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「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る2024/11/09

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

 フジテレビ系で放送中の土ドラ「バントマン」(土曜午後11:40=東海テレビ制作)は、中日ドラゴンズの全面協力のもと制作されているベースボールヒューマンドラマ。野球経験者の鈴木伸之が、第二の人生を“バントマン”として奮闘する元プロ野球選手を演じている。チャンスや転機は誰にでも訪れるが、それをいかに生かして夢をかなえていくか。それがなかなか難しい。鈴木演じる柳澤大翔ら“バントマン”がさまざまな人々の人生を応援する物語は、疲れた週末の夜に元気を与えてくれる。

 そんな作品を紡いでいる脚本家の矢島弘一さんは、野球を愛する人物として知られている。子どもの頃から野球を続け、今はヤクルトスワローズの応援と地域の少年野球チームのコーチを担当している矢島さんだからこそ描ける、野球理論に基づいたドラマなのだ。本作に込めた思い、そして執筆エピソードから中盤に突入したドラマの見どころを探っていく。

──「バントマン」の制作に至る経緯にはどのような経緯がありましたか?

「『野球のドラマを作りたい』というお話をいただいて、その時点では“バントの犠牲心”をテーマにしたいという、作品のイメージを伺いました。お仕事ものにしたいというお話もあったので、『エースで四番』を担っていたプロ野球選手が戦力外通告を受けて…みたいな流れが出来上がったんです。(主人公は)バリバリの体育会系だから、逆に女性の多い下着会社みたいなところで働く設定もありかなと思いましたが、野球選手のセカンドキャリアという部分にリアリティーがある分、思い切って突拍子もないストーリーにしようという話になり、物語の展開が決まっていきました」

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

──主演の鈴木伸之さんが演じる柳澤大翔というキャラクターはどのように作られたのでしょうか。

「鈴木伸之さんに演じていただくことが決まった時点で、熱くてちょっと抜けている主人公で行こうと。キャラクターとしては、子どもの頃から野球一筋でずっとエースで四番。周囲から羨望のまなざしを浴びて育ってきたと思うんですね。そういう意味では、『ちょっと調子に乗っている的な部分もあるだろうな』とか、『これまでの成功体験から、なかなか変化を受け入れられないタイプだろう』とか、そんな感じで固めていきました」

──矢島さんはこれまでも、ファンならくすっと笑えるようなマニアックなプロ野球ネタを作品に挟んでいます。その手法に面白さを感じていたプロデューサーが本作の執筆を依頼したそうですが、たしかに、野球の戦術も物語の展開にうまく絡んでいます。

「ストーリーに大きな流れはありつつも、一話完結なので、毎回登場するゲストの悩みと野球の設定や戦術をリンクさせているのですが、そこは苦労しました。もちろん、ゲストの悩みは大翔の悩みにもリンクさせる必要があります。そうやって毎話構成していったのですが、後半になると徐々に野球ネタも尽きてきて…。かなり大変でしたね」

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

──矢島さんにとっての野球の魅力とは何でしょうか。

「野球が好き過ぎて、一言では語れないのですが(笑)、何だろう…。俗に言う“筋書きのないドラマ”という部分も大きな魅力ですよね。野球って、他のスポーツと比較しても非常に複雑だと思うんです。球種を変えながらボールを投げて、それを打って、出塁してホームベースを目指す。ただゴールを目指すわけではない野球ならではの複雑性が劇的なドラマを生む要因になっているのではないでしょうか。だから野球ファン一人一人に思い出深いシーンがたくさんあるし、それがその人の人生ともリンクしているんだと思います」

──ご自身のバントの思い出は?

「私の叔父が、早稲田実業の野球部に所属していたんです。同学年に元ヤクルトスワローズの大矢明彦さんがいて、自宅に遊びに来たり、僕の試合を見に来たりされていました。僕が小学校5年生の時に学童野球の試合でスクイズを成功させたことがあったのですが、それも見に来てくれて。試合後に褒められたことを覚えています。それからですね、僕が熱狂的なヤクルトファンになったのは」

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

──ヤクルトや中日ドラゴンズ、お好きな球団の印象に残っている試合があれば教えて下さい。

「いろいろありすぎて全部は語れないのですが(笑)、古くは荒木大輔さんのプロ入り初勝利から、最近では村上宗隆選手の56号本塁打、そして今年は青木宣親さんの引退試合と、すべて神宮球場で見ましたね。ちなみに中日ドラゴンズに対しては、ヤクルト目線で言うと落合(博満)さんの時代にかなり痛い目に遭ったことが忘れられません。だからなのか、手堅い野球をするイメージがありますね」

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

──野球を愛する矢島さんが、このドラマを通して伝えたいことは?

「今の時代、日本や世界にはさまざまな問題があって、そこで苦労している人がたくさんいるわけです。ドラマの世界にはそうした人たちに光を当て壁を乗り越えていく物語がとても多く、実際に自分もそんなストーリーを描いてきました。ただ今回は、プロ野球選手のセカンドキャリアといったリアルな話を描きつつも、まずは楽しく見てもらいたいと思っています。物語の展開として突拍子もない部分もありますが、見終わった後に少しでも前向きになってもらえたらいいですね」

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

──今後の見どころや、視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。

「第5話(11月9日放送)では倉科カナさん演じる根鈴華の背景が明らかになるのですが、その後もバントマンたちそれぞれの物語が描かれ、なぜ彼らがSBO(イニングナイングループ社・SBO部)に集まったのかが見えてきます。そして大翔がプロ野球の世界に再チャレンジするのかどうかも今後の展開の軸になるので、期待してほしいですね。またこれまでもプロ野球に関するさまざまなネタが挟み込まれてきましたが、今後も応援歌が題材になるなど野球ネタが随所に出てくるので、そこも楽しんでもらえればと思います」

「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る

 第5話には、華と母の霞が運営するキッチンカーのメニューを大翔が野球に見立てて解説する場面も登場する。野球=自身の人生といっていい矢島の真骨頂が詰め込まれた矢島の野球愛を、ドラマ後半でもしっかり感じ取りながら主人公を始めとする“バントマン”たちの活躍を応援してほしい。

【番組情報】
土ドラ「バントマン」
フジテレビ系
土曜 午後11:40~深夜0:35

文/TVガイドWeb編集部


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