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「Nスぺ」ディープオーシャンシリーズ最新作「シーラカンス」の裏話を制作陣に聞く2025/03/02

　3月2日にNHK総合で放送する「NHKスペシャル」（午後9：00）は、「ディープオーシャン　幻のシーラカンス王国」と題し、NHK深海取材班が謎多き古代魚・シーラカンスに迫る。

　今も詳しい生態のほとんどは分かっていない「シーラカンス」。今回、インドネシア政府の特別な許可を得て、NHKが国内外の研究者と共に撮影に挑んだ。一同は最新鋭の深海調査船・OceanX号に乗り込み、3台の潜水艇を駆使（くし）して昼夜を分かたず徹底的にシーラカンスに密着。8時間ずつ深海で交代し、徹夜で観察・撮影する大調査「72時間連続追跡」を世界で初めて実現させた。そして、繁殖につながるのではと思われる行動や、大きく口を開けるさまなど、これまで知られていなかった行動を克明に捉えている。

　そんな快挙の裏側を、今回の取材にリーダーとして参加した「アクアマリンふくしま」飼育展示統括部長の岩田雅光さん、同番組の制作統括・岩崎弘倫さん、カメラマンの加倉井和希さんに聞いた。

――今回の成果は、シーラカンス研究の中でどんなところが画期的だったんでしょうか。

岩田　「一番有意義だったのは、72時間という長時間にわたって観察できたことです。シーラカンスは動きが非常にゆっくりしているので、今までに撮った映像ではシーラカンスにしてみると“写真を撮っているのと同じくらい”短い時間しか観察することができなくて。でも、今回は長時間にわたって観察ができたことで、初めてシーラカンスの動きがよく分かりました。それと、今回は最大8匹が一緒にいるところを見ることもできて。今まではシーラカンス同士の関係や社会性が全く分かっていなかったのですが、少しずつ見えてきました。さらに、観察のみならず、シーラカンスがどうやって餌を食べているのかを解明するために電気刺激を与えて反応を見てみたり、能動的に実験を仕掛けることもできました」

――逆に、まだ謎に包まれているのはどんなところですか？

岩田　「繁殖に関することが全く分からなくて。卵ではなく子どもを産む魚だということは分かっているのですが、どういう場所で産むのか、どう精子と卵子を受け渡しているのかということは今も分かっていないんです」

――視聴者の中には、シーラカンスのことをまだまだ知らない方もたくさんいらっしゃると思います。岩田さんの思うシーラカンスの魅力を教えてください。

岩田　「日本人はなぜかみんなシーラカンスの存在を知っているということが、世界の研究者からするとびっくりするらしいのですが、名前は知っているけれどどんなふうに動くのかは分からない人がほとんどだと思います。そういった方も、今回の映像を見てもらうと、すごく鮮明に写っているので興味が出るんじゃないかな。僕も自分たちの映像で初めてシーラカンスを見た時に、とっても奇麗な魚で、神々しいといいますか、威厳があると感じました。番組を見て、同じように思ってくれる人が少しでも増えるとうれしいです」

――加倉井さんは、カメラマンとして撮影の際にどんなことを大切にされているのですか？

加倉井　「一番は距離感ですね。こちらの都合で生き物たちに近づきすぎないように相手をよく見ています。『どんなことを考えているのだろう？』と自分の中で妄想しながら見ていると、笑っているように見えたりして面白いんです。8K映像でたくさん撮れるシステムを作ったのですが、それでもカメラに熱がこもってしまうので、ずっと回し続けることは難しくて。なので、何かが起こった時にしっかりカメラを回せるように、生き物の気持ちを想像しながらずっと観察しています」

――最後に、深海をNHKとして取材し、放送することの意義をどのように感じているか教えてください。

岩崎　「これは12年前にダイオウイカを放送した時にも感じたことですが、テレビの大きな使命の一つでもある『見たことのないものを見せる』ということです。それが、公共放送として取り組むテーマになりうるだろうと考えました。もう一つは、深海って、まだ分かっていないことが多くて。日本の領海の平均水深は4000mを超えるんです。それだけ深い海に囲まれている国は日本ぐらいしかないので、日本は深海の国と言ってもいいくらい。僕は、深海がこの地球の運命を決めていると言っても過言ではないと思うんです。なので、深海への興味をもっと持ってもらうということも大きな意義の一つだと考えています」

――ありがとうございました。

　さらに、今回もテーマ曲を久石譲さんが担当！　久石さんによる楽曲制作の裏側はこちらのYouTubeで公開されています。あわせてお楽しみください。

取材・文／Kizuka（NHK担当）

キーワード

• # NHKスペシャル
• # シーラカンス
• # ディープオーシャン

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