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「青天を衝け」演出家が語る円四郎最期の撮影舞台裏。先を想像させるよう意識、草彅剛とは一言も話さず2021/05/30

「青天を衝け」演出家が語る円四郎最期の撮影舞台裏。先を想像させるよう意識、草彅剛とは一言も話さず

 渋沢栄一(吉沢亮)を武士に引き立て、徳川慶喜(草彅剛)の腹心として一橋家を支えていた平岡円四郎(堤真一)が暗殺された第16回(5月30日放送)の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)。「尽未来際、仕える」と言っていた矢先の出来事で、慶喜の悲しみは計り知れず、雨の中号泣する姿に涙せずにはいられない回でしたね。そんな第16回の演出を担当した村橋直樹さんに撮影の舞台裏を伺いました!

――第16回は尾高惇忠(田辺誠一)が牢に入れられたかと思えば、新選組の「池田屋事件」があり、最後には円四郎が暗殺されてしまうという盛りだくさんの回でした。撮影している中で想像を超えるような手応えのあったシーンを教えてください。

「脚本の大森美香さんに熱いシーンを書いていただき、どのシーンも役者さんが想像を超えるシーンを作ってくださいましたが、中でも手塚理美さんが演じる尾高やへのシーンは印象に残っています。これまでやへの背景を積み上げていなかったのですが、惇忠や長七郎(満島真之介)、平九郎(岡田健史)ら息子たちが歴史の荒波に巻き込まれていく中での母親を、とてもうまく演じてくださいました。 息子たちが嫌疑をかけられて連れて行かれた後、部屋の中で1人たたずんで『水戸が憎い』というシーンで、手塚さんが『息子の名前を一人ずつ呼びたい』と言われて。台本になかったのですが、一人一人子どもの名前を呼んでいただきました。台本でいうと2行くらいのシーンをあれだけ膨らませて演じてくださったのが印象的でした」

「青天を衝け」演出家が語る円四郎最期の撮影舞台裏。先を想像させるよう意識、草彅剛とは一言も話さず

――第16回では、何といっても円四郎が暗殺されるシーンが衝撃的でしたが、描くにあたって堤さんと相談されたことや、心掛けたことはありましたか?

「円四郎は人生最高の時に死んだんじゃないかと堤さんとも話しまして。それを描きたくて、突然人生が途切れた形を作りたいなと思っていました。円四郎からすると、本当に予期せぬ出来事だし、目の前には明るい未来しかないという状態で死んでいくんです。最後、立ち上がってどこかに歩いて行こうとしますが、それも堤さんと話し合って決めました。亡くなる前、円四郎と慶喜が会話をしている中で、『一生ついていきます』と言うと、慶喜がほほ笑みを返してくれるというすごく満たされた中で、どう死んでいけるのかを意識して作りました」

「青天を衝け」演出家が語る円四郎最期の撮影舞台裏。先を想像させるよう意識、草彅剛とは一言も話さず

――慶喜が亡きがらとなった円四郎と対面するシーンで雨が降っていましたが、その演出意図を教えてください。

「僕は雨や雪をすぐに降らせちゃうんですけれども、あれは脚本に書かれていたことでもあって。実は“雨が降りそうな不穏な中で”という表現だったのですが、あえて雨を降らせました。慶喜にとっては涙が流れるシーンだから、本当は雨を降らせない方が効果的に映るかもしれないとも思ったんですが、逆に涙を見せたくないなと。草彅さんのお芝居は、形じゃないところに出るものがあるんです。涙やおえつのような形だけではなく、そのまま僕らが現場で感じていることを見てもらいたいなと思って、涙が隠れる方向にしました」

――慶喜が円四郎と最期の対面をするシーンについて、草彅さんとお話しされましたか?

「僕は意識的に話さないようにしていましたね。演出や台本の意図をあえて伝えないようにしているので、このシーンに関しては草彅さんと一言も話さなかったです。雨を降らせることくらいしか話しませんでした」

「青天を衝け」演出家が語る円四郎最期の撮影舞台裏。先を想像させるよう意識、草彅剛とは一言も話さず

――慶喜が号泣するシーンを撮った感想を教えてください。

「草彅さんだけをカメラ3台で狙って、一発で撮りました。草彅さんのお芝居って、本当に1回限りのものだったりもするんです。狙って技術的に組み立てていく演技ではない部分があり、本番1回限りのものだったりするので、撮る方も緊張しますし、どんな表現が出てくるんだろうと楽しみな俳優さんでもあります。だから1回で良いシーンが撮れて、とてもほっとしたのを覚えています」

――慶喜は涙とおえつで相当激しい反応でしたね。

「そうですね。雨で覆われている中でも、涙やおえつが伝わってくるし、やはり形を超えたものが出てくる人だから、想像以上のものが出てきていました 」

――一方、円四郎についてですが、死に顔にこだわった部分はあったのでしょうか?

「実はしっかり顔が見える方向で撮っていません。“円四郎が見ていた先”みたいなものを意識して、横から撮っています。最期、倒れて手を伸ばすなど、その先に見えていたものを意識して撮るようにしていました。もちろん堤さんの表情もとても素晴らしかったのですが、先を想像させるようにしたいなと。また、円四郎はずっと殿、殿と言っていたのに、死ぬ瞬間に『やす!』と妻の名前を言うというところが大森さんらしい脚本で、僕自身そのセリフがとても好きなので、それも意識して撮っています」

――雨が相当降っていましたが、あれはセットの中なのでしょうか?

「セットの中で相当降らせています。僕が演出すると、撮影後、スタッフの皆さんがスポンジで泣きながら水を吸収してくれているので、本当に申し訳ないなと思っています。雨や雪をすぐに降らせるので、スタッフには嫌われていると思います(笑)」

「青天を衝け」演出家が語る円四郎最期の撮影舞台裏。先を想像させるよう意識、草彅剛とは一言も話さず

――円四郎が亡くなる時に、鳥の声が入っていたように聞こえましたが…。

「円四郎が、やす(木村佳乃)への伝言として、『おかしろくもねぇ時は、掛け軸の小鳥にでも話しかけろ』というくだりがあるので、鳥をモチーフにすることを考えていました。円四郎がこの世の中から飛び出なければいけない時に、やすのことも空から見たかっただろうし、栄一にも何かを残したいのにちゃんとお別れすることなく去っていかなければならない。円四郎のこの世の気掛かりみたいものを形に残せないかなと思って。しっかり鳥を出すかは迷っていましたけど、少なくとも栄一が歩いている時に何か感じるものとして、鳥の声を入れたんです」

――ありがとうございました!

【番組情報】

大河ドラマ「青天を衝け」
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K 日曜 午後6:00~6:45

NHK担当 K・H



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