生理を扱ったドラマ「雨の日」主演・コムアイが届けたい思い。「話し続けることが大事」2021/10/28

NHK総合で11月3日放送の特集ドラマ「雨の日」(午後10:00)と、同日放送のトークドキュメント「ハロー!生理 世界で聞いた5つのストーリー」(午後10:55)のオンラインミニトーク&取材会が行われ、ドラマの主演を務めるコムアイ、クリエーティブディレクターの辻愛沙子氏、番組を手掛けた家冨未央プロデューサーが出席。いまだにタブー視されるこも多い生理について率直なトークを繰り広げた。

ドラマは、PMS(月経前症候群)と生理と向き合う私たちの「言えない言葉」と「言わない気持ち」が交差するポップ&ハートフルな物語。PMSに悩むカメラマン・小島ヒカリ(コムアイ)は、初めての水着写真の撮影で生理がきた芹澤あおい(工藤遥)のピンチに共感し、大胆な作戦で珠玉のグラビア写真を撮ることに。オファーを受け、最初から「ぜひやりたいと思った」というコムアイ。
本作への出演で演技に対して、コムアイは「だいぶ変化があった」と明かし、「芝居ってうそを上手につくものかなって思ってたんです。でも、土管の中で、成海璃子ちゃんが演じるミドリと対峙(たいじ)する場面があって、そこで自分が怒りとか悲しみをうまく表現できずに、監督と話し合ったりして、今から思い返すと、自分の心が悲しんだり、怒ったりとか、ネガティブな状態でかき回されるっていうことを許してなかったなと思ったんですよね。うそをつくんじゃなくて、ストーリーは作られたものであっても、それが自分の体の中で本当になるっていうのがお芝居なんだと、大切なことを学ばせていただきました。今後演技する上で、ずっと役に立っていくだろうなと感謝しています」と感慨深い様子。

また、ヒカリはPMSに悩む役どころだが、コムアイ自身は生理痛の方が重たく、生理に関するさまざまなアンケートや、PMSの症状に悩む友人などに話を聞きながら、役柄を膨らませていったそう。これまで、映像作品の中で、生理がトイレや出産シーンのように当たり前のものとして描かれないことを不思議に思っていたそうで、「学校やオフィスでも生理で体調が悪いと話したり、生理についての笑い話もあるかと思うので、もっと積極的に話をしていいのではないかと思う」と主張。さらに、生理がけがれたものという考えが伝統的にあることことも、生理について公に話せない雰囲気を作ってしまった原因の一つになっているのはないかと話し、「生理について語ること、話し続けることが大事なんじゃないか」と思いを伝えた。
現場では、出演者や制作陣、そしてジェンダーに関係なく、生理について活発に意見を交わしたそうで、ナプキンを一日つけて過ごした男性スタッフもいたとか。ある男性キャストからは「『俺はおなかがゆるいんだけど、それと似ている部分があるのかな。現場につくと必ずトイレの場所を確認する』と言われて、確かに近いかもと思ったり。『ぶっちゃけこういうことが分かんないんだけど』と言われたり、そういうやりとりをできたことが豊かで楽しかった。男性の皆さんにも積極的に聞いてもらいたいです」と話した。

辻氏も生理について“伝え続ける大切さ”を強調。「生理って千差万別。すべてを書き切るのは無理なので、表現の難しさを生理のトピックにはとても感じますね。私は生理について“当たり前に言っていこうキャンペーン”をしているんです。オンラインでの会議中に『生理になってしまったのでトイレに行く』と正直に話したり、パートナーと出かけた時に生理になってしまって、ナプキンを買ってきもらったこともありました。男性側から見て、聞くことも失礼なのでは?みたいな空気があったりするじゃないですか。だから、生理が来る側からも言っていくことがすごく大事だなと思う」と実感を話す。
その上で、「例えば会社でいうと、会社の中でもいろんなスタンスの人がいて、作り手でも、そういうことちょっと言わんといてくれよ、みたいな人もいると思う。言いたくない人は言わなくていいと思うんですね。でも、言わなきゃいけない瞬間があったり、自分が言いたくないって思わされてしまってるみたいなことがある。ドラマでも、記事でも、日常のオフィスでも、家族同士でもとにかくいろんなところにいろんな話しやすさの選択肢を一つでも増やしていくってことが大事かなと思うので、それに注力していきたいなって思ってます」と力を込めた。
自分を含め、身近な人たちの生理の話から今回の企画を立ち上げた家冨プロデューサーは、「最初の企画書に『生理』と書くことにためらいがありましたが、みんなと一緒に作品を作る中で、当たり前に何の恥じらいやためらいもなくなりました。生理やPMSの話をしていると、やっぱり現場が優しい。相手の気持ちを思いやるっていうことが当たり前にある現場っていうのは、これだけ尊いのかっていう発見がありました。(今回生理を扱ったドラマを制作したことで)個人的な感覚に基づく作品を作ると、もしかしたら非難されるかもしれないという恐れが製作者にはありますが、逃げずにやりたいなと思って、脚本の言葉一つとっても、監督と緊張しながら最後まで作りました。覚悟を持って、個人の顔を出して、ちゃんと作っていくっていう物作りが、でもこれから増えるような気もしますし、作り方が変わっていくというか、多様になってくことが大切だと思います」と述べた。

さらに、コムアイは「生理の話をしなきゃいけないっていうのは、話をしなければ、どうにもいかないことがいっぱいあるからなんですよね。一緒に仕事をしていたり、授業を受けていたり、例えば体育も、普通にできないこともあるし。休めばいいかっていうと、そうでもなかったりして、気遣ってもらえたり、状況が分かってもらえてたら、できることもあったりするんですよ。生理に関わる人みんなで考えればどうにかなることが多いので、だからみんなで話したいし、共有したい。これは本人だけの問題にしておくっていうのじゃなくていいと思ってるので、そういう意識で今回の番組が必要だと思ってます」とアピールした。
そして、ドラマの脚本を務めたペヤンヌマキ氏からは、「“ここが勝負だ”と思った時に、体が絶不調になることは、誰もが経験があるのではないでしょうか。このドラマの主人公の女性にとってはそれが生理やPMS(月経前症候群)ですが、人によっては、大きなけがかもしれない、精神の不調かもしれない、思いもかけない事故かもしれないし、加齢によるものかもしれない。目に見えるものもあれば、見えないものもある。『なんでこんな時に!』。頑張りたいけど頑張れない、努力ではどうにもならない時に、1人で苦しむのではなく、何かほかにできることは本当にないのだろうか? そう思ってこのドラマを書きました」と作品へ込めた思いが届いている。
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