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「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」2024/09/19

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

 フジテレビ系で放送中のドラマ「海のはじまり」。本作は主演・目黒蓮Snow Man)×脚本・生方美久×演出・風間太樹×プロデュース・村瀬健の「silent」(フジテレビ系)チームが再集結して贈る、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品です。

 放送後にはSNSでトレンド入り、さらに海の誕生秘話が描かれた第6話では、見逃し配信数が放送後1週間で434万再生を突破するなど、毎回大きな反響を呼んでいる本作も、次週いよいよ最終話を迎えます。

 このたび、最終話放送を前に、プロデューサーを務める村瀬さんにインタビュー。「silent」以来のタッグとなる目黒さんの印象の変化や、制作の裏側、最終話の見どころなどを語っていただきました。

ドラマを制作する上で大事にしているのは「“少ない”って、“いる”ってことだもんね」という言葉

──特にこだわっている演出や、思い入れのあるシーンについてお伺いできますでしょうか。

「本作は、風間監督、髙野舞監督、ジョン・ウンヒ監督という、僕が信頼している3人の監督に演出してもらっています。3人それぞれに持ち味があり、3人とも生方さんと僕と一緒にやったことがあるので、“何話はこの監督で”というのが決まった段階で、その監督が撮ることを想定して書いてくれているところもあると思います。ちなみに、スピンオフの『兄とのはじまり』と特別編『恋のおしまい』を撮ってくれた山岸一行監督の演出がすごく良かったので、山岸監督にも本編を撮ってもらうことにして10話をお願いしました。演出でこだわっているのは、電話のシーン。生方さんの脚本では、電話のシーンで相手を見せるか見せないかが書いてあるのですが、それを読んだ上で僕や監督たちが意見を出し合い、話し合って決めています。電話の向こうの相手の姿をそのまま見せる時もあれば、声だけ聴かせて姿は見せない時もあったり、向こう側の声さえ入れなかったり…と、いろんなパターンがあります。そして、電話のシーンでは基本的に、電話の相手の声も同時に撮っています。例えば、1話で夏(目黒)に水季(古川琴音)から別れを切り出す電話がかかってくるシーンがありましたが、この時は、わざわざ現場に古川さんに来てもらい、目黒くんからは見えないところで本当に電話をしてもらいました。『silent』でも同じ手法で撮影していて、その時に『このやり方だと特別なものが生まれるな』と知ってしまったんです。電話のシーン一つにしても、見せ方にこだわって丁寧に撮影をしています」

──生方さんの脚本では、何気ない会話のセリフにも全て意図があるように感じます。

「生方さんの言葉選びのセンスは、類いまれなる才能だと思っているので、基本的には僕がセリフを直したりすることはほとんどありません。ただ、ドラマはいろんな考えを持っている人が見ているから、本当に伝えたいことが伝わらないこともあると思っています。僕たちは、“伝えたいことが伝わらないこと”を恐れずに制作に当たっていますが、違う捉え方をされるようなことはしたくないよね、といつも話していて。人の心情を丁寧に描く上で、そこはすごく意識しているので、僕から生方さんに『この言い方だと、こういうふうに捉えられてしまうかもね』と意見をすることはあります。そして、誤解される危険があるセリフは違うものに変えていきます。僕がドラマを制作する上で大事にしているのが、『silent』の紬(川口春奈)のセリフにあった『“少ない”って、“いる”ってことだもんね』という言葉。まさに生方さんが書いたセリフなんですけどね。多くの人が、先入観や知識でいろんなものを決めつけたがるけど、そうではない人もいます。いろんなパターンがあって、いろんな人がいるということをいつも意識しながら、生方さんの本を世に送り出しています」

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

──死別や中絶など、ナイーブな要素を描く上で意識したことを教えてください。

「やはり、こういったテーマを扱うと当然いろんな意見が出てきます。社会問題などを扱うと何でもそうだと思いますが、皆さんそれぞれ異なる価値観を持っていらっしゃるので、当然厳しい意見も頂いています。“子宮頸がん”という病気を登場させた理由は、作中で弥生(有村架純)が会社の後輩に何度も『検診に行きなよ』と言っているように、皆さんにも意識してほしいという思いがあるからです。中絶に関しても、僕たちは中絶をすることが悪くて産むことが正しいとは全く思っていなくて。人それぞれで考え方や抱えているものも違うので、正解はないと思っています。間違って捉えられてしまわないような伝え方を心掛けてはいますが、これに関しては本当に難しいテーマだと思います。なので、デリケートなことを題材にして描いているという意識を常に持ち、いろんな人の意見に耳を傾けながら、常に一度胸に手を当てて考えた上で作るようにしています」

目黒くんは“相手の能力を吸収していく”ようなイメージで、とにかくすごく成長しています

──本作で、あらためて感じた目黒さんの魅力についてお聞かせください。

「僕たちは現場で、Snow Manが出演している音楽番組を見ることがありますが、本当に夏と全然違う!(笑)。夏は決してカッコ悪くはないのですが、あくまでも普通の人。目黒くんが夏を演じている時のオーラの消し方もすごいですし、視聴者の皆さんに、頼りないと思わせる夏のキャラクター像を見事に演じてくれています。そもそも、今、日本で一番キラキラしていると言っても過言ではない目黒蓮が、この役柄を演じられることがすごいことですよね。そして、本作ではテクニックだけではなく、心で演じる名優の方々に集まっていただいています。その方たちと芝居をしていくうちに、目黒くん自身の芝居もどんどん良くなっているのを感じています。(泉谷)星奈ちゃんとの芝居も、いい刺激と経験になっているんじゃないかな。夏はたくさんしゃべる人間ではないのでセリフは多くはないのですが、相手の芝居を受けて出る表情や目線、行間を読むことで伝えるものがたくさんある役柄です。その表現が圧倒的に広がってきていますし、我々が伝えたいものをちゃんと体現してくれています」

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

──目黒さんの成長ぶりは、目を見張るものがあるのですね。

「具体的に言うと、1話で放送された、水季の葬式で朱音(大竹しのぶ)と対峙(たいじ)するシーンや、4話で弥生に『私、殺したことある』と言われて何も言えなくなったシーン。この時の夏は、今まで彼の芝居にはなかった表情をしていたと思います。池松(壮亮)さんも、目黒くんのことを素晴らしい役者さんだと絶賛されているのですが、池松さんとの芝居では、目黒くんは池松さんの演技力を自分に取り入れているんじゃないかなと思うんです。少年漫画風に言うと、“相手の能力を吸収して強くなる”というようなイメージ。とにかくすごく成長しています」

──そんな目黒さん演じる夏の娘・海役の泉谷星奈ちゃんの印象はいかがでしょうか?

「『いちばんすきな花』(フジテレビ系)で、夜々(今田美桜)の幼少期を演じていただきましたが、その時点で、ベタな言い方ですが芝居が上手だったんです。大人たちの間に入っても怖がったりせず堂々としていましたし、集中力が途切れがちな子役の方が多い中、星奈ちゃんはちゃんと待てる子だったので、最初からプロとしての素質を感じました。海役を決める上では、たくさんの人に集まってもらってオーディションを実施したのですが、やっぱり彼女が圧倒的に良かったです。表現力と理解力に長けていたし、泣くシーンも見事に演じてくれました。“お母さんが死んでしまった”という感情を表現できるのは、経験の有無ではなく、星奈ちゃんが豊かな想像力を持っているからだと思います。星奈ちゃんは現場のムードメーカーでもあり、共演者全員から愛されています。ちなみに、僕が髪を切った際も、誰よりも先に『村瀬さん髪切った~!』と言ってくれて。あれはモテますね(笑)」

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

──有村さんは、壮絶な過去を抱える弥生を丁寧に演じていらっしゃいます。

「弥生は本当に難しい役で、有村さんは苦しみながら演じられています。僕によく、セリフの意味や弥生の心情を聞いてきてくださって、たくさんディスカッションをしながら長い時間をかけて役を落とし込んでいくという作業をされています。とても真摯(しんし)に役と向き合いながら、嫌われかねない役をしっかりと丁寧に演じてくださっています。一方で、夏と2人でいるときに見せる、恋する女の子のかわいさの表現もすごく上手ですよね」

──古川さん演じる水季も、とても魅力的なキャラクターです。

「捉えようがないけど心(しん)が強く、男女問わず翻弄(ほんろう)されるような不思議なキャラクターの水季役をとても魅力的に演じてくださっています。古川さんでないと、水季役は成立しなかったと思いますね。実は、古川さんにオファーした時点では、まだ100%決定できていたわけではなかったのですが、生方さんはすでに古川さんをイメージして水季を書き進められていて。なので、結果的に当て書きに近い形になったんだと思います」

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」
「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

登場人物たちのつながりを生方さんが見事に紡いでくださっているので、最終回の12話まで見届けてほしい

──これまでの放送で、特に印象に残っているシーンについてお伺いできますでしょうか。

「一番衝撃だったのは、7話で津野くん(池松)が水季の訃報を受けるシーン。これは本当に想像を超えるものでした。電話を受けた表情だけで慟哭を表現していたし、あのワンシーンで、津野くんが抱えていたものが見ている方に全部伝わったと思います。津野くんは、水季に残された時間が少ないと分かっている中で、朱音さんからの着信の振動だけで何かを感じ、確信を持って電話に出ているんですよね。実は、あのシーンは台本上では『はい』というセリフで終わりだったのですが、その後の芝居があまりにも良かったので全部残したんです。6話で、夏に対して『僕の方が悲しい自信があります』と言った理由が、この電話のシーンで全て分かるようになっていました。これまでたくさんの役者さんの芝居を見てきましたが、池松さんの芝居には本当に驚かされます。僕は、脚本を読んで自分なりに解釈をして、こういう芝居で来るだろう…と、ある程度予想しながらプロデュースをしているのですが、池松さんの芝居は、想像の向こう側にあるもっと深いものを教えてくれています」

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

──最後に、最終回に向けた見どころをお願いします。

「夏と弥生が別れた9話がものすごい反響でした。確かに9話はヤバかったと思っています。僕は生方さんと今回で3作品目になりますが、もしかしたら一番好きな脚本かもしれません。7話で、弥生は水季が夏に会いに行った際に、“自分と夏が幸せそうに一緒にいるのを見たから会わないで帰った”という事実を知りましたよね。そこで弥生は“自分のせいで、3人で過ごす時間を奪ってしまった”と感じるようになります。この弥生の葛藤がこのドラマのもう一つのテーマでもありました。あんなにつらい思いまでして、大好きな弥生と別れてまで、海と生きる道を選んだ夏がこれからどのように生きていくのか。『人はいつ、どのように父になり、どのように母になるのか』というキャッチフレーズが示すように、海の父になると決意した夏が、海と一緒に生きていく上でどのように成長していくのか? そして、ドラマのポスターに書いてある『選べなかった“つながり”は、まだ途切れていない』という言葉のように、登場人物たちのつながりを生方さんが見事に紡いでくださっています。ぜひ、最終回の12話まで見届けてほしいなと思います」

「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」

【プロフィール】

村瀬健(むらせ けん)
1973年生まれ。愛知県出身。フジテレビジョン所属のドラマ映画プロデューサー。早稲田大学卒業後、日本テレビに入社。「終戦60年ドラマ・火垂るの墓」「14才の母」などの話題作を手がけた後、フジテレビに転職。ドラマ「太陽と海の教室」「BOSS」「信長協奏曲」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「silent」「いちばんすきな花」、映画では「信長協奏曲」(2016年)、「帝一の國」(17年)「約束のネバーランド」(20年)、「キャラクター」(21年)などのヒット作品を送り出す。

【番組情報】

「海のはじまり」
フジテレビ系
月曜 午後9:00~9:54

取材・文/Mi(フジテレビ担当)



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