「虎に翼」出演中の三山凌輝「事務所のダメ出しが厳しい方に本気で褒めてもらいました」2024/06/14
4月1日からNHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。物語の主人公・佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)は、昭和13(1938)年に日本で初めて誕生した女性弁護士の1人として日本中から注目され、あこがれの的に。子育てに専念するために、弁護士の仕事から身を引いた寅子だったが、戦争で父・兄・夫を亡くし、家族を支えるために司法省で働くことを決意。「家事審判所と少年審判所の合併がうまくいけば裁判官になれる」と言われ奮闘する寅子だったが思うようにいかず、弟・直明(三山凌輝)の力を借りることに…。
今回は、寅子の弟・直明を演じた三山さんにインタビュー! 伊藤さんとの共演エピソードや、自身の演じる役どころなどをお伺いしました。
――まずは、出演が決まった際の心境を教えてください。
「本当にうれしかったです。朝ドラという伝統のある作品に出演させていただくことは一つの目標でもあったので、自分の中でも、役者としてもすごく大切な作品になるんだろうなと確信しました」
――周りからの反響はありましたか?
「いろんなところから声をかけていただきましたし、ファンの方もすごく喜んでくれました。すごく大きな報告だったので、今まで応援してくれている方たちにも恩返しをすることができたと思いますし、俳優としての未来も楽しみにしてくれている声も多くて、純粋にうれしかったです」
――三山さんはBE:FIRSTでアーティストとしても活躍されていますが、メンバーからの反応はいかがでしたか?
「メンバーは、会った時に『お!朝ドラ俳優じゃん!』とラフな感じで声をかけてきてくれるんですけど、すごく応援してくれています。撮影がすごく忙しくて、LIVE公演のリハーサルに1回しか行けなかったこともあったのですが、合流した時に、いつも通り変わらずに接してくれました。一人で俳優としてやっていた時期があったので、帰ってくる場所があるということがうれしいです。メンバーは僕にとって特別な存在で、感謝しています」
――今回、三山さんの演じる直明は第41回からの登場でしたが、まさに昭和の好青年という感じで、作品の世界観になじんでいましたよね。
「衣装を着て、セットの中で芝居をしたら『意外と昭和っぽいね』と言われることが多くて、ありがたいなと思いました。ほかの家族はずっと一緒に撮影してきていて、僕だけが大きくなった直明として飛び込むので、初日は緊張していたんです。でも、久しぶりに家族に会った時に、ちょっとよそよそしいのって当たり前なのかなと思ったので、逆にその心情を利用してやろうというマインドでなんとかやり切りました。自分なりの直明を演じて、あとは共演者のスーパー俳優さんたちにお任せして、“受けの芝居を全力で”という気持ちでした。皆さん本当にすごくて。初めましての僕に抱きついて泣いてくれるんです。あの感動はいまだに忘れられません」
――直明を演じる上で心がけていることはありますか。
「根本的な熱量や素直さは、僕と似ている部分がすごくあって。そういういいところはそのまま出したいなと思って。あとは、自分のやんちゃな部分をそぎ落として、直明を演じています。意識は、時代に合わせた衣装を着ることでもだいぶ変わるので、『僕がこの時代にいたら』と想像もしました」
――丸刈りの感想も教えていただきたいです…。
「気づいたらもう1年近く丸刈りなので、違和感はないですし、生活も楽です。1年の中でもいろんな変化があって、丸刈りをする理由が違うから、面白いですよね。初めて丸刈りにした時にはアーティストとしての存在意義や、世間に対する自分の意思を投げかけたいという思いがあったんですけど、今回は役に合わせてで、なんだかんだ1年近く丸刈りです(笑)」
――三山さんが考える直明の魅力を教えてください!
「自分の気持ちを持っているけれど、それを人のために押し殺すことができるんです。でも、それが本当にいいことなのか、作品を見ていて感じるところはあると思うんですけど…。逆に、直明が成長する瞬間もたくさんあるので、まだ成長段階にいる青年なんだと思います。ひねくれていなくて、素直な部分は僕と似ているんですけど、直明は、愛情をすごく受けて育った子だと思うんですよね。僕も家族からたくさん愛情を受けてきたので、そこはそのまま生かして役に飛び込もうと思いました。人を疑わないというか、人間が好きで、きっと気持ちをえぐられるトラウマみたいな経験はなくて。“戦争”が直明を初めて動かしたものなのかなと考えていました。ただ楽しくすてきな人生を送っているだけじゃ駄目だなと感じて、孤児を保護する活動に参加するようになって。でも、善意でやっていたつもりが、結果的に相手を傷付けていたこともあって、そんな時にあらためて『自分は幸せ者だったんだな』と考えさせられるんです。そういう瞬間は僕にもあったので、やっぱりすごく幸せな人間なんだと思います」
――昭和の時代を演じるに当たって立ち居振る舞いで気を付けた点はありますか?
「今っぽい言葉は避けています。あと、昔は『いただきます』の時に手を合わせないんですよね。みんなで先生に聞いたり、なるべく無駄な動作をせずに今っぽさを削っていくことが、戦後の時代の質素感につながるのかなと考えています。しゃべり方もゆっくりを意識していました」
――初めての朝ドラの撮影で驚いたこと、発見などありましたか?
「これだけの期間、役と向き合う時間がすごく長いのは、俳優としての経験でもなかなかないことだと思っています。ずっと直明でいるから、『よし、やるぞ』と気合を入れなくても、直明になるマインドが出来上がるレベルぐらいまでずっと役に向き合っている感覚がありました。ちょっと撮影期間が空いた時に、すごく寂しくなりましたね。あと、撮影の裏話だと、直明を演じていた時に運動不足になってしまって、気付いたら待ち時間に、楽屋の座敷で爆睡してしまって、そのまますぐ本番になってしまったこともありました(笑)。NHKは食堂のご飯がおいしいので、ご飯食べてそのまま寝ちゃうことも…」
――「虎に翼」は、伊藤さんの座長ぶりもすごく好評ですよね! 伊藤さんとのエピソードがあれば教えてください。
「沙莉さんは、人としてすごくすてきです。気さくで飾らなくて、すごく親しみやすくて。僕の母親が、沙莉さんが出演している舞台『パラサイト』を2回も見に行くほどファンなのですが、(沙莉さんのお兄さんの)オズワルド・伊藤俊介さんが僕たち(BE:FIRST)のファンだそうで、すごく話が盛り上がりました。人としても素晴らしいですし、芝居にも圧倒されています」
――具体的にどんなところに圧倒されているんでしょうか。
「さっきまで前室で爆笑していたのに、本番になった瞬間、急に大泣きしたり。泣くところから始まるシーンでも、急に感情が入るんです。しかも情景が見えるんですよね。あれはもう誰にもまねできないんじゃないかと思います。あと、表情がいい意味で分かりやすいんです。お芝居や表情って、映像だとやり過ぎに見えてしまうこともあるじゃないですか。沙莉さんは、本当にそのままの気持ちが顔に出ているから、すてきだなと思いました。微妙な調節が天才的で、迷いなく自由にお芝居されている感じがしました」
――撮影で印象に残っていることを教えてください!
「『東京少年少女保護連盟』という普段言わない言葉をサラッと言わないといけないシーンで、3回ぐらいNGを出してしまったんです。沙莉さんが、『私も同じことやったから大丈夫だよ』と言ってくれたことで吹っ切れて、なんとか4回目ぐらいで言えたんですけど。考えなくても言えているように見えないといけないのが難しかったです」
――父・猪爪直言(岡部たかし)さんが亡くなる前のシーンでは、家族が笑っていたのが印象的だったんですけど、撮影はいかがでしたか?
「すごかったですね。人間対人間の雰囲気が、やり取りをしていく中で変わっていくというか、お父さんに対して、(猪爪)花江(森田望智)さんもお姉ちゃんも、複雑な気持ちだったのが、ちょっとした一言でくすっと笑ったり、雰囲気がガラッと変わるのって、結構リアルですよね。あの場にいた役者さんたちそれぞれの持っている雰囲気で、あの場でしか出せない繊細な空気の流れで、お芝居が出来上がったのかな。あの場にいられたことは面白かったですし、この出演者たちだったからこそ、出来上がったシーンだったと思います!」
――「虎に翼」は本当に面白いと話題ですが、三山さんはなぜこのドラマが面白いと分析しますか。
「まず、脚本の吉田(恵里香)さんが天才なのは間違いないです。周りで一緒に制作されている方々も本当に素晴らしいチームだと思うんですけど、奇麗事だけじゃないのがすごくいいなと。台本を見ていても、人間の泥臭い部分や、矛盾している部分も、ものすごくうまく上手に台本に落とし込まれている感じがして。人間味がある作品になっていると思います。あと、今回のテーマもそうですけど、差別などは今の社会でも大きいトピックとしてあって、それがこの昭和の時代と今も結びついている感覚なので、人ごとではなく捉えられるのが、今回の物語の面白さだと思いました」
――吉田さんのすごいと思うところを、あらためて聞かせていただきたいです。
「前回僕が出演した『生理のおじさんとその娘』(NHK総合/2023年)の時もそうですが、攻めたテーマの脚本を書かれているイメージがあるんです。それをうまく世間からも共感を得るような台本に仕上げていらっしゃるのが天才的だなと思っています。この前、僕がお聞きした時に『勉強しながら、なんとか書いています』とおっしゃっていたんですけど、勉強しながらなんとか書いている人のクオリティーじゃないですよね。得たばかりの知識を活用して、台本に落とし込めてしまうところが、本当にすごいです」
――本日(第55回)の放送では直明がキーパーソンとなる重要なシーンでしたが、現場では緊張などされましたか?
「珍しく緊張しそうになりました。それまでは家族で食卓を囲って芝居していたんですけど、現場に入ったら滝藤(賢一)さんなど、初めましての方がたくさんいらっしゃって、全然空気が違っていて爽快でした。ちょっとコミカルさもあり、猪爪家の家族同士の助け合いもあり、今回の家族愛のある『虎に翼』だからこそすてきなシーンになったと思います。僕も『お姉ちゃんを助けてやるぞ』という気持ちよりは、直明として、純粋に「保護連盟」の活動をしていることを踏まえて『ただ、自分はこう思います』と思いを伝える意識で演じたんですけど、初めましての方々がいっぱい座っていて、直明僕の話を聞いているという不思議な状況だったので新鮮でした」
――本日冒頭のシーンでは目をキラキラさせている直明が印象的でしたが、どのように撮影されたんでしょうか?
「とにかく目に光入れるからねと、いろんな光をたくさん当てて撮りました。目が大きいので、光がいっぱい入ったんです(笑)。途中から、直明のせいで家族みんなも目をキラキラさせられていて、それがすごく面白かったです」
――猪爪家では、おいっ子&めいっ子たちと一緒に遊ぶシーンが多いですが、子どもたちとのエピソードはありますか?
「(猪爪)花江さんの子どもの直人(琉人)と直治(楠楓馬)に、毎回『直明兄ちゃん、食堂行く?』と誘われて、食堂に連れていかれるんです。丸狩りの3人で並んでご飯を食べると、座高が携帯のアンテナ(電波状況)みたいな感じで階段になっているんです。毎日丸刈り3人衆で食堂にいると有名になっていたらしく、周りの方たちからクスクスされて、恥ずかしいと思いながらよく見たら、全員で同じカレー食べていて。ショートコントみたいな感じで子守をしています。たまに沙莉さんも来たり、『(佐田)優未も大きくなったら、食堂連れて行ってあげるからな』と声をかけたりしています」
――子どもはお好きですか?
「めっちゃ好きです。子どもの頃の夢が幼稚園の先生で、いとこをかわいがってました。ちっちゃい子って、無条件にかわいいけど、意外と繊細だったり、賢かったり。そういうところも面白いし、かわいいです」
――直明は知識を得ることに喜びを感じていますが、三山さんが喜びを感じるのは、どういう瞬間ですか?
「お酒を飲んでいる時です(笑)。友達とサウナに行ったり、息抜きをするのが僕にとってすごく大事なんです」
――今後の直明の注目ポイントを教えてください!
「僕とお姉ちゃん(寅子)2人きりのシーンは、かなり神経を使ったので印象に残っています。いつもはお姉ちゃんを全肯定していた弟がちょっとお姉ちゃんに物申すのですが、すごくリアルなんです。空気感も、本当にその場で出た生の空気感でしたし、カメラも長回しで、セリフも長くて、直明がずっと語り掛けるような印象的なシーンだったので新鮮でしたし、お姉ちゃんの今後の考え方にも響いてくるシーンだと思ったので大事に演じました」
――演じてみて、手応えはありましたか?
「事務所の人を含めていろんな人が見にきてくれて、モニターをずっと凝視されていました。日頃芝居のダメ出しにすごく厳しい事務所の人に初めて、こんなに本気で褒められたかもしれないというぐらいのコメントをもらいました。普段あまり褒めないタイプの人が言ってくださったことがすごくうれしくて、僕の中でも鮮明に残っています」
――最後に視聴者へのメッセージをお願いします!
「この作品は本当にすてきで、テーマが現代の社会と作中で描かれている昭和の時代がすごくリンクする瞬間も多いんです。今を生きている皆さんが共感できる場面や、心にすっと入ってくるような瞬間もたくさんあります。コミカルに描かれているので重くなり過ぎず、でもテーマに沿って考えさせられるという、すてきなバランスで楽しんでいただけると思います。その中で、僕の演じる直明が、『お姉ちゃんのそばでどう成長をしていくのか』も楽しみにしていただきたいです。皆さん引き続きご覧ください!」
――ありがとうございました!
【番組情報】
連続テレビ小説「虎に翼」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月〜金曜 午前7:30〜7:45ほか
NHK担当/Kizuka
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