道上と清家の長い対峙(たいじ)シーンは圧巻――「笑うマトリョーシカ」最終回直前Pコメント2024/09/05
TBS系で水川あさみさんが主演を務める金曜ドラマ「笑うマトリョーシカ」が明日9月6日よる10時からの放送で最終回を迎えます。
本作は、早見和真の同名小説を原作に、主人公のジャーナリスト・道上香苗(水川)が、人気政治家・清家一郎(櫻井翔)を取り巻く黒い闇を追うヒューマン政治サスペンスです。清家を裏で操る“ハヌッセン”の正体が清家浩子(高岡早紀)ではなかったこと、そしてBG株事件には、現首相・羽生雅文(大鷹明良)までもが関与していたことが明らかとなった前回の第10話。続く最終回では、清家からの突然の提案を受け入れた道上がなんと、清家の“ブレーン”に就任することに。そしてついに明かされる“ハヌッセン”の正体とは。注目の最終回を前に、本作のプロデューサー・橋本芙美さんに、キャストとの撮影エピソードや最終回の注目ポイント、本作に込めた思いを語っていただきました。
――これまでの撮影を経て、主人公・道上を演じる水川さんの印象をあらためて教えてください。
「水川さん演じる道上は視聴者と一緒に謎を追っていく立場なので説明セリフがとても多いのですが、それをいかにナチュラルに伝えるか、その表現の仕方が本当に素晴らしいです。作劇上、ハヌッセンではない人をハヌッセンのように見せたりもしていましたが、演者側はそのミスリードを理解した上で演じなくてはいけないので、疑う側も疑われる側もその点が難しかったのではないかと。そんな中、水川さんは座長として常に現場の中心で盛り上げてくださいますし、先日はスタッフとキャストにTシャツを作ってくれたりもして、さらに現場が一丸となりました。最終回の道上は今まで以上に格好いいです! いろいろ苦悩する姿も描かれますが、最終的に道上がどんな選択をして、どんな言葉を投げかけていくのか、最後まで見届けていただけたらと思います」
――鈴木俊哉役の玉山鉄二さんについてはいかがでしょう。
「玉山さんは現場で水川さんやスタッフから“タマッセン”と呼ばれてうれしそうに笑っていたり(笑)、意外とおちゃめなんです。鈴木は、悪者かと思ったら実はハヌッセンに狙われていたり、清家との絆が一番強い人かと思いきや突然切り捨てられたりという、視聴者からの見え方が初回からすごく変化した役。清家や浩子の呪縛から解放されて、再び前を向いて道上と一緒に事件を探っていく鈴木にも感情移入できる形になれたのではないかなと。また、最終回では秘書をやめた鈴木が、今後の人生でどういう選択をするのかという点にもぜひ注目していただけたらと思います。鈴木のラストシーンは、撮影現場で見ていて思わずうるっときました(笑)」
――清家役の櫻井さんについてはいかがでしょうか。
「清家は政策の説明や会見で話すシーンが多いので、セリフの量もかなり多いんですよね。清家は難しい役どころだったと思いますが、演じる上でたたずまいから喋り方、表情の一つ一つまで、ものすごく緻密に作りあげてくださったと思います。会見の場にたたずむ櫻井さんはまさに“清家一郎”だなと。櫻井さんのレギュラー番組のスタッフさんもドラマを見てくださっているそうで『政治家役が似合う』とよく言われているらしいです」
――第6話のラストで清家が鈴木を切り捨てるシーンは、櫻井さんが表現する清家の冷徹さ、そして鈴木が絶望する姿が視聴者に大きなインパクトを与えたかと思います。
「中盤の見せ場だったので、演じる側も相当プレッシャーを感じていたと思います。何が清家の“本心”の言葉で、何が浩子に“言わされている”言葉なのか分からない不気味さと、鈴木を切ることのつらさがひしひしと入り混じる、いろいろな意味を持つシーンだったので。鈴木が一生懸命清家に語りかけようとするのに、全く聞く耳を持たずにセリフをかぶせる清家のタイミングなど、監督、玉山さん、櫻井さんでディスカッションして作り上げていきました。いろいろな感情、要素が絡み合う難しいシーンでもありましたが、見事に演じきってくださり、名シーンの一つになりました。何度でも繰り返し見たくなります(笑)」
――ここまでの作品作りで大変だったこと、苦労された部分はどんなところですか。
「脚本作りにおいては、原作にある回想シーンをドラマのどのタイミングで入れるかに一番苦労しました。“BG株事件”などドラマ独自の要素を足した分、原作の本線とつじつまが合っているかを考えながら組み立てるのが難しくて。あとはハヌッセンが誰なのかをどう見せていくかという点。鈴木から美和子、美和子から浩子へ疑惑が移行していくところは、映像だからこそより怪しく見せられる部分で、そこが面白くもあり苦労した部分です。早見先生にも毎回原稿をお送りし、気になるところがないかを都度ご確認いただきました。清家が“首相公選制”という国民が直接投票で首相を選べる制度を導入しようとするところも原作にはなく、事前にご相談した上で取り入れさせていただいた要素。あれは政治監修の方のアイデア。清家が最終的に権力を握っていく様子をより恐ろしく感じさせるためにどのような政策を打ち出すべきか相談した際、独裁的になる危険性をはらんだ政策として、この制度を教えていただいたんです。調べたところ、過去に何度か実際に議論されたことがあり、たとえば平成14年の懇談会の資料を読むなどをしました。これはドラマにおいても説明しやすいかつイメージしやすいのではないかと思います」
――清家たちの地元を愛媛にしたことも、原作をリスペクトしてのことでしょうか。
「愛媛県、特に外泊(そとどまり)での撮影は映像化の条件でもありました。炎天下での撮影でしたが、早見先生も現場まで来てくださって、みんなでたくさん写真を撮りました(笑)。愛媛のフィルムコミッションの方が、蛇口からポンジュースが出る重いタンクをわざわざ石垣を登って運んできてくださったり、地元の方々がお昼にそうめんを作ってくれたり、景色も美しい場所でしたが、地元の方々の温かいご協力にも心が癒されました。感謝です!」
――そしていよいよ最終回。清家から道上への「僕のブレーンになって」という衝撃の発言で幕を閉じた前回に続く展開となりますが、見どころは?
「第10話のラストは、監督が『清家から道上への愛の告白のように撮りたい』と言っていたこだわりのシーンでした。そこからの最終回、道上がどんな見立てをして最後に“清家を操る者”とどう対峙(たいじ)していくかが見どころです。『ハヌッセンの正体とは?』ということと、清家のブレーンとなった道上が何を感じ、どんな筋道をたどってラストへと向かっていくのかに注目です。今までお互いを“疑似遠距離恋愛”的に見合ってきた2人の最終地点がどうなるのか、清家の本当の心があるのかどうか。本心があるとするなら、それを道上に見せるのかどうか。そして、そんな清家を櫻井さんがどう演じるのか。『僕を見ていてください』と言った清家の言葉の意味がラストで分かるので、その意味についても考えていただきたいです。“ハヌッセンの正体”については、亡くなった方も含め今まで出てきた登場人物にまだまだヒントがあるので、おさらいしておくと良いかも。また、秘書をやめた鈴木が今後の人生をどうしていくのかも気にしていただきたいポイントです。最終回の脚本を読んだ水川さんにも『こういうことにしたんですね、いいね!』と言っていただけてよかったです。あえて言いますが、原作にもある、道上と清家の長い対峙シーンは圧巻です! 鳥肌が立ちます。そしてエピローグ、見る方によって受け止め方はさまざまかと思いますが、最後までぜひ一緒に見届けていただけたらと思います。余談ですが、最終回で清家がマトリョーシカを扱うシーンがあります。マトリョーシカって、実際に開けたり閉めたりする動作が意外と難しいのですが、それを櫻井さんがものすごい速さで美しく見事に捌いていく場面も個人的な見どころの一つです。こんなに上手くマトリョーシカを使える方はほかにいないんじゃないかと思います(笑)。ぜひ、お楽しみに!」
――橋本さんが本作で伝えたかったメッセージはどんなことでしょうか。
「この作品の企画者である監督の岩田がこのドラマに込めたテーマは『人の内面は外から見ただけでは分からない』ということ。人は一面だけでは捉えられないというのが大きなテーマであり、描きたかったことです。母親から特殊な育てられ方をした清家が“理想の人物を演じる”という特殊能力があるゆえに、人に所有欲を掻き立てさせ、最終的に国民の人気を得て権力を手にしてしまう。でも本当の彼はどんな人間なのか。彼の核にあるのははたしてどんな顔なのか。原作にも描かれている重要なテーマですが、ドラマ版ではさらに、清家を見続けてきた道上だからこその終わり方をするので、原作と合わせてぜひお楽しみください。もう一つ、原作には色々な親子が出てきます。清家と浩子、浩子とその母、鈴木と父、亜里沙と母。原作を読んで、それぞれが親からの“宿命”を背負っていると感じました。それを背負った上で、子たちがどんな生き方をしていくのか。その“親子”という部分をドラマ版ではさらに掘り下げたいと思い、道上の父、母、そして息子がいる設定を、早見先生に確認の上、加えさせていただきました。道上にはBG株事件をスクープした元新聞記者である・父がいて、そして物語の冒頭で父が衝撃的な事故死を遂げるという宿命を背負わせました。その道上が、父の死、過去の汚職事件、そして清家一郎とどう対峙していくのか、母の復讐(ふくしゅう)心を背負った浩子と、息子・一郎という全ての始まりである歪な親子の関係性と、道上の父から道上へ、そして息子へと代々伝わっていく思いを対照的に描くことで、道上だからこその浩子や清家との向き合い方、家族との向き合い方をドラマ版では肉付けできたらと思いました。また、道上に息子がいる設定を加えたことで、私個人的には“仕事を持つ親”という側面も掘り下げたいと思うようになりました。使命を持って第一線で働きながら子供を育てる親の葛藤、悩み、家族との向き合い方、両方を完璧にできるわけないし、失敗もあるし正解はないですが、諦めずに全力で日々仕事のために子どものために奮闘している姿、ということも、このドラマのひとつの要素として描けたらと思いました。この作品の本筋はもちろん政治サスペンスですが、ドラマ版は“ヒューマン”要素も色濃くした上で、さまざなキャラクターが登場し、視聴者のみなさんにも誰かしらに自分のことを投影し、家族について思うきっかけになれたらいいなと思います。また、かたいことはあまり言いたくないのですが、裏の裏のテーマとして、見てくださった方々が選挙に行きたくなるといいね、と監督や作家陣と話していました(笑)」
――それでは最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。
「10話まで、この怒涛(どとう)の展開をハラハラドキドキしながら一緒に駆け抜けてくださった視聴者のみなさま、本当にありがとうございます! そしてついに、『ハヌッセンの正体は』という答えが最終回で確実に分かりますので、視聴者のみなさんもさまざな考察をしていただくと楽しいと思います。そして道上と清家が“疑似遠距離恋愛”のような関係性の末にどんなラストを迎え、お互いにどんな言葉を投げかけあうのか。そこも楽しみにしていただきたいです」
【第11話 あらすじ】
浩子(高岡)は清家を操るハヌッセンではなかった。そしてBG株事件には、前外務大臣の諸橋育夫(矢島健一)だけでなく、総理大臣の羽生(大鷹)も関与していた。そんな衝撃の事実が次々と明らかになった矢先、清家から「僕のブレーンになってほしい」という突然の提案を受けた道上は、ブレーンとしてそばにいることで清家のハヌッセンを突き止められると考え、その提案を受け入れることに。ことあるごとに道上に意見を求め、道上の考えをそのまま吸収して自分の言葉にする清家。そんな清家を目の当たりにし、道上はある種の充実感を抱き始めるのだった。そんな中、山中尊志(丸山智己)から一刻も早く羽生と諸橋がBG株事件に関与していた証拠を公開し、2人を失脚させるべきだと促された道上だが、政権と敵対すると清家のブレーンを降りることになると考えた道上は、悩み始め…。
【番組情報】
金曜ドラマ「笑うマトリョーシカ」
TBS系
金曜 午後10:00〜10:54
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