Feature 特集

北京五輪メダリスト×パラ陸上界のニュースターの対談に密着!2019/07/31

Cheer up! アスリート2020!

 TOKYO MX1で放送中の「TOKYO LOVE SPORTS」。先日放送された回では人気コーナー「カウントダウンTOKYO」に、パラ陸上の期待の新星・兎澤朋美選手が登場。本誌はその取材現場に密着!さらに北京五輪のメダリストでリポーターの宮下純一とのスペシャル対談も。“高みを目指すこと”を知る2人の、真っすぐな言葉をお届けする。

東京大会に向けて…アスリートたちの胸の内

 総合スポーツ情報番組「TOKYO LOVE SPORTS」のコーナー「カウントダウンTOKYO」では、東京オリンピック・パラリンピックを目指すアスリートにフォーカス。リポーターを務める元競泳日本代表の宮下が先日取材したのは、パラ陸上(100mと走り幅跳び)の兎澤選手。ここでは収録を終えた2人の対談をおくる。

宮下 「練習を見させていただきましたが、ちょうどオリンピック・パラリンピックを1年後に控えて、プレッシャーで崩れていく選手も出始める中、兎澤さんはどんどん上がっている。伸びしろがたくさんある上に、この段階で記録を持っている状況っていうのは、すごくプラスですし、いいなと思います」

兎澤 「ありがとうございます。宮下さんは北京大会(2008年)に出られていらっしゃいますが、その1年前はどうでしたか?」

宮下 「僕はアテネ大会(04年)の選考会の時、2番までに入れば選ばれたところ、3番で落ちてしまって。次の北京は絶対出場したくて目指していたんだけど、結局3年間、記録が止まったままオリンピック選考会を迎えてしまった。だから前年の10月頃は、『なんで俺、北京を目指すって言っちゃったんだろう』って思うぐらい辞めたくて…。だから今、記録が伸びている兎澤さんがすごくうらやましいなと思いました。しかも当時、僕は最年長で、高校生の入江陵介がグンと出てきた頃だったので、『なんで今出てくるんだよ』っていう(笑)。まさに兎澤さんは、周りの人たちからそう思われていると思いますよ」

兎澤 「いえいえ、私も周りの選手のことはすごく恐怖に感じていますし、急にポンッて出てくる選手もいますから最後の最後まで気が抜けません。でも、アテネまで頑張って、その後もまた4年後を目指すと決断できたのはすごいです。4年間の大変さを考えると、私だったら即答はできないだろうな…」

宮下 「やっぱり悔しかったですからね。でもそれこそ兎澤さんは小学5年生の時に、ご自身で本当に大きな決断をされたわけだから(骨肉腫を患い、左足を切断)。それを一つ乗り越えていることを思ったら、すごく先のことを考えている選手だなと思いますね」

Cheer up! アスリート2020!

 競泳と陸上。競技や立場、世代は違っても、自然と話が弾む。それは五輪という、特別な存在が2人をつないでいるからだ。

宮下 「お互い記録種目なので、自分にワクワクすることが大事だし、それが一番のモチベーションだと思いますね。自分のパフォーマンスに自分が期待できなくなったら、終わりなんじゃないかなと」

兎澤 「そう思います。やっぱり記録が出ればうれしいし、やっていることは間違っていなかったんだと思えて、次も頑張ろうってシフトしていけますよね」

宮下 「そうそう。たとえ記録が出なくても、自分はまだできるっていう期待感を持てることが現役選手としてはガソリンになる気がしますね。兎澤さん、今大学3年生でしょ? 僕は3年生で五輪を迎えたから、同じくらいだよね。僕は出られなかったけど、もちろん兎澤さんには東京も出てほしいし、その次も目指してほしいと思うけど、ただ東京からの4年間、めちゃめちゃキツイよ(笑)」

兎澤 「あははは!(笑)」

宮下 「でも頑張ってほしいな。キツイけど、やっぱり目指してよかったなって思ったから」

Cheer up! アスリート2020!

 1年後に迫った東京大会。2人にとって、どのような大会になるのだろうか。

宮下 「自分が目指していた舞台が、自分の国で行われるということは本当にすごいことだなと思います。でもそれで終わりではなく、スポーツをやりたい人が増えたり、スポーツをしている人がもっと評価されたり…そんな社会になっていくことも東京大会が果たす役目なのかなと。僕は引退した者の立場から、アスリートの皆さんのすばらしさや、その努力の裏側まで、伝えられたらいいなと思います」

兎澤 「日本ではまだ、障がい者イコール弱者だと捉えられがちですし、私自身、弱者として見られるのがすごく嫌で。そう見られないために、たくさん努力をして、すごいって思われないと弱者から抜け出せない。そういう思いで競技をしているというところもあるんです。障がいのある人でスポーツをやっている人ってまだ限られていますし、私も脚を切ったばかりの頃はそうでしたが、自分の障がいに対してマイナスな感情しか持てない人っていっぱいいると思うんです。そういう人たちに私が競技している姿を見てもらうことで、自分も何かもうちょっとできるかな、何か可能性があるかなって感じてもらいたい。マイナスな感情が少しでもゼロに近づいて、それがプラスになってくれれば私は一番うれしいです」

Cheer up! アスリート2020!
北京五輪メダリスト×パラ陸上界のニュースターの対談に密着!
Cheer up! アスリート2020!
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【パラリンピック陸上競技概要】
第1回のローマ大会から正式競技として実施されている。幅広い障がいを対象とするため、夏季大会の競技の中でも特に参加人数が多い。選手は障がいの内容や程度によってクラス分けされる。極力条件をそろえて、公平にレースをするため、そのクラスごと、もしくは近いクラスを合わせた統合クラス(コンバインド)で競技を行う。ルールはオリンピックの陸上競技と同じルールを基本とする。ただし、障がいのクラスや種目特性に応じて一部のルール変更もある。

【プロフィール】

宮下純一(みやした じゅんいち)
1983年10月17日鹿児島生まれ。天秤座。B型。2008年の北京オリンピックでは、競泳男子100m背泳ぎで8位入賞。400mメドレーリレーでは日本チームの第一泳者を務め、銅メダルに輝いた。現在は「ひるおび!」(TBS系)など、さまざまな番組でコメンテーターやキャスターとして活躍。


兎澤朋美(とざわ ともみ)
1999年1月14日茨城生まれ。山羊座。小学5年生の時に骨肉腫で左脚を切断。日本体育大学入学をきっかけに、本格的に陸上に取り組むように。2018年のアジアパラ競技大会で走り幅跳び銅メダルを獲得。今年6月開催のドイツ・レバークーゼン国際大会では、走り幅跳びと100m、どちらも、日本記録、アジア記録を更新した。

【番組情報】

Cheer up! アスリート2020!

「TOKYO LOVE SPORTS」
TOKYO MX1 
月曜 午後8:00~8:40

東京にゆかりのあるアスリート情報満載!
“東京”にこだわった総合スポーツ情報番組。トップアスリートのほか、そのアスリートを支える側のことも徹底取材。キャスターは登坂淳一、稲村亜美。今回本誌が密着した「カウントダウンTOKYO」のコーナーのほかにも、人気企画がもりだくさん。

取材・文/四戸咲子 撮影/Marcco Perboni



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