大河ドラマ「べらぼう」江戸の出版王を演じる横浜流星が王の称号を得るとしたら…?2024/12/16 12:15
来年1月5日から放送が始まる大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。今作は、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた蔦屋重三郎の波瀾(はらん)万丈の生涯を描く、笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマだ。
横浜流星が演じる“蔦重”こと蔦屋重三郎は、幼くして両親と生き別れ、吉原の引手茶屋(遊郭の案内所のようなところ)の養子となる。吉原の、血のつながりを超えた人のつながりの中で育った蔦重は、とある思いから書籍の編集・出版業を始め、後に“江戸の出版王”へと成り上がっていく…。
今回は、そんな蔦重を演じる横浜さんにインタビュー! まだあまり世に知られていない蔦屋重三郎という人物の魅力や今作への思いなどを語っていただきました。
――今回、大河ドラマのオファーを受けた時の気持ちを改めて教えてください。
「目標の一つとしていた作品だったのでうれしかったのですが、多くの方が他のNHKの作品に携わってから大河ドラマの主演になられることも多い中で、僕はNHKに初出演で初主演なので『なぜ自分を選んでいただけたのか』という疑問の方が大きくて(笑)。でも、選んでいただいたからには、責任と覚悟を持って作品を届けたいです。撮影を通して、『大河ドラマらしくなくて、新しい大河ドラマだ』と感じているので、大河ドラマのファンの方々はもちろん、そうじゃない方々にも届くとうれしいなと。そして、それが自分の使命だと思っています。『大河ドラマだから』というプレッシャーはないです。全ての作品に100%でやっているので」
――どんなところが「大河らしくない新しい大河」と感じていらっしゃるんですか?
「いい意味で、全てが大河らしくないんです。規模の大きさなどは変わらずすごいのですが、派手な戦がないからこそ、商いの戦で。展開もすごくスピーディーです。あと、(脚本家の)森下佳子先生が作った世界の人の方々は陽気な方が多い。大河ドラマは、なんとなく堅いイメージがあって、若者たちがちょっと身構えてしまう部分もあると思うんですけど、今作はそうではなくて。『今まで大河ドラマを見ていない方や、自分と同じ世代の方々にも見てもらうためにどう届けられるか』を考えて作品を作っています」
――蔦屋重三郎についてまだ知らない人も多いと思いますが、横浜さんから見て蔦重のすごいところを教えてください。また、蔦重の才能で自分にも欲しい能力があれば教えてください!
「彼は、今で言うと出版社の社長でありながら、プロデュースも営業も全て自分で担う本当に多才な人物で。なぜそれができるのかというと、情に厚かったり、責任感があったり、失敗しても心が折れない強いメンタルだったり、元々持っているものもいろいろあると思うんです。でも、一番の彼の魅力は『自分ではなく誰かのために動けるところ』だと僕は感じていて。世の中、そういうふうに思える人間は強いなと思います。何倍もの力にもなりますし、協力も得られるので。僕も自分だけではなく、誰かのためにも頑張れるような人間でありたいなと思います」
――蔦重は他人のために走り回る男気あふれる人物でありながら、自分の恋心には鈍感ですよね。台本を読んで横浜さんはどう感じましたか?
「吉原の男女がそういうもの(恋心)を持ってはいけないというおきてがあるので、植え付けられているんだと思います。でも、その鈍感さが彼のいいところでもあるので。思う存分に、鈍感にやっています(笑)」
――視聴者には、もどかしくドキドキしながら見ていただいて…。
「蔦重がドキドキさせられるのか分からないですけど(笑)、皆さんにツッコミながら見ていただけたらいいなと」
――蔦重の魅力も教えてください。
「蔦重は、人間くさくて感情移入しやすい人物だと思います。情けないところもあるんですけど、行動力がすさまじくて。蔦重が田沼意次(渡辺謙)に会いに行くシーンがありますが、今で例えると、いち国民が直接総理大臣に会って意見を言うようなもの。毎回、彼の行動力には驚かされます。で、その行動を深掘ると、誰かのために行動しているので、人間としてすごくリスペクトしています。今回、たくさんの登場人物がいますが、森下先生がしっかり描いてくださったので、みんなが魅力的に輝いているんです」
――監督から、蔦重を演じるに当たってお願いされたことはありますか?
「『明るく!』って言われます。自分は朝が弱くて、特に朝は言われます(笑)。でも、明るいのが彼(蔦重)の良さでもあるので、明るさは大事に演じています」
――今回、1年という長い期間一人の役を演じるということで、大変だと思いますが役作りはどのようにされていますか?
「1年間、作品と蔦重と向き合うことができるのは役者として、とてもぜいたくで幸せなこと。作品を作る上で、時間が足りないなと思うことも多いので。2014年の『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)で1年半ぐらい同じ作品の撮影をして、芝居の楽しさを知り、『この世界で生きていこう』と決めたので、10年たった今、また同じように長丁場の作品ができることになって運命を感じています。役作りにおいては、題材となる作品を見たり、実際に生まれ育った場所に行って空気を感じたり、資料を見たり、専門家の先生に会って話を聞いたり…。あと、阿部寛さんが映画『HOKUSAI』で蔦重を演じられていたのでお話を聞いたり…。全て大事にしつつ取り入れて。ただ、一番は森下先生の作った世界で蔦重として生きることを大事にしながら、自分にしかできない蔦重を生きられたらと。所作や言葉遣いも難しいですが、僕は江戸時代に生きていないし、監修をしてくださっている先生も見てはいないので、形だけにとらわれずに自由に蔦重として生きようと思います」
――ここまで演じてきて何か収穫はありましたか?
「収穫…。波瀾(はらん)万丈過ぎて心も体も疲れて、それどころじゃないというか(笑)。とにかく、1年間やりきる体力つけなきゃいけないなと!」
――今回の舞台となる江戸という時代の魅力についてどう思いますか?
「僕も江戸を生きてみたいなと思いました。不自由ではあるけれども、今のように情報が錯綜(さくそう)していないし、自由はないけど自分を持っていて、人々の交流を大切にしているのがいい時代だなと思います。今は、情報が多い中で、自分を持てずに流されてしまうような人が多いと思うんですけど、江戸の彼らにはそういう部分はなくて、強い意志を持っていて。戦もないので、蔦重としても、すごくいい時代かなと思うし、今とそう遠く離れていないので、視聴者の方にも近くに感じられるような世界観になっていると思います」
――田沼意次を演じる大先輩の渡辺さんから学んでいることはありますか?
「謙さんは、『国宝』(2025年公開の映画)で、僕の父親役としてご一緒して。その時に食事に行っていろいろとお話をさせてもらって。『ちょうど流星くんと同じ年頃に俺も大河の主演をやった』とおっしゃっていて。『とにかく真っすぐ全力でやればいい』という力強い言葉を頂いたので、そのことを信じてやっています。現場でも謙さんのたたずまいなど学ぶことは多いので、あまり共演シーンはないのですが、一緒の時間は大切にしています」
――忘八(女郎屋の主人)の親父さんたちは、すごく個性的でユニークですよね。親父さんたちとの掛け合いはいかがですか?
「自分が最初に想像していたイメージと違って、厳しさの中に優しさがあるんです。もちろん、圧もあるんですけど、忘八の親父さんたち心の中に優しさや愛があるから、蔦重も自由にいろいろ言えるのかなと。脚本から想像していたのと実際現場でやってみて違っていたのが、作品作りの醍醐味(だいごみ)だなと感じて。楽しいです」
――蔦重はのちに出版王になる人物ですが、序盤は地本問屋たちに参入を妨害されて。その中で蔦重が何とか知恵を絞って本を作っていくという苦労が、現代を生きる人も参考になりますよね。
「ことごとくやられていますが(笑)、周りにも恵まれていますよね。周りの人のヒントを得て、ひらめいていくので。周りをちゃんと見ているからこそ、蔦重の企画力が生まれるのかなと思ってます」
――蔦重は江戸の出版王となった人物といわれてますが、横浜さんご自身がもし“〇〇王”という称号を得られるとしたら、どんな称号が欲しいですか?
「王になったらそれで終わってしまうので、王にならず、全てにおいていつまでも高みを目指し続けたいです!」
――ありがとうございました!
【番組情報】
大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」
NHK総合
1月5日スタート〈初回15分拡大〉
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
取材・文/Kizuka(NHK担当)
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