「べらぼう」かつて大河ドラマで主演を務めた渡辺謙から横浜流星へのアドバイスとは?2025/01/01
1月5日から放送が始まる大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。今作は、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた蔦屋重三郎の波瀾(はらん)万丈の生涯を描く、笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマだ。
横浜流星が演じる“蔦重”こと蔦屋重三郎は、幼くして両親と生き別れ、吉原の引手茶屋(遊郭の案内所のようなところ)の養子となる。吉原の、血のつながりを超えた人のつながりの中で育った蔦重は、とある思いから書籍の編集・出版業を始め、後に“江戸の出版王”へと成り上がっていく…。
今回は、そんな物語でキーパーソンとなる人物・田沼意次を演じる渡辺謙さんにインタビュー! 役作りや今作への思いなどを語ってもらった。
――渡辺さんは、1987年の大河ドラマ「独眼竜政宗」で主演を務め、そのほかにも何度か大河ドラマに出演されていらっしゃいますよね。大河ドラマの現場をよくご存じだと思いますが、変わったなと感じるところを教えてください。
「『西郷どん』(2018年)の時も若干感じてはいたんですけど、撮影の規模が大きくなってるんですよ。セットが分散しているので、僕も撮影の期間が結構空いて。初期の頃は週1でリハーサルして、みんなで飯食ったり、顔を合わせながら1年間を過ごすみたいな大河だったので、連帯感がすごくあったんですよ。今回、僕、吉原の人は流星ぐらいしか会ってないので。作品が出来上がった時に『あっちの世界はこうなっているのか!』とびっくりするんじゃないかな。僕は、江戸城内の堅苦しい感じばっかりです。明日の撮影は自分の家のシーンなので、田沼は老中ですが、堅苦しくなく、平静の呼吸でできるかを、美術も含めていろいろ考えたいなと思っています」
――一方で、変わらないのはどういうところでしょうか。
「スタッフの熱量は変わらないなって。今日も、美術に『こういうのないかな?』と言ったら、1時間ぐらいで用意してくれて。美術スタッフと、役が生きている時間を作っていくセッションは前から好きでやっていたので、それはいまだに楽しいですね」
――町人文化の中で描かれる田沼をどのように捉えられていますか?
「最近、いろいろな作品でやたら出てくるので、比較検討されるのも嫌だなと思いながら(笑)。でも、一元的に歴史や人を見るのはつまらないと思うので。『何が彼をそういう行動にさせたのか』『彼が国や民のことをどう思っていたんだろう』というところから発露していけば、おのずと違った視点で描けると思うので、読み込みどころかなと。あとは、脚本の森下(佳子)さん頼みですね」
――衣装のこだわりはありますか。
「足軽上がりなので、城中にいる時は地味な裃(かみしも)なんですけど、家にいる時は『これ着る!?』みたいな不思議な着物を着させてもらったりもしています。そういうところで、彼の独自性というか、ひと筋縄ではいかないようなところを視覚的に出していけたらなと」
――大河ドラマは、子どももたくさん見ていますけれども、田沼の生きざまをどう伝えたいですか?
「政治家って、非常に優秀でも、時代や状況がマッチしなかったり、登用されなかったりで、その人が持っている思想や政治方針が、本道として入っていかないことがあると思うんですよね。田沼の足跡(そくせき)をもう1回見直そうみたいな運動がありますが、ドラマで検証すると言うとちょっとおこがましいんですけど、『彼はなぜ流れに乗れなかったのか』というのは面白がっていただけると。田沼は、絶頂期から転落してしまいますが、非業の最後は遂げないです。精神面で、“彼の背中がどう小さくなっていくか”が、やりどころかなとは思っています。これも森下さん頼りなんですけど(笑)。上っていくことよりも、下っていくことってヒロイックだと思うんですよね」
――演じるにあたって田沼ゆかりの地には行かれましたか?
「静岡・牧野原の方には伺って。もう一度行きたいと思っているんですけど。いろいろ知られてないことがあって、田沼の城は、幕府の命令で壊されてからも骨格だけはひそかに残してあったりするんですよ。それって、残したいという意志が地元の人たちにあったんだと思うんです。それは彼への尊敬、あるじとして大事に思っていたことだと思うので、実際の跡みたいなものを見せてもらって、すごく背中を押してもらいました」
――今年は、ドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞を受賞したり、時代劇への風向きが明るい方向に変わってきているかと思いますが、渡辺さんは、“時代劇の今”についてどうお考えでしょうか。
「上空の気圧配置は変わったかなって気がするんですよ。ただ、現場で吹く風が、どういうふうにその気圧配置を受け止めていくかという意味で、大事な時期だと思います。やっぱり、良い脚本やキャストで、欲を言えばきちんと予算をかけてやれるのかが試されていると思うし、なんでもかんでも時代劇だから世界に通用するということでは全くないと思っています。逆に、心してやらないと、また元に戻ってしまいかねないので、良い脚本で情熱をかけて作り込んでいかないと、本当の意味で前に進むことはできないんじゃないかな」
――今回の舞台となる江戸という時代の面白さはどう感じていますか?
「例えば戦国とかだと、欲望がストレートなのでやりやすいと思うんですよ。だから、市井の人たちの話を大河ドラマでやるのはなかなか冒険だなと思うし。今日も演出の方と話したんですが、吉原ってものすごくルールが厳しいんですよ。だから、戦国時代の方がフィクションとして作ることができるのでやりやすくて。吉原は、いろんな階層やルールが厳しくて、かつ資料が残っているので、結構大変ですと言っていましたね。そういうヒエラルキーが起こす切なさ、喜びみたいなものをドラマとして描いていくことは、かなり挑戦的ではあるけど、面白そうだなと思いますね。僕はなかなか吉原には、関われないですが」
――主演の横浜さんとは何かお話しされましたか?
「25年公開の映画『国宝』でも一緒にやっていたので、続いているんです。一緒にご飯も食べましたね。最初に話したみたいに、撮影の方法が僕の時代と違っていて、自然とチームワークができる感じではなくて、共演者との接触が少なかったりすると思うので、『とにかくニコニコして元気で頑張れよ』と話をしました。江戸ことばなど、役へのプレッシャーもあったみたいですが、『好きにやれよ!』と言っておきました」
――主演がニコニコしているのはやっぱり大事なのでしょうか?
「大事ですよ。やっぱり、機嫌が悪い主役って、駄目なのよ。無理してでも、スタジオに入る時って、気持ちをぐっと持ち上げて、『こいつのために何かしてあげたいな』とみんなに思ってもらえる主役じゃないと、なかなか長い仕事って持たないんです。だから、『常に均等に気持ちを持って、現場に入った方がいいんじゃない?』っていう話をしました」
――視聴者は田沼と平賀源内(安田顕)のシーンも非常に楽しみにしていると思います!
「明日から撮影なんですよね。漫才コンビじゃないですけど、“ダブルけん”でやっているので、どんな顕ちゃんが出てくるのか、楽しみですね。森下さんもちょっと遊んでいるところがあるので、彼がたくさんしゃべらなきゃいけなくて。『ちゃんとセリフ覚えてこいよ』って(笑)。お互いにセッションしながらキャラクターを作っていけたらと思います」
――城中での松平武元(石坂浩二)との撮影はいかがでしたか?
「大好きな先輩なんですけど、本当に腹が立つぐらい嫌味を言われて、嫌いなシーンです(笑)。本当に気持ち良く、憎々しくやっていただいております。あと、田安賢丸役の(寺田)心もすごいですよ。会うのをすごく楽しみにしていたんですけど、また背が伸びて。賢丸がすごく若くして、じくじたる思いを持ってぶつかっていくシーンがあったんですけど、『どんなに憤っても、怒っても、君(賢丸)はいいとこの生まれのボンボンだから品だけは絶対なくさないでね』と言ったら、『分かりました!』と頑張ってやっていましたね。すごく良かったです」
――ありがとうございました。
TVガイドWebでは、3日連続で「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」のインタビューをお届け! 明日は源内を演じる安田さんです♪
【番組情報】
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」
NHK総合
1月5日スタート〈初回15分拡大〉
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
取材・文/Kizuka(NHK担当)
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