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「虎に翼」の制作統括、「年を重ねても寅子のコアな部分は変わらない」2024/08/30

「虎に翼」の制作統括、「年を重ねても寅子のコアな部分は変わらない」

 NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。物語の主人公・佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)は、昭和13(1938)年に日本で初めて誕生した女性弁護士の1人として日本中から注目され、憧れの的に。その後、戦争で父・兄・夫を亡くし、家族を支えるために司法省で働き始め、「家庭裁判所の母」と呼ばれるように。

 今回は、制作統括の尾崎裕和さんに最終回に向けての見どころなどをインタビューさせていただきました!

――中年期の寅子を描くに当たって、どういうふうな人物造形をされたのでしょうか?

「脚本の吉田(恵里香)さんと話していたのは、寅子は寅子のままで、コアな部分は変わらないということです。年齢を重ねることで当然、視野は広がっているんですけど、だからといって丸くなってしまうわけでもなく、言うべきことは言うというのを意識して作っています」

――長丁場で伊藤さんをご覧になって、何か変化は感じましたか。

「変わらないのがすごいなと思っているんです。朝ドラの主人公は本当に大変なのですが、ずっと現場で明るく笑っていて、今も現場に行くと『あはははっ』て声がいつもするんです。今は撮影終盤ですが、変わっていないことがすごいなと思っています」

――今回の朝ドラでは、何歳の寅子まで描かれるんでしょうか…?

「それは、お楽しみでお願いします(笑)」

――ここまでを振り返って、印象に残っているシーンを教えてください。

「第12週の(猪爪)はるさん(石田ゆり子)が亡くなるシーンですね。沙莉さんと猪爪花江役の森田望智さんの真に迫った芝居はすごく印象的でした。沙莉さんの気持ちがこもり過ぎて、全部の撮影が終了して、石田さんが帰る時までずっと沙莉さんが涙を流し続けていた姿が印象に残りました」

「虎に翼」の制作統括、「年を重ねても寅子のコアな部分は変わらない」

――新潟編での印象的なシーンはありましたか?

「寅子が川に落ちてしまうシーンが第16週にあったのですが、朝ドラの『主人公が水に落ちるのが定番だった時代』を思い出しました。寅子が花岡(岩田剛典)を山で突き飛ばしてしまった場面のアンサーであり、そういう狙いのシーンでもあったんです」

――新潟編の制作でこだわったところを教えてください。

「一番は、言葉です。キャスティングでは、杉田太郎を演じる高橋克実さんが新潟県三条のご出身ということで、寅子が新潟に行くという物語を考え始めた頃に、ご相談して出演していただきました。ほかにも、深田仁助役の遠山俊也さん、森口役の俵木藤汰さんも新潟出身です。新潟のネーティブの方に入っていただいて、より新潟の雰囲気が出るようにというのは考えていましたね。ずっと東京が主な舞台で、いわゆる方言はあまり使っていなかったですが、新潟は本格的に寅子が住み替える所なので、しっかりと土地の空気を出そうと決めていました」

――高橋さんの現場での様子はいかがでしたか。

「新潟の食べ物を差し入れをしてくださって。しょうゆおこわと、“イタリアン”と呼ばれているスパゲティ風焼きそばのご当地グルメをいただきました。すごく楽しんで出演していただいて、僕たちもありがたかったです」

――新潟で登場した、片岡凜さん演じる森口美佐江は、異彩を放っているキャラクターでしたが、片岡さんを起用した理由と、実際に演技をご覧になった感想を聞かせてください。

「NHKのドラマにも出ていただいていて、お芝居がすてきなのはもちろんですが、Xの書き込みを見ていて、いろいろ考えていて面白い方だなと感じていて。美佐江は、大人の立場から見ると『どんなことを考えているか分からない少女』という役なので、片岡さんが演じてくれるとハマると思ってお願いしました。朝ドラは初めてということもあり、演出とじっくり話をしながらすごくいい美佐江を作ってくださいました」

「虎に翼」の制作統括、「年を重ねても寅子のコアな部分は変わらない」

――片岡さんが「虎に翼」に出演が決定した時のXのポストは大変反響がありましたが、事前に何かご相談されたんでしょうか?

「特に相談はしていなくて、自由にやっていただいています。元々すごく面白いことを投稿される方なので、『今回も何か投稿するのかな…?』と思っていて、タイムラインを見て気付いた感じです」

――寅子の父・直言を演じた岡部たかしさんの息子、岡部ひろきさんのご出演も話題になっていましたが、ひろきさんの起用の理由を教えてください!

「オーディションに来ていただいていて、お芝居を見てすてきだなと。たかしさんの息子というのは分かっていましたけど、ちょっとひねくれた若者である入倉始という役にピッタリだなと思ってお願いしました」

――寅子の二番目の夫・星航一役として岡田将生さんが出演することになった経緯も教えてください!

「総力戦研究所にいた過去があって、戦争を背負っている人物であり、寅子のパートナーとして生きていく人ということで、『この繊細さを持った役を演じていただけるのは岡田さんだ』と思ってお願いしました。ドラマの大きな流れが決まった時にご相談をして、事前にしっかりとお話をして参加いただいた形です」

――岡田さんのお芝居で印象に残っているシーンはありますか?

「第18週での、総力戦研究所のことと、そこで自分の背負ってしまった責任を吐露するお芝居は本当に素晴らしかったなと思って。長いシーンだったので、半日以上かけて収録をしたんですけど、演出とじっくり話をしながら、長いエチュードみたいなお芝居を作っていたところは、本当にすてきだなと思って見ていました」

――轟太一(戸塚純貴)の語る同性婚の問題や、寅子と航一の夫婦別姓の問題は、今もまさに議論されている問題で、それを昭和の時代にうまく織り込んでいて驚いたのですが、どうやってこの問題を作中に入れたんでしょうか?

「寅子がこれまで積み重ねてきた人生、2回目の結婚であることや、民法の改正に自身が携わっていたことを含めて、『寅子だったらこう考えるんじゃないか』と吉田さんと相談しました。事前に婚姻の形を決めていたというよりは、『虎に翼』の寅子の歩んだ道をたどって、吉田さんが作り上げていった感じです。轟が同性愛者というのは最初に決めていたので、轟が年を重ねていく中でパートナーを見つけて、法律上の結婚ができない自分たちについてどう考えるかを描くことは、ドラマの流れとして必然だったと思います」

「虎に翼」の制作統括、「年を重ねても寅子のコアな部分は変わらない」

――残り放送あと1カ月ですが、終盤に向けての注目キャラクターを教えてください!

「登場人物たちが年を重ねていく様子に注目してほしいです。松山(ケンイチ)さんの演じている桂場等一郎は、裁判所組織の中で高みに登っていく人物なので、今までとは違う顔というか、寅子たちと『竹もと』で甘いものを食べていたころとは変わってしまう桂場が、最後の方の注目キャラクターかもしれません」

――最後に、視聴者の方へのメッセージをお願いします。

「寅子が裁判官として関わる『原爆裁判』がいよいよ判決の時を迎えます。その後も、さまざまな司法の世界の事件と向き合っていくことになりますが、寅子は家裁であらためて少年たちと向き合うことになります。クライマックスに向けてドラマとしていいものになるように最後まで頑張っていきますので、よろしくお願いします」

「虎に翼」の制作統括、「年を重ねても寅子のコアな部分は変わらない」

――ありがとうございました。

【プロフィール】
尾崎裕和(おさき ひろかず)
2002年NHK入局、2007年にドラマ部へ。ロンドン大学大学院でドラマ制作を学び、2019年より現職。制作統括としてプロデュースした作品は、連続テレビ小説「虎に翼」「エール」、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、よるドラ「恋せぬふたり」など。

【番組情報】
連続テレビ小説「虎に翼」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月〜金曜 午前7:30〜7:45ほか

NHK担当/Kizuka



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