「対岸の家事」ディーン・フジオカが語る“育休パパ”のリアル2025/04/08

TBS系では、4月1日に火曜ドラマ枠で多部未華子主演の「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(火曜午後10:00)が放送スタート。「わたし、定時で帰ります。」の著者・朱野帰子さんが描く、新たなお仕事小説「対岸の家事」(講談社文庫)をドラマ化したものだ。専業主婦になることを選んだ村上詩穂(多部)が、ひょんなことから働くママや育休中のエリート官僚パパなど“対岸にいる人たち”と出会い、交流していく姿を描く。
今回は厚生労働省に勤務するエリート官僚で2年間の育休を取得したパパ・中谷達也を演じるディーン・フジオカにインタビュー。役柄や見どころなどについて話を聞いた。

“砂場の帝王”!? キャラクター像に迫る
――本作の出演オファーを受けて原作を読まれたと聞きました。
「原作を読み終わったあと、“やっぱり生きていくことは大変だな”としみじみ感じたというか、食らってしまいました。子どもを産んで命をつないでいくこと、脈々と繰り返されるバトンの重みを深く感じて。自分もそうやって生まれてきたし、母親、父親に対しての感謝、自分が父親であることも含めて、この作品は世に届けられるべきテーマを扱っていると思いました。自分は重く受け止め過ぎてしまったところもありますが、ドラマ作品としてどういうふうに届けられるかなと思っています」
――演じる中谷はどのような役柄ですか?
「中谷は“砂場の帝王”ですね(笑)。公園の砂場で子どもたちと遊ぶシーンがあるのですが、自分のキングダムを作り、それを自らの手で破壊するという…。そうだったらカッコいいのですが、そんなキャラクターではありません(笑)。中谷は育休を取得したエリート官僚なのですが、形から入るのが好きなのかなという印象はありました。『こうあるべき』『ルールはこうだから』とか、そういうことにすごく執着心を持っているんです。それはキャリアでは生かされる面は多々あったと思いますが、育児においては予定通り進まないことの連続。コントロールができなかったり、うまくいかなくて四苦八苦しているギャップが、中谷というキャラクターの一番の萌えポイントかなと思っております」

――中谷を演じる上で意識していることはありますか?
「眼鏡の持ち上げ方ですかね。フィッティングの時からたくさんの眼鏡をトライしたのですが、こういう眼鏡は掛けたことないなというのが、劇中で掛けているものです。眼鏡を指でどう押してクイッとやるのか、『今のは眼鏡に触れるタイミングが早過ぎましたね』など、意外な演出指導がけっこうあります(笑)」
――実際に撮影をしてみていかがですか?
「父と子の関係性というのはこれまでも演じたことはあったのですが、ここまで家事にフォーカスを当てた役柄というのは初めてでした。家事や子育てというのは、そこにドラマを生み出すこと、繊細な機微を作るのが難しいテーマだと思います。ド派手な合戦シーンがあるわけでもないし、ファンタジックな、ロマンチックなラブストーリーというわけでもない。もちろん、どんな物語も生命があってこその感情の起伏があると思うのですが、“命をつないでいく”ところのリアルな部分、手作業の地味な、ともすれば何も変化のない退屈な日々に思えてしまう部分。でも確実にそこには変化が生まれているという、少しずつの葛藤や苦悩、喜びや達成感をここまで解像度高く演じることは初めての経験です。監督から緻密(ちみつ)な指導をいただいて、ハッとさせられたり、自分では気付かなかった一面を引き出してもらっています」

いとおしい現場のエピソード
――中谷の娘である佳恋役の五十嵐美桜ちゃんとの撮影の様子は?
「まず一人のプロとして手加減をしない。基本敬語で話しかけるところに始まり…、といっても何にもお返事がないので(笑)、仲良くなるために僕が着ている服のボタンを『このボタン押してね』と下から順に押してもらって、一番上まで押した時には抱っこをするということをよくやっています。あとは、着替えている途中に廊下に走り出したりするんですよ。まだ2歳児なので自然のままというか、転んでケガをするんじゃないかというぐらいの猛スピードでダッシュして(笑)。それをスタッフの皆さんが追いかけるという光景が最高ですね。スタッフさんは大変だと思いますが、いとおしいです。公園でのシーンが多いのですが、公園をこんなふうに遊び倒すというか、使い倒すことができるというのは発見でした。パンダに見えないパンダの乗り物に乗ったり、うさぎに座った方がかわいいのではないか、と真剣に議論をしながら(笑)。いい現場です」

――多部さんとは初共演ですね。
「多部さんとニックネームの話になって『撮影現場ではなんて呼ばれますか? フジオカさんですか?』『どうしてディーンというお名前なんですか?』と。それで多部さんがご自身のニックネームはないとおっしゃるので、だったら『タビィー』でいいんじゃないかと、そこから僕の中で多部さんは『タビィー』になりました(笑)。演技の面はもう安定感抜群です。さすがすてきなお芝居をされるなと思って。演じる子どもたちは眠くなったり機嫌が悪くなってしまったりすると、泣き出したり、野獣というか猛獣というかとんでもないことになるんですが、多部さんはいつも安定していて。だから『猛獣使いのタビィー』ですね」
――実際に多部さんと演じてみていかがですか?
「多部さん演じる詩穂と中谷は基本的に擦れ違うんです。同じ空間にいるのにずっとかみ合わないみたいな。絶妙なズレみたいなものを、お互いに感じながらやっているのかなと勝手に思っています。一つ一つのシチュエーションの中で、掛け合いのような間の取り方だったり、2人で歩いてしゃべっていても目が合わない、考え方が交差しない。今回の作品のお芝居は、顕微鏡でやる作業に近いイメージです。日常の中でそれぞれの生い立ちのトラウマと向き合うところもあって、少し独特。中谷も詩穂も自分の中にそういう重しがあり、それを引っ張りながら、溜めながら生きている。それを大っぴらにはせず、でもちゃんと表に見せなくてはいけない部分は見せるという作業をずっとやっています。あとは撮影の合間にはお互い好きな車の話などをしています(笑)」

――働くママ・長野礼子役の江口のりこさんとはいかがですか?
「これから共演シーンを撮ることになっているので楽しみです。江口さんとは同い年だと思うので、勝手にもっと仲良くなりたいなんて思っています」
――第2話の見どころと視聴者へメッセージをお願いします。
「第2話の見どころは中谷の“異物感”でしょうか。この物語には一人一人個性豊かなキャラクターがたくさん登場しますが、第2話においての中谷の“空気読めない感”というか“場違いな感じ”が、個人的には滑稽(こっけい)な存在のままでいてほしいなと思っています。原作の物語がドラマになることで、こういう楽しみ方があるのかと視聴者の皆さんに体感していただきたいです。この作品がエンターテインメントとして楽しめて、そこに学びや気付きがあるということ。家族の数だけいろいろな選択肢があり、それが人を救う時もあれば、逆に苦しめてしまうこともある。はっきりとした答えがない中で、日々模索しながら暮らしているあらゆる世代、性別、どんな背景の方々にとっても、自分ごととして楽しめるドラマになっていると思います」


【番組情報】
「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」
TBS系
火曜 午後10:00~10:57
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