「IT’S A SIN 哀しみの天使たち」主演のオリー・アレクサンダー。「ゲイとして共感できた」2021/08/24
1980年代のイギリスを舞台に、エイズに翻弄されるゲイの若者たちを描いた「IT’S A SIN 哀しみの天使たち」。主人公のリッチーを演じたのは、自身もゲイでありミュージシャンとしても活躍しているオリー・アレクサンダー。彼が本作の見どころを語ってくれた。
── 演じた役柄について教えてください。
「リッチーはワイト島生まれで、頭がよく自信にあふれている家族の期待の星だ。次々と男性と寝て人生を謳歌していて、夢は役者になることと常に大きな夢を抱いている。この作品で描かれるのは自分が何者かを模索する若者たちなんだ。彼らが選んだ道や愛する人たち、出身地や家族などそれらすべてが自分探しに関わってくる」
── そんな若者が、エイズに翻弄されていくんですね?
「この作品の物語が重要だと思う理由は、僕自身ゲイとして初めて知る歴史が描かれているから。心の傷や恥、困惑など多くの感情が入り混じっている。だから脚本を読んだ時、主人公たちの恐怖や困惑、個性を模索する姿にゲイとして共感できた。それに、エイズ危機が何百万もの人たちに与えた衝撃は無視できない。過去の恥や心の傷を隠したいのが本心だと思うけど、忘れてはいけないんだ。何が起きたのかを理解するように努め、失った人たちや彼らを支えた人たちに敬意を払うべきだと思うんだ」
── 脚本を読んで、どんなところが気に入りましたか?
「この作品で描くのは、愛する人たちに分かってもらおうともがく人たちで、だから誰もが共感できる物語になっている。僕が深く感銘を受けたのは、人生で最も苦しくつらい時にこそ、最も美しく長い関係が築けるということなんだ。この作品に登場する人たちの力強さ、勇気や人間性は当時の人たちをよく反映している。それを認識することがとても重要だと思うよ。また、興味深いと思ったのは、エイズという新しい病気が登場した時、膨大な量のデマやゴシップやうわさが飛び交ったこと。どんな病気かも発生源も分からず誰もがひどく混乱した。今は簡単に大量の情報が手に入るけれど、現在でも同じことが起こるんだよね」
── 撮影はいかがでしたか?
「この作品の一番いいところは、現場にいる全員で仕事に取りかかることだ。出演者は仲が良く、スタッフは最高。本当に素晴らしい人たちが集まり、時に厳しい撮影に臨んでいた。僕にとって大切なのは一生懸命演じることだ。限られた時間で協力し合って素晴らしいドラマを作った。その中に僕がいたなんて本当に信じられないよ」
── 脚本家のラッセル・T・デイヴィスは、実体験を基に書いたそうですね。
「ラッセルが新しいドラマを製作すると聞き、すぐに興味が湧いたんだ。彼自身も彼の作品も素晴らしく、僕の人生にも大きく影響した。14歳の時に見た『QUEER AS FOLK』は自分を見つめるきっかけになった作品。だから新しい作品を読むのが待ちきれなかったし、読んだら見事な作品で迷うことなく出演を決めたんだ。ラッセルの経験談はとても興味深かった。彼や友人の体験が脚本に詰まっているよ。LGBTQコミュニティーにとって激動の時代で、それを理解するため撮影前に1週間リハーサルをして彼から助言をもらったんだ。当時を知らない僕ら出演者には、当時の様子を理解する必要があったんだよ」
── LGBTQの人たちの権利は進歩したといえますか?
「まだ世界的に見ると、LGBTの人の人生は人や出身地によってさまざまだ。ここ数年、自分のバンドと旅をして英国や世界中のコミュニティーについて調査しているけれど、自分として生きているだけで差別や迫害され苦しんでいる人たちが多くいる。それが現実なんだ。これまで飛躍的な進歩を遂げてきたけれど、まだやるべきことがたくさんあるよ」
【プロフィール】
オリー・アレクサンダー Olly Alexander
1990年7月15日生まれ。イギリス出身。映画「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」(2014年)などに出演。エレクトロバンド、Years&Yearsの活動で知られ、LGBTQ+アクティビストとしても活躍している。
【番組情報】
「IT’S A SIN 哀しみの天使たち」(全5話)
9月15日スタート
スターチャンネル1
水曜 午後11:00~深夜0:00ほか(字幕)
※9月12日に第1話先行無料放送
同性愛者のリッチー(オリー・アレクサンダー)は、知り合った仲間と共にロンドンのアパートで共同生活を始める。さまざまな葛藤を抱えながらも楽しく暮らしていたが、エイズの感染が急激に拡大し、仲間がエイズに倒れ…。
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