Feature 特集

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念! 磯山P×金子Dが語る制作秘話2024/08/27

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話

 1月期にTBS系で放送された連続ドラマ「不適切にもほどがある!」宮藤官九郎の脚本に阿部サダヲを主演に迎えた意識低い系タイムスリップコメディーは、放送中からSNSのトレンドワードをにぎやかせ、放送終了後は「第40回ATP賞テレビグランプリ」など12冠を獲得。超話題作の制作陣がドラマヒットの裏側を明かす。

 「木更津キャッツアイ」(2002年/TBS系)をはじめ「100万回 言えばよかった」(2023年/TBS系)など数多くの作品でタッグを組んできた磯山晶プロデューサーと金子文紀監督による初めての対談が実現! 髪型にこだわりの俳優やダンスシーンでひとりだけ逆回転する俳優が明らかに! もう一度ドラマが見たくなること間違いなし!!

――視聴者から大きな支持と反響を呼ぶ作品となりました。

磯山 「こんなにインターネットでドラマの見出しやポスタービジュアルをたくさん見ることになるとは全然思っていませんでした」

金子 「僕はいつも『これはすごい、いける!』と自信があっても、途中『あれ…?』って思っちゃうこともあるので(笑)、今回もそこまで期待しなかったんです。でも、僕の予想が外れる結果になっていて良かったと思っています」

――第1話では注釈のテロップが流れて、市郎(阿部)の「おい! 起きろブス! さかりのついたメスゴリラ!」と、かなり衝撃的なセリフがありました。

磯山 「宮藤さんが、この最初の一言をすごく大事にしていると思ったので、私からも特に変えてほしいとは言いませんでした。このセリフにしない限り、あのテロップを出す意味がないと思って」

金子 「あのシーンは市郎と娘の純子(河合優実)の初めてのツーショットシーンでした。ドラマの撮影が始まって1カ月くらい経った頃に撮影しましたね」

磯山 「河合さんがスケジュールの都合でほかのキャストさんより1カ月くらい合流するのが遅かったんですよね」

金子 「そうそう。その間にいろいろと撮影は進んでいきましたが、市郎と純子のシーンはまだ撮影できないでいました。このドラマは親子の物語。だからドラマも親子のシーンから始まる。なのに、それを見ずに撮影が進んでいたので、僕はちょっと不安でした。でも、あの2人の相性を見て、もう大丈夫だって確信しました」

磯山 「そうですね」

金子 「阿部さんと河合さんは以前に舞台で共演されているので、これが初共演ではないし、撮影に入る前の本読みの段階で、大丈夫だろうなとは思っていましたが、想像をはるかに超えてきましたね。河合さんはヤンキーの役で、どのくらいのヤンキー加減にするのかというのが悩みどころでした。ルックスもだけど、人間性としても性根が病んでいるヤンキーにはしたくない。そこで、どうするのかはいろいろと話し合いをしました」

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話

――阿部さんは、あるインタビューで「視聴者の方がアドリブに見える部分も、実はちゃんと台本がある。そう思わせてしまうのも宮藤さんのすごいところ」とお話されていますが、実際にアドリブは少ない方ですか?

磯山 「阿部さんのシーンでいえばアドリブはほとんどないですね。シーンで書かれている部分は全部そのまま。セリフが終わってカットがかからない場合、演技が続いていて面白い部分があれば使うことはありますけど」

金子 「そんな時でも自分でセリフを作ったりはせずに、同じセリフをリピートしたり、別のシーンに出てきたセリフを持ってきて言う感じです。語尾までほぼ一緒。こんなに台本に忠実な主役はいないくらい」

――また、市郎が令和で出会う犬島渚役の仲里依紗さんも際立っていました。特に最終話、純子と渚がナポリタンを食べるシーンが印象的でした。

磯山 「カメラは仲さんの左側から撮っているので、唇の左側にケチャップが付いて欲しかったのですが、仲さんは右利き。意識せずに右手で食べるとケチャップはどうしても唇の右側に付いてしまうと思うのですが、一発でクリアしました」

金子 「あのニュアンスを仲さんと少し話したけど、イメージを伝えたくらいで説明は特にいらなかったです」

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話
「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話

――ミュージカルシーンもとても話題になりました。特に印象に残っているミュージカルシーンはありますか?

金子 「第1話です。僕一番ここが不安だったんです。いつも宮藤さんの台本を読んで、めっちゃ面白いという感想しかないんですけど、ここだけ自信がなかった。だいたいいつも仕上がりが予想できるんだけど、ここはシーンがつながるのを見るまで分からなくて。つながったのを見た時はうれしかったですね」

磯山 「この日は朝、ミュージカルシーンの撮影から始まって、市郎の芝居は一番後で、かなり深い時間でしたね。私が印象に残っているミュージカルシーンは第4話の携帯ショップ。日のある時間帯に撮影しなくちゃいけなくて、時間が限られていたので、ちょっと心配でした。このシーンでは(秋津真彦役の)磯村勇斗くんは歌う予定はなかったけど、途中から『僕も歌って踊った方がいいんじゃないですか?』って言ってくださって、急きょ途中から参加してもらいました。あ、でも一番大変だったのは(犬島ゆずる役の)古田新太さんがメインの第9話。風が強くて、古田さん、阿部さん、仲さんの髪型が乱れまくっています(笑)」

――個性的な準レギュラー陣、ゲストの多様さも話題となりました。特に“八嶋無双”の言葉も生まれた八嶋智人さんは、ご本人役で登場されました。

磯山 「宮藤さんの中では勝手に決まっていて、相談される前から台本に『迷った時は、八嶋より上か下かで決めてる(第2話の渚のセリフ)』がありました。これは、絶対に怒られるよ…と思いましたが、ご出演いただけて、結果的に計5回もご登場いただきました。八嶋さんは宮藤さんとは以前から知り合いだけど、今まで一度もお仕事をされたことがなくて、宮藤さんに度々『僕も出してよ』とお願いをされていたそうです。実は私も一度もお仕事をしたことがなかったのに、出演をご快諾いただけたのはありがたかったですね」

金子 「八嶋さんだけ実名での出演。たまにあるけど、最初の打ち合わせの時、特に言いづらいとか“こんなこと俺は言わない”ということがあれば教えてくださいと、ご本人にお伝えしましたが、衣装からセリフから全て『全部やります』と言ってくださって、その通り全部やってくださいました」

――安森役の中島歩さんの髪型に秘密があるとか?

磯山 「中島歩さんはドラマ『離婚しようよ』(2023年/Netflix)で、高島礼子さんの愛人役でしたが、その時すごく変わってるけど面白い! と思って、今回もご出演いただきました」

金子 「中島さん、独特のお芝居でちょっとゆっくりなんです。僕が第1話をちょっと編集で短くしちゃったら、それに気が付いてか、どんどんテンポが速くなってきました」

磯山 「あと、勝手に髪型を『(脚本家の)山田太一さんみたいにする』と言い出して、どんどん髪を伸ばして、最終回はちゃんと山田太一さんっぽくなっていました(笑)」

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話

――喫茶店「すきゃんだる/SCANDAL」のマスターを、昭和では袴田吉彦さん、令和では沼田爆さんが演じています。 

磯山 「最初にマスターは沼田さんでいこうというところからスタートしました。令和は特殊メイクではなく実際の80代の方に演じてほしかったんです。そして沼田さんが50代の時の役が誰だったら面白いかなを考えて、袴田さんにお願いしました。衣装合わせの時に、たまたまお二人が同じ日で、髪の長さがちょうど同じくらいだったので、それを生かしました」

金子 「袴田さんのミュージカルシーンは完璧でした。振り付けを覚えるのがすごく早かったです」

磯山 「歌も踊りも初めてだというのに本当に良かったですよね」

金子 「第7話のミュージカルシーンは、すごく撮影が早く終わりました」

磯山 「最終話では、沼田さんも踊りに参加してくださったのですが、お一人だけ回転する方向が逆なんです」

金子 「みんなは2回回るけど自分は2回も回れない。1回逆回りをすれば最後、帳尻を合わせることができると、あえての逆回りだそうです。ぜひ繰り返し見ていただきたいです」

※このインタビューのノーカット完全版は、DVD&Blu-ray封入特典「特製ブックレット」(20P)をご覧ください。「特製ブックレット」から一部抜粋して掲載しております。「特製ブックレット」では、磯山P&金子Dのお気に入りのシーン、ミュージカルシーン撮影秘話、最終話に登場した主題歌を担当したCreepy Nuts出演の経緯、さらに「市郎が自分の未来を知った瞬間は?」などが収録されています。

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話

【プロフィール】
磯山晶(いそやま あき)
東京都生まれ。「池袋ウエストゲートパーク」(2000年/TBS系)、「木更津キャッツアイ」(2002年/TBS系)、「タイガー&ドラゴン」(2005年/TBS系)、「空飛ぶ広報室」(2013年/TBS系)、「ごめんね青春!」(2014年/TBS 系)、「恋はつづくよどこまでも」(2020年/TBS系)、「俺の家の話」(2021年/TBS系)、「離婚しようよ」(2023年/Netflix)など数多くのドラマをプロデュース。


金子文紀(かねこ ふみのり)
1993年、(株)東京放送入社。「木更津キャッツアイ」(2002年/TBS系)、「タイガー&ドラゴン」(2005年/TBS系)、「流星の絆」(2008年/TBS系)、映画「大奥」(2010年)、「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年/TBS系)、「大恋愛〜僕を忘れる君と」(2018年/TBS系)、「俺の家の話」(2021年/TBS系)、「離婚しようよ」(2023年/Netflix)、「100万回 言えばよかった」(2023年/TBS系)など数多くの作品を監督。

【作品情報】
「不適切にもほどがある!」
8月28日発売 DVD&ブルーレイ
発売元:TBS 発売協力:TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
©TBSスパークル/TBS

「不適切にもほどがある!」BD・DVD発売記念!  磯山P×金子Dが語る制作秘話


この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.