「虎に翼」で稲を演じる田中真弓「ルフィをやっていて良かったと思いました」2024/07/26
NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。物語の主人公・佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)は、昭和13(1938)年に日本で初めて誕生した女性弁護士の1人として日本中から注目され、憧れの的に。その後、戦争で父・兄・夫を亡くし、家族を支えるために裁判官を目指し、司法省で働き始める。「家庭裁判所の母」と呼ばれ、仕事が順調な寅子は、娘の優未(竹澤咲子)と共に新潟地家裁三条支部に赴任することに。優未と二人きりの生活に苦労する寅子の元に、花江(森田望智)から届いた援軍はなんと稲(田中真弓)だった。
今回は、花江の実家で働く女中という過去を持ち、新潟でも寅子を助ける稲役の田中さんにインタビュー。役作りから伊藤さんとの撮影エピソードまでたくさん伺いました!
――朝ドラ出演は、「なつぞら」(NHK総合/2019年前期放送)以降2作目ですが、出演が決まった際の感想を聞かせてください!
「憧れの朝ドラだったので、本当にうれしかったです。『なつぞら』の時は、村川さんって名前もあったんですけど、1回だけの出演で。回を重ねて出てくる役をやりたいと思っていたので、だるまに目を入れたぐらいです。本当ですよ! 私は、小学生の時に、『おはなはん』(NHK連続テレビ小説/1966年放送)を見てから学校に行っていて、樫山文枝さんが大好きでした。小学生の時は、今みたいに情報がなかったのであらぬ夢を見られたんです。役者になりたいと思えば普通になれるものだと思っていました。朝ドラの主役には18歳になったら普通に抜てきされるんだと思っていて、『なかなか誰も抜てきしてくれないなあ…』と思っているうちに70歳になって、今回やっと出演できました(笑)」
――実際に朝ドラの撮影に入ってみていかがでしたか?
「面白くてしょうがないです。ドラマの撮影は、手元だけ撮ったり、同じシーンを違う方向から何度も撮ったりするんです。違う方向から撮るときには、『今はいなくていいです』と言われたり、トラちゃんがいない状態で撮るときに目線が難しかったり…。映像での芝居に、もっと慣れたいですね」
――稲は、社会に出て男性と同じように働く寅子に対して「全ては手に入らないものですよ?」(第33回)という言葉をかけますが、田中さんご自身は共働きで頑張ってこられた方ですよね。若い頃のご自身に駄目出しするようなセリフをどういう思いで言ったのでしょうか。
「私は自分の人生を大事にしてきたので、確かに私が言わなそうな言葉だなと。友達からも、『真弓が絶対に言わないセリフを吐いていたね』と連絡が来ました。でも、稲さんはこの時代の女性としてトラちゃんを見て、女の幸せという点で、トラちゃんの人生を心配に思ったんでしょうね」
――稲を演じる上で1番心掛けていたことを教えてください。
「稲さんは、夫はいたんですけれども子どもはいなくて。そう思うと、花江ちゃんとトラちゃんは娘、優未は孫のような存在で、頼られることや必要とされることがすごくうれしいんだろうなと思っていました」
――演じていて難しかったことはありましたか。
「稲さんの印象に関して最初は、真面目で女の幸せをちゃんと考えていて、頭のいい人なのかなと思っていたんですけど、新潟に行ったら逆で、愉快な人だったんだなって(笑)。役作りが自分でもちょっと変わってしまいました。演出の方が最初の時に『もっとやっちゃっていいですよ』と言っていた意味が、もっと愉快にやっていいですよということだったんだと後から分かりました。花江ちゃんの結婚式の招待状を書いている時に、とりあえず腹でもたたいておこうかと思って、腹をたたいたのですがカットになっていたので、ひょうきんな演技は望まれていないのかなと思っていたんですけど、新潟では愉快でコメディエンヌ的な稲さんをいろいろやってみました」
――役作りで意識されていたことを教えてください!
「演劇は1カ月稽古するので、稽古の間にいろいろ試せるんです。でも、今回は1、2回テストしたらすぐ本番で、突拍子もないことをやって相手役に迷惑をかけるのがいいことなのか分からなくて、すごく悩みました。久しぶりに花江ちゃんに会った稲さんがずっと泣いているシーンがあるのですが、見ている人を笑わせたいと思って、泣くときに『ズビズバ』と言おうかなと思っていたのですが、NGを出す勇気がなくて結局言いませんでした(笑)」
――伊藤さんと芝居をして何か感じたことはありますか。
「私たち声優って、“間”を自分で作っていないんです。アニメや洋画の吹き替えにしても、ブレスの位置が決まっていて、自然にしゃべるよりも、決まった位置に合わせていく仕事なので、それが癖になっているのがまずいとこだなと思いました。沙莉ちゃんの“間”は、素晴らしかったですね」
――舞台と映像の芝居の違いについて、どう考えていますか?
「舞台は年間7本くらいずっと続けているので、ある程度の自信はあるんですけど、やっぱり映像演技には慣れなくて。今回をきっかけに、もっとやらせていただきたいなと思っているのですが…。映像は順番通りに演じるわけではないので、そういう意味では舞台が1番役者のものという気がします。舞台だと、本番で演出家が嫌だと思っても止められないですが、映像は撮り直せるし、演じる順番も違うので、そこに慣れていくのは回数重ねないとなと。私はまだまだ伸び代だらけなんです。もう70歳ですけど、この年になって新しいことにチャレンジできるのは、すごくうれしいですね。70歳、新人です!」
――伊藤さんの座長っぷりも聞かせてください!
「やっぱりすごいなと思いました。私が、映像演技に慣れていないので、次にどこから撮るのか分からなくなるのですが、すごく負担にならない感じで教えてくださるので、気の使い方が違うなと思いました。そして、とにかく明るい沙莉ちゃんの笑い声に救われていました」
――ほかにも、共演者の方たちとの会話などありましたか?
「岡田(将生)くんとメークルームでお会いした時に、(「ONE PIECE」の)ルフィがすごく好きだということが分かって、『お前は俺の仲間だ』とルフィのセリフを言ったら、崩れ落ちるくらいに喜んでくれて。ルフィをやっていて良かったと思いました」
――第33回の「全ては手に入らないものですよ?」というセリフが、ルフィを感じさせるとSNSで話題になっていたのはご存じでしたか?
「知らなかったです! 私はルフィは欲しいと思うものは全部手に入れるタイプだと思っているので、全く考えなかったんですけど、見ている人の中では、ルフィを思い起こした人がいたんですね。びっくりですね! 思いもよらなかったですが、反響をいただいてうれしいですね」
――第18週からの見どころもお願いします!
「トラちゃんの良さは、いろんなところで関わったどんな人にでも、真っすぐに思ったことをアドバイスしてくれるところです。稲さんにも『私たちはいずれ新潟を離れるから、稲さんが寂しい思いをしてしまう。だから稲さんが関わる人を作らなきゃいけない』と言ってくれるんです。ちゃんとその後に、稲さんが喫茶ライトハウスの常連とお買い物に行くシーンが出てくるのですが、トラちゃんが新潟での稲さんも含めて、いろんな人とちゃんと関わっていくところが今後も見どころですね」
――今後の稲は酔っぱらってしまうシーンもあるみたいですが…?
「手酌で飲んでくださいと言われて、『女中なのに…』と思いながら1人で飲んで、挙句の果てに、新潟の歌の『砂山』を歌いますからね。私たちの時代には、教科書に載っていた大好き歌なので楽しかったです。今は教科書に載っていないみたいで、沙莉ちゃんたちはきょとんとしていましたが」
――田中さんご自身は、お酒はお好きですか。
「日本酒、焼酎など日本のお酒が好きです。好きなんですけど、そんなに強くないんです」
――最後に、視聴者に向けてメッセージをお願いします。
「男も女も、みんな明日から頑張ろう! 私も、見ていてすごく勇気をもらっているので、今後も元気になれるお話が続くと思います!」
――ありがとうございました!
【番組情報】
連続テレビ小説「虎に翼」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月〜金曜 午前7:30〜7:45ほか
NHK担当/Kizuka
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