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「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」2025/04/03 08:00

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

 BS松竹東急では、4月4日から那智泉見氏の同名コミックス(PHP研究所)を実写ドラマ化した「社畜人ヤブー」(金曜午後10:30)がスタート。働く社員を会社の歯車としか扱わないブラック企業を舞台に、社畜人・薮隣一郎の働き方と生きざまを通して、「仕事」と「人生」への向き合い方を問うBL(ビジネスラブ)の社畜ファンタジーコメディーだ。

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

 本作で主演を務める新納慎也は、今作で連続ドラマ初主演を果たし、“社畜”を極めたエリートサラリーマンを熱演。薮の部下である倉良優一(須賀健太)や高柳星翔(髙松アロハ/超特急)に対して、“残業は会社からのおもてなし”、“クレームはお客さまからのラブコール”、“低賃金は控えめな自分へのじらしプレイ”だと説明し、超ポジティブに捉える優秀な社畜人・薮は、一見、現代のコンプライアンス重視の社会と逆行しているよう。そんな主人公を、スタイリッシュかつクールに演じた新納に、初めて連続ドラマで座長を務めた感想や、撮影エピソードを聞いた。

――最初のコメントで「後にも先にも新納慎也主演ドラマなんて今回限りかもしれない」とおっしゃっていましたが、その真意を教えてください。

「今回が最後にしたいという意味ではなくて、今までそんなことがなかったので、この後もないかもしれないな…と。ドラマの主役なんてびっくりですよね。今回を機に主演ドラマが増えればうれしいですけど、『今作が最後かもしれないから絶対見て!』という意味で言いました」

――エピソードがたくさんあるのでシリーズ化するかもしれないですよね!

「そうなんですよ。この作品は、延々と続けられると思います。新入社員がどんどん入ってくるとか、会社にいろいろな事件が起こるとか、やりようはいくらでもあるので、シリーズ化しようと思ったらできると思う。そうなったらうれしいですね」

――すでにクランクアップされたそうですが、撮影を振り返って感想をお伺いできますか。

「オファーが来た時は、『どうして僕が主役に…?』という感じだったんですよ。信じられなくて、実はプロデューサーさんやスタッフのどなたかが僕のファンクラブに入っているとか、プロデューサーさんが実は僕と血がつながっているとかの理由がない限り、オファーをしてくださる意味が分からなかったですね(笑)。正直なところ、『なんでだろう?』というところから入りました」

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

――「社畜人ヤブー」は、新納さんにぴったりの作品だなと感じました。

「実は『社畜人ヤブー』に落ち着くまでも、作品が二転三転して、いろいろな作品の候補があった中で正式に決定したのですが、『どうしてそこまでして僕を主演にしようとしてくれているんだろう』とずっと疑問でした。その気持ちは、今でも謎のまま現在に至っています(笑)。撮影に入った後も、主演だからといって何も変わらないし、座長として何かをするとか、主演感を味わうほど余裕はなかったです。主役だからと偉そうにする必要もないし、撮影期間中は、主演や座長としての立ち位置はゼロで、すごくタイトなスケジュールだったので、とにかく撮ることに集中していました」

――結構タイトなスケジュールだったんですね。

「普通のドラマは全10話を3か月くらいで撮るんですけど、このドラマは短い期間で全12話を撮ったので…。驚異的なスケジュールで、『1日でこんなに撮るの?』『こんなにセリフがあるの?』とびっくりしました(笑)。その状況が1日や2日間じゃなくて、撮影中ずっと続くのです。もうね、白目をむいていましたよ(笑)。セリフを覚えて撮って、覚えて撮っての繰り返しで、覚えたセリフを吐き出すのが早いか、血を吐き出すのが早いかぐらいの生活でした(笑)。それもあって、撮影中に『主役だから…』という感覚を味わう余裕はなかったです。多分、オンエアでクレジットに僕の名前が最初に出た時に、『主演』という実感が湧くのかなと。ポスタービジュアルに『主演・新納慎也』と書かれていたので、それを見たときは、『おっ!』と思いましたけど、今のところあまり実感がないままここにいます」

――新納さんと薮さんのシンクロ具合がすごいと評判ですが、ご自身ではどのように感じていますか?

「自分でも似ているなと思っています。多分、原作の薮さんは、僕よりも設定が若いと思うんですが、ポスタービジュアルができた時は、おこがましいのですが『ぴったりやないかい!』と思ってしまいました(笑)」

――そんなスケジュールの中、全て撮り終えた現在のお気持ちは?

「シーンもセリフも多いので、『一番の社畜は僕なのでは?』というくらい薮さんと同じように働き詰めでした(笑)。でも、それが作品に勢いを付けたので良かったなと思っています。みんな同じ状況でしたので、感謝の気持ちで差し入れだけは頻繁に入れていました」

――ちなみにどんなものを差し入れされたのですか?

「肉巻きおにぎりとか、お菓子とか…。あと、『秘密のケンミンSHOW極』(木曜午後9:00/日本テレビ系)に出演した際、秋田県のご当地パンで“コーヒーパン”がおいしかったので、その会社に問い合わせをして取り寄せもしました」

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」
「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

――「BL(ビジネスラブ)の社畜ファンタジーコメディー」と紹介されていて、「BL」がボーイズラブではないところが斬新ですね。

「BLというと、だいたい今はボーイズラブですけど、この作品に“BL感”はゼロです。皆無です! だから期待しないでください(笑)。実は僕が須賀健太のことを好きとか、ないです。ないない! ゼロ(笑)。須賀と髙松アロハのBLを期待している方もいるかもしれませんが、それもありません(笑)。本当に、ビジネスラブのBLなんですよ。薮さんが仕事大好き人間で会社を愛しまくっている男なのでビジネスラブ(BL)。それは第1話から伝わると思います。『BLってこのことか』みたいなね(笑)」

――新納さんもビジネスラブですか?

「僕の場合、ビジネスという言い方があまりピンとこなくて、芝居をすることが仕事なので、芝居=ビジネスというならば仕事は好きです。薮さんの言っていることは全く疑わしくなくて、共感できるので『ですよね~』と思っています」

――とはいえ、サービス残業も低賃金も前向きに捉える薮の姿は、コンプライアンス重視の現代の流れと逆行してるのかなと捉えられなくもないですか。

「僕の個人的感覚では、逆行しているというのと少し違うんです。原作は10年前の作品なので、この10年でハラスメントやコンプライアンスを含めて、働き方がだいぶ変わってきました。でも、どこかで『ちょっと行き過ぎたのでは?』と感じている人も世の中にいると思うんですよ。それで、その中間のちょうどいいところを探っている時期なのかなと。そんな中、10年前の薮さんの考え方を見てもらえれば、『そうか。ほんの10年前は、こういう働き方をしている人がいたな。でもこの人の働き方、結構すてきかも、好きかも』と僕は思うんです」

――なるほど。

「現代社会にメスを入れるわけじゃないけれど、『今、少し行き過ぎていませんか。こんな人もおりまっせ』的な投げかけというか。それは、昭和の時代のパワハラやセクハラがOKということではなくて、理想としているエリートビジネスマンがとてもエレガントで礼儀正しく、そして仕事をきちんと社畜と呼ばれながらも喜々としてこなしている姿は、見ていてどう感じますか? と僕は聞いてみたいです。演じる時にそこを意識して、パワハラに見えないようにとか、新入社員たちが薮のことをすてきな先輩と思ってくれたらいいなと、所作にもとても気を使いました。そんな、薮さんを見ていろいろと考えてもらえたらうれしいです」

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

――10年前の作品ということで、10年前にはなかったことを現代に置き換えたりオリジナル要素もあったり、幅広い層の方に楽しんでもらえそうですね。

「オリジナル要素としては、日向坂46山口陽世さんが演じる“薮さん推し”の七瀬杏梨もドラマオリジナルのキャラクターです。ほかのオリジナル要素というか、原作と大きく違う点は薮さんのキャラクターです。原作の薮さんはとてもクール。だから面白いのですが、台本の読み合わせの時に僕がそれをやったら面白くないなと感じたんです。監督もそう思ったみたいで、薮さんがひっかき回し役なので、もっとテンション高くいきましょうかみたいな話になりました。原作の薮さんとは離れるけれど、ドラマの薮さんはスーパーハイテンションな瞬間が多いです。だからこそ、みんなが振り回されるし、コメディーとしても転がっていくというのが原作とは全然違いますね」

――社畜という言葉については、どのように感じていますか。

「このドラマで、薮さんは自分のことを『シャチクー』と言うんです。『社畜』じゃなくて『シャチクー』。『社畜』という言葉をとても誇らしく思っているというのを表現したくて、違う言い方にして、まるでヒーローを呼ぶように『シャチクー』と呼ぶ。本作は、社畜というのはとても素晴らしいことなんだよと思える世界観のドラマにしているんです。僕自身は、社畜という言葉に親しみがないというか、その世界線にいないのですが、このドラマをやった上では、『社畜上等』と思っています。『社畜でいいじゃない!』と。週3日休みたいとか、17時には帰りたいとか、プライベートを充実させるために仕事をしているとか…。そう思うことは自由ですが、結局仕事をしている時間がほとんどだと思うんですよ。人生において仕事をしている時間はとても長いし、割と比重が大きいですよね。それなのに、プライベートのために仕事をすると考えると、その長い時間がとても苦痛に感じる。だから、仕事自体を愛すればいいのではと思います。薮さんも言っているように、仕事を愛して社畜になった方が人生楽しいかもなと。社畜という言葉があまりポジティブな言葉ではないので、社畜ではなくて仕事を愛する人であった方が人生が豊かになるのではと僕も思います」

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――「シャチクー」と呼ぶのは新納さんが考えたのですか?

「僕が考えたのですが、監督から『社畜とか歯車というセリフを言う時に、英語みたいに言えませんか』とか『その言葉を口にすることが薮さん的にはうれしいみたいな…』と、それだけをポンと投げられて、その日は終わったんですよ(笑)。で、答えがないままクランクインしたのですが、撮影する前に『“シャチクー”ってどうですか』と言ったら『いいですね。それでいきましょう』と、割とあっさりOKが出たので、第1話から最後まで言い続けています。歯車もいろいろ話し合ったのですが、正義の味方みたいに『ハグルマン』と提案してみましたが、音で聞いているだけだと理解がしにくいなということで、歯車はそのままでいくことになりました」

――他に何かアイデアを出されたことは?

「アイデアというほど、そんな偉そうなことではないのですが、劇中で『社畜の園』という妄想劇場があって、そのシーンは基本任されていました。だから、自分でどういうことをするかを考えて、ここでは○○さんの物まねをしようとか、衣装さんとヘアメークさんに、『こういう衣装とカツラを用意できないでしょうか』と相談して、それを監督に披露するというのが『社畜の園』の基本でした。もちろん、監督が決めている時もありましたけど」

――そうなんですね!

「ほかにも、第1話にドクロのネクタイとドクロの指輪が出てくるのですが、なぜドクロがモチーフになっているのかは、漫画で回収されていないんですよ。薮さんはエリートのビジネスマンなので、そんな営業マンがドクロのネクタイと指輪をしていたらリアリティーがないなと思って、第1話の最初のシーンだけにしたらどうかなと提案しました。僕と監督で話し合ったのですが、漫画だから成立するけどドラマでドクロの指輪をしていたら説得力がなくなるシーンもあるかなと思ったので、原作の先生にも許可を得て、途中で普通の赤いネクタイに変えて指輪は取りました」

――現場はどんな雰囲気だったのでしょうか。

「僕は年齢の概念をあまり感じていないので、(須賀)健太や(髙松)アロハとも同級生だと思ってしゃべっていました(笑)。だからみんなもだんだんゆるっとしてきて、普通に同級生が話している感じだったんじゃないかな? 皆さん、年上の僕に敬意を持ってくださっているとは思いますけど、ゆるっとした関係性になっても僕は何とも思っていないから、敬意というものはだんだん感じられなくなってきましたね(笑)。基本的に、この現場だけじゃなくて、どこの現場でもプライベートでも、あまり年齢とか性別を意識して人と接していないので、誰に対してもフラットだからいつもそんな感じです。でも、『超チルいですね』とか言われると『チルいって何?』と聞きますよ(笑)。意味が分かっていない時もありますが、若い人たちの考えることは面白いなと刺激を受けつつも、至って普通にフラットに接して生きています」

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」
「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

――髙松さんには“オタ芸”を教えてもらったと伺いました。

「第1話で、クライアントを接待する時にオタ芸を披露して盛り上げなきゃいけないというシーンがあったんです。でも、オタ芸を教えてくれる先生が来るわけではなく、YouTubeの動画が送られてきて、『これをやってください』と言われて。僕はこれだけでなくて、覚えなきゃいけないシーンが山のようにあって、いつオタ芸を覚えればいいんだろうと。そうしたら、目の前にアロハがいたので、『この人“超特急”じゃん!』と思って『ちょっとアロハさぁ、めっちゃ早くて覚えられないんだけど』と、YouTubeを見せたら、『こんなの3分で覚えられます』と言ってくれて。『覚えたら教えて!』とお願いして、こと細かく教えてもらいました。指導する時は結構な鬼教官でしたけどね(笑)。僕の中では、なんとなく覚えていればいいかなと思っていたのですが、割ときっちりしていて、腕は伸ばして斜め、とか、顔はこっちみたいなね。やっぱり、超特急としてのスイッチが入っちゃうんでしょうね(笑)。アロハは振り付けを覚えて人に教えるということに慣れているみたいでパパパッと頭に入るみたいですが、僕はその映像を見ても、まず、左右が逆だし理解して覚えるのにすごく時間がかかるんですよね。実際にYouTubeを見ても踊れないんですよ。先生が、ゆっくり丁寧に教えてくれないと無理なので、アロハ先生がいてくれて本当によかったです!」

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

――薮さんは、ポジティブシンキングな感じですけど、新納さんいかがですか。

「僕自身もポジティブだと思います。周りからもポジティブだと言われますが、僕はこれを基準に生きているので、それがポジティブなのかどうかは分からないんですよね。ポジティブって言うとかっこいい感じがしますけど、実はあまり考えてないだけで、ポワ〜っと生きています」

――そんなポジティブな生き方の薮さんの魅力を改めて教えてください。

「薮さんのように、自分を持っているということは強みになるなと思います。自分が命を懸けてでも愛することがあって、それを惜しみなくできている薮さんは、自分の中の論理が通っていて、生き方としては素晴らしいので、そこが魅力的だなと。ワークライフバランスという言葉に、現代の人はちょっと踊らされすぎているのではなかろうかと感じる時があります。全員が全員そうだとは言いませんが、なかには薮さんのようにバリバリ仕事をしたい人がいてもおかしくないですよね。だけど、今、ワークライフバランスという考え方がベースになっているから、思うように仕事ができないという人も中にはいる。でも、本当に好きな仕事に就いたのだったら、好きなことを思う存分やっていいよと、薮さんが背中を押してくれているような気がします」

【プロフィール】
新納慎也(にいろ しんや)

1975年4月21日生まれ。兵庫県出身。A型。近年の出演作に、ドラマ 「おむすび」(NHK)、「アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~」(フジテレビ系)、映画 「はたらく細胞」、ミュージカル「プロデューサーズ」(共に24年) など。

【番組情報】
金ドラ「社畜人ヤブー」
4月4日スタート
BS松竹東急
金曜 午後10:30~11:00

「社畜人ヤブー」新納慎也インタビュー「ボーイズラブ的要素はゼロのBL(ビジネスラブ)ドラマ!」

取材・文/松下光恵 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/小山徳美 スタイリング/手塚勇


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