Feature 特集

「おっさんずラブ-リターンズ-」BD&DVD発売記念! 脚本家・徳尾浩司が明かす「おっさんずラブ」の魅力2024/07/03

「おっさんずラブ-リターンズ-」BD&DVD発売記念! 脚本家・徳尾浩司が明かす「おっさんずラブ」の魅力

 5年ぶりの復活でまたまた大旋風を巻き起こしたドラマ「おっさんずラブ-リターンズ-」(テレビ朝日系)のBlu-ray&DVD BOXが本日発売されました。これを記念して、「おっさんずラブ」シリーズの生みの親である脚本家・徳尾浩司さんにお話を伺いました。

――5年ぶりの復活で熱く盛り上がった「おっさんずラブ-リターンズ-」ですが、振り返ってみていかがですか?

「5年ぶりということで、始まる前から、2018年版で番組のファンになってくださった方々の期待感を肌で感じていたので、その期待に応えられたらいいなと思っていました。自分としては、今回はいわゆる恋愛ドラマではないかもしれないけれど、2人が家族になっていく過程、新しい家族の形みたいなものが描けたので、書いていてすごく楽しかったです」

――作品の中でも5年の月日が流れ、同時にキャストもそれぞれ五つ歳を重ねました。この5年という時の流れが、作品を描く時に何らかの影響を与えたことはありますか?

「そうですね。5年たって、春田(創一/田中圭)と牧(凌太/林遣都)がどんな風に過ごしていたのかを考えた時に、一緒に暮らしてはいないけれど、でもきっと仲よく5年過ごしていただろうし、何か違う価値観があっても、お互いに認め合ってきたんだろうなと。でも、実際に一緒に暮らしてみたらどうなんだろうということに思いを馳せながら書き始めたんです。牧はきっと、恋愛中には春田に言わなかったことも、5年たった今なら言えるんじゃないか、とか。春田は春田で、これまでは少しカッコつけていた部分も、牧に対してさらけ出せる、甘えられるようになっているんじゃないかなとか。そんなことを思いながら書いていました」

「おっさんずラブ-リターンズ-」BD&DVD発売記念! 脚本家・徳尾浩司が明かす「おっさんずラブ」の魅力

――恋愛ドラマであり、コメディーであり、ホームドラマでもあるというか。今作ではセリフの中に「家族」という言葉がよく出てきましたが、「家族」というテーマはどのように生まれたのでしょうか?

「今回は恋愛ドラマの続きというよりは、春田と牧の2人が“家族”になっていくという、作っている自分たちにも想像がつかない部分を描きたかったんです。『どういうふうに2人は家族になっていくんだろう』『どういう成長を遂げたら、2人は家族と言えるのだろう』と…。家族といっても、春田と牧の2人だけじゃなく、いろんな登場人物の家族を描くことで、『家族にもいろいろな形があるけど、どれもすごく尊重したいよね』と、そういう温かい距離感のあるドラマにできたらいいねというのが出発点としてありました」

『おっさんずラブ』の現場には1回も行ったことがない

――現場の雰囲気についてもお伺いしたいのですが、徳尾さんはどれぐらいの頻度で収録現場に行っていらっしゃるのですか?

「実を言うと、『おっさんずラブ』の現場には1回も行ったことがないんですよ」

――えっ、そうなんですか?

「厳密に言うと、16年の深夜の単発版のドラマの撮影初日に、自分がエキストラで出るために一度行っただけで、それ以外で現場に行ったことはないです」

――それは、敢えてそうしているのですか?

「いや、そういうわけでもなくて。理由としては、いつも原稿に追われているというのが一つ。後は、収録というのは結構長いので、行ってもやることがないんです(笑)。そして『おっさんずラブ』では、撮影が始まると、結構な頻度で現場の様子を撮った動画を送ってもらえるので、行かなくても大丈夫なんです」

――その映像から伝わってくる現場の雰囲気は、徳尾さんから見てどんな感じですか?

「雰囲気はすごくいいです。リハーサルの時から笑いが絶えないですし、カットがかかってからも笑いが絶えない。だけど、撮影中はいい意味でピリッとしていますし。そのあたりのメリハリ、切り替えのよさが『おっさんずラブ』らしさであり、キャストたちのすばらしいところだなといつも感じています」

――5年ぶりの緊張感みたいなものは特に感じませんでしたか?

「ブランクは全く感じませんでした。それはきっとキャストの皆さんも肌で感じていらっしゃったと思うんですけど、本当にスッとそれぞれのキャラクターに戻る… 『戻る』というよりも、『入る』という感じで。しかも、ちゃんと5年を経たキャラクターに皆さんが入っているのがすごいなと思いました」

脈絡のないアドリブを言っている人は1人もいない

――「おっさんずラブ」は結構アドリブが多いそうですが、脚本家の方によっては、セリフは変えないでくれというタイプの方もいらっしゃれば、自由な解釈でどうぞという方もいらっしゃると思います。徳尾さんの場合は、皆さんのアドリブ合戦をどのような思いでご覧になっていますか?

「アドリブが多いのかは分かりませんが、僕からすると、そんなに変わってはいないんですよね。本当は怒るシーンなのに怒らなくなったことで次のシーンにつながらなくなっちゃったとか、そういうのはすごく困るアドリブ例ですけど、『おっさんずラブ』ではそういう経験は全くなくて。そもそもの撮り方がカッチリしたものではなく、『まずは動いてみてください』『気持ちが乗ってきたら、フライパンでたたいちゃうとかもアリなので』みたいな。でもそれは、台本から逸脱しているのではなく、台本の延長線上にある表現なんですよね。だから、セリフが多少変わっていたとしても、(脚本を書いている)僕自身も気付かないことが多い。もちろん、気付く場合もあります。例えば、『悪いね悪いね、ワリーネ・デートリッヒ(マレーネ・ディートリッヒ)』という、小松政夫さんの往年のギャグを吉田鋼太郎さんが言ったときとか。僕の辞書にはないので(笑)」

――(笑)。

「おっさんずラブ-リターンズ-」BD&DVD発売記念! 脚本家・徳尾浩司が明かす「おっさんずラブ」の魅力

「それと、(第5話の)温泉旅館での乱闘のシーンの時、最後に牧が弓矢を射るようなことをやっていましたよね。あれはきっと、監督や助監督が武器の一つとして弓矢を用意していて、それを牧が選んで使ったと思うんです。台本には書いていないけど、これはもう、その時の牧が弓を射りたい衝動に駆られたんだろうなと。そういうことは、むしろすごくありがたいし、面白いし、僕も一緒になって笑っているという感じです。要は、脈絡のないアドリブを言っている人は1人もいないということですね」

何も語っていないのに、あの目力だけで笑えた

――「〜-リターンズ-」から、新しいキャストとして井浦新さんと三浦翔平さんが加わりました。キャスティングには徳尾さんのご意見も反映されているのでしょうか?

「いいえ、僕は全く関わっていません。流れとしては、井浦さんと三浦さんが新しいレギュラーに決まったと聞いて、そこから役柄をどうしようかなというのをプロデューサーと一緒に考えていく感じでした」

――公安の2人のお芝居はご覧になっていかがでしたか。

「今までにない系統の2人で、すごく面白かったです。『おっさんずラブ』は、基本的にテンポがいいので、シャキシャキしゃべる人が多いんですけど、井浦さんは独特の間合いがありますよね。沈黙の中に表現がある方なので、そこがこのドラマに新しい風を吹き込んでいるなと思いました。三浦さんも、公安という役の何かつかみきれない感じ…。腹の中で何を考えているのか分からない感じがすごく、ミステリアスで面白かったですし。特に何も語っていないのに、あの目力だけで笑えたりとか(笑)」

――確かにあの目力はすごかったです(笑)

「ああいうところのコメディーセンスが面白いなと思いました」

作りものは全てスタッフさんとの合作です

――本当に数秒しか映らないところでの面白さ… 例えば、「おにぎりのサイズが“グランデ”と“トール”って何?」とか、公安からスマホに届くメッセージなど、そういう少しふざけたというか、ユニークな発想はどこから生まれるのでしょうか?

「自分のアイデアなこともあれば、現場スタッフのアイデアなこともあります。ドラマでは作りものがたくさんあって、例えばおにぎりのテークアウト用の紙袋なんかも、おにぎりの形になっていてすごくかわいいんです。僕も知らないところでスタッフさんがいろいろ考えて、僕が作っていないところを埋めてくださることもとっても多くて。実は、武川さん(眞島秀和)が結婚式のスピーチで披露する『結婚に必要な8つの袋』も、最初の台本には一つ目の“涙袋”しか書いてなかったのです」

――「8つの袋」。オンエアを見て、続きがとても気になりました(笑)。

「ただ、スピンオフ(「おっさんずラブ-リターンズ- TELASAスピンオフドラマ 禁断のグータンヌーボ 前後編」)の方で袋三つぐらいまでは出そうと思ってたので、“涙袋”と“池袋”と“布袋寅泰”の三つは僕が考えました。残りの五つは助監督が必死に考えてくださったそうで、僕は『おっさんずラブReturns展』の展示を見て、『残りの袋はこんなふうになってたんだ!』と知りました(笑)。だから、こういった作りものは全てスタッフさんとの合作です」

――皆さんのセンスがとても近いというか、しっかりと同じ方向を見ている。だからこそ、ブレない面白さが出るのでしょうね。

「スタッフの方々はみんなこの作品のことを知り尽くしています。部屋に置いてあるもの一つ取っても、何から何まで、すごく皆さんがクリエーティブに、能動的に動いてくれている結果がこういうふうになってるんだなと僕は思っています」

「おっさんずラブ-リターンズ-」BD&DVD発売記念! 脚本家・徳尾浩司が明かす「おっさんずラブ」の魅力

――今回の脚本を執筆する際に、特に意識していたことや苦労されたことはありますか?

「今回は“家族”というテーマが最初にあったのですが、やはり、春田と牧と(黒澤)武蔵がどういうふうに絡んでいくとドラマ全体が面白くなっていくのかというのは、すごく時間をかけて考えました。また同じ恋愛の繰り返し、取り合いの繰り返しにならないように。そして、せっかく結ばれた2人がケンカ別れして出ていくのも見たくないよねと。でも、何の障壁もない2人というのもどうだろう……みたいな。春田と牧に限らず、どんなに仲がいい2人でも、家族になるのは大変じゃないですか。そういうところもちゃんと考えようというのが、大変だったけど、一番楽しかったところでもあります」

いつか、またみんなに会えたらいいなと思っています

――7月3日には、いよいよBlu-ray&DVD BOXが発売されます。

「キャストのお芝居がすごく面白くて味わいがあって、まばたき一つも、見返すと発見がある。そういう作品ってなかなかないと思うんです。『あ、こんな表情してたんだ』とか、『このセリフの言い方、やっぱ何度見ても面白いな』とか。お芝居を繰り返し見る楽しみというのはそこなのかなと僕は思っていて。Blu-ray&DVD BOXの特典映像では、カットがかかった後やリハーサルの時の彼らの様子、キャストのオン・オフや、現場ではどうやってキャラクターが作られているのかなど、そういう深い楽しみ方ができると思うので、僕も期待しています」

――「公安ずラブ」のメーキングも収録されるそうですね。

「そうなんです、楽しみですよね(笑)。『公安ずラブ』はすごくシリアスなトーンで作りたいというのがあって。例えば、(真崎)秋斗(田中圭・一人二役)はすごくシリアスなキャラクターですけれども、そこを回想する時に、はるたんが『小悪魔っすね』と言うシーン。こういうのって『おっさんずラブ』でしかできないことだなと思っていて。見ている人にとっては『どっちも田中圭だよ!』みたいな感じで笑えもするし、同時に、その田中圭という役者のすごさも味わえる。だからこそ、『公安ずラブ』はシリアスな方がいいんじゃないかって思ったんです。ぽやぽやしていない和泉さん(井浦)もたまらないですし、面白いですよね」

――面白いです。大好きです!(笑)

「僕もです。だから、『公安ずラブ』とのギャップというか、振り幅も『〜-リターンズ-』の好きなところの一つですね」

――ちなみに、「バチェラー・ジャパン」や「ラブ・トランジット」というのは、分かる人にしか分からないネタだと思うのですが、これも徳尾さんのアイデアですか?

「『バチェラー・ジャパン』は見ていました。リムジンの前で崩れ落ちる武川は、『バチェラー・ジャパン』シーズン5から着想をえました。『ラブ・トランジット』は(プロデューサーの)貴島(彩理)さんから教えてもらいました。元彼と出るらしい、でもちょっとモヤモヤするらしいと(笑)。『あいの里』もすごいんだよと、いろいろ教えてもらいました(笑)。それにしても、バチェラー役でディーン・フジオカさんが出演してくださるなんて、おっさんずチームの本気度には驚きました。キャスティングを聞いた時は爆笑しました(笑)」

――今回が5年ぶりの復活。次はいつ「おっさんずラブ」の面々に会えるかなと期待してしまいます。

「僕も視聴者の皆さんと同じように、春田と牧と武蔵、武川、ちず(内田理央)、蝶子さん(大塚寧々)、マロ(金子大地)……。みんなのことが大好きなんです。だから、すごく彼らに会いたいなと思いますし、(脚本を)書いている時がすごく楽しいんですよね。なので、何か新しいテーマが見つかったり、何らかの機会があった時に、また呼んでもらえたらうれしいなと思います。スピンオフのアイデアはいろいろあって、例えば、シリアスな『公安ずラブ』の世界の中に春田と牧が出てくるとか、戦国時代が舞台の『おっさんずラブ in 戦国』とか(笑)。やりたいことはいっぱいありますけど、あとはテレビ朝日さんが動いてくれるかなというところですね(笑)」

――ファンの声が動かすかもしれません。

「そうですね。その時に僕がいればとてもうれしいです」

――“いれば”というのは?

「僕もまだまだ盤石(ばんじゃく)なポジションにいるわけじゃないので、その時にスタッフとしていられたらいいなぁという意味です(笑)。ただ、その一方で、そう簡単に『やりたいです!』とは言えない気持ちもあって。大切な作品だからこそ、愛情が深いからこそ、本当に機が熟すまでは手を動かせないというか……。でもいつか、またみんなに会えたらいいなと思っています」

【プロフィール】

徳尾浩司(とくお・こうじ)
1979年4月2日生まれ。大阪府出身。脚本家・演出家。近年の代表作に「おっさんずラブ -リターンズ-」、「unknown」「六本木クラス」(ともにテレビ朝日系)、「ミワさんなりすます」(NHK総合)、「私の家政夫ナギサさん」(TBS系)などがある。自らが主宰する劇団「とくお組」では、全公演の作・演出を手掛ける。

【作品情報】

「おっさんずラブ-リターンズ-」展開図

「おっさんずラブ-リターンズ-」
発売中
Blu-ray BOX 35,035円(税込/全9話・4枚組[本編ディスク3枚+特典ディスク1枚])
DVD-BOX   28,600円(税込/全9話・7枚組[本編ディスク5枚+特典ディスク2枚])

結婚したいのに全くモテない“ポンコツ”独身サラリーマン・春田創一(田中圭)。ある日突然、ピュアすぎる乙女心を隠し持つおっさん上司・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)に告白され、時を同じくして同居しているイケメンでドSな後輩・牧凌太(林遣都)にも告白されてしまう。想像を絶した未曾有のモテ期に入った春田は、黒澤と牧の真っすぐな恋にときめき、戸惑いながらも、やがて2人に対する自分の“本当の気持ち”に気付き、牧と結ばれる。

コロナ禍の遠距離恋愛を経て、遅れてきた新婚生活を送り出す春田と牧。新年を迎え、2人で一緒に食事をしたり、ゲームをしたり、デートしたりと幸せな毎日を夢見ていた春田だが、課長に昇進した牧は帰国早々大忙し。家事の分担やゴミの分別など、ささいなことでけんかしてしまう。一方の春田も係長に昇進し、中途採用で入社してきた年上の部下・和泉幸(井浦新)の教育係を任される。春田は必死になって優しく教えるも、和泉は何やらぼんやりしていて、チラシのポスティングの手際も悪く、パソコンの会計ソフトも扱えず、しまいには涙をこぼしながら走り出したりと、どうにも情緒不安定な様子を見せる。

そんな春田と牧を見かねた荒井ちず(内田理央)は、自身が利用しているという家事代行サービス「ばしゃうまクリーンサービス」を紹介。少しでも2人の時間が増えるならと家事代行サービスを依頼することにした春田と牧の家に現れたのは、なんと早期退職した後、再就職した“家政夫の武蔵さん”だった。早期退職の後、姿を消し、誰ともコンタクトをとっていなかった武蔵とのまさかの再会にうれしさがこみ上げる春田と、かつての恋のライバルの出現に胸騒ぎを覚える牧。しかし、昔の“はるたんラブ”はどこへやら、武蔵はどこか水くさく、ビジネスライクな態度で、プロフェッショナルな仕事ぶりを一貫する。だが、徐々に掃除の仕方、料理の味付けなどで牧への小言が止まらなくなり、やがて地獄の“嫁姑バトル”がぼっ発する。

発売元:株式会社テレビ朝日 販売元:TCエンタテインメント株式会社

【プレゼント】

「おっさんずラブ-リターンズ-」脚本家・徳尾浩司さんサイン入り色紙

サイン入り色紙を2名様にプレゼント!

TVガイドWeb公式X@TVGweb(https://X.com/TVGweb)をフォローし、下記投稿をリポスト。
https://x.com/TVGweb/status/1808290649428615652

【締切】2024年7月31日(水)正午

【注意事項】

取材/TVガイドWeb編集部・オカムラユリ 文/オカムラユリ



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.