山本千尋がラジオドラマ初出演! 「飼い犬と重なり、泣きました」2024/09/21
NHK-FMでは、9月28日にFMシアター「マサマサ」(土曜午後10:00)を放送。ラジオドラマ初出演にして初主演となる山本千尋が、担当したオオカミの子どもが国家的プロジェクトに駆り出されることで葛藤する動物園の飼育員を演じる。脚本は「北のシナリオ大賞」2024年度大賞作品。
「北のシナリオ大賞」は、日本脚本家連盟・北海道支部が主催する年に1度のオーディオドラマ脚本賞。NHK札幌放送局と共催し、大賞作品を同局でオーディオドラマ化していることから、新進作家を生み出す登竜門とされる。20回目の今回は123本の応募があり、東京在住の久継遥々(くぬき はるばる)氏の「マサマサ」が大賞に。出演はほか、小林エレキ、内崎帆乃香、武田晋、齊藤雅彰、西田薫、戸澤亮、宮崎寛務。
山本が演じるのは、北海道東部にある動物園の主任飼育員・谷那月(32歳)。ドラマは、那月がなかなか心を開こうとしない子どものオオカミ・マサを世話して1年が過ぎたころ、突然マサが「オオカミ再導入」という国家プロジェクトに駆り出されることになる…というあらすじ。「オオカミ再導入」とは、もう一度オオカミの群れを作り上げ、生態系のバランスを取り戻そうというもので、シカによる農作物被害が年間50億円にも上るという北海道の問題が背景にあった。
マサ1匹が計画に利用されると知り、困惑する那月。なぜなら、マサに白羽の矢が立ったのは、世界でただ1匹のエゾオオカミだから。さらに、マサには、もっと大きな秘密があった…。「オオカミ再導入」は1990年代にアメリカの一部地域で実際に行われた取り組みで、日本では未実施のため、フィクションとして物語に取り入れている。
山本千尋&脚本家・久継遥々が語る作品への思い
このほど、NHK札幌放送局で収録に臨んだ山本と、脚本家の久継氏にインタビューを敢行。作品への思いや魅力について聞いた。なお、NHKラジオ「らじる★らじる」では、放送日から1週間、聞き逃し配信を行う。
── 脚本を読んだ感想はいかがでしたか。
山本 「脚本の第一印象は、SFやヒューマンドラマなど、さまざまな観点で受け取ることのできるお話で、そこが面白いとまず感じました。個人的には、2年前からイヌを飼っていて、飼育員役に共感できる部分がたくさんありました。家で読んだのですが、飼い犬と劇中のオオカミ・マサが重なる部分があり、めちゃくちゃ泣いてしまいました。動物を飼っている方、動物好きな方にも、すごく刺さる物語だと思います」
── 2023年に俳優活動10年目を迎えられましたが、ラジオドラマは初だそうですね。
山本 「実は、自分の中で『声』はコンプレックスだったんです。でもここ数年、『声』を褒めていただける機会がありました。先輩からも『声のコンプレックスは、いつか強みになる』と言われていて、ようやく、少しそう思える瞬間をいただけたことに感謝しています。余談ですが、脚本家の三谷幸喜さんに『千尋さんはラジオもやってみたらいいのに』と一度言っていただいたことがありまして、オーディオドラマに出演できましたと報告できることも、うれしいです」
── オーディオドラマは、映像や舞台とは違いますか。
山本 「難しいです。自分の『声』はどこか変に聞こえますし、『これでいいのかな?』と考えながら演じています。ただ、ほかの演者さんと対面することでパワーを受け取るのは、普通のお芝居と同じです。想像を超えたものが来ると、自分なりに方向性を提案できたりします」
── 演じる動物飼育員・那月は、どんなキャラクターですか。
山本 「自分より確実に少し年齢が高い役どころを演じるのは、たぶん初めてに近いんです。大河ドラマだと、年齢はアバウトなので…。30代女性の格好良さ、働く強さみたいなものは、飼育員という職種に限らず、共通していて、尊敬しています。自分も10年という節目を迎え、10代の時の『好きだから頑張りたい』みたいな無邪気さだけではなく、葛藤というか、転機というか…良くも悪くも『大人』になってしまった環境みたいなものは、どこか重なる部分があるかもしれません。ただ、やはり格好いい女性であると感じます」
── 舞台となる北海道との関わりは。
山本 「22年12月、『鎌倉殿の13人』のグランドフィナーレイベントで、金子大地さんと一緒にNHK札幌放送局でのパブリック・ビューイングに登壇して以来、2回目です。前回と同じ動線でNHK札幌放送局に来まして、逆にレアだなと思います(笑)。声だけの収録なら東京でもできそうですが、北海道をテーマにした作品を、札幌で、北海道の風を感じながら収録できることがありがたいです」
── 脚本家の久継さん、執筆に当たっての思いをお聞かせください。
久継 「北海道の物語を描くにあたり、自分の琴線に触れるような題材を選びたいと思いました。そこで、報道されているシカ被害も、天敵であるオオカミがいればここまで深刻化しなかったかもしれないという話を知り、絶滅したエゾオオカミとその歴史を探ったことが構想の原点です。『オオカミ再導入』を土台にして、その上に人間ドラマ、人間と自然の関係性を紡げないかという思いで書きました」
── 収録を現場で聞かれた感想はいかがでしょう。
久継 「本読みの段階から皆さんの演技が素晴らしすぎて、何度も涙がこみあげました。書いた自分が言うのもおかしな話かもしれませんが(笑)。自分が書いた文章、セリフに、皆さんが命を吹き込んでくださって、イメージしたものを超える瞬間がたくさんありました。本番ではさらに、ぐっと感極まりました」
── お二人からリスナーへメッセージをお願いします。
山本 「共感性が強い物語でもありながら、SFファンタジーな部分もあり。恥ずかしながら、私は『オオカミ再導入』という言葉を今回初めて知りましたが、もしかしたら10数年後、この取り組みが現実に行われているかもしれない。そんな未来を予想しながら、『耳』で想像できることが、すごく楽しいと思います。『耳』で聴くからこそ、より集中して物語に入り込める、すばらしい脚本です。よりたくさんの方に聴いていただきたいと思います」
久継 「フィクションではありますが、現実でもあり得そうな内容を土台にした物語です。身近に迫ってきている問題を扱ってはいますが、面白さ、息抜きできるシーンも散りばめているので、肩の力を抜いて、楽しんで聴いていただけたら、心からうれしく思います」
演出・NHK札幌放送局ディレクター 南﨑美玖コメント
「北海道の森に、もしエゾオオカミが復活したら…? 読み進めるごとに新しい真実が分かるストーリーに、ページをめくる手が止まらず“このシナリオをぜひドラマ化したい!”と思いました。『オオカミ再導入』はSF的なテーマに聞こえるかもしれませんが、調べれば調べるほど、世界的にも、ここ北海道でも、切実で身近な問題として研究も進んでいる話でした。野生動物と人間はどう共生していけるのか、という大きなテーマもありつつ、あくまで物語として楽しみながら聞いてもらうには…ということで、脚本家やキャスト、スタッフの皆さんと試行錯誤しました。自身の愛犬とこの物語のオオカミ・マサを重ね合わせてくれたという山本さんの声が、主人公・那月の動物への真っすぐな思いを、凛(りん)とした声で表現してくれています。実は、演出を考える中で一番悩んだところが、オオカミの表現をどうするかだったのですが、声優の宮崎さんが見事にマサに命を吹き込んでくれました。ぜひ、そこにも注目していただきたいです。ビジュアルのないオーディオドラマだからこそ、よりリアルな息遣いや体温まで感じられるような、臨場感のあるドラマ体験を目指しました。ぜひお楽しみください!」
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