ムロツヨシが明かす“人に好かれる秘訣”とは!?「二つの祖国」で野心家の日系2世を熱演2019/03/20
テレビ東京系で3月23・24日の2夜にわたり放送されるドラマスペシャル「二つの祖国」。第2次世界大戦期、時代に翻弄(ほんろう)されながら自らの生き方を模索する日系アメリカ人2世たちの青春群像を描く超大作です。主人公はアメリカ人であると同時に日本人であることに誇りを持つ、ロサンゼルス・リトルトーキョーの新聞記者・天羽賢治(小栗旬)。日米が開戦する中、“どちらの国に忠誠を誓うのか?”と迫られ、葛藤し決断する賢治の姿は、現代の日本を生きている私たちにも何かを感じさせてくれるはずです。
今回は、賢治の友人で、アメリカで成功すべく野心を燃やすチャーリー田宮を演じるムロツヨシさんを直撃取材。同じ日系2世ではあるものの賢治と正反対の考えを持ち、目的のためには手段を選ばない彼をどのように演じたのか、また自らのアイデンティティーについて、そして祖国である日本へのムロさんらしい思いを明かしてくれました!
── 撮影現場も取材したのですが、冗談を言ったり、踊りながら歩いたりするなどムロさんワールド全開で、見ているこちらがすごく安心しまして…。
「踊ってました、僕!?(笑)。でも、いつもそんな感じですね。今回はドラマが重厚ですから、空き時間は少しリラックスできるようにしたいと思っていました。自分のセリフがあるシーンを撮る時は、器用に切り替えができるタイプではないので、こそっと準備したりしてますね」
── 撮影中、共演者やスタッフとお話する時に心がけていることはありますか?
「極力空き時間は楽しくしたいかな。でも緊張感が必要な場合もあるので、現場によって使い分けるのがいいと思っています。昔は、先輩方が緊張感をつくってくれていたので盛り上げ役に徹していたんですけど、年齢を重ねるにつれて、僕がおちゃらけていると空気が軽くなりすぎるということも多々経験してきたので」
── 撮影現場の空気や共演者によって、変えていくということですね。
「僕は八方美人なので、一方目を使うか、六方目を使うかを使い分けたい。八方があるという信頼の勝ち取り方を43歳にして、していきたいですね(笑)」
── その振る舞い方はまねしようと思っても、なかなかできないです。
「僕はそういう生き方しかできないんですよ(笑)」
── ムロさんは、今回演じたチャーリー田宮とご自身が似ているところもあるとコメントしていましたが、彼と比べてムロさんは誰からも愛されるイメージが強いです。その違いはどういうところにあると思いますか?
「僕が『好いてくれ』というオーラを出しているからかな(笑)。嫌う方がエネルギーを使うとみんな分かっているんだと思います」
── そういうふうにしむけているんですね?(笑)。
「そうそう、寂しがり屋なもので(笑)。『好いてください』というオーラを出しまくってます」
── それがみんなに好かれる秘訣(ひけつ)なんですね! ドラマでは、小栗さん演じる賢治とチャーリーのバチバチの対立も見どころということですが。
「実は対峙(たいじ)するシーンはそこまでないんです。お互いが離れてそれぞれの場所にいる時に物事に対するやり方が違ったり、会ったとしても軽くあしらったり、相手のことを受け付けなかったり…。だから、対立になっていなかったりするんですけど、ドラマとして見ると対立して見える。日本人としてのプライドや心を大事にしながら生きようとする賢治と、アメリカ人として生まれ育ったその国の中で、どう生き残っていくかを一番に考えるチャーリー。全く違う生き方の人間を描いています」
── そういうバチバチする思いへ、どのように気持ちを持っていったのですか?
「この作品のお話をいただいた時に、小栗くんからも『(チャーリーは)ムロくんに似ている部分がある』と言われたので、そういったところを大事にしようと思いました。だから演じるにあたって、賢治と対立するというよりは、自分と似ている部分をしっかり落とし込んで、“なぜチャーリー田宮がこういう言動を起こすのか”という部分を考えました。覚悟を持ってこのような生き方をした人間だと思うので、彼がそう動く裏付けが何なのかを意識しました」
── ドラマでは“アイデンティティー”もテーマだと思うのですが、今のムロさんを形成している要素を挙げるとしたら、どんなものが入ってきますか?
「19歳の時に、大学を辞めて俳優を職業に選択すると決めた自分ですかね。あそこから全てが始まったように感じますし、そこから7~8年間仕事もなかったですけど、それも含めて必要な時間だったと思います。それまでは与えられた教育を受けていたんですけど、そのレールの上から外れた時から、自分のアイデンティティーが形成されたんじゃないかな。レールがなくなってからは、自分の劇団を立ち上げることで自分で道をつくったり、また別のところに道がありそうだったら行ってみたりして。人がつくった道を歩くのは楽だけど、そうするとつくった人にはずっと追いつかないということも分かりました。その分遠回りもしたけど、あの日の自分を笑わせてやりたいという思いで、毎日『自分はやれているかな?』と考えていますね」
── 敷かれたレールを外れるということは、なかなか選択しづらいです。
「そうですよね。だから、今だったら『絶対そのレールに乗っとけ!』と思いますけど」
── そうなんですか!?(笑)。
「そっちの方が面白いことがあるからって。 居酒屋でたまに大学生に会うと『役者やろうと思うんです』と言われるんですけど、『まず大学卒業しとけ!!』って言いますもんね(笑)」
── そこまではレールに乗っておけということですね。
「そうですね。俳優は職業として成立させるのが難しいから、『まずちゃんと就職できるようにしとけ』とアドバイスします」
── 大学を卒業しておけば、色々選択肢が広がりますからね。
「そうそう。僕みたいなのは、聞こえは熱くてかっこいいかもしれないけど、単なる不器用ですから。もうちょっとやりようがあったように自分で思う時もあります(笑)。下手したら、大学をちゃんと卒業していろんな知識を持っていれば、もっと早く俳優としてご飯が食べられるようになれたかもしれないじゃないですか?」
── それはそれでまた良い道が広がっていたかもしれません。
「そうなんです。だから、自分の経験を生かして若い子たちには『まず大学を卒業しなさい』とアドバイスをしています(笑)」
── 貴重なお話をありがとうございます! 最後にお伺いします。ドラマのタイトルにもある「祖国」にちなみ、ムロさんは自分が生まれ育った日本という国に対して、どのようなイメージをお持ちですか?
「こんなにも温泉と飲み屋街がすてきな国はないよ、本当に!!!(笑)。ご飯もおいしいし、それに尽きるよ!!(笑)。平和の象徴ですし、これこそ時代背景が出てきますから」
── どちらも結構行かれるんですか?
「そうですね、もう大好きだから!! 温泉街にあるスナックなんかは、時代によってママも違うわけですよ。昔のママも、今のママも大好き(笑)」
【プロフィール】
ムロツヨシ(むろつよし)
1976年1月23日生まれ。神奈川県出身。 ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」「きみが心に棲みついた」(ともにTBS系)、「今日から俺は!!」(日本テレビ系)、「スーパーサラリーマン左江内氏」(日本テレビ系)、「勇者ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京ほか)、映画「空飛ぶタイヤ」「50回目のファーストキス」、「銀魂」シリーズなどの話題作に出演。7月からは福田雄一演出舞台「恋のヴェネチア狂騒曲」に出演。8月16日公開の映画「ダンス・ウィズ・ミー」にも出演。
【番組情報】
開局55周年特別企画ドラマスペシャル山崎豊子原作「二つの祖国」
テレビ東京系
3月23・24日 午後9:00~11:24
出演/小栗旬 多部未華子 仲里依紗 高良健吾 新田真剣佑 ムロツヨシほか
取材・文/鬼木優華(テレビ東京担当)
撮影/蓮尾美智子
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