井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン2025/02/13
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_09.jpg)
テレ東ほかで放送中の井之脇海と金子大地がダブル主演を務める水ドラ25「晩餐ブルース」(水曜深夜1:00)。現在、TVerで第1〜4話までが配信中だ。本作のプロデューサーであり、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称:チェリまほ)」や「SHUT UP」(ともにテレ東系)などの話題作を手がけてきた本間かなみ氏が、制作秘話や詰め込んだこだわりなどを語った。
“見返すべき”名シーン7選
――TVerでは現在、本作の第1~4話までを配信中です。まずは、それぞれのエピソードで特にこだわって作られたシーンや、注目ポイントを教えてください。
「社会で頑張っている人たちへのエールになればいいなと思って作っている作品なので、全話共通して、私たちが生きている世界と地続きの物語として捉えてもらえるよう意識して制作しています。毎回作品のファーストシーンとなる第1話の冒頭はこだわって作っているのですが、今回は仕事に向かっていく戦士たち、その閉塞感のようなものをイメージして作ったシーンでした。第1話では、洗い物をしながら優太がポツリポツリと話し始めた今日の出来事を、耕助が事情も分からないのに『いいよ、聞いてる』と言いながら受け止めるシーンがあります。あの『いいよ、聞いてる』というセリフからは耕助のパーソナルな部分が見えますし、さらに、誰かと一緒に食事の時間を過ごすこと、ただ自分を受け止めてくれる人がいる尊さが伝わったらいいなと思って作りました」
――第4話では、その第1話での耕助の料理が、実は耕助にとって久しぶりの自炊だったことが明らかになりましたね。
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_08.jpg)
「第1話で耕助が料理を作る時、エプロンをつけてから『よし』と言っていましたよね。あれは、実は久しぶりに料理を作る緊張や気合が入り混じった『よし』だったんです。もう一度第1話を見てもらうと、あのシーンから読み取れるものが少し変わってくると思います」
――第2話と第3話についてはいかがでしょうか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_07.jpg)
「第2話の、優太が耕助に“仲間宣言”するシーン。うそをついている耕助にどう寄り添えるか考えての精いっぱいの気持ちを、『俺らも、仲間だよな』という一言のセリフに込めました。それを言うまでの優太の表情も最高なんですが、言葉を受け取った時の耕助の表情がすごくすてきで。現場で見ていて、グッときてしまいました。監督に『ここは耕助のワンショットも撮ってください!』とお願いしたくらいです(笑)。第3話は、蒔田葵(草川拓弥)のくすぶりが見え隠れする回。公園のベンチを眺めて過去の自分を思い出し、それを振り切るようにスマートフォンを開くシーンがあるのですが、台本上のト書きには『自分で自分の回想を振り切る』としか書かれていませんでした。ここのお芝居はどうなるんだろう?と気になっていたのですが、草川さんがとても繊細ですてきな表現をしてくださったので、視聴者の皆さんにもそこに注目していただきたいです」
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_06.jpg)
――本間さんや周囲の方の経験談などを反映させた部分はあるのでしょうか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_05.jpg)
「次から次へと仕事が舞い込んで、さばけているか、さばけけていないのかも分からなくなっている部分ですね。降りられないランニングマシーンに乗せられているような焦燥感は、優太を通して描けたらいいなと思っていました。また、第4話にあった、上野ゆい(穂志もえか)の『私が女だからダメなのか、頑張り方が間違ってるのかとか、いろいろ考えたけど、たぶん私が私だからダメなんだよね』というセリフ。これは、自分の経験をベースにしたところがあります。テレビ業界に限らず、女性やホモソーシャルになじめない人が男性社会で生きていく時、自信をなくす瞬間はおそらく何度もあると思うんです。本当は根深い構造のせいで理不尽に奪われているだけでも、自分自身に問題があるとか足りないって思わされてしまう。どんな仕事をしていても心を寄せられるよう、“接地面の広さ”は意識しました」
――撮影の小道具、セットなどに関しての狙い、こだわりがあれば教えてください。
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_04.jpg)
「耕助の部屋は、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』で美術を担当してくれた伊藤圭哉さんにお願いをしました。伊藤さんの美術デザインには温かみがあり、ちゃんとそこに“人が生きている”ような、手触り感のあるいとおしいお部屋にしてくれました」
――料理シーンやレシピに関してはいかがでしょうか?
「冬に食べたくなるものをネットでリサーチして、ストーリーと関連性のあるものを探りながら決めていきました。第2話に登場するグラタンにカボチャとズッキーニを入れたのは、二つともウリ科の仲間だからです。先ほどお話しした『仲間宣言』の言葉のトリガーになる何かを探していたのでぴったりだと思い、さらにグラタンに入れたらおいしそうだと思い(笑)。そういうふうに、ほかのエピソードに関してもレシピを決めていきました」
――では、本間さんが特にお気に入りの料理は?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_03.jpg)
「第1話に登場したポテトサラダです。ジャガイモが雪のようにふわふわしていて、さらに、そこに落とされるマヨネーズも天使みたいでかわいいんです! 今のところ、それが一番のお気に入りです。フードスタイリストの飯島奈美さんが作る料理はどれもおいしかったのですが、今回、カメラマンで鈴木陽平さん、照明で鈴木馨悟さんとCM業界でも活躍するお二人が入ってくださり、料理のおいしさがより伝わるように撮影してくださいました」
オリジナル作品の「晩餐ブルース」が生まれたきっかけ
――「晩餐ブルース」はオリジナル作品ですが、企画のアイデアは何から生まれたのでしょうか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_02.jpg)
「私自身、心のバランスを常に健やかに保てるタイプではなく、そんな自分が嫌いでした。でも、弱い部分、暗い部分を拒否して、否定して…の繰り返しに疲れてしまって。そんなことをしたって、弱い部分・暗い部分はなくならない。『このまま弱さや暗さと一緒に生きていけたらいいな』と思ったことが、企画の出発点でした。そんな中で、学生の貧困や女性への性暴力を描いたドラマ『SHUT UP』を作っている時、ホモソーシャルについて考える時間があって。ホモソーシャルを解体できるような、男性同士がケアし合う作品ができたらいいなと、なんとなく思っていました。登場人物の性別をどうするか考えた時、その思いを掛け合わせたら、ホモソーシャルにあらがえる作品にできるのでは、と思って『晩餐ブルース』が出来上がりました」
――これまでのインタビューなどでも語られていた「男性同士がケアする話を手がけたい」という思いが実現したのですね。
「『SHUT UP』は作品の性質上、女性にとっては当事者性の高い作品で、見る負担の大きい作品だったと思うんです。なので、『晩餐ブルース』は女性視聴者の方に負担を感じずに見ていただける作品を目指しました」
――主人公・優太の職業をドラマディレクターにしたのは、自身に当てはめてのことだったのでしょうか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_01.jpg)
「物語を作るにあたり仕事のディティール描写が大切な作品ですが、準備期間が短い作品でした。他業種を取材することを考えると、時間が足りないなと。そこで、自分が見えている世界から話を広げられることもあって、身近な職業を選択しました。あとは最近、使い捨ての消費物のようにコンテンツが量産されている風潮にも思うところがあった…というのもあります」
――SNSの反応を見ても、どの職業の人にも「こういうことあるな」と感じられる作品になっていると思いました。何か工夫された点はありますか?
「『日常の一部として、淡々と描写すること』です。悲劇的、同情的に捉えず、“ただの日常の一部”の温度感で描いていこうというのは、脚本の段階から心がけていました。何か大きな出来事をチョイスするのではなく、日々私たちが『大丈夫だ』と乗りこなせてしまう程度のもの、だからこそ気付かないうちに蓄積してしまう痛みや、ささいなすり減りを意識して作っていきました」
――その認識は、キャストの皆さんにも共有されたのでしょうか?
「私が直接キャストにディレクションすることはないので、監督と共有していました。つらい時につらい顔をしない、しんどくても笑えるし、全然大丈夫。自分の痛みや感情に無自覚であってほしい。だけど、本当はこれってちょっと痛いやつだよね…ということが伝わるようにしたいよね、と話していました」
プロデューサーから見たキャスト陣の魅力
――本間さんから見て、キャスト陣の印象はいかがでしたか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_13.jpg)
「井之脇さんは、とても真面目な方。金子さんはムードメーカーで、現場を盛り上げてくれました。一時期カリカリ梅にハマっていたみたいで、大量に差し入れてくれて、スタッフ間でもカリカリ梅ブームが巻き起こったことがありました(笑)。草川さんは『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』でもご一緒させてもらいましたが、周りを見つつも、自分のペースを大事にする方だという印象です」
――そんなすてきな3人のお芝居の魅力をおうかがいします。まず、井之脇さんはいかがでしょうか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_12.jpg)
「他作品を見ていて、井之脇さんはチャーミングなお芝居をされる方だなと。表情を動かしてお芝居のアプローチをするのが達者で、そこが彼のすこやかさ、ほがらかさのイメージにつながっていると思いました。その一方で、優太のような役柄でフラットなお芝居をされた時にも、伝わってくる情報量がとても豊かなんです。別に言葉を発さなくても、ただ立っているだけでこちらに訴えかけてくるものがあると感じました」
――金子さんはいかがでしょうか?
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_10.jpg)
「金子さんは、感情がふれる瞬間のお芝居がとても魅力的。心が動く音が聞こえるような、ハッとさせられる瞬間がありました。耕助は内省することの多い難しい役どころだったと思うのですが、相手の言葉に細かく繊細に反応してくれて、その絶妙な表現が本当にお上手なんですよ。ドラマは作り物ですが、金子さんを通すとうそがない、本当になるというか。誰が相手でもどんな場面でも、シーンのトーンのダイヤルは金子さんが握っていたように思います」
![井之脇海&金子大地「晩餐ブルース」のプロデューサーが明かす“見返すべき”名シーン](https://www.tvguide.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/ott_250214_01_11.jpg)
――草川さんはいかがでしょうか?
「草川さんの演じる葵も、難しい役だったと思います。優太と耕助とは違って自己開示があまり得意ではない性格で、だからこそ周りには明るく振る舞うキャラクターなのですが、周囲の雰囲気に引っ張られることなく、役としての軸をぶらさずに葵の足で立ち続けてくれる。先ほどお話しした『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』と『SHUT UP』でもご一緒させていただきましたが、今作で初めて見る表情もたくさんあって、あらためてすてきな役者さんだと思いました」
本間プロデューサーが目指す“ドラマの形”
――「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」や「SHUT UP」など、これまで手がけられた作品の中で、本間さんが大事にしていることは?
「ドラマはフィクションでありエンタメだけれど、“社会と地続きであること”というのは大事にしています。あとは自分がドラマや映画に励まされたり救われたりしてきたので、自分が作る作品も、誰かにとってそうなれたらいいなというのは思って作っています」
――「晩餐ブルース」の制作を通して見えてきた、“これから挑戦したいこと”があったら教えてください。
「この作品で、ということではないのですが、いつも作品を作る時に、“社会性とエンタメ性の両立”みたいなものを目指しているつもりです。エンタメ性という部分で私には足りないものがある気がしていて、そこをもっと磨いていきたいですね」
――本間さんの言うところの“エンタメ性”とは?
「見終わった後、シンプルに“面白い! 何これ!”となれることです。『SHUT UP』の場合、その社会問題に対してアンテナを持っている方は熱を持って見ていただけたかもしれませんが、そういったアンテナがそこまで立っていない方にも楽しんでもらえたのか?と考えることがありました。その社会問題に関心がない人が見ても楽しめて、ドラマを楽しんでいるうちに社会性にアンテナが向くというのがエンタメの力だと思うし、私の理想とする形です」
――ヒットコンテンツを次々と生み出してきた本間さんにとって、地上波放送と配信に関しては、どのように捉えられていますか?
「私自身、配信をとても活用させてもらっています。特にテレ東は、地上波放送では見られない地域のある放送局なので、TVerのおかげで全国の方に見てもらえるチャンスを与えてもらっていて、本当にありがたいですね」
――これから「晩餐ブルース」をご覧になる方へ向けて、メッセージをお願いいたします。
「人生につまずいた大人たちと、おいしいご飯が出てくるドラマです。せわしない日々の中で、頑張っている自覚がないまま頑張り続けている人が、立ち止まれるような場所になれたらうれしいです」
【プロフィール】
本間かなみ
派遣社員での勤務を経て、2022年テレビ東京入社。ドラマプロデューサー。これまでのプロデュース作品は、ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」「うきわ―友達以上、不倫未満―」「今夜すきやきだよ」「SHUT UP」など。
【コンテンツ情報】
「晩餐ブルース」
テレ東ほか
水曜深夜1:00~1:30
※第1~4話までTVerで配信中(2025年2月13日時点)。
第1話 躓いた大人の“晩活”スタート
第2話 かぼちゃとズッキーニのほくほくグラタン
第3話 ぐつぐつキムチ鍋&熟考アイス
第4話 カリじゅわ唐揚げ
この記事をシェアする