「秘密~THE TOP SECRET~」原作・清水玲子×脚本・佐藤嗣麻子が制作秘話を語る2025/02/24 12:00
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板垣李光人さんと中島裕翔さん(Hey! Say! JUMP)がダブル主演を務める、フジテレビ系の連続ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」(月曜午後10:00=関西テレビ制作)は、科学警察研究所の法医第九研究室(通称・第九)を舞台に特殊なMRI技術を用いて、室長・薪剛(板垣)と新米捜査員・青木一行(中島)たちが解決不可能とされてきた事件の真相を解き明かすヒューマンサスペンスです。
このたび、「第九」捜査室のセットを訪問した原作者の清水玲子さん、脚本家の佐藤嗣麻子さんが、現場見学後に対談取材を敢行。“この冬、最も切ないバディ”とも言われる本作は、どのようなやりとりを経てドラマ化が実現したのか、板垣&中島の印象、そしてドラマへの思いなど…視聴者からドラマ公式Xに寄せられたさまざまな質問に対して、原作者と脚本家の“バディ”が語りました。
――撮影現場の見学を終えられたばかりですが、雰囲気はいかがでしたか?
清水 「ドラマの内容はピリピリしているものが多いんですけど、現場は皆さん和気あいあいとしていて楽しそうですね」
――セットをご覧になった感想は?
清水 「(セットは)クラシカルな作り込みが面白いなと。ちょっと昭和初期のような」
佐藤 「そうそう、昭和の感じ。あれは、セットデザイナーさんが『昔の秘密基地っぽい感じにしたい』と言って。MRI映像をさかのぼって再生する時にキュルキュルってくるくる回すのはいいですよね」
清水 「そう! 『あ、漫画の感じを生かしている』と思った」
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――清水先生と佐藤さんの出会いについて教えて下さい。
清水 「(佐藤さんが)萩尾望都先生のCD-ROM作品集の監督をされてらっしゃったんですよね。それでインタビューに来てくださって…」
佐藤 「そこで知り合いになって、その後も舞台を萩尾先生と一緒に見に行ったり。あと、よく漫画家さんのパーティーに呼ばれて出入りしていたので、しょっちゅうお会いしていましたね」
清水 「基本、少女漫画脳の方だから(笑)。その上に映像が乗っかっているみたいな人なんですよ」
佐藤 「そう、基本が少女漫画(笑)。元々、萩尾先生の作品を勉強して、ページ数とコマ割りを見て起承転結を覚えたんですよ。だから脚本を書くにしても萩尾先生の漫画がベースになっていますね」
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清水「映像の怖さではなく、人間関係が見どころのドラマ」
――「秘密」の映像化は何度か企画が立ちあがったというお言葉がありましたが、どのような経緯を経て今回実現したのでしょうか?
佐藤 「長いお話なので、私はやっぱり連ドラがいいと思っていたんですが、なかなか引き受けてもらいづらかったというか、内容が激しいので(笑)」
清水 「そうですよね。そこは読者の方々も心配していたところだと思います、『地上波で大丈夫なの?』って。漫画のほうはかなりグロいので(笑)」
佐藤 「漫画はそのグロさが美しい絵でオブラートに包まれているんですが、ドラマだとどうしてもそこがリアルになってしまう。でも本当はそれをやりたかった、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』みたいな感じで」
清水 「あはははは。そういう意味では、映像の怖さではなくて、“人間関係”が見どころのドラマになっていますよね」
佐藤 「そう。やっぱり薪、鈴木克洋(中島/一人二役)、青木、三好雪子(門脇麦)の人間関係がどう変わっていくかという話を作りたくて。公式Xで募集した質問の中にも『どうやってエピソードを選定していますか?』とありましたけど、4人の関係が変わるエピソードを選んでいます。あと、『どうして(露口)絹子(夏子)の事件が1話目だったのか?』という質問もありましたが、それは、4人の関係が変わる話じゃないんですけど、もったいないから絶対やりたいと(笑)。大好きなエピソードだったので」
清水 「分かります。私も絹子のエピソードは、『秘密』最初の12巻の中ではかなり好きな方です」
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佐藤「薪の気持ちをきちんと視聴者が追体験してほしかった」
――清水先生に伺います。ドラマをご覧になった感想はいかがでしょうか?
清水 「もう感無量ですね。生きている鈴木を自分でもあまり描いたことがないので、1話目でがっつり生きている鈴木を見ることができて、『あ~鈴木をもうちょっと描けば良かったな』と思っちゃいました。なので、それを読み切り作品として描きました。鈴木をちょっと回想するお話です」
――それが「MELODY」4月号(2/28売)に掲載される特別編ですね。鈴木が1話目から出てきたことについてどう思われましたか?
清水 「すごくサディスティックですよね(笑)。漫画では最初から死んだものとして描いていますけど、ドラマではあんなに優しくて頼っていた鈴木がいなくなっちゃうんですから」
――鈴木を1話目から登場させるというのは、どのような意図をお持ちだったのでしょうか?
佐藤 「映像作品だと、フラッシュで出てくる過去回想はどうしても弱いんです。『これなんなの?』って思っているうちに終わっちゃって感情移入ができない。やっぱり視聴者の方には、薪と同時に貝沼(清孝/國村隼)に会ってほしいし、鈴木に会ってほしいし。で、鈴木に死んでほしいし、貝沼に死んでほしい。その薪の気持ちをきちんと視聴者が追体験してから青木に会ってほしかったんです。そうじゃないと、薪がなぜあんなに悩んでいるのか、なぜすぐに気絶しちゃうか、一緒に体験しないと分からないと思うんですよね」
――そういった原作からの変更は、どのような話し合いのもとに進めていかれたのでしょうか?
佐藤 「元々最初に作った構成を清水さんに『いかがですか』って感じで見せていたんです」
清水 「なので、貝沼の設定が違うということは当初から知っていました」
佐藤 「その後も、違うかなと感じる部分はお互いに話をしてきました。清水さんから『いや、ちょっとこれは』って言われたら直して、こちらから『ここはこうしたい』ってご相談したり」
清水 「うんうん」
清水「板垣さんはどんどん薪みたいになってきて…。寝ているだけでも薪みたい」「中島さんは演じ分けが見事。鈴木と青木、顔つきも声の出し方も違う」
――薪役・板垣さんの印象を教えていただけますでしょうか?
清水 「回を重ねるごとにどんどん本当に薪みたいになってきて。寝ているだけでも薪みたい(笑)。『silent』(フジテレビ系/2022年)も見ていましたし板垣くんを知ってはいたんですけど、もう『silent』の顔と違うんですよ。顔そのものは変わっていないのに、こんなに変わっちゃうんだって感じですね。驚きました」
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――鈴木・青木の一人二役を務める中島さんについての印象はいかがでしょうか?
清水 「素晴らしいです。中島くんファンになりそう(笑)。演じ分けも見事ですね。止まった映像でも青木と鈴木だと顔つきが違うかなと。声の出し方も違う。相当気持ちから持っていって変えているんだろうなと思います」
――視聴者からの質問にもありましたが、なぜ一人二役にされたのでしょうか?
佐藤 「それしかないというか、別人だと視聴者の方が見ても『あ、同じ』って思わないじゃないですか。同じ人が髪形や雰囲気を全部変えてやるからこそ『似ている』となるのであって、絶対同じ人がやるべきってもう最初から私は思っていました」
清水 「そうなんです。でも期せずして、“中島くんの一人二役演じ分け”っていうところも見どころになった感じですね」
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貝沼の設定変更は、佐藤「薪をもっと苦しめようと…」
清水「それもサディスティック(笑)」
――貝沼の人物像が原作からガラッと変わりました。佐藤さんはどのようにこの設定を思い付かれたのでしょうか?
佐藤 「いやもう、薪をもっと苦しめようと(笑)」
清水 「あははははは。だから薪は信頼している人に裏切られ続けちゃう(笑)」
佐藤 「あと、貝沼には鈴木とも関係していてほしかったんです。原作は薪と貝沼の関係だけなんですが、鈴木もそれを知っていてほしいし、その関係に加わっていてほしかったんです。それと、MRIがすごく複雑で説明が大変なので、誰かそのエキスパートが説明してくれたほうが楽だな、というところから貝沼が教授になりました」
清水 「そう、描いている時も思ったんですよ、ホームレスのような貝沼がどうやって少年院のセラピーに行ったのか。そこは確かに脳科学の教授だったらできますよね」
佐藤 「催眠も脳科学の教授ならかけやすいだろうと」
清水 「しかも、貝沼が鈴木をターゲットに決めた理由が、“薪が鈴木に視線を送っていたから”、それでロックオンって。恐ろしいですよね。鈴木くんに見せて狂わせてやろうって感じがもう。最初から催眠術のためにお香たいていたもんね」
佐藤 「そうそう、そうなの」
清水 「それもサディスティック(笑)」
佐藤 「余計に薪が苦しむ(笑)。当たり前だけど、ドラマだと漫画より表現がマイルドになっているでしょ。だからそこは心理戦で攻めていかないとな、と」
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――國村さん演じる貝沼の印象はいかがでしょうか?
清水 「怖いですねえ。それこそアンソニー・ホプキンスみたいな怖さが。立っているだけで怖いっていうのはなかなか出せないですよね。実は國村さんがキャスティングの第一希望だったのでうれしいです。國村さんは本当に声が良くて、鏡を見てしゃべっているだけなのに、どうしてこんなに怖いんだろうって。だから、貝沼の映像を見た薪がフッて倒れるのも、確かにそうなるよなって思います。本当に怖い」
清水「薪と青木がバディ感を強めていく関係を見てほしい」
佐藤「罪と赦(ゆる)し、死と再生の話。最後には救われる」
――原作ファンの方や周囲の反応についてどうお感じになっていますか。
清水 「いろいろな感想を拝見しましたが、『とにかく3話まで見てくれ』と思っていました。でも、『よくぞこのキャスティングにしてくれた』って方が多いですよね」
佐藤 「そうですね。原作もののドラマをやると必ずこっち側からあっち側までいろいろな意見をいただきますが、今回キャスティングにしてもストーリーにしても肯定的に受け止めてもらっているなと感じています。私は清水さんの大ファンですし、『秘密』も大好きだから、ファンが怒っちゃうとほんとに悲しいので、そうならなくて良かったなと思っています」
――最後にドラマの見どころ、そしてこの対談をご覧になっている方々へのメッセージをお願いします。
佐藤 「テーマとしては“罪と赦(ゆる)し”、そして、“死と再生”の話になっています。そこに向かっていくので、つらいお話は続きますが、最後は救われると思いますから、ぜひ最後まで見てください」
清水 「鈴木の面影を見て、薪がだんだん青木とのバディ感を強めていくという関係もぜひ見てほしいですね。この先、青木が大変な目に遭っちゃうので、中島くん頑張って(笑)」
【プロフィール】(左から)
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清水玲子(しみず れいこ)
1983年「三叉路物語(ストーリー)」でデビュー。2002年に「輝夜姫」で第47回小学館漫画賞を、11年には「秘密-トップ・シークレット-」で第15回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。現在は「MELODY」(白泉社)にて「秘密season0」を連載中で、最新作「DNA」編11・12巻は2月20日に同時刊行されたばかり。うららかかつ繊細なタッチで描く絵と、深く壮大な世界観の少女漫画作品で、熱狂的なファンを獲得している。
佐藤嗣麻子(さとう しまこ)
映画監督、脚本家。1987年、ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールへ留学後、脚本・監督を務めた日英合作映画「ヴァージニア」(92年)で東京国際ファンタスティック映画祭「アボリアッツ賞」を受賞。また、95年の監督作「エコエコアザラク」が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で批評家賞(南俊子賞)を獲得。映画・ドラマ「アンフェア」(フジテレビ系)シリーズやドラマ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」(フジテレビ系/2015年)、映画「陰陽師0」(24年)など、数々のヒット作を手がける。
【番組情報】
「秘密~THE TOP SECRET~」
関西テレビ・フジテレビ系
月曜 午後10:00~10:54
文/五條亜唯(フジテレビ・関西テレビ担当)
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