東京パラリンピックの競技を解説【パワーリフティング】隆起する胸、肩、腕の筋肉…わずかな時間にすさまじい力を集中させ、限界に挑む2021/08/18
パワーリフティングはバーベルを持ち上げ、その重量を競うという点はオリンピック競技のウエイトリフティングと同じ。ただし、種目が異なり、通常はバーベルを肩に担ぎ屈伸を行う「スクワット」、ベンチ台の上に仰向けに横たわりバーベルを胸につけて挙上する「ベンチプレス」、床に置いてあるバーベルを引き上げる「デッドリフト」の3種目の合計挙上重量を競う。パラリンピックではベンチプレスのみが行われ、下肢または腰に障がいがあり選手が出場する。
パラリンピックの正式競技になったのは1964年の東京大会から。当時はウエイトリフティングという名称で行われ、脊髄損傷の男子選手のみが出場した。1988年ソウル大会から現在の名称に変更され、脳性まひ、下肢欠損など、対象になる障がいも拡大された。2000年シドニー大会からは女子種目も追加。今大会は体重別に男女各10階級が実施される。障がいの内容や程度によるクラス分けはない。
ウエイトリフティング同様、3回の試技で最も重いバーベルを挙げた選手が勝者となる。選手の入場からバーベルを構えるまでの時間は2分間と定められ、選手たちはその間に専用のベンチプレス台に上がり、集中力を高める。一般のベンチプレス競技では足を床に着けた状態で行うが、パラリンピックでは足も台に乗せた状態で行われ、足を踏ん張ることができない。バランスを保つため、足をベルトで固定する選手もいる、フォームには規定があり、まず、ラックから外したバーベルを腕が完全に伸びた状態で支えた後、審判の指示で胸の位置まで下ろして一旦止める。その後、左右のプレートを傾けず同じ高さに保ち、腕を真っすぐに伸ばしながら元の位置まで一気に押し上げて静止し、主審が合図をしたらバーベルをラックに戻す。バーベルを胸まで下げ、持ち上げるまでに要する時間は3秒。わずかな時間にすさまじい力を集中させる選手たちのパフォーマンスと、隆起する胸、肩、腕の筋肉が見ものだ。ちなみに、前回2016年リオデジャネイロ大会の男子最重量級で生まれた世界記録310kgは、ほぼ同条件で競技を行う健常者の記録を超え、“人類最高の記録”と称賛された。今大会でも人類が新たな限界を突破する瞬間を目撃できるかもしれない。
リオデジャネイロ大会は中国、イラン、エジプト、ナイジェリアなどアジア、アフリカ勢が強さを発揮。日本からは男子3人が出場し、49kg級の三浦浩が5位、88kg級の大堂秀樹が8位に入賞した。今大会は3大会連続出場の三浦、この競技初の女子代表となった坂元智香ら計4人が出場。日本勢初のメダルを目指し、自らの限界に挑む。
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