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「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?2024/10/22

「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?

 フジテレビ系では、反町隆史杉野遥亮がダブル主演を務めるドラマ「オクラ~迷宮入り事件捜査~」(火曜午後9:00)を放送中。人情深い昭和刑事・飛鷹千寿(反町)とクールな令和刑事・不破利己(杉野)のバディが、迷宮入り寸前の実質“オクラ(お蔵入り)”状態な事件に挑むヒューマンミステリーエンターテインメントだ。

 今作は「電車男」(フジテレビ系/2005年)、「3年A組-今から皆さんは、人質です―」(日本テレビ系/19年)などのヒット作を手掛けた脚本家・武藤将吾氏による完全オリジナルストーリー。1話から怒とうの展開を繰り広げ、SNSでも「とんでもないラストだった!」などと大きな反響を呼んでいる。

 今回、脚本を務める武藤氏と足立遼太朗プロデューサーが囲み取材に応じ、制作過程の裏話や今後の見どころなどを語った。

──まずは、制作に至るまでの経緯についてお聞かせください。

足立 「『電車男』でプロデューサーを務めた、ドラマ・映画制作局映画制作センター室長・若松(央樹)とのつながりをきっかけに、武藤さんとの仕事が実現しました。僕は昔から、映画『クローズZERO』シリーズや『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス』『ジョーカー 許されざる捜査官』(共にフジテレビ系)など、武藤さんの作品が大好きだったので、一緒に作品を作ることができるのは光栄でしたし、今回は完全オリジナル作品なので、企画段階からディスカッションして制作に臨みました」 

武藤 「僕は連続ドラマの脚本を書き始めてから20年ほどたつので、足立さんのように若いプロデューサーと組むことで、新しい引き出しみたいなものが出せるきっかけになるんじゃないかなと。若い方たちのエネルギーに触れることで、自分の脚本に新たな風を吹き込んでくれるのではないかと期待もできましたし、長丁場の連続ドラマで頼りにできるプロデューサーだと感じています」

──昭和と令和の刑事という凸凹バディと未解決事件という題材について、どのようなところから着想を得たのでしょうか?

武藤 「当初は、昭和と令和の刑事という師弟関係を軸にしたドラマを構想していました。でも、当時ちょうど『不適切にもほどがある!』(TBS系/24年)などで世代間のギャップみたいなものが注目されていたので、別の角度から物語を展開したいなと。そこで、“未解決事件はなぜ未解決なのか”というところに着目しました。事件当時も一生懸命捜査をしていたのに、たった一つの証拠がきっかけで解決するほど、未解決事件は甘いものではないのではないかと思っていたので、誰かが意図的に事件の真相に迫ろうとすることで真実が明らかになり、物語が動き出す…という展開を軸に構築しました。あとは、反町さんのダークヒーローものを見たいという思いと、杉野くんのミステリアスでクールな雰囲気を生かすことで、面白いバディが生まれるじゃないかと思ったんです」

「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?
「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?

──実際にお二人のバディをどうご覧になりましたか?

武藤 「反町さんが元々持ち合わせている熱い感じと、杉野くんのクールな魅力という対照的なキャラクターのバディが“合っていなくて面白い”なと。バディものといえば、徐々に信頼関係を築いていく過程が描かれることが多いですが、このドラマでは2人の間の絶妙な距離感が表現されていて。お二人の演技によって、お互いにまだ気を置けない雰囲気が脚本以上に出ていたのを見て、ホッとしたというか本当にうれしかったです」

──多彩なキャストの魅力を引き出すために、脚本で意識したことはありますか?

武藤 「足立プロデューサーの素晴らしいキャスティング力のおかげで、何度も物語の変更を余儀なくされました(笑)。当初は、1話完結の物語を続けようと思っていたのですが、オクラのメンバーそれぞれにスポットを当てて背景などを掘り下げることで、物語がどんどん深みを増しましたし、この作品で伝えたいメッセージが見えてきたんです」

──足立プロデューサーのキャスティング力によって、武藤さんが描く世界も広がったのですね。

武藤 「そうですね。当初提案したキャラクター設定に収まらないので、強引に広げざるをえなかったです(笑)。うまく引き出してもらったので、今となっては本当に感謝しています」

「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?

──足立プロデューサーと組んで制作する中で、これまで手掛けた刑事ドラマとは異なるアプローチをされたことがあれば教えてください。

武藤 「僕は刑事ドラマをやりたくて脚本家になったといっても過言ではありません。拳銃や派手なアクションなど、非現実的な世界を描くことに魅力を感じていたのですが、今回、足立プロデューサーや柳沢(凌介)監督と一緒に制作する上で新たな発見があったんです。最初、台本では拳銃を発砲するシーンがあったのですが、それを読んだ足立プロデューサーに『あまりにも現実離れしていると、共感できなくなってしまうんです』と言われて。僕が、刑事ドラマの醍醐味(だいごみ)だと思っていた拳銃などは、彼らにとってみればリアリティーのなさに直結してしまうということに、すごくショックを受けましたね。リアリティーを持って刑事ドラマとして成立させた上で、自分のやりたい世界観を表現しなければならないなと。自分にとっては大きな枷(かせ)でもあったのですが、逆に面白いなと思ったんです」

──制作側でも世代間のギャップがあったのですね。

武藤 「フィクションでありながらも、リアリティのあるドラマというものを推し量って書きました。僕だったら、最初から非日常的な世界に引きずり込むような物語を描きがちですが、彼らとディスカッションすることで、若い世代の方たちの価値観も認識できました。僕たちの世代では、ドラマは非日常の世界を楽しむものだったのですが、今は“いかに共感を呼べるのか”というところにシフトチェンジをしていることが参考になりましたし、すごく興味深かったですね」

──では、足立プロデューサーが感じる刑事ドラマの魅力について教えてください。

足立 「やはり、チーム一丸となって事件解決を目指す姿がカッコいいですよね。『HERO』(フジテレビ系/01年)でも描かれていたように、武藤さんが生み出してくださった“オクラ”も部署全員が集まるシーンがあって、そこが個人的には大好きなシーンです。オクラのメンバー一人一人が熱量高く向き合ってくださっているので、現場で生まれるものもすごく多いですし、皆さんのいろんなアイデアによって、武藤さんが書いてくださった脚本がどんどん面白くなっていると感じています」

「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?

──最後に、今後の見どころについてお聞かせください。

武藤 「今夜放送の第3話からは、物語が大きく動き出します。これまでの1、2話は、オーソドックスな刑事ドラマとして、視聴者の皆さんに見ていただきやすいような展開を描きました。2話で千寿が明かした『決定的な証拠がないがために、法から逃れているようなやつらが許せない』という思いから、証拠捏造(ねつぞう)をして事件を解決に導いているのは確かなのですが、それ以上に“やらなければならない理由”や、10年前の警察官連続殺人事件をきっかけに千寿が抱いていた思いが3話以降で次々と明らかになります。これまで、ラスト数分で物語が大きく動くというパターンでしたが、今後は、ラスト数分だった世界観が徐々に物語全体に侵食されていきます。オーソドックスな刑事ドラマから、壮大なスケールの物語へと変化していく様子を、ぜひ楽しんでいただきたいです」

【番組情報】

「オクラ~迷宮入り事件捜査~」
フジテレビ系
火曜 午後9:00~9:54

フジテレビ担当/Mi



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