高橋一生が岸辺露伴として伝説のアワビと対決!「露伴ですら自然の脅威を前にするとあらがえなくなることを表現したい」2024/05/09
荒木飛呂彦さんの原作漫画を高橋一生さん主演で実写化したドラマ「岸辺露伴は動かない」が、総合テレビで5月10日に放送されます。相手を本にして、記憶や知っている情報を見たり、指示を書き込むこともできる特殊な能力“ヘブンズ・ドアー”を持つ漫画家の岸辺露伴(高橋)が、編集者の泉京香(飯豊まりえ)と共に、奇怪な事件や不可思議な現象に立ち向かうシリーズです。
第9回となる「密漁海岸」は、露伴と京香が客の体の悪いところを料理で改善させる不思議な力を持ったシェフのトニオ・トラサルディ(アルフレッド・キャレンザ)に出会うところから始まります。トニオは重い病気を抱えたフィアンセ・森嶋初音(蓮佛美沙子)を助けたい一心で、どんな病気でも治してしまう伝説のヒョウガラクロアワビを手に入れようと露伴に密漁を持ちかけるのでした。
ここでは、露伴を演じる高橋さんに、アワビと対決する際の苦労や、小道具や衣装への思いなども伺いました!
――物語の冒頭で、露伴がリアルを追求するために実物のモクズガニを見に出かけていましたが、今作において、露伴のようにドラマをリアルにするために心掛けたことはありますか?
「振り切って、迷わないことを心掛けています」
――演技プランを考えて撮影に入るのでしょうか?
「考えていないです。撮影は総合的なもので、スタッフの方々の動きなどを見てお芝居が変わりますし、そのくらいがいいと思います。ですので、セリフだけ頭に入れて現場に行くという感じです」
――撮影の時にアイデアを出されることもあるのですか?
「アイデアを出すというよりも、俳優は基本的に提示する仕事だと思っているんです。一度提案したものを見ていただき、『やってみましょう』と言ってくださる方の方が僕には合っているなと。演出の(渡辺)一貴さんとはそういうやりとりをしています。また、ロケにしてもセットにしてもどういう動きができるかは、その時になってみないと分からないので。でも一貴さんの現場は、基本的には事前にリハーサルを行わせてくれるんです。体に定着させた動きを1回家に持ち帰って、思い巡らせる。一度体感しているから、同じ場所で前回とは違うお芝居も試せるのはうれしいことです」
――リハーサルがあるからこそ、本番で変えることもあると。
「はい。例えば、現場に本棚があって『この本、面白そう』と思った場合、本棚の近くに寄っていくことの意味が見えてくる。すると動きが違ってくるんです。だから実際の現場に勝るものはなくて。それに、スタッフの皆さんの動きを見ていればどのように撮りたいのかが分かるので、『なるほど、そういうふうに撮りたいのか。でも今回は逆に行ってみようかな』などと試行錯誤して総合的にお芝居を作っていけるので、すごく楽しい現場ではあります」
――今回でいえば、具体的にどんなことを提案されたのですか?
「初音が具合が悪くなって倒れた後のシーンで露伴の立ち位置を決める時、まずは一貴さんが『やってみましょうか』と言って、僕は座っていようと考えて、そのままお芝居を始める感じです。それは当然、俳優がやるべきことだと思っているので、アイデアといえるでしょうか。動きで提案しているところはあるかもしれません。リハーサルで動きは定着していて、現場に入るとさらに自由に動けるようになっているので、まずは何パターンか動きを提案して、実際に動いてみて『こっちの方がいいですね』などと相談をしていくんです」
――なるほど。だからリアルの世界では起こりえない出来事がありえそうに思えるんですね。
「たぶん、お芝居でやらなくてはいけないところはそこなんです。リアルっぽい世界観の中で展開されていく、ありえない話が一番難しい。割とリアルなことをリアルにやるのは簡単なのですが、僕らが俳優でいる以上、やらなければいけないことはそれだけじゃないので。そういう説得力のようなものが必要。見ている方々があり得ない世界観に納得していくためには、俳優が迷わずに感情の起伏を出さなくてはいけないわけで。その部分は露伴以外でもいつも考えてやってきていました」
――今作の露伴は伝説のヒョウガラクロアワビと対決しますが、潜るための練習はどれくらいされていたのでしょうか?
「海のロケとプールでの撮影があって、プールテストは1週間くらい前に何度かさせてもらいました。撮影の日の前に何度か実際の想定でどのくらい体が沈めるかなどをテストして。でも、一番難しいのは水中よりも水上なんです」
――そうなんですか?
「岩場を歩いていると、意外と足を取られてしまうんです。しかし足を取られるのは見た目が地味。胸のあたりまで水が来ていたらダイナミズムもあるのでしょうが、せっかく生身でやっているので、緊迫した岩場で人間はちっぽけな存在であり、露伴ですら自然の脅威を前にするとあらがえなくなることを表現したいと思っていました」
――細部までこだわりが見える小道具に毎回感動しているのですが、今回一番驚かれた小道具は何でしょうか?
「小道具も含めてですが、(舞台となる)ヒョウガラ列岩をよく見つけてきたなと。原作だと海中にあるものが、ヒョウガラ列岩に漂着して死のスポットになっている。あの作り込みは素晴らしかったです。さらに菊地(成孔)さんの音楽も相まってなのですが、この世ではない場所のようだと感じました。特殊造形ももちろんそうなんですけれど、よくぞそこまでやってくれたなと。そして、密漁をしに来た2人の潜水服ですね」
――潜水服も不思議でした。
「あまりなじみがないですよね。僕は『ゴジラ』が大好きなので、ゴジラの芹沢博士が着ていた潜水服のようだなと思いながら見ていました。芹沢博士が開発したオキシジェンデストロイヤーだとか言って(笑)、そういうことを考えて見ていました」
――やはりああいう潜水服は着にくいものなのでしょうか?
「とても着にくいです。僕よりも冒頭でアワビをとっていた密漁者役のお二人(中村まこと・増田朋弥)が一番きつかったと思います」
――今回の露伴の衣装も前回と違うように感じたのですが。
「そこは人物デザイン監修をしている柘植(伊佐夫)さんの世界観じゃないでしょうか。柘植さんが露伴で次に何をしたいかという希望に、僕は結構従っているので。『ここにこれがあるといいですよね』などのちょっとした味付けは打ち合わせでやっているんですけれど、お互いに衣装の中でフィードバックし合っている感じがします。そこにも対話が入っているような気がします」
――衣装の中でどういう対話ができているのでしょうか。
「例えば去年、僕が露伴の扮装(ふんそう)で表紙になった雑誌『UOMO』にも、柘植さんが影響を受けていると思うんです。僕が提案するものと柘植さんが提案して僕が着たものなど、おそらくさまざまなところからフィードバックを受けていて。でもどこか露伴が着ているものだと分かるように統一してくる柘植さんの才覚が素晴らしいと思います」
――最後に視聴者の皆さんに一言お願いします!
「娯楽なので、みんなでワイワイ見ながら、1人でギャーギャー言いながら、それぞれの楽しみ方で楽しんでいただければうれしいです」
――ありがとうございました!
【番組情報】
「岸辺露伴は動かない」
NHK総合
5月10日 午後10:00~11:00
NHK担当/K・H 撮影/尾崎篤志
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