連続テレビ小説「おむすび」脚本家・根本ノンジ「橋本環奈さんならもっと面白いシーンを…」2024/10/06
連続テレビ小説「おむすび」は、食と人情の街、福岡・神戸・大阪を舞台に、日本の朝に元気と笑顔を届けるオリジナル作品である“朝ドラ”第111作。平成時代のギャル・米田結(橋本環奈)が人々の健康を支える栄養士となり、現代人が抱える問題を、食の知識とコミュニケーション能力で解決しながら、目には見えない大切なものを次々と結んでいく“平成青春グラフィティ”だ。今回は、脚本家の根本ノンジ氏にインタビューを敢行した。
――橋本さんが演じる結はいかがですか?
「結を見事に演じてくださっていますよね。面白いセリフや面白い場面がたくさんあるのですが、コメディエンヌ具合が素晴らしいです。今回、初めてお仕事させていただいたのですが、キャラ立ちをさせるのがすごく上手で、コメディーの感覚が優れているなと前々から思っていたので。突っ込みなども、トーンと間が完璧なんです。第1週の本読みに同席させていただいた時に、橋本さんならもっともっと面白いシーンを入れても大丈夫だなと思ったので、笑いの部分のシーンがどんどん増えていっています」
――ギャルの物語を描く面白さ、挑戦だなと感じていることがあれば伺いたいです。
「今の令和ギャルは世間に結構受け入れられてると思うのですが、平成の頃のギャルはそうではない側面もあったわけです。もちろん今われわれが描いてるギャルはすごくクリーンでいい子たちなのですが、悪いイメージを持たれる可能性もあるなと。ただ、それを超えるパワフルな力強さが彼女たちにはあると思っています。失われた30年といわれている平成の時代を、肩で風を切ってさっそうと歩いていた彼女たちの物語をきちんと描いた方が新しい朝になるんじゃないかな、と思ってあえての挑戦です」
――結の時代はギャル全盛期ではなく、少し衰退し始めている時代だそうですが、そういう時代を描く狙いを教えてください。
「ちょっと下火になっても続けている子たちが今に通じるなと思ったので、あえて下火になりかけているところから始めようと思いました」
――当時は、ギャルに対してどんな印象でしたか?
「自分がまだ20代とかの頃は、街でたむろっていて怖いと思っていましたね。ギャルの人たちと接することもなかったので、ビクビクしていた記憶があります」
――ギャルは見た目だけでなく、マインドが大事だと橋本さんもおっしゃっていましたが、ギャルマインドを描く上で意識されていたことは何ですか?
「セリフ回しと、主人公の悩みからの立ち直り方かな。結がもっとギャルになってからの話ですが、割ときちんと立ち向かえるようになっていくというか。格好ではなく、生き方や悩みへの向き合い方がギャルらしくなっていくさまを表現しています。特に、大人になってからは服装も学生の頃ほどギャルっぽくなくなるのですが、お仕事の中での“気持ちさえあればなんとかなるでしょう!”というような前向きさや周りを明るくするパワー、そういう部分をギャルマインドとして表現しています」
――根本さんご自身にとって阪神・淡路大震災はどんな出来事でしたか?
「25歳で、多分まだ放送作家としても見習いだった頃で、テレビで見ていました。関西にゆかりがなくて、友達もいないのでほとんど触れてこなかったのですが、東日本大震災を東京で経験した時に振り返って、阪神・淡路は別の形の災害だった、津波とは違う都市型の地震だ…っていうのを聞いて、全然知らかったのだなと思って。なので、この作品をやるに当たって改めて調べ直しました」
――根本さんは「監察医 朝顔」(フジテレビ系)で東日本大震災を描かれていますが、ドラマで震災を描くことについてどう捉えていますか?
「日本ってすごく平和で、今は戦争もなく過ごしていますが、自然災害とは切っても切り離せない国だと思うんですね。そして、それが常にわれわれの身近にあるということをきちんと学ぶべきなんじゃないかと。ドラマはフィクションだからこそ、ドキュメンタリーとは違う側面から描けると思っています。災害という理不尽で、あらがえないことを人間としてどう向き合うのかは、常に一つのテーマとして僕の中にあるんです。母が19年前に事故で亡くなったのですが、『じゃあ明日ね』と言った人と明日会えなくなる…みたいなことって、誰にでも起こりうることだなといつも思っていて。地震と事故というのはまた別の形なのですが、理不尽なもの、なんともあらがえないものにどうやって人間は向き合い、そこから立ち上がるのかっていうのは、自分の中でいつも大きなテーマだと思って描いています」
――根本さんにとって平成はどんな時代でしたか?
「一番バリバリ仕事をやっていた時代で、楽しかったですね。ドラマもバラエティーもめちゃくちゃ大変だったのですが、どちらも楽しかったです。予算がだんだん減ってきている感じはしていましたが、それでも新しいカルチャーや機械、ITなどいろいろなものが生み出されて、飛躍的に伸びたのが平成だなと思って。20代中盤から後半までの思い出ですが、青春だった記憶があるんです。テレビの世界に入って、夢中でやっていた感じで。なので、自分の中では青春を振り返りながら作っています。もちろんその間に悲しい災害や事件もたくさんありましたが、暗い部分だけじゃなくて、めちゃくちゃ楽しかったし、面白かったし、いろんなものが生まれていたっていうのをきちんと描きたいなと思っています」
――今回、幼少期に震災を経験した主人公でありながら、第1週は高校生の主人公を描いている意図を教えてください。
「1週目から『橋本環奈見たいよね』という自分の素直な思いですね(笑)」
――主題歌がB’zさんという部分はいかがですか?
「元々好きだったのですが、主題歌になると聞いてすごくうれしくて。出来上がった楽曲を聞かせていただいた時に、超大物アーティストなので当たり前かもしれませんが、バンドサウンドでありながら『おむすび』の空気にフィットしていて感動しました。私たちが作った台本を稲葉(浩志)さんが読んで作詞を、松本(孝弘)さんが作曲をされたということで、一緒に何かを作ったんだとすごくうれしかったです」
――B’zで特に好きな曲はありますか?
「一番好きなのは『ALONE』で、カラオケでもめちゃくちゃ歌います。キーが高いので半音下げて。もう何千回も歌っていると思うので、周りの人たちは聞き飽きているんじゃないかな」
――放送は半年という長丁場ですが、乗り越える秘訣(ひけつ)はありますか。
「サウナですかね。大阪での打ち合わせが月に1~2回ぐらいあって、その後においしいものを食べたりして、制作統括の宇佐川(隆史)さんとサウナに行くんです。非常にいい老舗のサウナがあるんですけど、そこで英気を養い、そしてまた書くという。自分のスピード感がつかめてきて、今のところはいい感じです」
――宇佐川さんはそれこそサウナのように熱い方ですが、根本さんから見てどのように感じられますか?
「宇佐川さんとは『正直不動産』で初めて一緒にお仕事をして、最初から熱い人だなと思っていました。常に一生懸命、どうやったら面白くなるかを考えてくれる人で、今回も彼の情熱がこの企画を動かしていると思うので感謝しています。僕は、いいコンビだと思っていますよ! サウナも飲みにも行っていますし。サウナは、裸で何もない状態で話せるので非常にいいですよ。サウナで話すことが意外とその後につながることもあるので、すごくお薦めです」
――今回、なぜ栄養士をテーマにした物語を描こうと思ったんでしょうか。
「食をテーマにした作品には絶対したいなと。ただ、朝ドラでは食をテーマにしたすてきな作品がもうあるので、今までやったことのないものをと考えた時に、栄養士という仕事にたどり着きました。栄養士さんって、食べ物で人を元気にする職業だと思っていて。妊娠・出産の時に食べる病院の食事から学校給食、年老いて入院してご飯が食べられなくなった時まで、栄養士さんや管理栄養士さんが関わっていく。人の人生に対して、食を通じて一生関わる仕事なんだということが、調べていけば調べるほど分かって。これはドラマになるなと確信しました。あとは、父を食道がんで亡くしているのですが、その時に管理栄養士さんがすごく献身的にいろいろやってくださって…。これはもう栄養士さんを書くべきだなと思ったんです。人の人生に一生食を通じて関わるというのも今までにない切り口だなと思い、描こうと決めました」
――楽しみにしています。ありがとうございました!
【番組情報】
連続テレビ小説「おむすび」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45ほか
NHK担当/kizuka
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