青柳翔＆大東駿介共演で篠田節子の「仮想儀礼」を実写ドラマ化。宗教について真面目に考える強烈な物語2023/10/31
12月3日から、青柳翔と大東駿介が共演する連続ドラマ「仮想儀礼」（日曜午後10：00）がスタート。本作は、12月から始まるNHKのBS2波であるNHK BSとNHK BSプレミアム4Kの「プレミアムドラマ」の第1弾となる。
「仮想儀礼」は、2008年に篠田節子氏が発表した同名小説が原作。無職の男性2人がやけっぱちで立ち上げた宗教ビジネスを通して、宗教について真面目に考える、面白くも悲しき物語だ。青柳と大東のほか、石野真子、美波、河井青葉、松井玲奈、川島鈴遥、奥野瑛太、齋藤潤、宮地真史、峯村リエ、尾美としのり、目黒祐樹、石橋蓮司らの出演が決定。また、映画「正欲」（2023年11月公開）に関わった脚本・港岳彦氏、監督・岸善幸氏、音楽・岩代太郎氏が携わっている。
元エリート公務員の鈴木正彦（青柳）と元ゲーム会社社員・矢口誠（大東）は、ある日突然職を失い、やけっぱちで“宗教”という名の“ビジネス”を始めることに。適当につけた教団名「聖泉真法会」のホームページを立ち上げ、正彦は“教祖”になる。チベットの密教などさまざまな宗教を継ぎはぎにした教えを基に、身の上相談から始めると、思いのほか人々が訪ねてくる。儀式の作法や本尊の用意など、その場しのぎでなんとか切り抜けていたが、ある企業の社長がパトロンとなったことから、「聖泉真法会」は飛躍的に成長。教団施設の提供、多額の献金…気付けば、信者の数は5000人を超えており、正彦は当初の目的である“金儲け”に成功する。しかし、素人である自分を心の底から信じる信者達の存在や、教団が大きくなっていくことに戸惑いを感じていた中、信者たちが独自の解釈で“教義”を発展させ、教団は思いもよらない災難に巻き込まれていく。
正彦を演じる青柳は「台本にはこう書かれています。『愚かな2人が、真理と営利を追求する物語である』と。『真理と営利を両立することは、バランスの取れたアプローチを取ることが重要だ』とも。この言葉に板ばさみになりながら信心とは何か？ 何者になりたいか？を追求していけたらと思っております」と意欲を燃やす。
誠役を担う大東は「宗教とは何か。信仰とは何か。信じるとは何か。あらためて考えると、情報があふれかえり簡単に手に入る昨今、仮想と現実の境界線があいまいになり、次々と新しい情報を信じたとたんにひっくり返り、また新たな情報を信じる。情報も恋愛もダイエット法さえも信じるか信じないかで左右され、これはある種の信仰のようなものだと思うのです。重要なのは真実か、信じられることか…」と思いを巡らせる。さらに、「この作品の撮影中にふと、僕らがしていることは、脚本という、ある種の仮想を現実にすべく向き合う儀礼のようなものだなと思いました。それを実現させるためには何より信じる力が必要」と、作品のテーマと俳優という職業を重ね合わせたという。このドラマに参加して「むやみに信じることの危うさを感じる半面、無垢（むく）に信じることの尊さを感じます。この作品が、どんな真実にたどり着くか僕自身楽しみです」とコメントしている。
原作の篠田氏は「金儲けのために宗教を起こそうともくろんだどん底の男2人を、青柳翔さんと大東駿介さんが、深刻かつ軽妙に演じてくれます。自分たちが作り出した“カミサマ・ホトケサマ”が、悩み多き人の心を引き寄せた時、どんなふうにコントロールを失い、どんなふうに暴走していくのか。その先に何が見えて、どんな境地が待っているのか。活字では表現し得ない世界を、魅力的なキャストの皆さまが、時に熱く時に冷徹な演技で見せてくれるはずです」と期待を寄せ、「小説とは全く異なる魅力を持ったもう一つの『仮想儀礼』。多くの視聴者の方々に楽しんでいただくと同時に、現実のもう一つ向こうにある、人間の真実を見つけていただけたら幸せです」と思いを口にしている。
ドラマ「1リットルの涙」（フジテレビ系）や「ごくせん」シリーズ（日本テレビ系）の脚本家・江頭美智留氏と共に脚本を担当した港氏は「母方の祖母は、ある新宗教の敬虔な信者だった。口癖は『すべては神さまのおかげ』。土木作業をしながら単身で6人兄弟を育てた苦労人。とてつもなく優しい祖母が僕は大好きだった。12歳の時、けがで片目を失明した。その際のコメントがふるっている。『両目を失明せずに済んだのは神さまのおかげ』。子どもながらに苦笑してしまった。理解できない発想だったけど、そこに生じたユーモアを今も愛している」と、自身のエピソードを明かす。加えて、「インチキな宗教団体の栄枯盛衰を描いた篠田節子さんの黙示録的大作『仮想儀礼』を、全500分の手r美ドラマシナリオに脚色しました。カテゴリーは、喜劇。彼岸にいる祖母が見たら苦笑するかな。信仰のあるなしにかかわらず、ご笑覧くだされば幸いです」とコメント。
また、演出の岸氏は「今という時代、人生という物語をハッピーエンドで終えられるのは、とても難しいような気がしています。人に優しい世界を求めながら、逆行することばかりが続く現実。そんな時代に宗教団体を立ち上げる2人の男。目的は金儲けです。教義も儀式もまがいものなのに、次第に信者が増えていく。いわば『うそから出た実（まこと）』を描き出すドラマです」と説明し、「うそか、現実か、分からないことが多すぎる昨今ですが、その分、登場人物たちのゆがみや滑稽さは、丁寧にリアルに描こうと思いました。正しくなくても、野望にあがく2人が迎えるリアルなハッピーエンド！ ご期待ください」と力を込めている。
本作の音楽を制作した岩代氏は「無神論者である私は、人々をよき方向へ導くためのアイコンとして、『神』という存在が創造されたと思っている。だが世界を見渡せば、『神』が戦火の種となり、無数の人々が殺戮（さつりく）されている今、宗教や神の存在意義に疑念を抱いている人々も少なくはないだろう。私も、その1人である。一方で、『信心』が人間に強い心をもたらすことも知っている。以前、小児がんの最前線に立つ医師から、子どもに先立たれる親の多くが、『信心』によって、どれほど救われ、生きる活力を得るのかを伺ったことがある。これもまた、人類にとっての真理だろう」と宗教についての考えを伝え、「音楽制作のコンセプトには、少々攻めた音楽性も織り交ぜてみた。ドラマ『仮想儀礼』が、多様性に満ちたメッセージを、私たちに授けてくれる作品だと思った故である。私にとっては、5年ぶりとなるNHKドラマを、どうかご堪能いただければと願っている」と述べている。
宗教考証を担当した、日本の仏教僧で宗教学者・釈徹宗氏は「果たして、“誠実”な“宗教ビジネス”としての新興教団は成り立つのか。それとも、しょせんは詐欺まがいの“ニセモノ宗教”の道を歩むのか。人生に行き詰まった2人の男が立ち上げた虚構の宗教は、やがて2人の思惑を超えて動き始め、誰もコントロールできないものとなっていく。信仰・宗教・教団・カルトの動的関係について深く考えさせられる強烈な物語」と分析。
そして、制作統括の高城朝子氏は「実はこの企画、『宗教をコメディーに？ テレビではちょっと…』と何度も振られ、なかなか成立しませんでした」と吐露。しかし「日本のテレビにおいて『宗教』とはアンタッチャブルなテーマなのです。そんな企画に参加してくださった気概ある出演者の方々とスタッフが、日々議論を重ねながら、この壮大で、難解で、答えのないテーマに挑んでいます。笑いあり、涙あり、価値観がバグる一癖も二癖もあるエンタメに仕上がっております。ぜひ主人公たちと一緒に『宗教団体づくり』を体験してみてください」と呼び掛けつつ、手応えをうかがわせている。
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