羽生結弦選手「自分の最大の夢に向かって――」。 新シーズンの幕開けを告げる「ドリーム・オン・アイス2021」が開催!2021/07/12
フィギュアスケート’21-’22シーズンの幕開けを飾るアイスショー「ドリーム・オン・アイス2021」が、7月9~11日に神奈川県・KOSÉ新横浜スケートセンターで開催されました。今回は、その初日公演の模様をリポートします。
神宮アイスメッセンジャーズによるシンクロナイズドスケーティングから、ショーがスタート。続いて、名前を呼ばれた出演選手たちが1人ずつ登場し、ステップやジャンプで観客にあいさつを。そして、最後に名前を呼ばれたのは、羽生結弦選手。白いTシャツ姿で、軽やかなステップや、優美なハイドロブレーディングを続けて披露しました。そして、羽生選手に呼び込まれるように、再び選手たちが勢ぞろい。迫力の群舞でオープニングを締めくくりました。
第1幕、「皆さん、楽しんでますかー!?」と、とびきり元気な呼びかけで登場した友野一希選手は、今シーズンのショート「映画『ニュー・シネマ・パラダイス』より『愛のテーマ』」を披露。’18-’19年のショートプログラムでも演じた曲ですが、しなやかな上半身の動きや奇麗なフリーレッグなど、随所に大きな進化が感じられました。コミカルなプログラムでエンターテイナーとして知られる友野選手は、優しく柔らかな表現も抜群。完成形を見る日が待ち遠しくなります。
第2幕の2番手で登場したのは、佐藤駿選手。「夏を感じてもらいたい」という新ショート「四季より『夏』」は、美しいブルーの衣装が氷上によく映えます。4回転ジャンパーとして知られる佐藤選手は、シニア1年目のシーズンを経て、表現面も大きく成長。指先まで行き届いた演技で、美しいバイオリンの旋律を見事に表現しました。今シーズンは、いよいよシニアグランプリシリーズデビュー! 伸び盛りの17歳に注目です。
田中刑事選手の演目は、’21-’22シーズンのショート「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』より『Paris』」。演技前のコメントで「好きな作品、好きな曲を滑るので、思う存分表現したいです」と語った田中選手は、低音が効いた独特の曲調を体全体を使ったダイナミックかつ繊細な動きで巧みに表現しました。町田樹さんとの「継承プロジェクト」ではダンディーなパリジャンになり切り、大きな話題を呼んだ田中選手。今後のさらなる進化に期待が高まります。
スーツ姿で登場した鍵山優真選手は、’21-’22シーズンのショート「When You’re Smiling」をお披露目。マイケル・ブーブレのナンバーに乗せた大人の雰囲気ただようプログラムで、観客を魅了しました。鍵山選手の軽快なスケーティングとジャズの音色の調和は必見です。「全力で自分らしさをアピールできるように、たくさん笑顔を増やせるように、自分も楽しんで滑ります」とコメントを寄せた鍵山選手。さらなる成長に期待しましょう!
そして、大トリは羽生選手。「今日この場所に、今の自分が持てるすべてのエネルギーを、スケートに込めます」というコメントとともに登場した羽生選手は、「ファンタジー・オン・アイス2019」で演じたエキシビションナンバー「マスカレイド」を披露。手を挙げて跳ぶアクセルや、しなやかなレイバックスピンなどの高難度の技を複雑なつなぎの中に溶け込ませ、音の一つ一つを見事に表現。さらに、洗練された「マスカレイド」で、観客の心を幽玄の世界に引き込みました。「今シーズンは、自分の最大の夢に向かって全力で努力していきます」と語った羽生選手に力を送るように、観客から割れんばかりの拍手が送られました。
フィナーレでは、選手たちが再集結し、スピンやジャンプを披露。その姿を体を揺らしたり、歌を口ずさんだりしながら応援していた羽生選手は、最後にリンクの中央へ。美しいイナバウアーなどで、観客を魅了しました。そして最後は、小さくお辞儀をしたり、応援バナーを見てうなずいたり、2階の観客席へ手を振ったりと、観客一人一人に思いを伝えるかのようにリンクを周回しました。
ショー終了後に行われた記者会見から、羽生選手のコメントを紹介します。
――6年ぶりに「ドリーム・オン・アイス」へ出演することを決めた理由は何でしょうか?
「やはり、『皆さんの前で滑りたい』という気持ちが強くありました。昨年アイスショーが無くて『もっと皆さんの前で滑りたかったな』と思ったことと、昨シーズン、試合に出るたびに思った、『自分が演技することで何か、誰かの役に立つんじゃないか』『何かを感じていただけるんじゃないか』とか…皆さんのために、少しでも多くの場所で、機会で滑りたいなと思い、今回『ドリーム・オン・アイス』に出させていただきました」
――今日はパワーをもらえましたか?
「もちろん、僕自身はたくさんいただきました。その力をまた演技に変えて、皆さんにまた違った形で恩返しできたらなと思っています。今は、既に一公演でヘトヘトですけど(笑)、少しでも皆さんの、何かの感情のきっかけになったらいいなと思います」
――4回転アクセルの練習状況について教えてください。
「僕の中では久しぶりに1日2公演あるアイスショーですので、このアイスショーに焦点をしぼって練習しなくてはいけないなと思って、そこまで4A(4回転アクセル)の練習はできていません。ただ、昨シーズン頑張ってきた体をいたわりつつ、アクセルの基礎の練習など、4回転半に向けてイチから作り直す作業をしっかりできたら。これからシーズンに向けて、本格的に練習していきたいと思っています」
――’21-’22シーズンのプログラムについて教えてください。
「(ショートの)曲は決まっています。実際にまだ音源はできていないですし、まだ発表できません。(フリーは?との質問に)『天と地と』を継続したいなと思っています」
――グランプリシリーズへの出場を決めた理由を教えてください。
「試合の機会がないと、やはり4回転半を決めても意味がないと思いますし…。『試合で決めたいな』という思いが強くあって、『その機会を少しでも持てたらいいな』という思いで、グランプリシリーズに出場させていただくことを決めました」
――NHK杯とロシア杯に出場することを決めた理由を教えてください。
「NHK杯が決まった段階で、必然的にロシアになるか、カナダになるか、中国になるか…みたいな感じだったので。僕は世界選手権3位なので、決定権は特になかったです」
――あらためて、北京冬季五輪についてどう考えていますか?
「平昌五輪シーズンのように『絶対に金メダルをとりたい』という気持ちは特にありません。ただ『必ずこのシーズンで、4回転半を決めるんだ』という強い意思はありますので、その決意を持って今シーズンに挑みたいなと思っています」
――五輪はその先にあるものということですか?
「道の中にあるのであれば。ただ先ほども言ったように、平昌五輪シーズンだったり、ソチ五輪シーズンだったり、その時のような熱量はないなというふうに自分では思っています」
――今日の演目に「マスカレイド」を選んだ理由を教えてください。
「なかなかこのプログラムを演じる機会がなかったですし、あの時とは違って、もっと大人になって…。もっと表現したいことだったり、もっと客観的に感じてもらえるものが、この世の中だからこそ増えたのではないかなと。自分の中で『演じたいな』と思って、このプログラムにさせていただきました」
――今季の練習拠点はどこになるんでしょうか?
「まず、カナダに帰るためにはちょっと大変な手続きがあるのと…可能か不可能か、自分の中で確証がないので分からないんですけど。とりあえず自分の中では、昨シーズンの経験を踏まえて、『日本で、1人で練習しても成長できるんだ』ということを感じているので、今のところカナダに帰ることは考えていません。ただ、振り付けに関してはリモートで行おうかなと今のところ考えています」
――東京五輪が東京都では無観客開催になることが決まりました。
「僕は選手の立場なので、観客の方々が直接、声援を送っていただけるとか、(会場に)足を運んでいただけるとか、そういったことに声を上げることは、僕にはできないんじゃないかなと思っています。ただ、選手の立場から言わせていただけるのであれば、五輪は選手にとっての夢の舞台だと思います。その舞台で一生懸命やることには変わりないと思いますし、こんな時だからこそ、僕らだったら“演技”って言っちゃうんですけど、こんな時だからこそ生まれるレースであったり、こんな時だからこその感動が生まれるのではないかなと思っています」
インタビューを終えた羽生選手は「ありがとうございました!」と大きな声であいさつし、深くお辞儀をして会場を後にしました。フィジカルディスタンスを保つため、インタビューは羽生選手と記者たちの距離が20mほど離れていましたが、その声ははっきりと記者席まで届きました。
いよいよ’21-’22シーズンが開幕したフィギュアスケート界。それぞれの夢に向かって突き進む選手たちを、今シーズンも全力で応援しましょう!
撮影/小橋城
【番組情報】
「羽生結弦 鍵山優真 紀平梨花 坂本花織出演 フィギュアスケート Dreams on Ice 2021」
TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
7月24日 午前11:00~午後3:00(2日目昼公演)
7月25日 午前11:00~午後3:00(2日目夜公演)
7月31日 午前11:00~午後3:00(最終日公演)
8月21日 午前10:00~午後2:00(2日目昼公演)
8月22日 午前10::00~午後2:00(2日目夜公演)
8月29日 午前10:00~午後3:00(最終日公演特別版)
【最新雑誌情報】
「KISS & CRY 2020-2021シーズン総括&2021-2022 光のシーズン展望号」
(表紙・巻頭特集:羽生結弦選手/KISS&CRYシリーズVol.39)
発売中
https://honto.jp/netstore/pd-book_31024204.html
「KISS&CRY」とは?
「KISS&CRY」シリーズは、日本のフィギュアスケーターの皆さんをフィーチャーし、その「戦う」姿、「演じる」姿を合計50ページ超のグラビアでお届けしています。つま先から指先・その表情まで、彼らの魅力を存分に伝えます。また、関連番組テレビオンエアスケジュールも掲載。テレビの前で、そして現地で応援するフィギュアスケートファン必携のビジュアルブックです。
Twitterアカウント:@TeamKISSandCry
この記事をシェアする