吉高由里子「まひろの人生第2章がスタートします」――大河ドラマ「光る君へ」2024/08/25
NHK総合ほかで放送中の大河ドラマ「光る君へ」。まひろ(吉高由里子)の夫・宣孝(佐々木蔵之介)や、藤原道長(柄本佑)の姉・詮子(吉田羊)が世を去り、月日は3年流れ…。宮中では「枕草子」が流行し、これを読んでは亡き定子(高畑充希)に心を奪われたままの一条天皇(塩野瑛久)。一条天皇に相手にされず寂しく暮らす、道長の娘・彰子(見上愛)。
8月25日放送の第32回「誰がために書く」では、まひろが道長の頼みで、女房として、彰子が暮らす藤壺へ上がります。まひろ役の吉高由里子さんに、内裏へ上がることに対するまひろの心境や書に取り組んだ様子などについて聞きました。
「書」への挑戦は、プレッシャーを感じつつもワクワクしている
――物語もいよいよ佳境に入ります。これまでまひろ役を演じてきていかがですか?
「2022年5月に制作発表されてから2年以上が経過しました。一つの作品にこれだけ長く携わるのは初めての経験です。初めての経験って、大人になると、自分から向かっていかないとなかなかできないじゃないですか。今回、巡り合わせでこういう機会をいただいて、貴重な経験を継続中の日々です」
――もう2年以上も経っているんですね。
「『私が紫式部よ』なんて思ったことはまだないですけど、皆さんに愛されるキャラクターになればいいなという思いで演じてきて、自分自身の成長を感じています。特に書は、初めの頃は目も当てられなくて(笑)。でも今は、『書も、役と一緒に成長しましたね』とおっしゃっていただけるので、向き合う時間だけちゃんと応えてくれるものだなと思いました」
――楽器の琵琶や、宋の言葉などにも挑戦されていましたが、一番苦労されたのはやっぱり「書」でしょうか?
「そうですね。思ってもみない方向に線が走ってしまうこともあって(笑)。それに、紫式部役を演じる醍醐味(だいごみ)ですし、視聴者の皆さんの注目度が高いと思うので、緊張します。あと、難しかったことの一つに乗馬もあって。初めの頃は『馬に乗って現場に登場したい』と言っていたんですよね。『ふざけんなよ!』とその時の私に言いたいぐらい、乗馬も難しかったです(笑)。馬の感情の起伏もありますし、馬の走る動きに合わせて顎がガクガク動いたり(笑)。騎手の方のすごさをあらためて実感しました。楽しい分難しい、難しい分楽しいですね」
――馬に乗って登場する吉高さんを見てみたかったです(笑)。書については、「手が震える」というお話もされていました。
「書の稽古では、40分ぐらい経つと手が温まってきて線が安定してくるんですけど、現場では撮影の直前にしか練習時間がないんですよね。だから、短い時間で奇麗な文字が書けるように、家でもコツコツ練習しています。それでも、スタジオの湿度などによって墨の乾き方も変わってくるので、家での練習と同じようにいかない日もあって。スタッフの皆さんに『お祈りしていてください!』とお願いして本番を迎えています。本番は書いている姿を撮影されるので、公開試験を受けている気分で(笑)。苦労もありますが、筆を育てている感覚が楽しいです」
――大会に出場するアスリートのようですね(笑)。まひろとして書く時と、紫式部として「源氏物語」を書いていく時で、書に変化はあるのですか?
「まひろとしては、仮名文字を多く使いつつ、道長との文通では漢字も取り入れていました。「源氏物語」では、仮名文字と漢字の両方が出てくるので、集大成を感じます。さらに、現代ではあまり使われていない変体仮名も出てきます。不思議なことに、練習しているとその変体仮名も読めるようになってきて。身に染み付いているのが怖いぐらいです(笑)」
――苦労しながらも、とてもやりがいを感じていらっしゃるようです。
「書の先生は私の字の癖を理解した上で、アドバイスをくださったり、癖を生かそうとしてくださったりするので、ゴルフのキャディさんみたいな存在です(笑)。書の練習は孤独ですし、練習時間は膨大なのに、撮影は30秒ぐらいで終わることもあって。その気持ちを1番分かってくれるのは先生なので、相棒感が強いですし、一緒に挑戦しているみたいでうれしいです」
書きたいことと書きたい気持ちがぴったりと合い、まひろ自身が面白いと思う物語を書きたくなった
――まひろは、これから道長の娘・彰子が暮らす藤壺に上がりますが、道長との距離が物理的に近くなりますね。
「ひかれ合っていることはずっと変わらないんだと思います。道長を思っている気持ちが爆発しないように、一生懸命、自分でふたをして、そこから距離を取っているような気がしていて。一方で『民のためのよき政』という同じ方向を目指す人がいて心強くもあります」
――まひろにとって、道長はどんな存在だと思いますか?
「生きがいなのではないでしょうか。道長とどうなりたいということではなく、道長が生きていることそのものが、まひろがこの世で生きる理由のような気がします。よりどころですね。お互いが光と影の存在で、まひろが影で支えている時は道長が光っていて、まひろが光っている時は道長が影で支えてくれて」
――ロマンチックな関係ですね。道長はまひろに「一条天皇のために物語の続編を書いてほしい」と頼みますが、この時、まひろは「自分が書きたいものを書く」という気持ちに変わっていました。なぜだと思いますか?
「一条天皇のために書いた物語に『私じゃなくても書けるかもしれない』と違和感を覚えたのではないかと思うんですよね。もしかしたら、道長から一条天皇の幼い頃の話を聞いていると、自分の幼い頃を思い出して書きたくなったのかもしれないですけど、書き続ける中で物語への向き合い方を変えていったら、一条天皇のためではなく、まひろ自身が面白いと思うものを書きたくなったのかなと」
――なるほど。
「でも、書きたい気持ちにたどり着くのはとても大変だと思っていて。書きたい気持ちがあっても、書きたいことが明確にならないと書けないじゃないですか。まひろは、『書きたい気持ち』と『書きたいこと』がそろったからこそ夢中になって書いたんだと思います。イノシシのように自分の物語を書くことに突き進んでいったんじゃないかな。でもこの時は、結果を残してやろうという気持ちではなく、役目を果たしたいという気持ちですね」
――「まず物語を書くこと」に挑戦したからこそ、自分らしい道が開けたように感じます。まひろが内裏に出仕する日に、父の為時(岸谷五郎)は「お前が女子(おなご)であってよかった」と言いますが、どんな思いで演じましたか?
「まひろにとって、とても価値のある一言です。『お前も男であったらな』としか言われてこなかったまひろが、一番認めてもらいたいと思っていた父に認めてもらうことができました。生まれてきて名前をもらった喜びと同じぐらい大きなことだったと思います。役目をもらって内裏に上がれて、『やっと居場所を見つけた』と思っているのではないでしょうか」
――新たな門出ですね。これから物語がどのように展開していくのか楽しみです。
「まひろの人生第2章が始まる感覚です。衣装や生活する場所、毎日見る風景もガラっと変わり、いよいよですね。自分で一歩踏み出さずとも、第2章に押し出されたような感じです(笑)。今までのストーリーは、第2章(紫式部として『源氏物語』を書いていく)の前書きだったような気がしていて。『源氏物語』を知らない方も理解できるような分かりやすいエピソードをちりばめられていたように感じます。ここからまた、一つ一つ花を咲かせていくことになると思うと、脚本の大石静さんが『産みの苦しみを乗り越えてやってきた』とおっしゃっていた気持ちがよく分かります」
――「源氏物語」の誕生が待ちきれません!
「『枕草子』の誕生に負けないぐらい、すてきなシーンに仕上がっています! 筆が乗ったり、物語が全く思い浮かばなくて苦しんだり、作家として悩みながら『源氏物語』という一冊の本が出来上がるまでの過程は面白いですよ」
――お話ありがとうございました!
役作りを通して自身の成長を感じられた喜びや、「まひろの第2章」が始まることへの期待について、生き生きと語ってくれた吉高さん。これからまひろはどのように「源氏物語」を書き上げていくのか? 道長とまひろの関係は? 「枕草子」VS「源氏物語」の行方は? 今後の展開に目が離せません!
【プロフィール】
吉高由里子(よしたか ゆりこ)
1988年7月22日生まれ。東京都出身。2006年に映画「紀子の食卓」でスクリーンデビュー。14年にはNHK連続テレビ小説「花子とアン」(NHK総合ほか)でヒロイン・村岡花子役を演じ、同年の「NHK紅白歌合戦」で司会を務める。ドラマ「最愛」(21年/TBS系)、「星降る夜に」(23年/テレビ朝日系)、映画「きみの瞳が問いかけている」(20年)、「風よ あらしよ 劇場版」(24年)などに出演。
【番組情報】
大河ドラマ「光る君へ」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
NHK担当/Y
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