多部未華子、大森南朋、瀬戸康史がつかむそれぞれの幸せの形――「私の家政夫ナギサさん」は「いろんな価値観や考え方を肯定していくことを描きたい」【プロデューサーインタビュー】2020/08/31
多部未華子さんが主演を務める連続ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(TBS系)。製薬会社のMRとして仕事に一直線、だけど家事と恋には不器用な相原メイ(多部)が、“おじさん”の家政夫を雇うことから巻き起こるハートフルラブコメディーです。
トラブルが続くも、信頼できる同僚や上司、後輩と共に仕事に打ち込むメイ。家政夫の“ナギサさん”こと鴫野ナギサ(大森南朋)には、仕事の悩みも、私生活の悩みも、自分の恥ずかしいところをすべて見せてきました。そんなメイの姿に勇気をもらい、またナギサさんの優しさに癒やされる本作は、視聴率も右肩上がり。8月25日放送・第8話は世帯平均視聴率16.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、4話連続で最高記録を更新しています。このたび最終話を目前に、本作を手掛ける岩崎愛奈プロデューサーに見どころや撮影現場でのエピソードを伺いました。
相手の幸せを願うのはもちろんのこと、同時に自分の幸せもつかんでいく
――いよいよ最終話ですね。
「第7話のラストでナギサさんの過去が明らかになり、彼が背負ってきたものをメイが解放してあげることで、2人の関係がまた一歩、大きく変わっていきました。最終話はこの2人がお互いのことを思いながらも、“自分の幸せ”をどうつかんでいくかというところが大きな見どころです。相手の幸せを願うのはもちろんのこと、同時に自分の幸せもつかんでいく。また、メイとナギサさんの関係だけでなく、ほかの登場人物も“自分の幸せ”を見つけていくという、多幸感あふれるラストにしたいと思っています」
――メイはすっかりナギサさんに心を許していますね。
「最初は『おじさんなんて!』『家政夫さんなんて!』と否定的だったメイがどんどんナギサさんを認めていき、さらに心を許していく中で、ナギサさんも(第6~7話で描かれた)メイのおかげで過去と向き合えた経験を通して、メイに大きく心を開いていると思います。そんな2人は最終話に向けて、さらにその先の問題に踏み込んでいきます」
――最終話では、メイはナギサさんに突然のプロポーズをし、4日間の“トライアル結婚生活”をスタートするとのことですが…。
「仕事はできるけど、自分の感情や恋愛に鈍感なところがメイのかわいらしい部分ではあるんですが、自分の中でナギサさんがどういう存在になっているかに気付いていくのが、とてもすてきに描かれています。メイがどう気付いていくか、その気持ちの変化をぜひご覧いただきたいです」
――最終話に向けてのキーパーソンとなる登場人物をあえて挙げるとすると、どなたになりますか?
「第8話では、メイの上司の古藤深雪(富田靖子)さんがキーパーソンとなり、大きな気付きをメイに与えてくれましたが、最終話はお母さんの相原美登里(草刈民代)さん。この2人によって、メイは大きく動かされていきます。女性の先輩として『自分にとって本当に大切なのは?』『そのために何をしなければならないのか?』を教えてくれる2人です」
――本作において、田所優太(瀬戸康史)の存在も見逃せません。原作にはないオリジナルキャラクターですが、今後はどのような存在になるのでしょうか。
「視聴者の方はメイと男性キャラクターたちの関係が気になる部分だと思うんですけど、その中で田所さんが担っている役割はとても大きくて。恋人候補としてだけでなく、メイの中で何が本当に大切かを見つめ直すきっかけを与えてくれる存在でもあります。田所さんは王子さま的なキャラクターで作っていて、『世の女性たちを胸キュンさせる存在にしたい』と瀬戸さんにもお伝えしていたんです。それを瀬戸さんがとってもすてきに、リアルに演じてくださって、『こういう男性がいたら最高だな』と思ってもらえるキャラクターになりました。私たちの思いと、瀬戸さんが作ってくださった“田所さん像”がぴったり重なって、ストレートに届いているんじゃないかなと思います。ダメな部分、人間らしい部分も、本当にすてきに演じてくださいました」
――第4話のメイが田所さんと公園で飲んでいるシーンはとても印象的で、SNSでも話題になっていましたね。
「反響がいただけるのはとてもうれしいです。多部さんも瀬戸さんもブランコを楽しんでくださって、田所さんが冗談を言ったりしてメイを笑わせてくれたことで、素の笑顔が撮れたシーンです。これはナギサさんもそうなんですが、アドリブ満載というよりは、わりと台本に忠実に演じてくださっているんですよ。台本に沿ったセリフを話しながらすごく自然にいろんな肉付けをしてくださっていて、俳優さんの力をまざまざと実感しています」
「ドラマを作ることができる幸せを、あらためてかみしめています」
――これまでの撮影で特にこだわったシーンや、苦戦したシーンはどの部分ですか?
「メイとナギサさんのシーンは2人の関係がどんどん変わっていくので、話を追うごとにどういう距離感がベストかをすごく考えながら作っていました。メイと田所さんのシーンも、田所さんをかっこよく見せつつ、メイが接する距離感にこだわった部分です。苦戦したというか悩んだのは、第5話の家族のシーンですね。お母さんからメイへの“呪い”はそれまでも描いてきた部分ですが、どんなことを思って娘たちを育ててきたかを明らかにするうえで、ここでお母さんに何を言わせたらいいのか、それを娘のメイと唯(趣里)がどう受け取るか、それを見た父・茂(光石研)は何を思うのか…。そしてナギサさんは家族のためにどんな行動に出るのか。全員の強い気持ちが混ざり合うシーンだったので、監督や草刈さんともかなり話し合って作ったシーンです。その思いをキャストの皆さんが受け取ってくださって、とてもすてきな家族のシーンになったと思います」
――本来4月スタートを予定していた本作にとって、新型コロナウイルスの影響は大きかったと思います。撮影を再開されてからは、どのような雰囲気で団結されていたのでしょうか。
「撮影が途中で休止になってしまうというのは、関係者全員にとって前代未聞の初めての出来事で、最初は戸惑いもありました。でも撮影が再開できた時、本当に和やかな雰囲気のままスタートできたんです。多部さん、大森さん、瀬戸さんをはじめ、キャストの皆さんが休止前と変わらず穏やかにいてくださったのが大きいですし、スタッフも『こんな時だからこそ楽しくやろう!』と一致団結していて、笑いのあふれるいい現場だなと感じています。ムードメーカーはやっぱり多部さん。誰かが率先してしゃべったり、鼓舞して盛り上げたりというよりは、多部さんの笑い声や自然体の姿が周りを和やかにしてくださっています。多部さんが笑う声が聞こえると、みんななんだか元気が出て、幸せな気持ちになるんですよ(笑)。不安なニュースが多いですが、現場には穏やかで明るい空気が流れていました。こんな状況だからこそ、ドラマを作ることができる幸せを、あらためてかみしめています」
――最後に、視聴者の方へ伝えたいメッセージをお願いします。
「幸せの形は人それぞれで、どんな幸せも間違ってないんだよ、というメッセージを届けたいですね。本作の大きなテーマとして、多様性を認めるというか…いろんな価値観や考え方を肯定していくことを描きたいと思っていて。メイ、ナギサさん、田所さんをはじめ、愛すべき登場人物たちがつかむそれぞれの幸せの形を、一緒に見届けていただけたらうれしいです」
【プロフィール】
岩崎愛奈(いわさき あいな)
2017年、ドリマックス・テレビジョン(現TBSスパークル)入社。これまでプロデューサーとして「プリズンホテル」(BSテレ東)や映画「家族のはなし」などを担当。現在は、「私の家政夫ナギサさん」のプロデューサーを務めている。
【番組情報】
「私の家政夫ナギサさん」(最終回)
TBS系
火曜 午後10:00~10:57(最終回は、午後10:00~11:12)
取材・文/宮下毬菜(TBS担当)
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