朗読劇「君の膵臓をたべたい」岡本信彦&梶裕貴が“僕”への思いや見どころ明かす2025/03/31

2022年12月に上演された、小説家・住野よるさんの大ヒット小説「君の膵臓をたべたい」(双葉文庫刊)の朗読劇が4月5・6日に再演決定。主人公の「僕」を岡本信彦と梶裕貴、「僕」のクラスメート・山内桜良を鬼頭明里と伊藤美来がダブルキャストで、桜良の親友・滝本恭子を戸松遥、「僕」と桜良のクラスメート・ガムの彼を中島ヨシキが演じる。
間もなく迎える上演を前に、「僕」を演じる岡本さんと梶さんを直撃。原作の印象や同朗読劇の魅力、ダブルキャストとして出演する互いへの思いなどを聞いた。
――岡本さんは22年の初演にも出演されています。以前の公演を経て、どのようなことを感じられましたか?
岡本 「前回はとても大変だったのを覚えています。というのも、僕は“僕”役を演じるわけですが、“僕”のモノローグに関しては(初演のガムの彼役の)伊東健人くんとシェアしながら演じたので、そこがとにかく難しくて…。伊東くんに僕のリズムをまとってもらいつつ、僕も彼のリズムをまといながらやるという。スピードやテンション感も整合性が取れるように合わせなくてはならず、苦労したことを覚えています。他ではなかなかない朗読劇のスタイルだなと思いました」
――対する梶さんは今回が初出演となります。出演にあたってのお気持ちを教えてください。
梶 「『大変だった』という話は以前にも岡本くんから聞いていたのですが、今あらためて話を聞いて、想像以上に大変なのかも…と背筋が伸びる思いです(笑)。ただ、原作小説が好きなので、時を経てこうして作品に携わらせていただけることになり、とてもうれしく思っています」
――「君の膵臓をたべたい」という作品のどのような部分に魅力を感じていますか?
岡本 「“僕”は咲良と仲を深めていく中で、さまざまなことが起こり、混乱でどこか現実を受け止められなくなってしまうんですよね。キャパシティオーバーといいますか、感情がなくなってしまう。それが最後の最後でわっと感情があふれ出すシーンがあって、それがすごくリアルだなと思います。咲良とのやりとりがじわじわとボディブローのように効いてきて、波紋のように心や脳を侵食していく感覚を味わいました。感情の波が時間差で押し寄せてくる、その現象はきっと誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。同時に、それがすてきにも見えて…。そういう感情や時間の感覚を共有できるのがこの作品の魅力だと思います」
梶 「まさに今、岡本くんが言ってくれた通りかなと。タイトルもそうですし、物語の導入から衝撃的にガツンとくるじゃないですか。ドラマの大筋が提示されている上で、そこに向かうまでの日常が描かれていくので、悲しむ覚悟をしつつ、どんどんその2人のことが好きになっていってしまう。そして、その瞬間が訪れた時には、読者の誰もが“僕”と同じような喪失感を抱えている、その構成が魅力的だなと思います。純粋にエンタメとしての面白さもありながら、“生きる”ということをすごく考えさせられる作品ですよね。咲良の明るく軽妙なセリフには、実はグサッと刺さる本質を突くような言葉が随所にちりばめられていて、ライトに楽しめつつも、読後ずっと心に残り続ける作品というか」

――今回、岡本さんと梶さんは「僕」役でダブルキャストを務められます。
梶 「一つの役を何人もの役者が演じるというのは朗読劇ではよくあることですが、僕らは、人間のタイプとしても役者のタイプとしても違うと思いますし、桜良役の役者さんもダブルキャストなので、それぞれ全く印象の異なる『君の膵臓をたべたい』になると思います。そして、それがこの朗読劇の魅力でもあるのかなと。もちろん、岡本くんと一緒にお芝居ができたらもっと楽しいだろうなと思うのですが…この作品を通して会えるのはおそらくこの取材が最後になるので(笑)。ぜひ岡本くんの公演を見に行きたいですね」
岡本 「僕も同じ気持ちです。初演時は島﨑信長くんとダブルキャストだったのですが、やはり全く違うものになっていたので。なにより僕自身、いろいろなところで公言してきていますが、梶くんのお芝居がめちゃめちゃ好きなんですよ。なので、いちファンとしてもどうやって“僕”を演じるのだろうとすごく楽しみで。梶くんは声質にパワーがありつつ、心情などを繊細に表現できる役者さん。“僕”をどう表現されるのかが気になります」
梶 「ありがとう。岡本くんが好きだと言ってくれているエモーショナルな表現や叫びは今回もポイントになるのかなと思いつつ、そうではない要素をどう組み立てていこうかなと模索しています」
――お二人はこれまで多数の作品で共演されていますが、プライベートでも交流が深いとのこと。
梶 「岡本くんとは公私共によくご一緒していますが、本当にいろいろ驚かされます。例えば、本人いわく『僕は人間としての感情が欠落している』そうで(笑)。でも、ならばどういうアプローチでお芝居をしているのか聞いた時に『他の人のお芝居を見て、喜怒哀楽はこう演じると魅力的に聞こえるんだとか、こうすると伝わりやすいんだというのを勉強し、それを自分の中に蓄えて、ロジックで整理してアウトプットしている』と言っていて…すごいなこの人と思いました(笑)。今はどうなの?」
岡本 「やっぱり人より鈍いところがあるかなと思います。特に怒りの感情は薄い気がしますね。なので『優しい』と言われることもあれば、人によっては『ドライ』と言われてしまうこともあって」
梶 「そっか。僕はどちらかというと役の感情に引っ張られるタイプなので、全部がそうではないにしても、テクニックでお芝居ができる岡本くんはすごいなと。しかも受け取る側はそれを感じず、そこにしっかりキャラクターが生きているように聞こえるので、見事に完成されたテクニックですよね」
岡本 「いやいや…ありがとうございます。でも、このやり方にも一つ弱点がありまして…。ドラマチックにし過ぎてしまう可能性があるんですよ(笑)。『こう演じたら感動していただけるんじゃないか』と考えて演じてしまうので、そういうところは良くないなと思っています」
――本作では、“僕”と咲良の淡く切ない恋模様が描かれますが、この二人の関係性の美しさをどういう部分に感じますか?
岡本 「僕は以前演じてみて、全てを言わないからこそのわびさび、そのもどかしさが美しいなと思いました。伝えられたはずの言葉、ディスカッションできたことがあったはずなのに、それができずに後になってから後悔してしまう…人生ってそうだよなって。妙に納得できたといいますか、人間ってそんなに器用じゃないよねと」
梶 「僕もそう思います。すごくリアルですよね。なるべく後悔のないように…と思って生きていても結局、どれも完璧になんてできなくて、失って初めて分かることばかり。人類の歴史が始まってから、後悔しなかった人などいないのだろうなと思います。本作はまさに、そんな行き場のない思いが凝縮されている物語。むなしさやもどかしさ…そして同時に、大切な存在が教えてくれる人間の尊さが詰まっているような気がしています」

――今回の朗読劇の注目ポイントを教えてください。
岡本 「僕は一度出演してはいますが、キャストが変わって、また全然違うものになると思いますので、それをまず楽しみにしています。なので、初演に来てくださった方々も、今回ならではの魅力を感じていただけるのではないかなと。また、(咲良役の)鬼頭さんは同じ事務所でありながら、これまでがっつりお芝居したことがなくて。今回の朗読劇が初めてになるので、照れくささもありつつ、楽しみな気持ちが大きいです。鬼頭さんも出演を楽しみにしていると言っていて、ギアを上げていると思うので、早くセッションしたいですね」
梶 「今回、久しぶりに作品に触れ、約10年前に原作小説を手に取った際に感じた刺激や感動とは、また違うものを受け取ったような気がしています。時を経て、年齢を重ねた分、感じ方も変わったのでしょう。とても面白い経験でした。実際に公演をしたら、より新しい感覚を味わえるんだろうなと今からワクワクしています。本作には“生きる、とはどういうことか?”という深いテーマがありながら、それぞれのキャラクターがポップに際立っていることで、とても間口の広いタイトルとして成立している気がします。“僕”と同世代の皆さんはもちろん、かつて学生だった大人の皆さんにも、思春期のみずみずしさや葛藤など、さまざま感情を共有していただける舞台になっていると思います。ぜひ劇場まで足を運んでいただけるとうれしいです」
――公演日が4月5・6日と、世の中は新年度を迎えます。お二人が新たに挑戦してみたいことはありますか?
梶 「僕は今、『そよぎフラクタル』という音声AIプロジェクトをプロデュースしているのですが、来年には3Dライブを開催したく、それに向け現在、二度目のクラウドファンディングを立ち上げる計画をしています。プロジェクトを始動させてから一年以上。物事をゼロから創り上げていくのは難しいことなんだなとあらためて感じつつ、それ以上に、本当に楽しくて。声優業が第一なのはもちろん、自分にとって人生初となるトライをなんとしても成功させていきたいです」
岡本 「いいですね! 僕は何があるだろう…」
梶 「もう1回富士山に登りたいとか、まだ見ぬチョコレートを食べてみたいとか?」
岡本 「まだ見ぬチョコレート、食べてみたいですね! 僕の体はチョコレートでできているので(笑)。でも、僕も梶くん同様に声優業に絡めたプロジェクトを何かできたらいいなと考えているので、ぜひご期待いただきたいです」
梶 「岡本くんとはほぼ同期で、これまで一緒にハワイに行ったり、富士山に登ったり、プライベートでもなかなかできないことを仕事でやらせてもらっていて(笑)。同じ世代だからこそ分かり合える部分が間違いなくあると思うので、これからも一致団結して、新しいエンタメをお届けできるようにまい進していきたいです」

【プロフィール】
岡本信彦(おかもと のぶひこ)
1986年10月24日生まれ。2006年声優デビュー。近年の主な出演作に、「青の祓魔師」奥村燐役、「ハイキュー!!」西谷夕役、「Re:ゼロから始める異世界生活」ガーフィール・ティンゼル役、「僕のヒーローアカデミア」爆豪勝己役、「葬送のフリーレン」ヒンメル役など。09年第三回声優アワード「新人男優賞」、11年第五回声優アワード「助演男優賞」受賞。
梶裕貴(かじ ゆうき)
1985年9月3日生まれ。2004年声優デビュー。近年の主な出演作に、「進撃の巨人」エレン・イェーガー役、「僕のヒーローアカデミア」轟焦凍役、「ハイキュー!!」孤爪研磨役、「悪魔くん」二代目悪魔くん/埋れ木一郎役、「七つの大罪」メリオダス役など。13・14年、史上初の2年連続で第七回・第八回声優アワード「主演男優賞」受賞。
【インフォメーション】

朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025
東京・日本青年館ホール
2025年4月5日 午後2:00/6:00
2025年4月6日 午後1:30/5:30
※両日夜公演のみアフタートーク付
※両日夜公演のみ生配信&アーカイブ配信あり
原作:住野よる「君の膵臓をたべたい」(双葉文庫)
脚本・演出:保科由里子
出演:岡本信彦、梶裕貴、鬼頭明里、伊藤美来、戸松遥、中島ヨシキ
©朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025製作委員会
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【注意事項】
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取材・文/片岡聡恵
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