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NHKの脚本開発チームが追加メンバーを募集! 担当P&Dの本音を直撃2025/02/08 10:00

NHKの脚本開発チームが追加メンバーを募集! 担当P&Dの本音を直撃

 NHKが2022年に立ち上げた、脚本開発チーム・WDR(Writers’ Development Room)プロジェクトは、海外で一般的とされている複数の脚本家が「ライターズルーム」という場に集い、共同執筆する手法を用いて脚本を開発する試み。第1期では2025件の応募から10名のメンバーを選抜し、活動。24年10月、そこから生まれた企画を基に制作された土曜ドラマ「3000万」が放送された。

 「3000万」は、コールセンターの派遣社員として働く佐々木祐子(安達祐実)と夫の義光(青木崇高)が、事故に巻き込まれた際に息子の純一(味元耀大)が盗んでしまった現金3000万円を巡って葛藤するクライムサスペンス。次々と起こる予想外の展開に、視聴者はくぎ付けになった。

 そんなWDRが、第2期プロジェクトに向けて若干名の追加メンバーを募集することが発表に。メンバー公募に向けて、第2期のプロデューサーを務める上田明子さんと、ディレクターの保坂慶太さんにインタビュー。前回のプロジェクトの振り返りや、第2期の展望などを聞いた。

――前回が初めてのプロジェクトだったそうですが、いかがでしたか?

保坂 「手応えは全体を通して感じています。全部が試行錯誤で、公募を開始した時は放送にこぎ着けられるかも分からない試みだったのですが、無事に放送できて、評価をいただけたと感じています」

――上田さんはどうでしたか?

上田 「すごくぜいたくな時間でした。海外ドラマの脚本の作り方を学んで、体系を立ててみんなで共有して、それを企画にどう反映できるかを試して…という試行錯誤を重ねられて。ドラマの制作をしていても、『面白さ』の本質について考えられる時間は実はそう多くはなかったりもするので」

――海外(特にアメリカ)の手法を日本に取り入れるという意味ではいかがでしょうか。

保坂 「始める前は、『遠慮し合ってディスカッションにならないんじゃないか』と心配されることもあったのですが、全然そんなことなかったですね。共同執筆に賛同した人が応募してくださったので、建設的なディスカッションを続けることができました」

――第1期のプロジェクトで、実際に作家さんから上がった声を教えてください!

上田 「最初の1カ月で集中的に海外ドラマの分析や手法の共有をしたのですが、それを吸収していく作家の皆さんの貪欲さ、真摯(しんし)さがすごかったです。その期間は学校とか、ゼミみたいだったとおっしゃっていました。毎週課題や締め切りがあって、プレッシャーや緊張感もあったけど、孤独ではなかったと。作家さん同士が密に信頼関係を築かれたのだろうなと思います」

保坂 「僕も含めて、皆さん相当苦労されたと思うんですけど、オンエアされて世間のリアクションをいただくことで報われたのではないでしょうか」

――逆に、前回のプロジェクトを通して感じた反省点を教えてください。

上田 「NHKのドラマは、テーマ性や社会性を評価していただくことが多いのではないかと思いますが、第1期ではあえてエンタメ性の方に振り切って、いかに夢中になって見てもらうか、続きが気になるかという点に集中して企画を立ち上げていたんです。それは第1期で十分にやったという感触があり、次はテーマ性とエンタメ性を両輪として考えたいなと。どちらかを捨ててトレードオフするというよりは、ログライン(ドラマの内容や要点を記したもの・1~3行程度)を作る段階から、内包しているテーマは何か、そのテーマが今の日本に暮らしている人にとってどういう意味を持つかをより明確に考えながらやっていけたらと思っています」

――“テーマ”といいますと?

保坂 「『3000万』で言うと、“一度犯してしまった過ちをどうやったらやり直せるのか”のように、ドラマが“何について考える物語なのか”ということです。そういったことを前回は脚本を開発しながら考えていったんですけど、最初にもう少し固めた上で開発していくと、よりいいかなって」

――第2期では、“物語を通して伝えたいこと”を最初に決める予定なんですね。

保坂 「もちろん開発を進めるにあたってブラッシュアップされるものなので、最初に完全に決める必要はないですけど、両輪として大事だということは最初から共通認識として持っておきたいです。前回はあえて、『どうしたら話が転がって視聴者の興味を持続させるか』というエンタメ性の部分に議論の時間を10割充てていたんですけど、今回はテーマについてディスカッションする時間も最初から設けたいねと上田と話しています」

――「3000万」に関する視聴者からの反響はご覧になっていましたか?

保坂 「想定外だったのは、『怖過ぎる!』というコメントが結構あって。サスペンスフルな海外ドラマばかり見ていたので自分の感覚がまひしているのかもしれません。でも、総じていいリアクションをいただけたと思っています」

上田 「坂本(木原勝利)への愛着を持ってくださったり、意外なキャラクターを愛でてくださる方がいて驚きました。複数の作家さんがキャラクターを立ち上げるところから関与しているので、キャラクターの多面性を出すことができて、愛してもらえたのかなと思って。良かったです」

NHKの脚本開発チームが追加メンバーを募集! 担当P&Dの本音を直撃

――追加メンバー募集のお話に戻りますが、前回より短い10ページの作品で応募していただくんですよね。

上田 「今回は字数などをある程度指定して、実際にWDRプロジェクトで使っていた書式とほぼ同じ形で書いていただく想定です。前回の経験から、10ページ書いていただければ、物語の展開も含めて書き手の方の魅力や武器が伝わってくるかなという判断です」

――どういう方に応募していただきたいですか?

保坂 「本気で脚本家を目指している人ですね。今は脚本に携わっていなくても、『自分だったら面白い物語を書けるぞ』という気持ちがある人に応募していただきたいです。それくらいの野心と覚悟を持っている人でない、メンバーに選ばれたとしても、最終的に放送にこぎ着けるところまではいかないと思います」

上田 「必ずしも“ドラマだけが好き”でなくてもいいのですが、第1期のメンバーの皆さんはそれぞれの形で『面白い物語を作る』ことへの非常に強い意志をお持ちだった印象です」

保坂 「『3000万』のように、交通事故とか、人が死んでしまうとか、そういう派手な出来事がなくても全然良いと思っています。むしろ、生きたキャラクターが書けるかとか、ある事象に対して面白い角度の切り口で書かれていると、読んでいてハッとします」

――キャラクターの個性が立つように書くと、選ばれる確率が高まるかも?

上田 「募集要項にも書いているんですけど、最終的なアウトプットは実写のドラマを目指していて。人の体を通して表現してもらうので、あまり漫画的でなくて、生身の人間が演じる意味のあるキャラクター造形や、セリフのリアリティーや切り出し方を意識してもらえるとより良いかなと思います。でももちろん、自分のアピールしたい力をプレゼンテーションする気持ちで書いていただけたら」

――前回はとにかく前に進んでいく形だったと思いますが、第1期を踏まえて第2期の目標を教えてください。

上田 「また新たなメンバーを迎えることになるので、まずはその力を引き出せるよう、チームの共通言語をつくることに注力したいです。その上で、先程のテーマのお話ですとか、ジャンルも含めて『3000万』とは別のところにチャレンジできればと思います」

――第1期募集の際には「世界を席巻するドラマを作る」という目標も掲げられていましたよね。

上田 「最終的には、世界に出しても通用するクオリティーの脚本を作りたいという思いは変わらずあるんです。でも、“海外”という漠然としたお客さんはいなくて。NHKは公共メディアであり、受信料で制作させてもらうので、まずは、今一緒にこの社会で暮らしているお客さんにきちんと届くものを目指そうと思っています。その上で、作り上げた物語が普遍的なテーマに届けば、その先にも広がっていくと思います」

――ありがとうございました。

プロジェクトへの応募方法は公式HPをご参照ください!

取材・文/Kizuka(NHK担当)



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