緒形直人「おむすび」で19年ぶりに朝ドラ出演。震災で全てを失った男を通じて「心の復興」を描く2024/12/04 08:00
NHK総合ほかにて現在放送中の連続テレビ小説「おむすび」は、12月2日より、第10週「人それぞれでよか」を放送中。
ヒロイン・米田結(橋本環奈)の父・聖人(北村有起哉)が営むヘアサロンヨネダと同じくさくら通り商店街で靴店を営む、腕利きの靴職人で、妻と娘を亡くし、商店街の中で孤立している渡辺孝雄役を演じる緒形直人からコメントが到着。今回の出演に対する意気込みや、役作りへのこだわりを語った。
第10週「人それぞれでよか」。商店街で「こども防災訓練」が行われることになった。結(橋本)は若林(新納慎也)に頼まれ“炊き出し隊長”に。炊き出しの献立の参考に、震災時の避難所のことを美佐江(キムラ緑子)に聞いた結は、おむすびをもらったのを思い出す。
結は専門学校の仲間と共に、震災当時、何が炊き出しで出されていたのかを調査する。意外にもメニューが豊富だったことが分かり、それに永吉(松平健)が関わっていたのを聖人は思い出す。孝雄(緒形)との仲直りを美佐江に勧める中、彼女の兄夫婦が震災で亡くなったことを知った結。こども防災訓練の全体打ち合わせに参加した結は、炊き出しの人数が足りないので、手を貸してくれる人がほしいと相談。すると聖人(北村)は、孝雄の名前を挙げる。
朝ドラへの出演は、2004年放送の「ファイト」以来19年ぶりとなる緒形。「社会派ドラマや若者のドラマが多い中、こうした日常を丁寧に描く井戸端会議のような物語は、朝ドラならではと感じているので、お声を掛けていただきうれしく思っています」と感謝の思いを述べた。また、撮影現場であるNHK大阪放送局(BK)については、「雰囲気が良いですね。心地が良いです」と充実感を伝える。
緒形が役作りの中で特に苦労したのは、関西弁での演技だった。「関西弁で演技するのがこれまであまりなかったんですよ。なので、何度も音源を聞いて練習していたら、先日、別のナレーションの仕事で、初めてイントネーションを指摘されるという、自分にとってショックな出来事がありました。関西弁に引っ張られてしまいました(笑)」と、エピソードを披露した。
さらに、渡辺孝雄という役柄に深く入り込むため、撮影中も孤独を意識したという。「なるべく孝雄に近づけるように、撮影中もそうでないときも独りでいるようにしています。台本もあえて孝雄に関係する部分以外は、流し読み程度にしているんです。余計な情報を入れて、孝雄の演技に影響を出したくないから。それだけ孝雄の世界は閉じているんだと思うし。食事のお誘いもいただくのですが、チームの中で異端児でありたいのであえてお断りして、オフの時間も独りでいるようにしていました」と、徹底した姿勢を明かした。
演じる孝雄は、母子家庭で育ち、弟のために学校を辞め、家庭を支え続けた苦労人だ。「苦労しましたが結婚し、子どもが生まれようやく幸せというものを感じていたところ、母を亡くし、妻を亡くし、男手ひとつで懸命に一人娘を育ててきた。そうした状況で阪神・淡路大震災に被災し、すべてを失って12年間、まだ一歩も前に進めていない男です。でもこういう人は、地震大国である日本にはおそらくたくさんいるのでしょう。僕自身だったとしてもふさぎ込んでいたと思います」と、自分自身の思いも重ねた。
また、物語の進行に伴い、孝雄が少しずつ変化していく様子が描かれる。「物語が進むにつれて、自分の不幸にとらわれていた孝雄が少しずつ前を向く様子が描かれていきます。聖人が靴の修理を頼むのもきっかけの一つ。修理したいと靴職人の本能が芽生えたのでしょう。それでもまた悲しみの殻に閉じこもる。何年も一歩も前に進めなかった男が一歩片足を出そうとしても出せない。そんな簡単なものではないですよね。その葛藤や苦しさを丁寧に演じていけたらと思っています」と意欲を示した。
最後に緒形は、太極軒の店主・明石役で本作に出演する神戸市在住の堀内正美から教わった言葉を引用し、作品への思いを表現。「堀内さんともご一緒しますが、彼から『親を亡くすことは過去を失くすこと。恋人や妻を亡くすことは今を失くすこと。子を亡くすことは明日を失くすこと』と教えていただきました」と心に残る言葉を紹介。
そして、「心の復興は人それぞれ違います。阪神・淡路大震災だけでなく地震大国である日本で、こうした人が現実にいることを絶対に忘れないでほしい。そういった意味でもしっかりと悲しむ、しっかりつらい顔をした演技を朝から届けていきたいですね」と、視聴者へのメッセージで締めくくった。
【番組情報】
連続テレビ小説「おむすび」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45ほか
文/TVガイドWeb編集部
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