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稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」2024/04/29

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

 代理出産を通じて生殖医療の光と影を描いた桐野夏生の小説を連続ドラマ化した「燕は戻ってこない」が、4月30日にNHK総合ほかにてスタートします。同僚から「卵子提供」をして金を稼ごうと誘われた29歳の大石理紀=リキ(石橋静河)が、自らの遺伝子を継ぐ子を望む元トップバレエダンサー・草桶基(稲垣吾郎)とその妻で不妊治療をあきらめた悠子(内田有紀)の代理出産を、生殖医療エージェントから持ちかけられることから始まるノンストップ・エンターテインメントです。

 ここでは、両親も有名なバレエダンサーで、自らの遺伝子を継ぐ子を望む元トップバレエダンサー・基を演じる稲垣さんに、生殖医療や代理出産の印象、元トップバレエダンサーを演じることへの思いなどを伺いました。

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

――今作のテーマは社会的に注目されている「生殖医療」ですが、撮影に入る前に勉強したり、誰かに相談するなど、準備をされたことはありましたか。

「原作を読んだ時は“目からウロコ”で、本当に知らないことも多かったです。女性の気持ちも、分かっているようで分かっていないことが多いなと感じました。基の立場で言うと、決して相手を傷つけているつもりはないのに、無神経に相手を傷つけてしまったり。自分の欲の現れである子どもを望み、自分のDNAを残したい気持ちは男性の本能的なものであって、それはもちろん必要なものでもありますし、本当にいろいろ考えさせられました」

――基はどんな人物だと捉えていますか?

「基は元世界的なバレエダンサーで、自分の遺伝子や才能を受け継ぐ者をなんとしてでも生み出したい男性で、そこにこだわりを持っている人物です。その姿が少し滑稽に見えたり、とてもコミカルに見えたりします。このドラマには悪人は出てきませんが、一人一人のキャラクターに共感できるかというと、そうでもなかったりします。通常、ドラマでは『共感してください』と言いたいのですが…(笑)。また、人間味あふれるキャラクターたちが登場しているんです。内田さんとは夫婦役で、チャーミングな夫婦に見えたらいいなと思いながら楽しく演じています。ドラマの中で基と悠子は擦れ違っているけど、実際の僕と内田さんは、たまに行き違うこともありますが(笑)、いいコンビで、いいパートナーとしてやっています」

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

――あらためて内田さんと夫婦役で共演されていかがですか?

「同期ではないですが、同じ世代で、僕が少し年齢が上で、同じ時代に芸能界で一緒に頑張ってきた感じです。これまでバラエティー番組で共演したことはありますが、ドラマでの共演は一度もなかったんです。今回共演できてすごくうれしかったし、なんか不思議なんですよね。僕は『内田さん』と呼んでいますが、内田さんは僕のことを『稲垣くん』、たまに『吾郎くん』、そして1回『吾郎ちゃん』と呼ばれたこともありました(笑)。会うと同級生に会ったような感じがして、それがすごくうれしいです。内田さんとは『お互い芸能界で同じ時代に一緒に頑張ってきた仲間として、まとう空気感がもしかしたら似ているのかもね。それが夫婦としてフィットして見えるというのもあるのかな』という話をしました。お互い種類は違いますが、マイペースですし(笑)。また、このドラマは一つのシーンが長くて、台本でいうと7ページぐらいの掛け合いがあって、まるで演劇みたいな感じのシーンが多いのですが、内田さんとは演じていてとても楽しいですし、合間合間にコミュニケーションをとっています」

――基をどのように演じようと考えたのでしょうか。

「かなり特殊な設定なので、その人物にちゃんと見えることがまず大切なことで、『こういう人っているよな』と思えるよう心掛けました。基は子どもに恵まれないのですが、自分の遺伝子を残していきたいという、すごく強いこだわりがある。誰でも本能的に子孫を残したいという気持ちはあるんだろうけれど、基に関しては“自分の余りある才能を残さないでどうするんだ”というナルシシズムが少し入っています。それに、父も母もバレエダンサーで、ずっと受け継いできたことをストップさせないという使命感もありますよね。いろいろ葛藤しながら、最終的に『代理出産』という決断をして、この物語がスタートします」

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」
稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

――女性の立場からすると、基はすごく“イヤなやつ”にも見えます。

「そうですね。でも基は“イヤなやつ”として映ってもいいんです。見てくださる方に『自分もこういうところがあるかもしれないな』と思ってもらえたら面白いなと。今の時代、女性・男性と性別を分けていうものでもないですが、男性の視聴者の意見は気になりますし、聞いてみたいです。ただ、先ほども言いましたが、基だけじゃなく、リキにしろ、悠子にしろ、女性からしても共感できるキャラクターではないと思うんです。悠子という役についても、見る人によって感じ方は違ってくるでしょうし。もしかしたら、このドラマはキャラクターに共感できる方と拒絶する方がいるかもしれないけれど、ドラマを見終えた後に『うちもこういうところあるかな』と思ったり、ハッと気付いてもらえたら面白いなと思いながら、かなり変わったキャラクターを僕は今演じています(笑)」

――バレエダンサーに対してどんなイメージを持っていて、ドラマでどのように表現されているのでしょうか。

「バレエダンスについては、子どもの頃から一つのことをストイックに突き詰めてやっているイメージがありました。僕の周りにバレエダンサーの方はいないので、何かを参考にしているわけではなく、自分のイメージの世界で表現しています。あとは、撮影現場にバレエの先生に来ていただいて、バレエダンサーとしてのちょっとした立ち居振る舞いや、私生活でちょっとした動きにもバレエダンサーとしての癖が出ると思うので、そういった部分を少し意識して演じています」

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

――バレエ経験のある石橋さんから何かアドバイスはありましたか?

「石橋さん、内田さんと初めて3人で会うシーンの時に、石橋さんから『ダンスのレッスンはされているんですか?』と聞かれて、すごく気にしてくれているんだなと思いました。そういえば、お芝居している時、感情的になると体が前に行ったり、少し力が入ったりして本来の自分が出ちゃう時があるものですが、内田さんもバレエをされているから感情的なシーンでもスッとされていて、『姿勢、いいね』と言ったことがあります(笑)。バレエをしてきたから姿勢がいいんだなと感心しました」

――先ほどバレエダンサーの動きを意識していたとおっしゃっていましたが、具体的にどんなことをされていたのでしょうか。

「バレエダンサーっぽく見える立ち居振る舞いやディテールも大切ですが、目に見えない雰囲気などでちゃんとその人に見えることもとても大切で。少し抽象的な言い方ですが、その人が生きてきたものがちゃんと見えるように演じる。目に見えないところでもバレエダンサーらしくちゃんと見えるために何が大切かは僕もまだ分からないのですが、内田さんとちゃんと夫婦に見えて、視聴者をその世界観に誘うことが僕らの仕事として大切だなと思います。もちろん、バレエ監修の先生がいらっしゃるので、バレエダンサーの動きや女性をエスコートすることのスマートさなど、ちょっとしたことも意識して演じています。あとは、スターならではの、ちょっとした鈍感力というか、少し無神経にもみえる感じに女性はイラっとするかもしれません(笑)。無邪気で鈍感でありながら芸術家として敏感な部分もあるからこそ、基はスターになれたのでしょうね。そういうセリフが原作にあるので、もしかしたら僕はそういうのを求められているのかなと思いながらやっています(笑)」

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

――稲垣さんはずっとスターなので、スターとして輝いている基の気持ちが分かるのではないかと思ったのですが。

「僕とは全然違います(笑)。スポットライトを浴びたことはありますが、基のように踊ってはいないですし(笑)。子どもの頃からステージに立っていたという意味では似ているところはあるけれど、自分の遺伝子を残したいという強い思いはなくて。僕は自分のDNAや自分の何かを残すことに対してあまりこだわらずに生きてきたので、あらためていろいろ考えるきっかけにはなりました。だからといって、すぐに自分の何かが変わったわけではないけれど、基を演じながら『自分の中でも何か変化が起きてくるのかな』と考えたことはあります」

――そうなんですね。

「男性はすごく遺伝子を残すことにこだわる方と、そうではない方の二手に分かれる印象です。僕が以前『No.9-不滅の旋律-』という演劇でベートーベン役を演じた舞台も、最終的にはそういう話でした。子どもに自分の才能を継がせるというね。映画『正欲』(2023年)もそうだったな。このぐらいの年齢になってくると、男性の俳優として役を演じるとそういう役が増えてくるので、育つ環境や才能を継がせるという意味で、遺伝子を残したいという気持ちが分からないわけではないです。今現在、僕の中では遺伝子を残したい気持ちはないけれど、これから芽生えるかもしれないですし、ちょっと分かりません(笑)」

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

――今作を演じたことで、「代理出産」に対してどのような思いを抱かれましたか?

「驚きました。言い方が合っているか分からないですが、本当にSFの世界のようで。でも、そうやって世の中が変わってきていて、その変化が社会にとっていい方に作用してほしいと思う一方、『人間だし、きっといろんな問題が生じてきてしまうのではないか』という懸念もあります。視聴者の皆さんに『今後どうなっていくのかな』と考えるきっかけを与えるドラマになるのではないかと思います」

――第1回の撮影を振り返って、印象的だったシーンを教えてください。

「印象に残ったところは、リキがプランテ(生殖医療エージェント)で、職員の青沼(朴璐美)に報酬を提示されたシーンです。お金の話を聞いた瞬間、目の色が変わって欲望のスイッチが入った感じになるがすごく印象的で、早く第2回を見たくなるシーンでした」

――もし基が悠子の立場だったら、悠子に“代理父”を積極的に勧めたと思われますか。

「そうですね、どちらなのでしょう? そういう見方をしていただけるのも、すごく面白いですね。物語として、最初は基が自分の遺伝子を残したいという流れですが、だんだん変わってくるんですよ。ただ、基は自分の才能や遺伝子を残したいだけなので、基自身が悠子の立場だったら、代理父を悠子には勧めないかもしれないですし。どうなんでしょうね。原作を書かれた桐野さんにも聞いてみたいですね」

――ありがとうございました!

稲垣吾郎が「燕は戻ってこない」で子どもを望む元トップバレエダンサーに。「僕とは全然違います(笑)」

【番組情報】

ドラマ10「燕は戻ってこない」
4月30日スタート
NHK総合
火曜 午後10:00~10:45 ほか
NHKBSプレミアム4K
火曜 午後6:15~7:00

NHK担当/K・H 撮影/尾崎篤志



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