EXILE NAOTOと中村海人が無人駅の魅力を発信! 高知放送プロデューサー「列車の楽しみ方を提案したい」2024/08/16
駅舎に駅員がいない――。いわゆる「無人駅」。しかし、そんな無人駅が、何もない、ただ寂しい場所なのかというと…全国には、人気の観光地となっている無人駅や、鉄道ファンの聖地とされる無人駅、さらに無人駅を起点とした、すてきなスポットがたくさん!
そんな“オモシロ無人駅”を徹底調査する高知放送制作「楽しい!美味しい!何か変? 人が集まる無人駅」が、8月17日に日本テレビ系で放送される。番組を企画した高知放送の猪頭(いとう)大輔プロデューサーに、今回の見どころやポイント、ローカル局ならではの魅力あるコンテンツ作りとは何かを伺った。
【番組の詳細はこちら(https://www.tvguide.or.jp/news/news-3102123/)】
ローカル局発、久しぶりの全国放送!
――高知放送としては、2021年6月放送の「山ちゃんが完全ガイド!! 1泊2日女子お遍路!!」以来2度目の全国放送となります。
「高知放送の企画が初めて採用された2021年以降も、さまざまな企画を考え、チャレンジを続けてきました。それが実った結果の、久しぶりの全国放送ですね」
――「無人駅」にスポットを当てた理由は?
「今回、制作会社(日テレアレックスオン)と一緒に企画書を作る中で、“無人駅”というキーワードが出てきて、これは面白い切り口になりそうだぞ、と感じました。私がもともと制作のディレクター畑が長かったので、マニアックな内容が好きだったこともあります。できれば、もっとマニアックに、深夜枠でやりたかったですが(笑)」
――その「無人駅」というキーワードから内容を膨らませていったんですね。
「そこからリサーチを重ねて、内容を詰めていくことで、晴れて採用となりました。昨年の秋に企画書を提出して、自分も含めて膨大な量の無人駅をリサーチして。その後も半年くらい、ああでもないこうでもないと会議を繰り返して…結果、1周まわって最初の形に落ち着くんですけど(笑)」
地元をPRしたいが、それだけでは東京で通用しない
――ローカル局が企画・制作した番組が全国で放送される“上りネット”。高知放送が手掛ける番組ということで意識されたことは?
「2021年のお遍路もそうでしたが、“上りネット”ですから、地元が関わる、高知をPRできる話題や情報を盛り込みたいと考えました。無人駅=利用者の減少や人員不足などを理由に、駅員が配置されていない鉄道駅が増えていて、その割合は全国でおよそ50%。リサーチを進めると、高知県がダントツで日本一の無人駅率93.5%ということが分かりました。そこで、無人駅をキーワードにすれば、高知を取り上げる理由づけにもなるし、無人駅を紹介しつつ地元の観光スポットなども紹介できると考えたのです」
――無人駅率93.5%とは驚きですね。さらには、全国で唯一高知県が90%を超えるとか。
「有人駅を探す方が難しいくらい(笑)。ただ、お隣の徳島県が全国2位の81.6%、3位の長崎県が79.6%(※全て国土交通省調べ)。都市部を除く地方はどこも似たような状況ですから、無人駅という、番組をご覧になる多くの方が共有できるキーワードはぴったりなんじゃないかと考えました。とはいえ、自分たちの周りにある地元のネタや、地域の人たちを想定しただけの番組作りでは東京や全国で放送されたときに通用しないため、バランスには気を配りました」
――高知県および近県の人にしか伝わらない番組では、全国の人は見てくれない。
「コアでマニアックな魅力を持った無人駅ばかり集めて企画書を作ったところ、ディレクター陣から“この番組って一体、誰に向けて放送するんですか?”という意見が出て、なるほどその通りだな、と。駅そのものはもちろんですが、その周辺の観光地やスポットまで、ネタの範囲を広げて紹介することにしました」
――今回は高知県・徳島県以外に群馬県の無人駅も紹介しますね。
「群馬県の無人駅も紹介することにしたのは、関東近郊で暮らす人たちになじみがあって、訪れやすい地域だと考えたからです(※群馬県の無人駅率は48.6%で、関東第1位)。肝心の無人駅も、群馬県は粒ぞろいでした」
NAOTOさん、中村海人さんも無人駅ロケを満喫!
――今回はEXILE NAOTOさんとウエストランドの井口浩之さんが高知県、Travis Japanの中村海人さんとさや香、新村さん・石井さんが群馬県の無人駅を調査します。
「私たちが地元で番組を作る際は、お笑い芸人さんをお招きすることが多いのですが、今回は“上りネット”。加えて、放送が夏休みの土曜日ということもあり、NAOTOさん、中村海人さんを通じて女性や10~20代の若い皆さんにも見ていただきたいと考えました。もちろん、鉄道ファンの方にも満足いただけるよう作ったつもりです」
――ぜひ見てもらいたい、一番インパクトのあった駅はどこでしょう?
「高知県では、“撮り鉄”の方に人気のJR土讃(どさん)線・土佐北川駅ですね。ご覧になっていただければ分かると思いますが、立地が面白い。立地という意味では、群馬県にあるJR上越線・土合(どあい)駅もインパクトがありました。462段もの階段をひたすら下った地下70mの場所にある日本一の“モグラ駅”なのですが、その意外な使い道も含めて見どころです」
――ロケの現場はいかがでしたか?
「NAOTOさん、中村さんは都会のご出身ですが(それぞれ埼玉県、東京都)、田舎の取材体験を満喫されて。NAOTOさんは高知について、『自然豊かで、森と海両方の魅力が詰まっているところが良い』と言ってくださいました。JR大杉駅近くの、日本一と言われる『杉の大杉』には、井口さんともども感動されたようです」
――そんなに気に入ってくれて、うれしい話ですね。
「中村さんも、わたらせ渓谷鐵道・水沼駅前のデカ盛りが名物の食堂で、Travis JapanのYouTubeチャンネルでもやっている大食いチャレンジで奮闘し、同じく水沼駅にあるサウナ施設で“ととのって”…と、群馬県を気に入った様子でした。サウナでは、さや香のお二人も見事にととのっていましたし、楽しいロケだったと振り返っておられましたね」
地元の人も気づかない魅力あるスポットがたくさん!
――ロケを通じて、都会からやって来た人が驚くスポット、逆に、そこで暮らす人たちは気づかない地元の良さもあったのでは?
「土佐くろしお鉄道・夜須駅の近くに“道路に、垂直に突き刺さったように見える道路”があるんですが、NAOTOさん、井口さんとも結構驚かれていて。要は漁船が通るための跳ね上げ式の橋で、高知県民は見慣れた光景なのですが、知らない方には目新しく映るんだなと思いました」
――群馬県では何かありましたか?
「わたらせ渓谷鐵道・花輪駅からほど近い場所に、うどんやラーメンの自動販売機が並んでいて、中村さんが楽しんでいました。ある世代からすると当たり前の自販機も、若い方には昭和レトロとして“映える”わけです。こうしたスポットは全国に、まだたくさんあるんじゃないかと思いましたね」
――ここ数年はインバウンドの観光客も増えています。
「例えば、徳島の山間部にある土讃線・JR大歩危駅には、かずら橋という天然素材の吊り橋を見るために多くの外国人観光客が足を伸ばしていますし、全国には日本人でもその良さに気づかないようなスポットがたくさんあります。無人駅が増えている地域で暮らしていると、車で移動することが多いのですが、それでも列車に乗りたい、乗ってみたいと思えるような楽しみ方を提案できればいいなと思います」
――2023年度前期のNHK連続テレビ小説「らんまん」に続き、2025年度前期に放送予定の「あんぱん」も高知県が舞台。昨年、高知を訪れた観光客の入込数は472万人(※高知県調べ、推計値)と、過去最高を更新しました。
「“あんぱん、あんぱん”と大声では言いづらいですが(笑)、私ども高知放送も、一緒になって地元を盛り上げたいという気持ちは同じです。番組でも紹介する土佐くろしお鉄道は第三セクターの、日本で最後に建設許可が出た新しい鉄道でなんですが、高知出身で『あんぱん』のモデルとなっているやなせたかし先生が、駅ごとにマスコットを描かれています。朝ドラが放送されてにぎわう前に、遊びにいらっしゃってはいかがでしょうか」
――全国にある鉄道駅のうち約半分は無人駅です。パート2にも期待しています。
「リサーチをする中で、常磐線にホームでエビの養殖をやっている無人駅があったり、駅舎でお酒の醸造をやっていたり。ほかにも静岡にある、1日1組限定のホテルになっている無人駅ですとか、興味をそそる駅がたくさんありました。次回作を続けるには、やはり分かりやすく数字(視聴率)が必要です(笑)。皆さんぜひ、ご覧いただければと思います!」
【プロフィール】
猪頭大輔(いとう だいすけ)
岡山県生まれ。RKC高知放送東京支社メディア戦略部長兼報道制作担当。
高知大学卒業後、平成4(1992)年、高知放送入社。テレビ制作部、報道制作部などを経て現職に。これまで「公園どおりのウィークエンド」、「こうちeye」、「ズームイン!!SUPER」などの番組を手がけた。
【番組情報】
「楽しい!美味しい!何か変?人が集まる無人駅」
日本テレビ系 全国28局ネット(RKC高知放送制作)
8月17日 午後3:00〜3:55
取材・文/橋本達典
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