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“天才監督”グザヴィエ・ドランが初ドラマ作品「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」を語る2023/02/24

グザヴィエ・ドラン「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」/海外ドラTVガイドWATCH

 カンヌ国際映画祭において「Mommy/マミー」で審査員賞、「たかが世界の終わり」でグランプリを受賞したグザヴィエ・ドラン。そんな彼が、自身初挑戦となるテレビドラマ「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」で、30年前に起きた事件とそれにかき乱される家族の姿をサスペンスフルに描き出す。脚本・監督・製作・出演を務めたドランに、本作への思いを聞いた。

── 19歳で長編映画監督デビューして以来、初めてのテレビドラマ作品ですね。

「子どもの頃に見ていたティーンドラマや、初めて一人暮らしをしたアパートでむさぼるように見ていた数々の映画の中でも、ホラーやスリラーはいつも私を夢中にさせてくれました。折に触れて自分も思い切って挑戦してみようかと思いましたが、当時の自分はまだ一歩踏み出す自信を持てずにいました。これまではどちらかといえば母親と息子の親子関係、家族間の確執、疎外された人々といったテーマを中心にしてきました。人は自分が知っていることを描くものだと言われますが、10年の月日を経て、私自身も変わっていくのを感じていました」

── 原作となっている同名の舞台劇を見た時の感想は?

「性的暴行を受けた1人の少女が、30数年後に家族のもとを訪れる姿を描いたミシェル・マルク・ブシャールの舞台を観劇した時、まさに自分のやりたいことが目の前に繰り広げられていると思いました。ミステリーとホラーが融合した家族劇を見ながら、1時間も経たないうちに私はすでにこの物語のシリーズ化をイメージしていた。舞台で描かれているすべてのエピソードや過去と現在の結びつけ方を、映像でどう描けばいいのか思い描いていました。さらに、結末に大きな衝撃を受け、自分の次回作にこの作品以外は考えられないと確信しました」

グザヴィエ・ドラン「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」/海外ドラTVガイドWATCH

── 本作のジャンルを教えてください。

「『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』は、ホラーとスリラーの要素が強く出ているように見えますが、ヒューマンドラマも描かれています。ラルーシュ家の幸せだった日々、憂鬱な日々、過去のいくつもの過ち、彼らの行く末を決めることになった数々の出来事がつづられています。登場人物たちがこれまで頑なに守ってきた秘密が暴かれることによって、闇に包まれていた悪夢もよみがえります。それは夜見る夢などではなく、彼らの心の傷をえぐり出し、たとえ明るい日差しの中にいても容赦なくつきまとう悪夢なのです」

── 本作を通して、視聴者にどんなメッセージを感じ取ってほしいですか?

「このドラマには、人間の暴力性のほかに、逆境、恥、憎しみなどに直面した時、それらに屈したことで受けた虐待などが描かれています。しかし大部分に描かれているのは、われわれもかつては子どもだったこと、そして、虐待に直面し、どんな大人になったのかということです。そこには真実から目を背けるために受け入れてしまった歪んだ依存心、うそ、誤った信念などが描かれているのです」

【プロフィール】

グザヴィエ・ドラン「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」/海外ドラTVガイドWATCH

グザヴィエ・ドラン Xavier Dolan   
1989年3月20日生まれ。カナダ・ケベック州出身。子どもの頃から映画やドラマに出演し、19歳で発表した「マイ・マザー」(2009年)で監督デビュー。出演映画「幻滅」(21年)が4月14日公開。

【番組情報】

グザヴィエ・ドラン「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」/海外ドラTVガイドWATCH

「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」(全5話) 
スターチャンネル1 
3月6日スタート 
月曜 午後11:00~深夜0:15ほか(字幕)
※3月5日午後9:00から字幕版・第1話先行無料放送

ラルーシュ家の母が危篤になり、約30年前に町を離れた長女のミレイユ(ジュリー・ルブレトン)が帰郷。長男のジュリアン(パトリック・イヴォン)、次男のドゥニ(エリック・ブルノー)、薬物のリハビリ施設から出所したばかりの末っ子のエリオット(グザヴィエ・ドラン)ら家族が集まる中、葬り去られていたうそと秘密が暴かれていく。



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