西島秀俊&水上恒司が「黄金の刻」記者会見に登場。新天地でチャレンジする人たちにエール2024/03/25
テレビ朝日系で3月30日に放送されるテレビ朝日ドラマプレミアム「黄金の刻(とき)〜服部金太郎物語〜」(午後9:00)。オンエアを前に記者会見が行われ、西島秀俊、水上恒司が登壇した。
「黄金の刻〜服部金太郎物語〜」は、国産初の腕時計を作り上げ、世界初のクオーツウォッチを発売したことで知られる「セイコーグループ」の創業者・服部金太郎の波乱の人生を重厚に描いた、作家・楡周平氏による小説「黄金の刻 小説 服部金太郎」(集英社)を完全ドラマ化するもの。主人公・金太郎(西島)は、丁稚(でっち)奉公から時計修理職人を経て、時計の製造工場「精工舎」を設立し、国産初の腕時計を製造販売。常に時代の先々を読み、義理・人情・恩義を大切にしながら、一歩ずつ己の夢をかなえていったが、一方で火災や震災など、数々の困難が彼の人生を襲う。洋品雑貨問屋の丁稚は、いかにして“東洋の時計王”になったのか? 希代の起業家の一代記を届ける。
MISIAが歌うドラマ主題歌「ゆびきりげんまん」が流れる中、登壇した西島と水上。金太郎という人物を、それぞれの時代ごとに演じ分けることになった2人だが、司会の野上慎平アナウンサーから「雰囲気が似ている」と言われると、照れ笑いを浮かべる一幕も。
あらためて見どころについて聞かれ、西島は「豪華な共演者の皆さんがこの作品のために情熱を込めて演じてくださったのですが、実際、服部金太郎という人の周りでも、たくさんの人たちがどんどん味方になっていって、みんなで幾多の困難を乗り越えて日本の技術を上げていった。やっぱり人と人とのつながり、それぞれがそれぞれの場所でベストを尽くすことで、さまざまな困難を乗り越えていく。その群像劇が、きっと一番の見どころになるんじゃないかと思っています」と力を込めた。
続けて、水上も「“時”というスケールの大きいものに着眼点を置いた男の人生を描いたところが、僕は一番好きで、青年期を演じるにあたって、“時”というものに魅了されていくところがすごく大事だなと思っていました。服部金太郎氏が“時”に魅了されていったように、令和の時代にそれぐらいスケールの大きいものに魅了されていくものは何かあるかなと考えた時、なかなか出てこなくて。服部金太郎さんは本当にすごい方だと思いました」と、演じた役へのリスペクトを言葉にした。
実在した人物を演じるには、難しさを感じたこともあったようで、西島は「実際に何が起きたかは分かっているのですが、それがどういう人物で、実際にどういう会話をしていたかは想像の部分が大きいと思います。原作の楡先生の本の中では、その人物を大きく膨らませてすごく面白く描いていらっしゃるので、その原作をたくさん参考にさせていただいてました。あとは、生きている人間としてどう演じることができるか、そのほかの登場人物たちとどう関係を描いていくかを話し合いながら作りました」と撮影を振り返る。
また、「『なぜ1人の男が丁稚奉公から東洋の時計王にまでなったのか』『同じ人間がなぜこんな偉大な業績を残せたのか』が皆さんが一番知りたいところで、原作はその謎をひもといているので、そこを参考にしました」と役づくりに触れると、「まだみんながバラバラの時間に生きている中で、『これからはみんなが同じ時を生きる』と未来に対するビジョンがしっかりあったこと、契約などの約束をきちんと守って信用を大切にしていたところも含めて、先見の明を持った人だと思います。『仕事に夢中になっていた人はきっとこういう性格の人なのではないか』と、細かな事実を一つずつ拾っていって、想像の中で人物を作り上げていきました」と深く考え抜いた様子で、裏側を明かした。
水上も「まだまだ至らない部分が多い中で、実在した方に寄せていく作業はかなり難しかったです」と吐露。「声の音色だったり、たたずまいだったり、癖だったり、所作だったり、その人に寄せていく余裕が僕の中にまだなかったので、“時”に魅了されていった金太郎が時計を見つめる際のキラキラした目をどれだけ表現できるかは意識していました」とこだわりを口にした。
そんな水上は、会見では終始西島の話に、真剣なまなざしを向けて聞いていたが、そんな水上の横で西島は「青年期で“時”に真っすぐに向かっていくエネルギーと純粋さのようなものは、やっぱり水上くんが演じているからあれだけ素晴らしかったと思う。本人の中にそういう部分があって、それが金太郎氏の中の何かとリンクしていたんだろうなというのを、見て思いました」と水上の演技を絶賛。
実は、2人は今作で約3年ぶりの共演。今作では1シーンだけ共演があったとのことで、「年齢的に若いのでバトンを渡してつないでいくことが多く、その時に先輩俳優の方々のイメージにどれだけアジャストしていけるかというプレッシャーもあります。でも、まさか3~4年前に初めて共演させていただいた日から、西島さんが僕のことをちゃんと覚えてくださっていたことがうれしかったですね」と同じ人物を演じた喜びをかみ締めていた。
目を輝かせる水上に、西島は「水上くんは自分のやりたいことが明確に見えていて、そのことに向かって純粋に進む人。僕の勝手なイメージですけど、すごく“不器用なタイプ”の俳優さんだと思っています。僕も正直そういうタイプで、そういうタイプが好きだし、これからもゆっくりといい作品を重ねて成功してもらいたいなと思っている俳優さんです」と、水上の今後に期待を寄せた。
現場の雰囲気を聞かれると、西島は「とにかくすごい俳優の皆さんが集まっていたので、みんな『自分の演技がどうか』というよりは、『このシーンにとって自分がどのようにいることが、そのシーンをより生き生きと素晴らしいものにできるか』にすごく意識は向いていました。若い俳優さんも、エキストラの皆さんも全員で『このシーンはどうやって作るべきか』ということをすごく真剣に話し合って考えてくださっていました」と現場での熱いエピソードを披露。加えて、「この物語についてすごく考える俳優さんが集まっていたという証明だと思います。大変でしたけど、どのシーンもすごく演じがいと手応えのある作品でした」と語る表情からは、充実した撮影の日々を感じさせた。
そんな熱気あふれる現場を支えたのが、西島も語った豪華なキャストたち。松嶋菜々子、山本耕史、濱田岳、船越英一郎、髙嶋政伸、高島礼子、吉川愛とそうそうたる顔ぶれがそろったが、西島も「出来上がり見て、久しぶりに重厚なしっかりしたドラマを見たなと。それぞれの俳優さんがどのシーンも、自分のためにやっているのではなく、何かもっと大きなものに対して、身を投げ出している方たちが集まっていて、すごく幸せな時間でした」と作品へ確かな手応えを感じたそう。
水上は、金太郎と共に「辻屋」で丁稚奉公していた岩倉善路を演じた下川恭平とのエピソードを明かし、「芝居をするのはすごく楽しかったですね。なかなか令和の時代にいないような直球を投げてくる役者さんで、そんな下川くんが(善路を)演じていたからこそ、悩んでいる善路に対して、金太郎としてセリフが言いやすかったと思います」と、こちらも充実した回答が飛び出した。
ドラマでは“夫婦の愛”も一つのテーマとなっているが、金太郎の妻・まんに扮(ふん)した松嶋との共演に、西島は「声が本当にすてきなんです。ずっと聞いていたい声なんですけど、個人的に松嶋さんの泣く演技がすごく胸に来るんですよね。現場で、松嶋さんが泣かれていると、すごく心の奥に響く。まんさんがいての金太郎という夫婦だと思うので、まんの度量の広さ、松嶋さんの人としての大きさが、役にも合っていますよね。ご本人の魅力が一致していると思いながら演じていました」と、夫婦役を演じる上で、固い信頼をにじませた。
質問コーナーでは、「黄金の刻」というタイトルにちなみ、2人にとって黄金の時=至福の時間、譲れない時間を聞かれると、西島は「最近なかなか行かれていないんですけど、やっぱり映画が好きなので、映画館に行って、座って待って、予告とかを見ながら暗くなって始まる時が一番好きですね。ものすごくドキドキしますし、毎回いいなという感じがします」と回答。
また、ドラマの放送日が3月30日と、新年度が始まる間近というこの時期。組織やチームに関して描かれている部分も多いドラマに出演した2人に、「チームや組織の中でどのような人と働きたいか?」という質問も。
西島は「情熱を持って何かに向かっている人と一緒に仕事がしたいです。それはずっと思ってきたし、今も思っています」とキッパリ。「今回監督は本当に大変だったと思うのですが、『このシーンはこうなんじゃないか』『これはおかしいんじゃないか』とみんなが言い合って、監督もそれを理解してくれてみんなで作っていく。そういうことがすごく楽しいので、よりよいもの、より素晴らしいもののために情熱を持って全力を尽くす人たちと一緒にやっていきたいですし、自分もその一員として参加したいと思っています」と、作品を振り返りながら、思いを伝えた。
水上は「僕は小学生の時から野球というチームスポーツをやってきたの身ですので、短いスパンでチームが変わったり、中学、高校になるにつれて、よりいろいろな人と接する機会があり、どんな環境でも自分をちゃんと保てるタイプだったんです。今のこの職業では特に短いスパンで環境がどんどん変わっていって、その短いスパンの中で、『この人はなんでこのカメラワークをするんだろう』『どうしてこのカット割りをするんだろう』『なんでこういうお芝居をされるんだろう』と興味を湧く方が多い現場に行くと、すごく幸せだなと思います」とコメント。
さらに、新社会人や新天地でチャレンジする人たちへメッセージを求められると、水上は「まだ私自身若いので、そんな偉そうに言えた口でもないですが、すごくたくさん失敗してきて、ちょっと成功してきた僕から言えるのは、緊張するのは当たり前だし、不安だし、悩むこともたくさんある中で、どれだけ結果を残せるかだと思います。なので、あえて僕は優しい言葉よりも、『本当にてめえ次第だ』と伝えたいです」と熱いエールを送る。
西島も「思い返すと、4月から新しい環境に飛び込む時って、期待と不安があって、実際に入ってみると、時には全然イメージと違うことがあったりすると思います。僕は、もしその環境が本当によくないんだったら飛び出すべきだと思う。全然逃げても構わないと思います」と前置きしつつ、「特に若い人ってもう『そこしかない』と思ってしまう。僕ももともとは映画に関わりたいと思っていたけど、全然違う道を行っていているので、僕の体験として言えるのは、『やっぱりここが自分の場所じゃない』と思った場合は離れていい。離れて、本当に一番自分らしくいられる場所を探して、それを見つけることができれば、きっとそこで本当に幸せに暮らせるから。どうしても『ここしかないんじゃないか』『この場にいられなかったらもう終わりだ』と思いがちなのですが、そんなことはないと言いたいですね」と優しい面持ちで温かいメッセージを発信した。
会見の最後には、2人からあらためて作品をアピール。
西島は「本当に素晴らしいキャスト、素晴らしいスタッフと一生懸命毎日丁寧に撮影をして作られた、登場人物全員でさまざまな困難を乗り越えていく物語です。きっと見てくださった方に『よし、明日から頑張ろう』と未来に何か希望を持って、夢を持って、それに向かってまい進していこうと前向きな力を見ることで感じていただけたら、こんなに幸せなことはありません。ぜひ、楽しみに待っていただきたいと思います」と呼び掛けた。
水上は「僕がこの作品を世の中にお届けするにあたって一番伝えたいのは、金太郎さんが“時”というスケールが大きいものに対して魅了されていくことがすごくすてきで、魅力的で、人生の中で“時”を追い求めていくように、見てくださる方々の中にもそれが見つかったり、『もう1回頑張ってみよう』と見つめ直すようなきっかけの作品になってくださったら、すごくうれしいです。この令和の時代から、服部金太郎を超える人物が出てこないといけないと思うので」と会見を締めくくった。
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