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「べらぼう」安田顕「平賀源内にはつらいことも笑い飛ばして生きられるような力がある」2025/01/02

「べらぼう」安田顕「平賀源内にはつらいことも笑い飛ばして生きられるような力がある」

 1月5日から放送が始まる大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。今作は、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた蔦屋重三郎の波瀾(はらん)万丈の生涯を描く、笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマだ。

 横浜流星が演じる“蔦重”こと蔦屋重三郎は、幼くして両親と生き別れ、吉原の引手茶屋(遊郭の案内所のようなところ)の養子となる。吉原の、血のつながりを超えた人のつながりの中で育った蔦重は、とある思いから書籍の編集・出版業を始め、後に“江戸の出版王”へと成り上がっていく…。

 今回は、そんな物語でキーパーソンとなる人物・平賀源内を演じる安田顕さんにインタビュー! 役作りや今作への思いなどを語ってもらった。

――出演発表の時に源内を“ユーモアにあふれた愛嬌(あいきょう)のある方”と表現していましたが、実際に演じてみてどうですか?

「軽いですね。脚本家の森下(佳子)さんが源内にくれるセリフには、大切な言葉がいっぱいあるんですけど、大切なことを大切に言っていないんです。監督の演出の下、さらっと言っていますね。監督は、きっと源内の“人と違う距離感”にこだわっていらっしゃるんだろうなと。これだけ異彩を放っていて、奇天烈(きてれつ)なので人と違うものを持っていてほしいと。なので、意次さま(渡辺謙)とのシーンは、源内が軽くて仕方がないんです。僕は、普段は寡黙なんですけどね」

――言葉も現代とは違っているので、お芝居も大変ですよね。

「普段使っていない言葉を落とし込むのは、なかなか難しいですね。繰り返ししゃべったり、勉強する中で慣れていくしかないですよね。語尾も少し変わるので、それを普段使っているようにしゃべるのはなかなか大変で、私だけでなく皆さんもいろいろ頑張っていらっしゃると思います」

――ご自身と源内で共通点を感じる部分はありますか。

「僕はよく『何を考えているか分からない』って言われますね。源内もちょっと何を考えているか分からないので、そういったところは似ているかもしれないです。時々、会話中に少し違った話題を振る人がいるじゃないですか。興味がどんどん移り変わっていくというか。監督の演出の下、源内をそういう方と捉えて演じています」

――所作で難しいのはどういったところでしょうか?

「源内は、吉原も町も山も行くし、お城にも行く。所作は、大きく分ければ町人と武家で違うんですが、武家なので、お城に行く時の所作は気を付けるようにしていて、他の時代劇での経験や、所作指導の先生の下でやらせていただいています。ただ、町人となると、少し崩した方が面白いし、町人っぽい気もするんです。この間、農民と雑談している源内が振り向くシーンがあって、少しためて、ぎゅっと振り向いたんですよ。そうしたら、監督がすぐ来て、『普通に向いてください』って。けれんの出し方を間違えました(笑)。勉強させていただきましたね」

――いろんなところに登場するという意味でも面白いキャラクターですね。

「そうですね。演じていても楽しいです」

――エレキテルを調整している源内の表情がすごく面白かったのですが…。

「台本のト書きに書いてあるんです。源内は、何か物事に夢中になると舌を上唇に付けるって。人が何かに集中している時の癖ってあるじゃないですか。ただ面白い顔をしてやろうってことじゃないんです。監督、森下さん、プロデューサー、いろんな方が作ったキャラクターとしてそうなっているんです」

「べらぼう」安田顕「平賀源内にはつらいことも笑い飛ばして生きられるような力がある」

――他にもキャラクター作りとして何かやっていることはありますか?

「源内は、いち早く万歩計を取り入れた人で、外国から輸入した一点物の万歩計を腰に着けているんです。なので、歩くシーンの時に、監督が『源内さん、ここ歩きますからね!』と。そういう時は、ちょっと歩いてセリフをしゃべって、万歩計をちらっと見たり。物語上は必要ないんですけど、視聴者は『今あの人何見たんだろう』と気になるじゃないですか。そういう小道具などが本当に抜かりなくて、全部使うことができる状態にしてくれていますね。すごいなと」

――視聴者の方には、細かいこだわりも探しながら見ていただきたいですね。

「そういうことにしといていただけますか。カットされているかもしれないですけど(笑)

――源内の数ある偉業の中で、特にすごいと思ったものを教えてください。

「お話をいただいた後に、ふるさとの香川の平賀源内記念館まで行ったんです。源内はベストセラー作家だけでなく、鉱物の発見、皆さんご存じ『土用の丑(うし)の日』などのキャッチコピーを作ったり、絵も描くし、いろいろな面を持っていて。記念館にもいろんなものが置かれていたんですけど、その中に、少年時代に作った『お神酒(みき)天神』があって。お神酒を置くと糸が引っ張られて、掛け軸の中の天神の顔が赤くなるというなんてことない仕掛けなんですけど。源内少年は、これを作った時に、大人たちが喜んでいる姿を見て快感を覚えたのかなと。彼が、いろんなものを発見したり、好奇心を持って生きていくものの一番最初のきっかけなのかなって、見た時に思ったんです。そういう意味で印象に残っています」

――主演の横浜さんの印象を教えてください。

「役に対してもすごく真摯(しんし)で、真っすぐですし、実直でナイスガイですね。やっぱり、1年半通して作品を背負うわけですから、それに見合う器で、周りが見えている方ですよね」

――源内にとって蔦重はどう見えていると思いますか?

「僕は今年で51歳なんですけど、若さがあふれていて、まだ決まっていない夢を見て、歯を食いしばって笑い飛ばして生きている人たちってすてきじゃないですか。源内が会った時の蔦重もまさにそうですよね。源内は高松藩を脱藩しますが、『ここだけにお抱えになるのは嫌だ、もっと広くいろんなものを見たい、才能を認められたい』という思いがあったと思うんです。それで、江戸に行きますけれども、一番いい時に一つ器を変えて冒険に出るじゃないですか。そんな源内が、吉原の中で奉公人だけれど『これから本屋として頑張りたいんだ!』とギラギラしているエネルギッシュな人間を見たら、若い時の自分に照らし合わせて、応援したいという気持ちになるのは必然だと思います。そういう応援したくなるようなエネルギッシュさは、横浜さんからも感じています」

――今作の世界観の中で魅力的だなと思うところはどこですか?

「やっぱり町人文化が花開いていくところだと思います。田沼時代の財政改革の結果、町人たちがどんどん勢いづいて、浮世絵などの江戸文化が飛躍的に生まれて。江戸の町人文化は、当時だったらサブカルチャーだったと思うんですよ。それが受け継がれて、今やカルチャーになっている。とにかく勢いがあってエネルギーがあふれている時代だった。鎖国の中で、インバウンドではなく“アンバウンド”で、自分たちの国の中から文化を生み出していくエネルギーにあふれて輝いている時代があったんだよということをドラマで伝えて。嫌なことやつらいことがあったとしても、奥歯をかみ締めて笑って、『よし、明日も働こうぜ』って。きついこともいっぱいあるだけだろうけど、見方を変えれば、全員で楽しいことをやれば、結構面白いんじゃないの? という印象がドラマの根底に流れているような気がしています」

――江戸という時代についてはどう思いますか?

「2024年の初めくらいに民放のドラマで田沼意次を演じさせていただいて。『田沼意次とその時代』という授業を受けに行ったんです。田沼は経済についていろいろ考えた方で。米でなくて、お金が必要だって。鎖国が解かれたら貨幣というものが必要なんですよって。その結果、後々経済がきゅっと締まって『田沼恋しき』なんて言われるようになると思いますけど。文化が花開いた時代、勢いがあったんだなと思います。もちろん民衆は今より縛られていて自由じゃなかったと思いますが、そんな中でも、今にも通ずる文化やものがどんどん生まれるようなエネルギーがあふれている時代だったのかなと」

――安田さんは源内のどんなところが一番好きですか?

「明るいところですね。悲劇を喜劇として捉える癖がある気がしますね。日本中を渡り歩いて、お金持ちからお金を持っていない人、いろんな職業の人たちを見てきていると思うんですよ。そういった中で、もちろん野心も培っただろうけども、『やっぱり、いろんな人がいて、いろんな大変なことがあるよな。悲しいことも、楽しいこともあって当たり前だろ?』という適度な適当さ。つらいことも笑い飛ばして生きられるような力があるような気がしていますね。森下さんの言葉ですてきだなと思ったのは、『俺はどこの藩にもお抱えにしてもらえないからね。自らの思いに由(よ)ってのみ、わが心のままに生きる。俺はわがままを通しているんだからきついのは当たり前だ』って笑うんです。すごいなって」

「べらぼう」安田顕「平賀源内にはつらいことも笑い飛ばして生きられるような力がある」

――ありがとうございました!

TVガイドWebでは、明日は小芝風花さんのインタビューを公開しますのでそちらもぜひチェックを!

【番組情報】
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」
NHK総合
1月5日スタート〈初回15分拡大〉
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45

取材・文/Kizuka(NHK担当)



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