“咲”北川景子&“紘一”永山瑛太が選んだもの、そして、選ばなかったもの――最終回目前「リコカツ」植田博樹プロデューサーインタビュー2021/06/15
「離婚」。これまで数々の映画やドラマで取り上げられてきたテーマですが、時代が移り変わる中で、その捉え方にも変化の訪れを感じることが増えているのではないかと思います。単純に“不幸なもの”とする考えを見直し、それぞれの人生を送る上での選択肢の一つとして、「離婚」もある。いろいろな形の結婚生活があって良いし、それは自分たちが“選ぶ”ことができる。離婚を決意した夫婦を描いたドラマ「リコカツ」(TBS系)は、現代における結婚や離婚のあり方をあらためて見詰め直すきっかけをくれる作品です。
何度も悩みながらも自分の正直な気持ちに向き合い、行動に移した水口咲(北川景子)と緒原紘一(永山瑛太)の2人。言葉足らずなためにすれ違うこともありましたが、再び顔を合わせた2人からあふれ出たのは、相手を思い続けたからこその言葉でした。
「自分は変わる。君とやり直すために、変わる」
「……私も」
「離婚」を“不幸なもの”とする考えのままならば、2人にこんな未来は訪れなかったでしょう。離婚届が提出され、「離婚した」という現実から逃げなかったからこそ、自分が本当に大切にしたいものにもう一度向き合うことができた。社会のシステムや周りの理解、潜在的に日本に広がる価値観など、2人の努力だけではまだまだ変えられないことに直面することもあるかもしれませんが、ここからまた一緒に歩き続けることを決めた咲と紘一は、何を選び、何を選ばなくなっていくのでしょうか。
本作を手掛ける植田博樹プロデューサーは「『サザエさん』(フジテレビ系)が日曜の夜に放送されていることで、無意識のうちにいろんな家族が『うちの家族は“普通”じゃないのかな』という悩みを抱えてしまっているのが今の日本なんじゃないかなと感じています」と提起します。
「『サザエさん』は素晴らしい作品ですが、どうしてもそれが僕の中で根本的なテーマとして存在していて。『リコカツ』で伝えたいのは、“『サザエさん』だけが正しいんじゃないよ”ということなんです」と優しく包み込み、そして作品に込めたメッセージが1人でも多くの人に届くことを願うかのように「『リコカツ』では、“何が正しいかは自分たちで決めるんだ”という部分を大事にしています」と力強く呼び掛けます。
“何が正しいかは、自分たちで決める”――離婚を考えているのは、咲と紘一の2人だけではありません。2人の両親である、水口家の武史(平田満)と美土里(三石琴乃)の夫婦、緒原家の正(酒向芳)と薫(宮崎美子)の夫婦も、同時期に「離婚」を選択しようとしていました。
「この2組は、バブルによって、いわゆる“新しい価値観”を刷り込まれた夫婦。自分も含めて、この世代は親子関係にすごく悩んだのではないかと感じています。例えば“友達みたいな親子っていいよね”という価値観は美土里に映し出されていますし、薫は“典型的な専業主婦”をモデルにしています。そんな2人が、この年を迎えて『このままでいいのかな』と自分の人生に楔(くさび)を打った。僕がこの2組に乗せたいメッセージは、“自分たちの価値観で生きてほしい”ということなんです。一方、武史と正は、5、6話までは本当にダメな男たちという感じですが(笑)、そこから変わることで輝きを放ち始めていると思います」。
女性関係でだらしない一面を見せる武史という役を、その手腕でどこか憎めない愛嬌(あいきょう)あるキャラクターに映るよう魅力的に演じていた佐野史郎さん。急きょ入院されることとなり、第3話からは平田満さんが武史役を務めていらっしゃいます。「平田満さんというすてきな俳優さんにバトンを引き継いでいただき、最初に考えていたプランを見直すことにしたんです。平田さんが演じることを考えながら美土里との関係を見詰め直していくと、泥臭いストーリーに仕上がっていきました」。
どうしても北川さんと瑛太さんの2人に演じてほしいとこだわりを貫き、実現に3年かかった「リコカツ」に、「120%満足しています。現場にいれることが、幸せいっぱいです」と笑顔を見せる植田プロデューサー。そんな「リコカツ」もついに最終回。
「それぞれがハッピーな結末にしたいですね。そのハッピーの形が従来の形とは限らないということを、TBSの金曜ドラマらしく盛り込んでいきたいです。仕事、転勤、家庭との両立…。コロナ禍で普及したリモートでのやりとりも含めて、“新しい家族の形”を提示したいなと思っています」。
【番組情報】
「リコカツ」
TBS系
金曜 午後10:00~10:54
取材・文/宮下毬菜
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