「スカイキャッスル」松下奈緒、田村監督、韓国版制作陣との対談が実現2024/08/15
松下奈緒主演で毎週木曜午後9:00から放送中の木曜ドラマ「スカイキャッスル」(テレビ朝日系)。本作は2018〜19年に韓国で放送された大ヒットドラマ「SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜」のリメーク作だ。高級住宅街「SKYキャッスル」に住むセレブ妻たちの受験戦争をめぐるバトルと複雑に絡み合う人間関係を描き、韓国の非地上波チャンネルとしては当時歴代最高視聴率の23.8%を記録。そんな「SKYキャッスル」を制作した韓国の大手スタジオSLLで、数々のヒット作を手掛けたパク・ジュンソ代表と、韓国版「SKYキャッスル」の監督であるチョ・ヒョンタク氏、日本版の演出を務める田村直己監督、松下による夢の対談が実現した。
――まず田村監督にお伺いします。韓国版と日本版で大きく変更している部分、あえて変えていない部分などはあるのでしょうか?
田村 「全体的にほとんど変えてはいないのですが、やはり日本における受験や家庭の状況という部分では、より日本らしさを意識しました。韓国版『SKYキャッスル』では、例えば家政婦さんがいたりとか、ものすごくハイソなので、もう少し日本的なお金持ちというか、日本人に合うような身近な感じにしています。お芝居もあまり激しくなく、どちらかという日本人の“わびさび”みたいなものも少し足してやらせていただいています」
――制作にあたり韓国側から「この部分は守ってください」といった、とくにリクエストをした部分などはあったのでしょうか?
パク 「私たちのほうから『これを守ってください、こういうふうに書いてください』と要望した部分は全くないです。ただ、やはり日本と韓国は環境やいろいろな状況が違うのは分かっているので、逆に言えば『日本のリアリティーに合うように書いてください』ということは申し上げました。このドラマの本質は、人間の本性的なところを突いているので、その部分に関しては監督も俳優さん、作家さんも皆さんよく分かっていらっしゃるので、その本質の部分だけ守っていただければと。それ以外の部分では、日本に合った形で、日本のファンの方が納得するようにしていただくのがよいと思います」
――第1話はすでにご覧になりましたか?
チョ 「第2話まで拝見しました。本当に楽しく見させていただきましたね。とても面白かったです。ストーリーや設定はすでに分かっているけれど、それでも入り込んで見てしまいましたね」
田村 「ありがとうございます。本当はいろいろ言いたいこともきっとあるのかもしれませんが(笑)」
チョ 「本当に面白かったです。私は字幕が付いていない日本語のバージョンで見たのですが、それでも入り込んで楽しく見させていただきました。日本版には、やはり韓国版にはないような、自分が想像していた以上のもの、何か超えているものが出ているなと感じました」
パク 「個人的には最近の日本のドラマを見ると、演技やリアクションがとても日本的というか、韓国人からするとちょっと物足りないと思う部分があったのですが、今回の『スカイキャッスル』では、皆さんの演技やリアクションがすごく自然に感じられて、とても驚きました。また、韓国版の20話分を日本版ではギュッと短くしなければいけないのですが、その部分も本当に上手く短くされていて、まだ第2話までしか見ていないですが、とてもいいストーリーになっていることに感心しました」
田村 「それはもうプロデューサーの方と作家さんがとても優秀なんです(笑)」
チョ 「本当に(田村監督は)謙遜される方ですね(笑)」
――お二人から絶賛されていますが、松下さんは演じられていてどうですか?
松下 「韓国の『SKYキャッスル』は、怒るポイントも憎しみを込めるタイミングも早くて、感情の量も多いなと思って見ていたのですが、その影響もあってか逆に紗英という人間をつくりやすかったです。ストンと落とし込めたというか。感情が先に顔に出たり、先に口が出てしまったりといった部分が、韓国本家のものに影響を受けていると思います。怒りや、感情を爆発させるタイミングはそれぞれなので、国が違っても伝わる部分は伝わるのだと、お二人の今のお話を聞いていてそう思いました。私はどこか(オリジナルとは)別ものでなければいけないと思っていましたが、人間の感情というのは、実は共通項がたくさんあるのかなと思いました」
パク 「私自身よくリメークもしますし、リメークされた作品を見たりしますが、やはりリメーク作品というのは、オリジナルをいかにうまく写したかではなくて、その国らしさやオリジナリティーをちゃんと入れた作品が良い作品だと思いますし、それが非常に重要な要素だと思います。今回第2話まで見て、韓国バージョンにはない日本らしさが入っていて、本当に良い作品を作っていただいたと思いました」
田村 「あまり褒められたことがないので、うれしいですね。冗談です(笑)。ありがとうございます。今もまだ撮影中なので、スタッフみんなに伝えます。とても励みになると思います」
――日本の作品を韓国でリメークしたり、その逆もあったりと日韓のドラマ交流が盛んになっていますが、日本と韓国の制作現場で違う点や、お互いに「この部分はうらやましいな」と感じる部分などはありますでしょうか?
田村 「韓国版『SKYキャッスル』では、すごく奇麗な感じで撮ってらっしゃって、アングルがたくさんあるなといつも思っていたのですが、カメラは何台ぐらいで撮っているのでしょうか?」
チョ 「基本的に95%ぐらいはカメラ2台で撮影しています。俳優に同じ演技を何度も繰り返してやらせると、やはり俳優も疲れるので、なるべく繰り返さないように、いろんな工夫をしながら撮りました」
田村 「でも結構たくさんいろんなアングルがあるよう感じがしました。3台ぐらいで撮っているのかなと思っていたのですが」
チョ 「2台のカメラをどういうふうに置くかによって、アングルがマルチに見えるようにとか、いろいろ工夫はしました」
田村 「私たちは基本的には1台で、余裕があるときに2台使います」
チョ 「名作というのは1台で撮るものですよ(笑)」
田村 「いい考え方ですね(笑)」
チョ 「カメラが1台の場合、俳優が演じるときに、どこにフォーカスを置くかというのがはっきり分かるので、俳優にとってはいいと思います。2台だと、どこに自分がフォーカスすればいいのかわかりづらい部分もあるので、1台の方がいいかなという感じがします」
松下 「どのカットも全力で演じていますが、やっぱり1カメで攻められていると思うと、ボルテージは上がりますね(笑)」
田村 「今回は人数が多いので、1カメだと大変です(笑)」
チョ 「出演者が多いっていうのもありますが、現場で何か偶然に拾えないかなと思って、それで2台目のカメラを必ず待機させています」
――このドラマは、親の話であり子どもたちの話でもあるわけで、学生役の若手俳優も大勢出演されていますが、どのように決められたのでしょうか?
田村 「今回は、韓国版の子どもたちが素晴らしすぎるので、プロデューサーとみんなで、日本の中でもすごくお芝居が上手な子たちを集めて、力を入れてオーディションをしました。みんな上手なんだけど、その中でも相性の合う子、またヘナ(日本版では山田未久)とイェソ(日本版では浅見瑠璃)を軸に、キャラクターが相いれないような感じの子を選んだりしましたね。子どもたちが重要なポジションを占めているので、すごく力を入れて選んだ結果があの子たちです。少しでも本家に近づけるように、みんな日々頑張っています」
――松下さんは、若手俳優の皆さんと一緒に演じられて影響を受けたことや、何か驚いたことなどはありますか?
松下 「今回出演されている方たち、本当にすごいですよ。曇りもないド直球で、完全にお芝居なのか、実際そういうキャラクターなのかがちょっと分からなくなりますね(笑)。監督がおっしゃったことを聞いただけでガラッとお芝居が変わるんです。それはうらやましいと思うし、若い年齢だからということではなくて、持って生まれたものをすごく感じる俳優さんが多いですね」
チョ 「私も若い俳優たちは、約2カ月くらいオーディションをやりました。私自身は、オーディションはその俳優と会う場所であると考えていて、そこでいろんな話をします。演技力を見るというよりも、こちらが与えたミッションをこの俳優はどうやって突破するのか、ということを見ようとします。急に長いセリフのシーンを与えられたとき、この子はどのように切り抜けるのか。たまにメンタルが崩れる子がいたり、泣き出す子もいたりしますが、イェソ役を演じたキム・ヘユンさんの場合は、すごく長いセリフを与えたのに、とても頑張って力強く突破したという感じがしました。難しいミッションを与えられたときにどうなるのかということを重要視して、それに合うキャラクターを決めました」
田村 「僕たちとはちょっと違いますね」
チョ 「たぶんこれは私のやり方なので、韓国でもほかの監督は違うやり方だと思います。オーディションだからといって1列に並べて、審査員の前で演技させる形は、私はちょっと違うんじゃないかと思っています」
田村 「なるほど。今度やってみます」
松下 「本当にその人を見てくれているのですね」
――では最後に、日本版の「スカイキャッスル」を、どんな点に注目して見てほしいのか、視聴者に向けてメッセージをお願いします。
パク 「たぶん、私が最近見た日本のドラマの中では一番面白い作品です。なので、その作品をぜひ見ていただいて、その後また韓国のオリジナルバージョンを見ていただいて、両方のどういうところが良かったのか、比較して見られるのもいいと思います。良い作品なのでぜひ見てください」
チョ 「韓国と日本は非常に近くて交流も多いのですが、深く見るとけっこう違うところもあります。とくに感情表現は違っていて、この作品は感情表現がものすごく韓国的です。そこに日本的な解釈が入り、日本ならではの独特な感じが出ていて、とてもよく描かれているので、ぜひそういった部分を見ていただきたいと思います。また、紗英と泉(木村文乃)、紗英と九条(小雪)の関係が、非常に緊張感がありました。一人二役なのかと思うくらいでした。第2話の後半で紗英が泉に『私、何するかわかんないわよ』と言う場面がすごく良かったです」
田村 「ちょっとやってあげて(笑)」
松下 「『私、何するかわかんないわよ』(と演じてみせる)。ちょうどこの衣装でした(笑)」
チョ 「おお〜!(笑)。その場面を見て鳥肌がたちました。字幕がない分、余計に感情的なものが伝わってきたような気がします」
松下 「わぁうれしい。お二人がこんなふうにおっしゃってくださって。この作品に携わることができてすごくよかったなという気持ちと、この気持ちをそのまま視聴者の皆さんにお届けできることが本望です」
田村 「韓国版と比較しながら、その差も楽しんで見てもらえたらと思います。韓国版へのオマージュも入っているので、そういう部分にも注目してぜひ見てください」
松下奈緒=ヘアメイク/山科美佳(MARVEE)、スタイリング/大沼こずえ
【プロフィール】
田村直己(たむら なおき)
テレビ朝日系「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」シリーズ、「未解決の女」シリーズ、「平成仮面ライダー」シリーズ、「六本木クラス」「桜の塔」「シッコウ‼︎〜犬と私と執行官〜」、映画は「七人の秘書 THE MOVIE」など数々のヒット作を手がける。
松下奈緒(まつした なお)
1985年2月8日生まれ。兵庫県出身。2004年女優デビュー。数々のドラマや映画に出演、2010年のNHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」でヒロインを演じる。ミュージシャンとしても活動し、今年5月には9thアルバム「souNds!」を発売。「朝だ!生です旅サラダ」(朝日放送)ではMCを務めている。
パク・ジュンソ
SLL(旧名JTBCスタジオ)のドラマ制作責任者兼CEO。SLLは、DRAMA HOUSEやB.A.エンターテインメントを含む15社のドラマ、映画、バラエティーの制作スタジオを擁し、主な作品として「私の解放日誌」「財閥家の末息子」「良くも、悪くも、だって母親」などがある。パクは「力の強い女ト・ボンスン」シリーズ、「スカイキャッスル」「キング・ザ・ランド」「ヒーローではないけれど」など100本以上の韓国ドラマを手掛け、グローバル共同制作の責任者でもある。
チョ・ヒョンタク
韓国を代表する監督。代表作に「スカイキャッスル」、BLACKPINKのジス、チョン・へイン主演の「スノードロップ」、チャン・ギヨン「ヒーローではないけれど」など多数。2019年には第3回韓国ドラマ大賞ニューメディア賞、第55回百想芸術大賞最優秀テレビ演出賞、第10回大韓民国大衆文化芸術大賞内閣総理大臣表彰など権威ある賞を多数受賞。
【番組情報】
ドラマ「スカイキャッスル」
テレビ朝日系
木曜 午後9:00〜9:54
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