映画「勇敢な市民」で見せたイ・ジュニョンの悪役魂! アクションシーンの舞台裏も告白2025/01/15
2025年1月17日に公開される韓国の同名人気ウェブトゥーンが原作の映画「勇敢な市民」で、K-POPアーティストから俳優への転身し、さまざまな人気作で活躍中のイ・ジュニョンさんと、デビュー以来、数々の作品を経て、着実に歩を進めているシン・ヘソンさんが主演を務めます。
正規雇用を目標に、長いものに巻かれて過ごしてきた非正規教師のソ・シミン(小市民/シン・ヘソン)が、学園を牛耳り、ただ面白いという理由だけで同級生をいじめるハン・スガン(イ・ジュニョン)たちに立ち向かい、正義を貫いていく姿を描いた本作。シン・ヘソンさんとイ・ジュニョンさんの爽快なアクションシーンが見どころで、韓国で公開された際には大変注目されました。
今回、「D.P.-脱走兵追跡官-」や「マスクガール」(ともにNetflix)の作品に登場し、その甘いマスクとは相反する悪行ぶりで、観客はもちろん、業界でも高い評価を受けているイ・ジュニョンさんに、作品に関するさまざまなお話を伺いました。
――台本を読まれた時、演じるハン・スガンについて、どう思いましたか?
「最初に台本を読んだ時、ハン・スガンは本当に悪い人だなと思って、少し怖かったです(笑)。ですが、僕がハン・スガンというキャラクターを表現することができたら、俳優としていい挑戦になるんじゃないかと思いながら、役に挑みました」
――作品に出演する決め手も、ハン・スガンというキャラクターにあるということでしょうか。
「そうですね。『悪い奴にはナラティブ(背景)はない』と感じましたし、見てくださる方々に『悪い人、そして悪いことは絶対に理解してもらえない』ということをアピールしたいと思ったので、出演を決めました」
――「悪役にはナラティブはない」とおっしゃいましたが、ナラティブのないキャラクターだからこそ演じやすかったりするのでしょうか。
「ハン・スガンというキャラクターにナラティブを与えないだけで、僕自身は彼のナラティブを作っていたし、しっかり考えてもいました。ただ、作品を見てくださる方々が『スガンが悪い子になってしまったのは、こういう背景があるからなんだ』と納得してしまう状況は作りたくなかったんです。なので、皆さんにはハン・スガンが『ただの悪い子』として映るといいなと思いながら演じました」
――ハン・スガンのセリフは、普段のジュニョンさんのしゃべり方とは真逆で過激な言葉が多かったのですが、セリフを言う時はどうでした?
「『人にこんなにひどいことが言えるなんてすごいな』と思っちゃうくらい、理解できないセリフがとても多くて。だから、演技は演技として集中して、早くリフレッシュしようとしました。実は、ハン・スガンは演じながらも彼のことが好きになれなくて、ずっと『嫌なやつだなぁ』と思いながら、演じていました」
――普段は使わない悪い言葉を言うことで、カタルシスとまでは言わないけれど、少しスッキリするとか気持ちよかったということはなかったですか?
「最初はスッキリするのかなと思ったけれど、ハン・スガンのセリフや悪行があまりにもひどくて、むしろスッキリできなかったですね」
――ジュニョンさんご自身も役の印象が強く悪い人といわれていましたし、共感しにくいハン・スガンですが、演じてみていかがでしたか?
「ハン・スガンは、歩いている姿だけでも悪い人間と分かるように表現したかったんです。本番に入る前に少し激しいジャンルの音楽を聴きながら現場の周りを散歩したのですが、現場にいらした方々が『ジュニョンさん、本当に怖いよね』とおっしゃっているのが聞こえてきて、『よし、役作り成功だな!』と思いました(笑)。スタッフさんやキャストの皆さんとおしゃべりしていたら、監督から『ジュニョンさん、今の話し方は優しすぎるから少しワルっぽくしゃべってみて』と言われて、一瞬『おっと?』と思いましたが(笑)、すぐに『はい、分かりました』と応えて、そこからは“ワルっぽく”しゃべろうと意識しました。監督が隣でいろいろとコーチしてくださって、普段より役に集中しやすかったです」
――本作のアクションシーンでは、ジュニョンさんもスタントを使わず、99%ご自身で挑んだと伺いましたが、アクションシーンの撮影はいかがでしたか。
「撮影に入る前に、3~4カ月ほどアクションシーンの稽古をしました。これも新しいチャレンジですが、スタントさんなしのアクションシーンで、時々映るハン・スガンの表情が、観客を作品に引き込むポイントになると思ったので、なるべくスタントさんは立てずに自分でやろうと頑張りました。正直、けがをしたこともありましたが、全然大変ではなかったです!」
――ハン・スガンが同じ学校の生徒をいじめるシーンには、ジュニョンさんのアイデアが反映されたものもあると伺いました。
「ヘビは韓国ではあまりよくない、縁起の悪い生き物とされることが多いので、ヘビをレファレンス(参考)にして、スガンのキャラクターに取り入れてみるのも面白いだろうし、役がより立体的に見えるんじゃないかなと思って、舌をヘビのようにニョロニョロしてみたりしました」
――ヘビを意識されていたんですね! そういったアイデアはどうやって生まれるのでしょうか。
「撮影に入る前に考えたり、あとは撮影の合間にパッと思い浮かぶこともあるので、それらをまとめて、監督に相談しながら撮影しました。僕がアイデアを出したシーンといえば、ハン・スガンがリングで戦うシーンがあるんですけど、スガンがネコのマスクをつかむんです。ここは僕が意見を出して、監督に採用されたシーンです」
――ソ・シミン役を演じたシン・ヘソンさんとの共演はいかがでしたか。印象に残ったエピソードを教えてください。
「シン・ヘソンさんは常に一生懸命に撮影に臨む方で、ヘソンさんのエネルギーに負けないように僕も頑張らねばと思いながら現場に行っていました。そのため、お互いいいシナジー(相乗効果)を生み出すことができたと思いますし、もしチャンスがあるなら違うジャンルの作品でももう一度共演してみたいです。ヘソンさんは、体が丈夫ですし力も強い方で、演技ではありましたが殴られた時は本当に痛かったです(笑)。(殴られた後に)『思ったより強いんだなぁ…』と思いました」
――「勇敢な市民」は学園ものということで、学校でシーンが多かったですが、撮影はいかがでしたか。また、学生時代の思い出などもぜひ伺いたいです。
「僕は高校を中退したので、学生時代の思い出はあまりないんですよ(笑)。今回、学校での撮影がほとんどだったので、久々に高校生になった気分を味わえましたし、撮影日の朝は登校する気分で現場に向かいました。僕、学生時代は、静かであまり目立たない、台本で例えるとセリフのほとんどない“生徒1”のようなタイプでした(笑)。当時は本当に目立ちたくなくて、人に注目されるのがすごく嫌な、センシティブで物静かな性格で、ただただ周りの顔色ばかり伺うタイプでしたね」
――役と真逆の学生生活だったわけですね! ではもしジュニョンさんがムヨン高の生徒だったらどんなグループに所属すると思いますか。
「(ハン・スガンたちの)反対派に入って、彼らの悪行を阻止しようと立ち向かうポジションにいるんじゃないかな、悪いことは一切させないようにね」
――悪に立ち向かうジュニョンさんも見てみたいです。そんな悪行ばかり重ねるハン・スガンですが、演じられて学んだことや成長した、挑戦したと思うところはございますか。
「一番大きいチャレンジと言えば、ほぼスタントさんなしでアクションシーンに挑んだことです。そして、エモーショナルな部分でも少し成長したような気がします。台本を初めて読んだ時に、感情移入しすぎちゃって。ただし、これは役者にとってマイナスに働くこともあるんですよね。しかし、撮影が進むにつれ、最初よりは冷静を保って演じることができたので、こういった点が大きな収穫だったのではないかと思います」
――ソ・シミンとのシーン以外は、ほとんどがやんちゃグループとのシーンでしたね。
「やんちゃグループの一人で、パク・ジュンヒョ役を演じたキム・サンウさんは、スガンの横で、わざといたずらをしたり、いじめの対象に難癖をつける演技がとても上手で。サンウさんの演技がすごくリアルで、僕も集中しやすかったです。そして、僕がスガンのキャラクターにうまく入れない日にも、彼にいろいろ助けてもらったのですごくありがたかったですね。少し面白かったのは、撮影中に監督が僕らに何か伝えたい時は、最初に僕に伝えた上で、『みんなにも伝えておいて』とおっしゃるんです。そうすると、僕は撮影後にみんなを楽屋に来てもらって、それこそハン・スガンじゃないけれど(笑)、伝えるべきことはしっかりと伝える感じで、キャスト同士でコミュニケーションをしていました」
――そのコミュニケーションのおかげなのか、やんちゃグループを演じられた皆さんの演技はリアリティーがあふれていました!
「すごくリアルでしたね(笑)」
――「勇敢な市民」は韓国でひと足先に公開されましたが、公開後の、周りやファンの方々の反応はいかがでした?
「公開後に、道を歩いていたら制服を着た学生さんたちに『おっ、悪い人じゃん!』と言われたことがあります。どう見ても僕の方が年上なんだけれど、友だちに向かって言うようなしゃべり方でしたね(笑)。でも、そのように言われるってことは、僕の演技がリアルだったからだと思って、役者としては成功と言えるんですが、一方でしばらくは悪役はやめた方がいいんじゃないかなと、正直思いました(笑)。身近では、ピョン・ヨハン先輩から『ジュニョンの目力がすごくよかった』と、僕が目で感情を表現するところを見られて、感銘を受けたとお褒めの言葉をいただいて。ヨハンさんは日頃からすごく好きな俳優さんで、尊敬している先輩ですが、そんな方にすてきな言葉をいただいてすごく幸せでした」
――ソ・シミンは、ジニョンとジニョンのおばあさん、さらにはムヨン高の生徒たちにとってスーパーヒーロー的存在なのですが、ジュニョンさんだけのスーパーヒーローと、ジュニョンさんの好きなヒーローキャラクターをお聞かせください。
「スーパーヒーローは父親です。子どもの頃はただ怖い存在でしたが、僕も大人になって、李(イ)家の大黒柱として、どれだけ苦労をし、努力してきたのかが少しは分かるようになりました。そして数日前に、父親に会っていろいろ話したんですけど、その時、父親がすごく小さくなっていて『スーパーヒーローも歳を取るんだなぁ』と思って、少し悲しくなりました。ただ僕の心と体が大きくなっただけなのかもしれないですけどね(笑)。好きなスーパーヒーローは、アイアンマン。最先端で、高スペックのスーツを着て敵と戦うじゃないですか? それがすごく格好いいし、不思議なんですけど、好きですね」
――ありがとうございます! いよいよ1月17日に公開されますが、今年はどんな年にしたいですか。
「今後入隊を控えているので、入隊する前に、いろんな方々とコミュニケーションをし、僕のさまざまな魅力を披露したいなと思いつつ、いつものイ・ジュニョンとして変わらずに、僕らしく、ゆっくりと歩いていきたいです。ファンの皆さんから『ジュニョンの時代劇も見てみたい!』という言葉をいただくことが多いので、チャンスがありましたらぜひ、時代劇にも挑戦してみたいです!」
――最後に「勇敢な市民」を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
「ソ・シミンと、ハン・スガンらに嫌がらせを受けるジニョンたちの味方の立場で作品をご覧になったら、ハン・スガンの言動と悪行をより集中して見られるし、痛快さを感じるシーンもたくさんあると思います。だから、ぜひ彼らの目線で、作品を見ていただければうれしいです。あと、アクションシーンを頑張ったので、アクションと、僕の表情にもぜひ注目して見てもらったら楽しいと思います。期待してくださいね!」
【プロフィール】
イ・ジュニョン
1997年1月22日生まれ。韓国・ソウル市出身。K-POPアーティストU-KISSとして活動したのち、2015年に俳優に転身。以降、ミュージカル「ON AIR ~夜間飛行~」、ドラマ「D.P. -脱走兵追跡官-」「マスクガール」(ともにNetflix)、映画「モラルセンス〜君はご主人様〜」(2022年)などに出演。現在、韓国で最も注目されている俳優の一人として、幅広いジャンルで活躍中。
【作品情報】
映画「勇敢な市民」
2025年1月17日より東京・新宿ピカデリーほか全国公開
原作:キム・ジョンヒョン「勇敢な市民」
出演:シン・ヘソン、イ・ジュニョン、パク・ジョンウ、パク・ヒョックォン、チャ・チョンファ
監督:パク・ジンピョ
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
©2023 Content Wavve Corp. ALL RIGHTS RESERVED
取材・文/YOONHEE PARK
この記事をシェアする