制作統括が証言! 髙石あかり主演「ばけばけ」は今までに見たことのない朝ドラに2025/04/14

NHK総合ほかで今秋からの放送が予定されている、2025年後期連続テレビ小説「ばけばけ」(日時未定)。連続テレビ小説113作目となる本作は、松江の没落士族の娘・小泉セツがモデル。外国人の夫、パトリック・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と共に、「怪談」を愛し、急速に西洋化が進む明治の日本で埋もれてきた名もなき人々の心の物語に光を当て、代弁者として語り継いだ小泉夫婦の物語が展開する。実在の人物をモデルにしているが、脚本家のふじきみつ彦氏が大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描いていく。
このたび、制作統括の橋爪國臣氏が取材に応じ、3月25日にNHK大阪放送局スタジオでクランクインした本作の現場の様子を明かしてくれた。ヒロインを務める髙石あかりを始めとするキャスト陣の生き生きとした様子が伝わってくる話から、「ばけばけ」の世界観に思いをはせてほしい。
──3月25日にクランクインした本作、ヒロイン・松野トキ役の髙石さんは4月2日から撮影に合流したそうですが、イン当日を迎えた時のお気持ちをお聞かせください。
「クランクイン前日にキャストの皆さんに集まっていただき、本読みの会を行ったんです。座って読み合わせをしただけだったんですけど、とても面白くて。これを実際のシーンとして皆さんに演じていただいたらどうなるんだろうと、撮影当日は本当に楽しみに現場に向かいました。また、スタッフの皆さんが、とても凝ったセットや照明、カメラワークを検討してくださっていることは打ち合わせを通して知っていたので、どんな感じになるんだろうという楽しみもありました。実物を見ると本当に素晴らしくて、ひたすら感慨にふけっていました。今回、リアルな明治時代を追求していて、物語のなかで生きる人々の生活感をしっかり出したいと考えていまして。ですから、当時の空気感や光の感じ、汚れ具合も意識しているので、いわゆる“朝ドラ”では見られない雰囲気になっているかもしれません」
──髙石さんの様子はいかがでしょうか。
「ベテランのキャストに囲まれて萎縮することもなく、思った通りの“髙石あかりさんの良さ”が発揮されているなというのが第一印象です。また、髙石さんは食べることが大好きで、いろいろなことに興味を持っていらっしゃる方。現場でお話ししていると、興味のアンテナが広いなと感じるんです。そういった面がお芝居の深みにつながっているのだろうなと思わされますね」
──クランクインの情報出しで、松野家の面々がそろった写真が公開されましたが、家族を演じる皆さんはどんなご関係に見えますか?
「どうやって家族を作っていくのか、さぐりさぐりになるんだろうなと思っていたんです。それが、実際に撮影が始まると、『皆さん、ずっと前から一緒にいたんですか?』というぐらいの雰囲気で。フィーリングが合うのか、皆さんとても楽しそうにしていらっしゃったのがとても印象的でした。髙石さんと幼なじみ役の円井わんさんも仲が良さそうですし、とても感じのいい現場です」
──そんな温かい現場で生まれる「ばけばけ」はどのように企画された作品だったのでしょうか。
「最初から、小泉八雲とせつ夫妻の物語を作ろうと考えていたわけではないんです。とても混沌とした時代だと感じる現代において、うまくいかないことが多い方ってたくさんいるのだろうなと感じていて……。そういった人々の生きざまがテーマになるドラマを作りたいと思い、市井の人々のつぶさな生活を描くことが得意な脚本家のふじきみつ彦さんにお声がけをしました。そして、ふじきさんと話をしながら、私たちが考えているメッセージを込める物語は、過去の人々を描いた方が伝わるのではないかと意見が一致したんです。それから、モデルになりそうな人を何百人とリサーチしました。そのなかで小泉八雲とせつに行き着き、『この2人だったら私たちが作りたいメッセージができそうだ』と思ったことが始まりでした」
──ネームバリューではなく、その人柄やエピソードにひかれた結果、モデルとして白羽の矢が立ったわけですね。
「そうですね。有名人の成功譚ではなく、あくまで、“市井の人たちがこう生きた”という物語にしたいと考えたので。有名人としての小泉八雲とその妻ではなく、まだ何者でもない時代の2人をトキとヘブンとして描けたらと考えています。時代に翻弄(ほんろう)されながらおくる、彼らの日常生活のおかしみや不条理さ、そういった描写がある台本が上がってきていると思います」
──髙石さんの相手役となるヘブン役にはトミー・バストウさんが起用されました。国内外から1767人もの応募があったそうですが、バストウさんに決定した決め手とは?
「『もうこの人しかいない』と思うぐらい、圧倒的な実力だったんです。それに加え、人柄も本当に素晴らしい。ヘブン役に決定してからも、ここまで役作りをする人は滅多に見ないと思うぐらいの意欲を見せてくれています。たとえば、アメリカにいた頃のハーンが書いた小さな新聞記事から書籍まで、われわれが読んでいないような資料まで読み込んでいたり。また、バストウさんは日本語がとても流ちょうなのですが、来日当初のハーンはそこまで日本語が話せていたわけではないだろうと考え、“日本語を話せない外国人”を研究していましたね。実は、彼の日本語力も起用理由の一つではありました。現場に通訳さんは常駐してはいますが、通訳を通さなくても監督が何を言わんとしているかの大半は理解できるんです。日本語を理解した上で役に挑めることはとても大きい。だからこそ、役が深くなっていくのだと思います」
──髙石さんとハストウさんのバランスもお考えになりましたか。
「『ベイビーわるきゅーれ』(テレビ東京系)の杉本ちさと役もそうですけど、高石さんは自然体の女の子を演じることが素晴らしく上手な方。『ばけばけ』は時代劇ではありますが、その時代に“ちゃんと生きていた”女性を自然に演じてほしいですし、周りのキャストにもそういった演技ができる方をキャスティングしています。もちろんバストウさんもそういう役者さんなので、髙石さんもバストウさんも、セリフを話してはいても、あたかも生の会話をしているようなやりとりができています。そういえば、先日の撮影で髙石さんがあまりに自然な会話をしていたので、これは演技ではないと勘違いした人が途中で芝居を止めてしまうというハプニングがあったんですよ。そう思うと、ふじきさんの脚本をできるヒロインはやっぱり彼女だったんだなと。髙石さんに助けられている部分はたくさんあります」
──長い歴史のある“朝ドラ”からはさまざまなヒロインが誕生していますが、トキはどんなヒロインになっていくのでしょうか。
「おそらく、元気がよくて明るい主人公ではないと思います。弱いところもあるし、自分が張り切って進んでいくというタイプでもなく、いろんなことに巻き込まれながらただただ生きている人なので。ただ、髙石さんが持ってる根あか感は出てくると思うんですね。暗いシーンも本当に暗くなりすぎない。そこが彼女の良さだと思っているので、ただただ暗い作品にはならないと思います」
──朝ドラヒロインといえば、同じく大阪局で制作された「ほんまもん」(2001年度後期)でヒロインを務めた池脇千鶴さんが、トキの母親・フミ役で出演されます。どんなお母さんですか?
「松野家は、小日向文世さん(トキの祖父・勘右衛門役)がいつものように楽しくやっていて、岡部たかしさん(トキの父・司之介役)はふじきさんの脚本を体現する“ヘンなお父ちゃん”を演じていて。そしてトキちゃんは自由だし……という家族なんです。そんなみんなを支えるアンカーのような存在を池脇千鶴さんが担ってくれています。フミさんがこの家族を支えてるんだなと、そういうことが分かるシーンが続いています」
──物語の冒頭は子役の福地美晴さんが幼少期のトキとして登場することが発表されました。
「私はある程度候補が絞られた段階からオーディションを見たのですが、そのなかでも福地さんは本当にお芝居がうまくて。とっても考えてきているのだけれど、芝居をやらせてみると考えているようには見えないんです。子役っぽくない芝居がちゃんと大人の役者ですね。でも、天才肌というよりは努力型。その努力を面に出さないところもすごい、本当に10歳かと思ってしまう子ですね」

──出演発表の際には髙石さんとの“トキツーショット”が公開されましたね。
「当然ですが、福地さんは髙石さんと同じシーンはありません(笑)。でも、たまたま撮影が一緒になったときには裏で話をしていたり、姉妹みたいでほほ笑ましいですよ。福地さんは、あれだけのキャストに囲まれてもものおじしません。いろいろな人に向き合うことができる子で、髙石さんとも仲良く楽しく過ごしています。そんな様子を、私は、親戚のおじさんになった気分でほほ笑ましく見ています(笑)」
──放送開始はまだ先ですが、期待して待っている視聴者の皆さんに今後の展望をお伝えください。
「撮影はまだ始まったばかり。キャストもスタッフも、みんなが情熱をかけて細かいところまでこだわって作品作りに励んでいます。それが画(え)に出ている作品が撮れていると思いますので、ここで息切れしないよう、最後までこの情熱を持って続けていけたらいいなと思っています」
【番組情報】
連続テレビ小説「ばけばけ」
今秋放送予定
取材・文/TVガイドWeb編集部
この記事をシェアする