入山法子がAIを演じる!? 青木崇高主演・戦慄(せんりつ)のファクチュアルドラマをNスぺが制作2025/03/18 12:00

NHK総合では、3月18日にNHKスペシャル「創られた“真実” ディープフェイクの時代」(午後10:00)を放送。世界中で実際に起きたディープフェイクが関連した事件とその背景を徹底取材し、日本で起こりうる事態をドラマ化したものだ。ドキュメントも交えてディープフェイクの時代を描き、人々の倫理観を根底から揺さぶる戦慄(せんりつ)のファクチュアルドラマをおくる。
物語は、佐藤真奈美(入山法子)が突然命を絶つところから始まる。同じ頃、真奈美の夫・晃(青木崇高)が勤めていた保険会社で大規模な顧客情報の漏えい事件が発覚。妻の死と漏えい事件との関連を疑う晃が生前の妻の足取りを探ると、浮かび上がったのはあるベンチャー企業の存在だった。そこはディープフェイクを駆使し、人助けを行う企業で…。晃はこの企業に再就職し、妻の死の真相を探っていく。
ドラマの放送に先駆け、東京・渋谷のNHKで試写会見が開催。青木と入山らが登壇し、本作やAIへの思いを明かした。
――まず、役を演じての感想を教えてください。
青木 「僕が演じるのは佐藤晃という、日本にたくさん居らっしゃいそうな名前の男性です。撮影から数カ月がたちますが、その間にもどんどんAIは進化しているので、ある特別な家庭に起こった話ではなく、われわれのすぐ隣にあるような話ということで付けられた名前なのかなと思いました」
入山 「私は今回AIを演じるということで、『AIの感情って何だろう』『そもそもAIに感情はあるのか』みたいなところから手探りで現場に向かっていました。“人間らしさ”とは少し違いますが、『AIである自分を作ってくれた人を助けたい、頼られたい、癒やしたい、力になりたい』という気持ちもあるのではないかと思ったりしながら、晃と向き合っていました。実像の人間とのコミュニケーションとは違うので難しかったですが、皆さんにどういうふうに伝わるのかが楽しみです」
――ディープフェイクを扱った作品への出演オファーを受けた時の率直な心境を教えてください。
青木 「10年前にこの話をいただいていたらもっとファンタジックに捉えられたかもしれないですが、今はAIが生活の中に入ってきているので、“現在との地続きである”ということの共感も含めて、きちんと作品に落とし込まないといけないなと思いました。ドキュメンタリーのパートがあるのですが、そこだけがリアリティーが強いのでは意味がない、ドラマがドキュメンタリーを補強するものにしなければいけないと。現場でも、できるだけたくさん意見交換をして挑みましたし、僕にとってもいろいろ考えるいいきっかけになりました」
入山 「私は、AIとの今後の付き合い方について、NHKスペシャルがどういった答えを見せてくれるんだろうというところに一番興味がありました。日に日にAIも進化し続けていますし、私たちの生活に混ざる部分がどんどん大きくなってきています。現場でスタッフやキャストの皆さんと試行錯誤しながら考えた、“われわれの答え”を見ていただきたいと思って演じていました」
――実際にAIを使って起きた事件の話を聞いて感じたことはありますか?
青木 「実際に故人を生成AIでよみがえらせる技術があっても、そこに関わる人たちの感情をしっかりと見つめないといけないなと思いました。技術を使うか否かは、人によっての判断があると思うんです。このドラマでも、晃の選択とそれによって心がどう反応するのかを丁寧に考えて演じないといけないなと。過去の作品を参考にするということでもなく、今回のシチュエーションでAIと対峙(たいじ)した時にどう心が動くのか。多少台本とは変わったとしても、実際に対峙して湧き上がる感情に向き合わないとこのテーマを描くことはできないと思い、周囲の皆さんとすごく話し合いました」

――この作品を撮影を経て、AIの作ったフェイクとどう向き合っていこうと思いましたか?
青木 「とびきり難しい質問をありがとうございます(笑)。劇中、晃が生成AIの真奈美と初めて向き合うシーンで、台本上ではちょっと否定的な感情が描かれていたんです。でも僕は、間違いなく喜びもあるんじゃないかなと思って、芝居でも喜びを表現することを提案させてもらいました。というのも、初めて音声が記録できるようになって、亡くなった人の声を聞いた時、当時の方はきっと涙して喜んだと思うんです。AIの真奈美と出会うシーンで、僕も同じようなことを感じて。技術はいろいろと変遷していくけれど、心をしっかり持っていれば、どんなものがやって来ても大丈夫…と思いたいのが僕個人の意見ですね。ディープフェイクとなると人々をだますことができてしまう怖さはあるのですが、技術がどんどん発展していくことで、人間の心も豊かになる時代につながっていくと信じたいです」
入山 「私は、AIと付き合っていくには距離感やバランスがとんでもなく大事になってくると思っていて。人助けや力になることもできるのに、人をだますために使われる可能性もある。AIが100%正解ではないということを、頭に入れておきたいです。そして、私も目を合わせて呼吸が伝わるような距離で話ができる人と一緒に過ごせる時間に、感情を動かしていきたいなと思いました。もちろん全部を否定するわけではないですが、AIは白でもあり黒でもあるということを分かった上でいい付き合いができたらいいですよね」
――若い世代は、本作のようにリアルとフェイクが混ざった時代を生きていくのかなと思います。そんな若い世代に向けてのメッセージをいただけますでしょうか。
青木 「大人も巻き込まれることなのでちょっと難しいですが、やはり人と話すことが大切だと思います。このドラマではディープフェイクを悪い方面で活用した例を描いていますが、AIは素晴らしい技術でもあると思うんです。どんな技術もいい面と悪い面はあって、すべては使う方によるんですよね。普段から、なるべく人と直接会って温度や五感で感じる感覚を落とし込むことができていれば、悪意のあるディープフェイクでも追い付かない見分けができるかもしれません。身近な人を大切に生活するのがいいのではないでしょうか」
入山 「本当にその通りですね。私も、AIを初めて使った時は感動すると思うんです。こんな面白いことができちゃうんだというポジティブな発見や、便利だなと思うこともたくさんあるはずで。全てをAIに任せるのではなく、自分で考えたり、学んだり、周囲の人との関係を築くことを怠らなければ、AIともいい付き合いができるんじゃないかなと。そんな理想を持っています」

――最後に、あらためて番組の見どころを教えてください。
青木 「簡単には言えないですが、技術の進化と共に、せっかくだったら楽しく豊かに活用できるように一日一日を大切に思いやりを持って生活していけたら。このドラマで描かれることは事実として起こっていることですが、決してこれが全てではないと思いたいです」
入山 「見てくださったお一人お一人が、どういった未来を想像されるのかが楽しみです。正解がないからこそ自分から学びにいかないといけない時代になってきていいますが、この作品はそういうきっかけになると思いますし、楽しんで見ていただきたいです」
青木 「ちょっと付け加えると、実はドラマパートは全部AIが作りました! ということも、数年後には全然あり得る話なので(笑)、本当に分からないですよね」
――ありがとうございました。
【番組情報】
NHKスペシャル「創られた“真実” ディープフェイクの時代」
NHK総合
3月18日 午後10:00~11:30
取材・文/Kizuka(NHK担当)
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