よねを演じる土居志央梨「弁護士バッジを着けてもらった時は、泣きそうになるぐらいうれしくて」2024/08/23
NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。物語の主人公・佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)は、昭和13(1938)年に日本で初めて誕生した女性弁護士の1人として日本中から注目され、憧れの的に。その後、戦争で父・兄・夫を亡くし、家族を支えるために裁判官を目指し、司法省で働き始める。寅子は東京地裁の判事として、「原爆裁判」を担当する一方、プライベートでは星航一(岡田将生)からのプロポーズを受け、お互いそれぞれの名字を名乗った上で「夫婦のようなもの」になることを決めた。結婚式はしないという寅子に「心が躍るような」お返しをしたいと言い出した直明(三山凌輝)が甘味どころ「竹もと」に明律大学時代の仲間を集め…。
今回は、寅子の大学時代の同級生であり、現在は山田轟法律事務所で弁護士として活躍する山田よねを演じる土居志央梨さんにインタビュー。役作りから伊藤さんとの撮影エピソードまでたくさん伺いました!
――今回、キーパーソンとなる山田よねを演じるということで、オファーが来た際の心境を教えてください。
「主人公を沙莉ちゃんが演じることが発表されたニュースを見て『絶対に見よう』と決めていたドラマだったので、『まさか!』という感じで、台本をもらうまで信じられなかったです。本当にうれしかったですし、家族も喜んでくれました。あと猪爪直道役で(大学の同級生でもある)上川周作と共演することになったので、大学の仲間がすごく喜んでくれました」
――よねとご自身の似ているところ、似ていないところを教えてください。
「周りの人を観察するところは似ていると思います。よねってすごく人のことをよく見ているんです。似ていないところは、たくさんありますね。人を観察するところ以外は大体似ていないかもしれないです」
――役柄を最初に聞いた時はどんな気持ちでしたか?
「台本が来る前に、男装姿の女性だというのだけは聞いていて、すごく興味が湧いていました。ただ、今までは女性らしい役を演じる機会が多かったので、自分にできるんだろうかという不安はありました」
――どのような役作りをされましたか?
「台本でよねの背景などを読んで、魅力的な人だなと思えたので、そこからはよねとの距離がぐっと縮まりました。吉田恵里香さんの書かれる台本の力と、あとは髪を切ったことも大きかったです」
――男装への反響とご自身の感想も教えてください!
「最初の衣装合わせの時はまだ髪を切っていなくて、カツラで合わせたんです。そのカツラがあまりにも似合っていなくて(笑)。『大丈夫かな。これで1年間やっていけるのかな…?』と心配になりましたが、実際に髪を切ってからは、しっくり来ましたし、今はスーツ姿の自分の方が見慣れている感じです。周囲からも、『格好いい』、『似合ってる』と言ってもらえるので、自信になっていますね」
――ちなみに、どんなカツラだったんでしょうか。
「前髪が全部下りているカツラで、それを無理やり前髪を上げてセットしてるふうに、ピンで止めていたんですけど、それがほんとコントみたいになっちゃって、かなり不安になりましたね(笑)」
――髪を切った時の感想を教えてください。
「ずっと切りたかったんです。ショートヘアの役が来た時のために髪を伸ばしていたので。だから、(やっと切る事ができて)ありがとうございますという気持ちでした」
――よねを演じる時は普段の声から2段階ぐらい下げている印象ですが、どのように声を作っていますか?
「意思の宿った力強い声がよねに似合うなと思っていたので、家で1人でしゃべったりしながら探りました。新潟編の時とか、撮影が空いた期間があって。その後に久しぶりに撮影をするってなった時は、チューニングがよく分かんなくなっちゃって、低過ぎて悪魔みたいな声になっちゃったりとかして(笑)。監督や沙莉ちゃんに相談しながらやっています」
――よねは寅子に駄目出しをするところがたくさんありますが、「脚本の吉田さんの気持ちをよねが代弁しているのでは」という意見も多いですよね。よねに託した吉田さんの思いを、どういうところに感じましたか?
「よねが女子部のみんなと違うところは、恵まれない生い立ちがあることで。つらい過去はそれぞれにあるんですけど、恵まれてない生い立ち、何も持ってない、持たざる者であるっていうのは、明らかに違うところで、そういう役割を担っていると思っています。持たざる者の逆襲…じゃないですけど、懸命に時代をはい上がっていく様子を常に持っているし、トラちゃんに対してきついことをたくさん言ってるんですけど、それは愛情表現だと思っています。学生時代から、よねがずっと『うっとうしい!』と言って、それに構わずにトラちゃんが『よねさん!』と寄ってくる様子が、あの2人の仲良しの証拠だと思って演じていました。戦後、再会してからも基本的なところは変わっていないと思っています」
――寅子に対する「うるさい、黙れ!」というセリフは何回も出てきますが、どう演じ分けていましたか。
「“うるさい”、“うっとうしい”というセリフは読み解いていくと、うれしい時や照れている時、図星を指摘された時に言っていると思うんです。その時々の動揺している気持ちを考えて演じていました」
――「虎に翼」は、いろいろな立場の女性を象徴するような人たちが出てきますが、よねはどんな立場だと感じていますか。
「よねは自分の生い立ちもあって、弱い者の味方で、恵まれない立場にいる人を救いたいということを一貫している人なので、そこが絶対にぶれないように気を付けていました。戦災孤児の保護にもつながると思うんですけど、とにかく弱い立場の人の絶対的な味方であるところをぶれないように意識しています。この時代は女性が弱い立場にいるので、結果としては女性の味方にはなっているんですけど、『恵まれない立場にある人を救いたい』という気持ちを意識しています。女性の社会進出というテーマと少しずれちゃうかもしれないんですが、意識はそういうところに置いています」
――轟太一役の戸塚純貴さんが「同世代のキャストが多くて、すごく楽しくやっている」とおっしゃっていましたが、あらためて、土居さんからキャストの皆さんとの印象的なエピソードを教えてください!
「学校にいる気分というか、特に学生時代の撮影をしていた時は、もう本当に学校の仲間っていう感じで、すごく心を許せるメンバーでした。お芝居のことはすごく真剣に話し合えるし、くだらない話もできるし。エピソードは…、あり過ぎて覚えていないです(笑)。毎日いろんなことで笑っていました。沙莉ちゃんと共演した経験もあって、最初からすごく信頼していましたし、純貴くんは同い年なので刺激にもなって、本当にありがたいですね。明るい人がとにかく多い現場です」
――ちなみに、戸塚さんが「土居さんがすごくゲラでいつも笑われている」とおっしゃっていたのですが、戸塚さんのどういったところが面白いんでしょうか。
「リハーサルの時から様子を見ずに、100%でガンッとやるんですよ。その思い切りの良さに、つい笑顔になってしまいます。と言いつつ、格好いいシーンで、食べている米粒を飛ばしてきたり、抜けているところもあって(笑)。和ませてもらってますね」
――轟との印象的なシーンはありますか?
「第21週の轟がトラちゃんに初めて、花岡への思いや今の恋人の遠藤時雄(和田正人)との関係に対する思いをしゃべるシーンが、見ていて感動して。轟の優しさや信念を感じて、なんか今までにない轟の表情を見ることができてすごい感動しました」
――よねと轟は友情を超えて、家族みたいな関係になっていくと思うんですけど、土居さんは2人をどう見ていますか。
「一言で表すと相棒ですよね。轟の前では、よねも格好悪いところを見せられる相手なんだろうなと思って。よねはトラちゃんにも格好悪いところは見せないように振る舞っていると思うので、格好悪いところを見せられる相手っていう意味では、轟ぐらいなんじゃないかなと思います。そういう意味では、安心できる相手という感じですね。『一緒に事務所をやろう』と、よねから轟を誘ってはいますけど、よねも轟に救われたんだろうなと思って、あそこで出会えて本当によかったなって思います」
――第20週でよねがやっと弁護士資格を取得しましたが、どんなお気持ちでしたか?
「台本を読んだ時はもちろんうれしかったですけど、1番グッときたのは、衣装合わせでスーツに弁護士バッジを着けてもらった時で。本当に泣きそうになるぐらいうれしくて。長年の夢がかなうと、こんな気持ちになるんだなと思って、よねとすごく気持ちがリンクしました」
――自分の名前が入った法律事務所はいかがでしたか。
「感慨深かったです。山田轟法律事務所は、じゃんけんで決まったんですけど、第20週のじゃんけんのシーンは本気でじゃんけんしました。私が勝つまでじゃんけんしたのですが、全然勝てなくて。7回戦ぐらい、2人とも超白熱してじゃんけんしていました(笑)」
――もちろん過去の出演作全てに思い入れがあると思いますが、今回の「虎に翼」は土居さんのキャリアにとってどんな存在になりそうですか。
「この作品にこのタイミングで出合えて、そしてよねを演じられたことは、今後の私の人生で、思い出すたびに勇気をもらえるような作品になると思います。仕事をしていく上でも、いつも心の中によねを住まわせておいて、弱気になった時はよねの力を借りて、『虎に翼』を思い出して、この先も頑張っていけるんじゃないかなと思える作品ですね。人生のこのタイミングでこの作品に出合えて本当に良かったです」
――“このタイミングで”ということは、20代で出合っていたらまた違っていたんでしょうか。
「20代の頃は、とにかく一生懸命頑張りたいけど、どうしていいか分からない状態だったり、ちょとつ猛進で視野が狭くなってしまっていた部分もあったと思うんです。30代になって、いろんなことに興味が湧いたり、少しだけ余裕を持てるようになったりしたタイミングで、この作品のお話をいただいたんです。だからすごく現場を楽しめているというのもあるのかなという意味でもすごく縁を感じています。20代の頃だったら多分、よねのことを俯瞰(ふかん)して演じられなかったような気がしますね。のめり込み過ぎちゃって、よく分かんなくなっていたかな」
――本日放送(第110回)の寅子の結婚を祝うシーンでは戦争を経て、学生時代の仲間が久しぶりに再会しましたよね!
「女子部のみんなや先輩たちそろっての撮影はほんとに久しぶりでした。何カ月も会っていない方もいましたし。ほんとに、ただただ懐かしくて、うれしくて、そんな状況を楽しんでいました。そんな時でも、台本に『乾杯!(よねはしない)』とか書いてあって、乾杯できないのか…と残念に思いながら、頑張って抑えてみんなとの時間を楽しみました。すごく楽しかったです」
――このシーンで唯一再会できなかったのが花岡悟(岩田剛典)ですが、花岡に思いをはせるような気持ちはありましたか。
「このシーンに明律大学の男性が轟しかいないんですよね。小橋(名村辰)と稲垣(松川尚瑠輝)は仕事が忙しかったんですかね?(笑)。轟だけなのはやっぱりちょっと寂しいです。でも轟は、花岡の気持ちも背負って頑張って生きている人なので、そういうところも思い出しながらやっていました」
――朝ドラは「おちょやん」に次いで2作目になりますけれど、前回と同じ梛川善郎(なぎかわよしろう)さんが今回もチーフ演出ということで、最初にお話があった時はいかがでしたか。
「梛川さんからお話が来て、最初に、まだ台本もなかったぐらいの段階で、梛川さん含め監督たちとプロデューサーの皆さんとお会いして、よねという役の外枠をつかんでいくみたいなお話をしました」
――起用の理由は聞いていないんですか?
「聞いてみたら、『ちょっと外側に立って、みんなを冷静に見ている感じがよねだと思った』と言ってくれて、意外でした」
――梛川さんの演出はいかがですか?
「本当に策士というか、役者や役者の状態によって、すごく細かく演出を使い分ける方だと思っていて。自分が演じてみせてテンション感を伝えてくれる時もあれば、小さな声で感情を一つ一つ整理して伝えてくれる時や、何も言わずに見ているだけの時もあって、本当にすごいんです。私だけじゃなくて全ての役者さんに使い分けているので、とんでもないキャパだと思います」
――大学同期の上川さんとの共演もうれしかったとおっしゃっていましたが、現場で会った時はどんな感じでしたか。
「不思議な気持ち過ぎて、ちゃんと話せなかったんです。状況が大学の時とあまりにも違い過ぎて、大学の時は2人でいてもずっとふざけていたので、真面目な顔して会うのも変な感じで。終わってからいろいろ話しました」
――今作への出演で土居さんのお名前とお顔を覚えた人がすごくいると思うのですが、そういうことへの喜びや自信につながったりはしましたか?
「本当にたくさんのメッセージやファンレターを頂いて、ありがたいし、うれしいです。ますます『ちゃんとお芝居と向き合わないとな』と、気が引き締まる思いですね」
――最後に、視聴者の方へのメッセージと、今後の見どころを教えてください。
「今後は、リーガルドラマとしての『虎に翼』に注目してほしいです。法廷のシーンがたくさん出てきます。最後の1秒まで全員で力を合わせて頑張りますので、ぜひ楽しんでいただければと思います!」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
土居志央梨(どい しおり)
1992年7月23日生まれ。福岡県出身。京都造形芸術大学在学中にオーディションを受け、映画「彌勒」(2013年)でデビュー。主な出演作に連続テレビ小説「おちょやん」(NHK総合ほか/2020年)、テレビドラマ「太陽の子」(NHK総合ほか/2021年)、大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか/2021年)など。
【番組情報】
連続テレビ小説「虎に翼」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月〜金曜 午前7:30〜7:45ほか
NHK担当/Kizuka
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