話を聞き、妻子に会いたい一心から13年間タクシー運転手として働いているが、いまだ一度も会えていない。ある夜賢次は、タクシーに乗せた女子高生・りら(白鳥)のハミングを聞き、驚く。それはとても懐かしい曲…だが、賢次が曲名を聞いてもりらは答えず、降りてしまう。数日後、賢次は早苗と花苗が震災直前に何度もその曲を一緒に演奏していたことを思い出し、りらを探して曲名を尋ねる。賢次の話を聞いたりらは、片道2時間かかるとある場所まで連れていけば教える、という。向かった先は音楽喫茶店だった。りらは店の中にあった汚れた楽譜を手に取り、リコーダーで演奏する。それはまさに思い出の曲で、賢次はりらの演奏に感涙するが、その楽譜の由来を知り衝撃を受ける。そして賢次はりらと共に、早苗の恩師・菊池先生(加藤登紀子)やかつての音楽仲間を尋ね、この曲を再び復活させようとするのだが…。
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