高畑充希「ウイカちゃんや塩野さんが不安を吹き飛ばしてくれました」──「光る君へ」インタビュー～共演者とのエピソード編～2024/07/25

　NHK総合ほかで放送中の大河ドラマ「光る君へ」。まひろ（吉高由里子）が藤原道長（柄本佑）との子を出産し、宣孝（佐々木蔵之介）と共にわが子として育て始めたり、一条天皇（塩野瑛久）の中宮・定子（高畑充希）が、兄・伊周（三浦翔平）と弟・隆家（竜星涼）の不祥事によって出家を決断したり、思わぬ展開に息をのんだ方も多いのではないでしょうか。

　7月21日放送の第28回「一帝二后」ではなんと、定子が一条天皇との3人目の子を出産し、世を去ることに…。悲運に見舞われた定子ですが、一生を終えるまで、一条天皇に溺愛され、清少納言（ファーストサマーウイカ）に慕われ続けていました。愛情を注がれる役にどんな思いで臨んだのか、定子を出家に追い込んだ伊周の印象は？　定子役の高畑充希さんに聞いてみました。

ウイカちゃんも塩野さんも、撮影以外でも私を“推して”くれた

――定子を慕い続ける少納言の姿には胸を打たれました。ファーストサマーウイカさんとの共演はいかがでしたか。

「ウイカちゃんは撮影でも撮影以外でも私をすごく“推して”くださったので、とても救われました。これまでは、何かに憧れたり、何かにエネルギーを持つ役が圧倒的に多かったんです。憧れられる役はほとんど初めてに近い経験でした。だから、憧れの目で見てもらえる人物像を演じなければならないことへの不安が大きくて。『こんな人物だったら推せないだろうと思われないように頑張らないと』と、とてもプレッシャーを感じていました。ウイカちゃんが“憧れの存在”として接してくれたことが私をすごく楽にしてくれたので、ソウルメイトのような役柄を演じることができて楽しかったです」

――少納言の書いた「枕草子」によって、定子は今でも“ウィットに富んでいて明るい人物”として知られています。

「『定子はそんなにひどい人じゃない！』と叫ぶよりも、文字で残すことにパワーがあるとは頭では分かっていたのですが、そこまで実感はなかったんです。だから、『枕草子』が誕生するシーンをオンエアで見た時に『こういう守り方があるんだな』と実感しましたし、少納言はなんてかっこいい女性なんだろうと思いました」

――一条天皇とはエモーショナルなシーンが印象的でした。

「一条天皇との関係はずっと複雑でした。最初の頃はかわいい弟分で、そこから男性として見るようになり愛し合って。その後は、『ただ好き』ではなく、『この人に見放されたら自分と子どもの行く当てがなくなり、終わってしまう』という保身的な感情も加わります。でも、一条天皇は愛一本勝負で来てくれる人。愛をもらうのはうれしいし、こちらも全力で応えたいけど、愛だけではないことも考えなければいけないという、混沌とした感情がありました」

――何とももどかしいですね…。

「一条天皇に対する愛情が減ったわけでもないですし。置かれている状況によってどんどん真綿で首を絞められるような苦しさでしたね」

――溺愛されていただけに、ですね…。そんな愛一本勝負の塩野さんとの共演はいかがでしたか。

「塩野さんは、一貫して愛情をたっぷり持ってお芝居してくださる方なので、不安な気持ちは全然なかったです。平安時代の衣装がとても似合うんですよ。顔が彫刻みたいに奇麗だから、同じ画面に並びたくないなと毎日思っていました（笑）」

――高畑さんの定子もとても美しかったです！　塩野さんも“推して”くれる方だったんですか？

「ウイカちゃんみたいに『定子さん好きです』と、ストレートな言葉で“推して”くださるので、とても救われました。憧れられたり、めちゃくちゃ愛されたりする役は『自分で大丈夫なのかな』と、どこかでずっと不安なんですよね。そんな時に、ウイカちゃんも塩野さんも、演じている時間以外でも定子への愛を表現してくださったので、心強かったです」

三浦さんが全力で罵倒してくれたから同じ熱量で演じることができた

――それにしても、定子が苦しむことになった大きな原因は伊周ですよね…。お茶の間でもかなり株が下がっていそうです…。

「え、下がっているんですか（笑）？　私は結構好きなんですよね。最初は『伊周さえしっかりしてたら、こんな事態にはならなかったのに！』って思っていたんですけど、あの美しい三浦さんが、全力で伊周としてのダサさや哀れさを演じられているのを見ていると、怒りではなく、一周回って愛せてしまって」

――感情を爆発させていましたよね。

「定子を罵倒したり暴れたり、ハードなシーンがとても多かったんですけど、三浦さんは全力できてくださるので、私も同じ熱量で演じることができましたし、三浦さんの伊周はすごくすてきでした。だから、視聴者の皆さんの中で株が下がっていることは大変遺憾といいますか、申し訳ない気持ちといいますか…（笑）。定子に感情移入してくださっている方からしたら『本当に何しているんだよ！』という思いかもしれませんが、ぜひ、兄を印象よく書いてください（笑）」

――高畑さん、優しいです（笑）。伊周が処分を拒んでわめき、定子が髪を下ろすシーンは衝撃でした。

「台本では『切ってしまった！』という驚きで終わる印象が強かったので、エネルギーが高い幕切れにしたくて。現代の感覚だと、髪を切ることはあまり大事ではないと思います。でも当時は自殺するぐらいの行為だったので、『ただ髪を切っただけ』という終わり方にはしたくなかったんですよね」

――見ていてドキドキでしました…。

「演じる前はやり切れるかとても不安で…。でも私が髪を切るのは結果で、ここに至るまでに、伊周が駄々をこねたり、母の貴子（板谷由夏）が号泣したりして、皆さんが一段一段、階段を構築してくださりました」

――家族の力を見せつけたシーンということですね。

「そうですね、家族みんなで頑張ったシーンです。出演者もスタッフの皆さんも緊張感を持って臨みました」

――まひろとの共演はほとんどなかったと思うのですが、吉高さんと現場でお話しする機会はあったのですか？

「先輩でもあり友人でもある関係性です。ゆりちゃんは明るい人柄なので、周りをすごく楽にしてくれる印象がありますね。一緒にいるとふざけてしまうんですけど、ハードな現場ではそれが息抜きになることもあります。他人にとても寛大な人なので、救われることが多いです」

――ふざけるほど仲良しなんですね（笑）。

「プライベートで会うとふざけてばかりで。今回はワンシーンだけ共演があったんですけど、お互い真面目にセリフを言っているのが笑えてしまうぐらい不思議な感覚でした（笑）」

――お話を伺っていると、共演者の方からパワーをもらっていることがとても伝わってきます。

「そうですね。エネルギーをもらって、引き出してもらえた演技もたくさんあります。罵倒されて子どもを産めと言われるシーンも、道隆役の井浦新さんや三浦さんのエネルギーから生まれた感情で表現できたり、赤ちゃんのかわいさに演技を引き出してもらえたり。共演者の皆さんの力は大きかったです」

――お話ありがとうございました！

　共演者の印象や撮影エピソードについて、笑いを交えながら穏やかに語ってくれた高畑さん。共演者の皆さんのパワーが追い風となって、定子をより魅力的にドラマチックに演じられた印象を受けました。定子を演じ終えた今、高畑さんはどんな心境なのか？　印象に残っているシーンは？　定子の生き方をどう感じたのか？　高畑充希さんインタビュー～役作り編～も、ぜひご覧ください！

【番組情報】
大河ドラマ「光る君へ」
NHK総合
日曜　午後8：00～8：45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜　午後0：15～1：00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜　午後6：00～6：45

NHK担当／Y