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空気階段・水川かたまり、初主演映画は「見終わったらふと肩が軽くなる作品」2025/03/17 18:00

空気階段・水川かたまり、初主演映画は「見終わったらふと肩が軽くなる作品」

 「キングオブコント」王者の実力派お笑いコンビ・空気階段水川かたまり初主演映画「死に損なった男」が絶賛公開中。演技力に定評のあるコント師として支持される水川が、映画の主演を務めて感じたこと、そして監督から言われて「めっちゃうれしかった」こととは? さらに、他では味わえない余韻のある本作の見どころを語ります。

──初めての主演映画の撮影は、どんな経験でしたか?

「ここまで作り込まれたセットや本格的なロケで長期間演技をするのは初めてだったので、ずっと修学旅行みたいにワクワクしていました。今、34歳なんですけど、もし18歳でこの経験をしていたら、お笑いじゃなく映画の世界を目指していただろうなと思います」

──監督からは演技についてどのような演出がありましたか?

「初めて読み合わせをした時、監督が『そういうことです!』と言ってくれて。その時は、何も分かっていないヤツに自信を付けさせるために褒めてくれたのかなと思ってたんです。でも、撮影に入っても『こうしてください』はほとんどなくて。『ここは全開放で』『ここは抑えて』と感情のボリュームだけ伝えてもらって演じていきました」

──他に、監督から言われて印象に残っていることは?

「休憩中にふと『かたまりさんって映画めっちゃ見てますよね?』と言われたことですかね。好きだけど、そんなたくさん見ているわけじゃないんですよ。でも『映画が好きなんだなという立ち方をしているから』と言われて。それはめっちゃうれしかったです(笑)」

空気階段・水川かたまり、初主演映画は「見終わったらふと肩が軽くなる作品」

──かたまりさん演じる構成作家の一平と、正名僕蔵さん演じる一平に取りついた幽霊とで、コント案を考えるシーンが印象的でした。お二人が何を話しているかは聞こえないのですが、とても楽しそうで。あのシーンはどのように撮影されたのでしょうか?

「あれは『セリフの音声は使わないので、こういう会話をお願いします』とテーマだけ与えられて、即興でやったんです。そうしたら、正名さんがガンガンボケてくださって。ただ、音は使わないからスタッフさんも笑っていいはずなのに、笑い声がほぼなくて、正名さんは劇的に落ち込んでいました(笑)。『芸人さんって、スベるとこんな気持ちになるんですね』と、しばらく引きずっていたのを覚えています」

──芸人と距離が近い構成作家の役を演じる上で意識したことは?

「僕らに付いてくれている作家の平島(太郎)さんは、『今日は元気ないから打ち合わせ別日にしよう』とかよく言うんですよ(笑)。その元気がなくなった時の感じをちょっと参考にしたので、平島さんのことを知っている人が映画を見たら『平島さんっぽいな』と思うかもしれません」

――作中で、一平は娘のことを守ろうとする幽霊に振り回されますが、かたまりさんも昨年娘さんが生まれましたよね。娘を思う親心には共感しましたか?

「撮影時は妻が妊娠中で、正名さん演じる幽霊に対しては『娘のためとはいえ、頭おかしいな』と思っていました。そして、自分の娘が生まれた後、試写を見てもやっぱり『頭おかしい』と思いましたね(笑)。ただ、子どものために全てを投げ打つとか、娘が幸せになるためなら他のことはどうでもいいという感覚は、実際に娘をもってみてなんとなく分かるようにはなりました」

空気階段・水川かたまり、初主演映画は「見終わったらふと肩が軽くなる作品」

──喜矢武豊(ゴールデンボンバー)さんとの取っ組み合いのシーンもありましたが…。

「人生で取っ組み合いをしたことがなかったので不安でした(笑)。でもちゃんと稽古があったし、アクション部の方が派手に見える動きを指導してくださって、本当にけんかをしているように演じられてうれしかったです。取っ組み合いの演技は、ある種ダンスの振り付けのような協力プレーなんだなと知りました」

──今後のコントで生かしたりすることもできそうですか?

「そうですね。ただ、うちは相方(鈴木もぐら)があの体形だから機敏に動けないので…(笑)。でも、取っ組み合いは難しいにしても、いろいろないい経験ができたので、これからコントに落とし込めたらいいなと思います」

──この映画で、最もかたまりさんに“刺さった”面白さはどんな点ですか?

「ホラーなのか、コメディーなのか、ヒューマンドラマなのか分類できないところが魅力ですね。ことさらメッセージを主張するわけではないけど、重い気持ちを抱えている人も見終わったらふと肩が軽くなる、清々しい気持ちになれる作品になっていると思います」

【プロフィール】
水川かたまり(みずかわ かたまり)
1990年7月22日生まれ。岡山県出身。2012年に鈴木もぐらと空気階段を結成。「キングオブコント2021」チャンピオン。「空気階段の●山」(BSよしもと)、「空気階段の踊り場」(TBSラジオ)などにレギュラー出演中のほか、「有吉の壁」(日本テレビ系)など出演番組多数。

【作品情報】

空気階段・水川かたまり、初主演映画は「見終わったらふと肩が軽くなる作品」

映画「死に損なった男」
公開中
構成作家の関谷一平(水川かたまり)は、お笑いの道に憧れ、夢がかなった半ば、殺伐とした社会と報われない日々に疲弊し、駅のホームから飛び降りることを決意。しかし死に損なった一平の前に男の幽霊(正名僕蔵)が現れ、「娘に付きまとっている男を殺してくれないか?」と依頼される――。空気階段・水川かたまりの映画初主演作。監督は長編デビュー作「メランコリック」(2019年)で数々の賞を受賞した田中征爾。

配給:クロックワークス
©2024 映画「死に損なった男」製作委員会

取材・文/釣木文恵 撮影/大槻志穂



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