「御上先生」堀田真由が“犯人役”の苦悩を明かす「言葉以外の表情にこだわった」2025/03/13 15:00

松坂桃李が主演を務める、日曜劇場「御上先生」(日曜午後9:00)が現在放送中。本作は、“官僚教師”の御上孝(松坂)が、生徒たちと共に教育現場の現実に立ち向かい、大人社会の理不尽と対峙(たいじ)する姿を描いた大逆転の教育再生ストーリーだ。子どもが生きる「学校」、大人がもがく「省庁」という一見別次元にあるこの二つを中心に物語は展開。未来を夢見る子どもたちが汚い大人たちの権力によって犠牲になっている現実、そんな現実に一人の官僚教師と、令和の高校生たちが共に立ち向かう、教育のあるべき真の姿を描くこれまでとは一線を画した新たな学園ドラマだ。
第8話(3月9日放送)では、冴島悠子(常盤貴子)の事件を調べていた神崎拓斗(奥平大兼)と次元賢太(窪塚愛流)がある人物にたどり着いた。今回はクライマックスを迎える第9話(3月16日放送)を目前に、殺人事件の犯人役で衝撃を集めている真山弓弦を演じる堀田真由にインタビュー。本作の魅力や演じたキャラクターについて聞いた。
受けの芝居だからこそ、言葉以外の表情にこだわった
――まず、本作のお話をお受けした時の感想を教えてください。
「クランクインの前に、『アンチヒーロー』(2024年)でご一緒した飯田和孝(プロデューサー)さんからすごく温かいお手紙をいただきました。また新しい挑戦を一緒にさせていただけることと、『アンチヒーロー』は私の役者人生の中でも大事な作品の一つなので、そのスタッフの皆さんと一緒に物作りができることがうれしかったです」
――第2話で、殺人事件の犯人が弓弦を演じる堀田さんと明かされました。視聴者の方は「まさかの…堀田さん!」「後ろ姿から完全に男性かと思った」という反響が多くありました。
「私もイメージを見た時に『男性なのかな?』という先入観がありました。実際、視聴者の皆さんも本当に驚かれていて。このドラマだけに限らず日常でも勝手にそういった先入観を持ってしまうことがあるので、目に見えない相手の言葉には怖さがあるなと感じました」


――弓弦は相手を拒絶するお芝居が多く、いつも堀田さんが演じられている役柄とはまた違う印象があります。お芝居で意識されていることはありますか?
「普段からお芝居をする上で、相手のセリフをきちんと聞くことをいつも意識していて、その時に流れている空気によって、私自身の発するニュアンスも変えたりしています。今回はどちらかと言うと攻める方ではなく、受けのキャラクター。弓弦は拒否しながらも、御上先生や神崎くんが接見室に来てくれて自分自身と向き合っていく中で、2人の思いが彼女に本当はビシビシと伝わっている。それが分かるように、セリフがないところの表情も意識しながら演じていました」
――目線など細かいところまで意識されて演じられていると感じます。役作りをする上では監督とどんな話をされましたか?
「『アンチヒーロー』でご一緒させていただいたプロデューサーさんや監督、スタッフの方々が多かったので、分からないことや自分の考えをすごく伝えやすい環境でした。今回は人をあやめてしまう誰しも経験がない、到底想像ができない役柄なので、シーンごとにみんなで悩みながら作りました。また、私自身もずっと分からなさを抱えながら現場に立っていましたが、他者を見るように挑みました」

――特に接見室でのお芝居は、制限が課された特殊なシチュエーションだと思います。そこで演じていく中で感じた難しさや面白さはありましたか?
「接見室は無機質な空間なので、全てを見透かされているような感覚でした。その中で、私が特にこだわっていたのは、シーンによって映っていないところもありますが、弓弦が接見室に入って来て椅子を引くところ。人との心の距離感をそこで見せられたらいいなと思い、最初は、椅子をぐっと引いてから座っていましたが、御上先生と神崎くんに会って自分自身や社会と向き合い、やっと前向きな感情になってきた状態では、椅子を引かずにすんなり座ったり。自分の中のこだわりをそこで出せたらいいなと思いやっていました」

“共演者”が与えてくれた刺激と再発見
――主演の松坂さん、神崎拓斗演じる奥平さんそれぞれと対峙するシーンは圧巻でした。お二人の印象をお聞かせください。
「松坂さんとは、私が10代の時に連続テレビ小説『わろてんか』(NHK総合ほか/17年)で共演させていただいた以来でした。時を経て、また違った形でご一緒させていただけることがとっても感慨深かったです。以前は、作品に出始めたばかりで分からないことばかりだったので、今回は少しでも成長した姿を見せられたらいいなと思いながらお芝居をさせていただきました。松坂さんは昔から変わらずどんな時でもフラットな状態で、周りを気にかけることができる方。今回、私の役柄的に、コミュニケーションを取ることで集中力が切れてしまうのではと怖かったので、撮影中はなかなか深くお話はできませんでしたが、クランクアップの時に『大変な役を本当にお疲れさまでした』と言っていただきました。ずっと見てくださっていたんだなと、うれしかったです。そんな柔らかい印象が変わらずあります」
――奥平さんはいかがですか?
「映画『MOTHER マザー』(20年)を見させていただいていて、これから芸能界でお芝居を担っていかなければいけない私たちの世代からすると、奥平くんとはご一緒してみたいとずっと思っていました。共演できると聞いた時は、素直にうれしかったです。さらに、たたずまいや神崎くんの役柄がそうなのかもしれませんが、少年っぽさもありながら大人っぽさも持ち合わせた、年齢よりも大人に見える方。生徒役の皆さんとお話されている時は年相応の男の子に見えますが、大先輩の方々とも対等にコミュニケーションを取られている。私が奥平くんの年齢の時は『年上の方とこんなにしゃべれていたかな』と思うぐらい落ち着いている印象があります。いい意味で年齢が不詳な方だと思いました」
――物語を客観視するところもあると思います。視聴者目線で堀田さんのお気に入りのキャラクターを教えてください。
「学生役の皆さんはそれぞれ個性がありますよね。キャラクターで言うと、永瀬莉子さんが演じる櫻井(未知留)さんが好きです。最初はどんなことに対しても拒絶するというか、『すぐ授業始めてください』と冷たい感じに見られていましたが、後半になるにつれて本当はとても温かい人だと分かります。物事が進まない中で、あのキャラクターがいてくれるからこそ、御上先生の一番キーワードとなっている“考えて”という言葉が生きてくるんだと思います。遮断して自分だけを見ていた櫻井さんも、御上先生の言葉によって“考えて”変わっていく。そのキャラクター像がすごく私は好きです。あとは、キャラクターではないですが、個人的に(東雲温役の)上坂樹里ちゃんのお顔が好きで、出てこられるたびに私もあんな透明感になりたい、と思いながら見させていただいています」

堀田が本作で得た、気付きと成長とは?
――詩森ろばさんが描かれた脚本を読んだ際にどのような印象を受けましたか?
「詩森先生が描かれる世界というのは、一つ一つのセリフに重みを感じるような言葉ばかりでした。弓弦のセリフも響くものがありますが、特に御上先生が『ここに悪い人はいない』という例え話をしたあとに、『本当に悪いやつはここにもいない』ということを言ってくれるんですよね。弓弦も人をあやめてしまって絶対に悪い人ではありますが、あえて弓弦にそれを言ってくれた。その言葉の裏は何なのか考えた時に、弓弦としてもそうですし、私自身もすごくすてきな言葉だなと響きました。さらに、神崎くんが言う『自分の責任だと思わないと進めない』というセリフにも私自身ハッとさせられました。社会に対してあらゆることを自分ではなく世の中の責任にしてしまっていることがすごく多いと思っていて。それは大きな社会だけでなく、学校だったり会社という小さな組織の中でも他責にしてしまうことがあると思うんです。でも、そうではなく、自分自身が考えて行動するだけで、もしかしたら隣の人の痛みや弱さに気付けるかもしれない。社会に対しても大きなものとして見るのではなく、自分自身がどうしていきたいのかを考えていかなければいけないんだとすごく感じました」
――最後に、本作への参加はご自身にとってどんな経験になっていますか?
「弓弦の役柄として人をあやめてしまっていることに関して、実際の自分は受け入れてはいけないけれど、受け入れなければこのキャラクターを全うすることはできない。その感覚が不思議で初めての経験だったので、ずっと分からなさを抱えたまま現場にいました。ですが、ふと、『分からないことって全然悪いことじゃない』と思えたんです。逆にこれまで、もしかしたら役を演じる上で分かったつもりで日々撮影を重ねていたかもしれないと思った時に、お芝居に限らず生きていく中でも、分かったつもりで物事を進めていく方が怖いと、感じるようになりました。今作は違う角度から物事を考えることができましたし、これからお仕事を続けていく上ですごく大事な時間をいただいたなと思います」


【プロフィール】
堀田真由(ほった まゆ)
1998年4月2日生まれ。滋賀県出身。主な出演作は、ドラマ「大奥」(NHK総合ほか/2023年)、「たとえあなたを忘れても」(テレビ朝日系/23年)、「風間公親-教場0-」(フジテレビ系/23年)、「アンチヒーロー」(TBS系/24年)、「若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-」(日本テレビ系/24年)、映画「ある閉ざされた雪の山荘で」(24年)、「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」(24年)などがある。
【番組情報】
日曜劇場「御上先生」
TBS系
毎週日曜 午後9:00~9:54
取材・文/N・E(TBS担当)
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