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須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー2024/05/02

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

 須賀健太さんと荒牧慶彦さんがダブル主演を務める連続ドラマ「奪われた僕たち」がMBSほかにて好評放送中です。本作は「ドラマシャワー」枠から「ドラマフィル」枠に生まれ変わった新枠第1弾で、荒牧さんが代表を務めるPastureとキングレコードとの共同企画によって制作された完全オリジナル作品です。

 細かい仕事で何とか食いつなぐ日々が続く自身の現状に行き詰まりを感じていたフリーの映像ディレクター・堺洋一(須賀)が自宅兼事務所のマンションに帰ると、荷物と手紙が届いていました。手紙には“私の活動を記録してくれませんか? 一度ご連絡ください。きっと、興味を持っていただけると思います”の文字が。仕事にあぶれた堺は軽い気持ちで荷物を開け、がくぜんとしてしまいます。中には人間の指が1本入っていたのです。言葉を失い、警察に電話しようとしますが、直前でその手を止め、考え込みます。「これは、人生を変えるきっかけになるのでは……」。

 そんな予感で、書かれていた連絡先にコンタクトを取ることに。そして、指定された郊外の家を訪れると、堺を迎えたのは光見京(荒牧)でした。光見と出会ったことで殺人の記録を撮り続けることになった堺に何が待ち受けるのでしょうか。衝撃のサイコスリラードラマに注目です。

  ここでは、過去に自身が制作したドキュメンタリー作品で賞を受賞した経歴を持つフリーの映像ディレクター・堺洋一を演じる須賀健太さんと、ピアノ教師だが実は連続殺人犯というサイコパスな男・光見京を演じる荒牧慶彦さんに、お互いの印象や本作を楽しむポイントなどを伺いました。

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――初共演が決まった時の心境を教えてください。

須賀 「過去に荒牧くんが出演していた舞台の楽屋あいさつに行ったことが何度かありましたが、不在でなかなかお会いできずニアミスが多くて。だからこそ気になっていたところはたくさんありました。何かのきっかけで一緒にお芝居ができたらいいなと思っていたらまさかのダブル主演で、不思議な縁を感じました」

荒牧 「子役からの健太くんを映像でずっと見ていたので、一方的に存じ上げていました。僕が俳優になり、周りの方から『須賀健太という俳優はやっぱりすごい!』と聞いていたので、共演が決まってとてもワクワクしました」

――共演をしてみていかがでしたか。

荒牧 「素晴らしい役者さんです。健太くんはひげが生えている役だと聞いていて、今まで演じた役のイメージから想像がつかなかったのですが、全く違和感がなく自然な外見を作られていて驚きました。役の作り込みがすごいのは、彼の姿勢や所作がなせる技なんだろうなと」

須賀 「うれしいです! 今のはぜひ記事に書いていただけると(笑)。荒牧くんとは役柄が全く違うこともあり、作品へのアプローチの仕方が僕とは真逆だったので、違う方向から一緒に作品を作り上げることができてとても心地よかったです」

――台本を読んでみて、どのような印象を持たれましたか。

須賀 「これを映像に落とし込めたらすごいものになるのではと思いました。どのように作っていくのか監督やスタッフの皆さんと話をしていく中でも同じような感覚があったので、すごい作品を生み出すことができるいい挑戦になるのではという印象を受けました」

荒牧 「恐怖というよりも美しさを感じました。光見のカリスマ性により周りの人間に彼の思想が伝播していく、そして何かのせきを切ってしまったら別の方向に転換してしまう、その流れがとても美しいなと。映像化されることにより、現代に生きている方々に刺さる作品になるのかなと感じました」

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――演じたキャラクターの役どころを教えてください。

須賀 「堺は過去に自身が撮ったドキュメンタリーで賞を取った過去があるからこそ、うだつが上がらない現状にフラストレーションを感じています。そんな生活の中で光見と出会い、物語が進むにつれて少しずつ自分の感情が変わっていき、光見の思想に感化されていく役どころです」

荒牧 「光見は、誰しもが一度は思ったことのある部分を膨らませてこじらせてしまったキャラクターです。彼は殺人という間違った方向に走ってしまいます」

――演じたキャラクターとご自身が似ているところはありましたか。

須賀 「堺が抱えているフラストレーションと少し質が違うとは思いますが、僕も小さい頃からこの業界でお仕事をさせていただいて『自分はどうなっていくのだろう』と学生時代に感じたことがありました。似たような経験があったからこそ、堺の気持ちを理解して演じることができました」

荒牧 「光見は思想を完遂させるために、物事のプロセスを踏んで考えていくタイプ。僕と光見の思想は違いますが、段階を踏んで考えていくところ、信念のために芯を曲げずに行動する姿は自分と共通しているので、すんなりと役に入ることができました」

――キャラクターを演じる上で意識したことをお聞かせください。

須賀 「見ていただく皆さまの視点に一番近い役が堺です。僕の演じる堺を通して作品の芯となる部分を伝えていくシーンが多いと感じたので、起きる事柄一つ一つに目を向け、そこから動いていく出来事を大事にしながら演じました」

荒牧 「普通に会話をしているけれど、話しているうちに正気ではないと思わせる雰囲気を醸し出せたらいいなと、淡々としている中にもどこか狂気を思わせるよう意識しました」

――感情や心の揺れなどを作っていく上で工夫したところを教えてください。

須賀 「目の前で起こることにしっかりとリアクションをしていくことを大事にしました。あと、スタッフの皆さんがいい画を作りんでくださったので、モニターで映像を何度も確認し、どれぐらいの強弱でやると一番伝わるのかを考えながらお芝居に臨みました。スタッフの皆さんにも助けられながら“堺洋一”を作っていきました」

荒牧 「光見にとっては殺人が日常のことで、自分自身は何も間違っていないと思っています。だから、あえて厳しい表情などを作ることはせずに、コーヒーを飲むぐらいの感覚で殺人を実行していくような意識で臨みました」

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――それぞれ演じたキャラクターと1日一緒に過ごすとしたらやってみたいことはありますか。

須賀 「光見に関しては、めちゃめちゃ怖いです(笑)」

荒牧 「怖い! 常に機嫌を伺っていないと(笑)」

須賀 「僕は“俳優・須賀健太”として『情熱大陸』のような密着ドキュメンタリーを堺に撮ってもらいたいです。彼は俳優の密着映像は好まなそうなイメージがありますけど、頑張って“撮れ高”を作ってもらいます!」

荒牧 「光見の演奏するピアノを聴いていたいです。彼の思想は特殊なので、奏でる音色も特別なのかなと。怖いですけれど、そういう部分を楽しみたいです。ちなみに連弾はしたくないです(笑)。ミスをしたら注射を打たれてしまいそうなので(笑)」

須賀 「そんなに早い段階で殺されたりしないんじゃない?(笑)」

荒牧 「彼は自分の信念に沿った行動しかしないので、あり得るかもよ(笑)」

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――サイコスリラーという怖いイメージのジャンルですが、逆にワクワクしたシーンはございましたか。

須賀 「和気あいあいとした雰囲気の中で楽しく撮影できたのが魅力的でした。短い期間で作品に集中できる環境が整っていて、キャストやスタッフ全員で足並みをそろえ、それを共有しながら撮影していけたことが楽しかったです。あとやっぱりカメラです。クレジットにも撮影のところに“須賀健太”と入れていただけているので、カメラマンという新たな挑戦もさせてもらえてうれしかったです」

荒牧 「拉致のシーンなどは健太くんのカメラで撮ったのですが、アングルが絶妙です。すべてを見せないけれど緊迫感がある感じで、シーンの見せ方がうまい!」

須賀 「自分で撮影するメリットを生かして、動きが多い画などは臨場感を出せたのかなと思います。もともと撮影をして編集をするのが好きだったので、あんなにいいカメラで撮らせてもらえたのはうれしかったです。今後もチャレンジしていきたいです」

――須賀さんから見た荒牧さんの“光見京”に似ている、「カリスマ性があるな」または「サイコパスだな」と感じたエピソードはありますか。

須賀 「光見にどんどん引き込まれて心を奪われていく堺の描写がたくさんあるのですが、僕自身がカメラを回して荒牧くんを撮っていると、日を追うごとに自然と引き寄せられ、カメラもアップにしたくなっていきました。堺が持っている光見へのイメージと、僕が荒牧くんに寄りたくなる気持ちがリンクしている状態です。演じていて助けられた部分でもありました」

――荒牧さんから見た須賀さんの“堺洋一”に似ている「映像ディレクターあるある」なエピソードを教えてください。

荒牧 「印象的だったのは、健太くんがカメラを回している時、口が半開きになっていることが多かったことです。なぜなのかは分からないのですが、確かにカメラを回している方って、口が少し開いていることが多いんですよ(笑)。その現象が健太くんにも見られたので、役にのめり込んで堺洋一になっているなと思いました」

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――須賀さんが実際に撮影した映像が本編に登場しますが、映像ディレクター役として技術など事前に準備したことなどございますか。

須賀 「僕はYouTubeで自分のチャンネルを持っていて、そこで撮影や編集をしています。映像は好きなことでもあったのですが、ドキュメンタリーの撮り方を聞けば聞くほど、いつも自分が撮影しているものと違う印象を持ったので、決め込み過ぎず、力を入れ過ぎず撮影に臨みました」

――現場で撮影を経験したことにより手応えはありましたか。

須賀 「自分の中で撮影の仕方が定着したと思っていても、1日撮影が空くだけで『こうじゃない!』ということがあったので、感覚を身に付けるのはなかなか難しいなと思っていました」

荒牧 「ドキュメンタリーを撮る機会って、なかなかないよね」

須賀 「ね! 誘拐のシーンはめったに撮れるものではないので(笑)、この感覚を忘れないようにしたいです」

――殺害されてしまうキャラクターを演じる共演者とのエピソードをお願いします。

須賀 「殺される前段階から堺の撮影が始まるので、そこから殺されてしまう皆さんと息を合わせるようにしました。殺人のシーンでは、スタッフの皆さまを含めてテンションが上がっている感じがありました。血のりで衣装が汚れてしまうから失敗ができなくて、一発で決めなければいけないという緊張感の中『確実に撮りきるぞ!』という結束感も生まれ、高揚感にもつながりました」

荒牧 「殺されるシーンを演じた皆さんが口をそろえて『新鮮で面白かった』とおっしゃっていました。 血へどの吐き方だったり、苦しみ方だったり、殺され方も三者三様で個性があふれていて印象に残りましたね。人の死にざまを見ることはないので(笑)、想像の余地が膨らみました」

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――撮影を終えてから、お互いについてあらためて気付いた点はございましたか。

須賀 「単独主演の物語とは違って、お互いに影響しあう部分がたくさんあったので心強かったです。視聴者の皆さまに鑑賞いただく際にもダブル主演の意味を感じてもらえるのかなと思いますので、荒牧くんと一緒にお芝居ができてよかったとあらためて感じています」

荒牧 「須賀健太という誰しもが知っている俳優、その方と一緒に初共演でダブル主演ができるのはとても光栄でした。そして何より、健太くんの持つオーラと現場への溶け込み感がすごいです! 現場の入り日が僕と1日ぐらいしか違わないのに、すでにスタッフの皆さんと友達のようになじんでいました。世間からも現場からも愛される理由が分かりました」

須賀 「うれしいです! 照れますね(笑)」

――堺を演じてみて、須賀さんにとって堺洋一はどんな人でありどんな存在になりましたか。

須賀 「今まで積み重ねてきた経験があったからこそいただけた役で、演じることができた役だと思います。お芝居と一緒に撮影ができたり、さまざまな表現に気付かされたり、いろいろと詰まった存在が堺洋一です。今の自分のすべてを堺に注ぎ込めたと思っています」

――光見を演じてみて、荒牧さんにとって光見京はどんな人でありどんな存在になりましたか。

荒牧 「サイコパスの役を演じてみたかったので、光見のおかげで願いがかないました。舞台上で相手を切りつけるお芝居はしますが、明確に殺意を持って相手を殺すという演技をすることはなかなかないので、光見京という存在は貴重な経験になりました。彼を演じていて楽しかったです」

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

――本作を楽しむポイントをお聞かせください。

須賀 「次にどうなっていくのか分からないところも楽しめるポイントです。集中しながら映像や画を見てもらえれば、それだけでも楽しめる作品になっていると思います。先々の展開を想像しながらご覧ください」

荒牧 「大々的に殺人のシーンがありますが、そこはメインでなく、人間性だったり、役どころの過去だったり、抱えてる問題だったり、物語が進むにつれて解き明かされていく部分を考えながら見ていただけると、より面白く入り込めると思います。あとは、僕が殺していくゲストはみんな友達なので、僕らの関係値を知っているファンの方々が見たら、別の角度からも楽しめるのかなと」

――最後に、本作を楽しみにしている視聴者の皆さまへメッセージをお願いいたします。

須賀 「僕はたくさんの作品に関わらせてもらってきた中、今年で30歳という節目で、俳優として今できることをすべて本作に詰め込みました。 この年齢になったからこそようやく務められた役だと思っているので、1人でも多くの人に見ていただきたいです。怖い要素はありますが、ぜひ人間ドラマとしてお楽しみいただけたらと思います。ご覧になった方は感想をいただけたらうれしいです!」

荒牧 「恐ろしい描写もありますが、キャラクターの視点であったり視聴者の視点であったり、いろいろと感じる部分が出てくる人間ドラマになっています。恐れずに見ていただけるとうれしいです。血が出るシーンが苦手な方は少しだけ目をつぶってくださいね(笑)」

――貴重なお話をありがとうございました。物語も中盤に入り、堺と光見がどうなっていくのか目が離せませんね!

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

【プロフィール】

須賀健太が荒牧慶彦に引き寄せられていった訳とは――「奪われた僕たち」インタビュー

須賀健太(すが けんた)
1994年10月19日生まれ。東京都出身。A型。99年に子役デビュー。「人にやさしく」(フジテレビ系)で注目を集める。映画「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」(2006年)で初主演を果たし、「第30回 日本アカデミー賞 新人俳優賞」を当時歴代最年少で受賞、映画「ALWAYS続・三丁目の夕日」(07年)では「第17回 日本映画批評家大賞 審査員特別演技賞」を受賞する。近年の主な代表作に、劇団☆新感線「髑髏城の七人 Season月」(17~18年)、映画「雨に叫べば」(21年)、ドラマ「城塚翡翠シリーズ」(日本テレビ系)、劇場版「君と世界が終わる日に FINAL」(24年)、ドラマ「先生さようなら」「ACMA:GAME」(日本テレビ系)などがある。俳優業だけにとどまらず、23年には劇団「ハイキュー!!」にて演出を手掛けるなど精力的に活動中。24年9月より上演される舞台・木下歌舞伎「三人吉三廓初買」に出演。今年でデビュー25周年を迎える。


荒牧慶彦(あらまき よしひこ)
1990年2月5日生まれ。東京都出身。AB型。2012年に舞台「ミュージカル・テニスの王子様 2ndシーズン」で本格的に俳優デビュー。主な出演作に舞台「刀剣乱舞」シリーズ(16~23年)、舞台「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」シリーズ(17〜23年)、「REAL⇔FAKE」(MBS/TBSほか)、「あいつが上手で下手が僕で」(日本テレビほか)、舞台「ゲゲゲの鬼太郎」(22年)、「Club キャッテリア~ラグとラガ〜」(日本テレビ系)などがある。ほか、「トラベラーズ・ハイ」(フジテレビ)でMCを務めるなど数々のバラエティー番組でも活躍中。24年5月7日より公演の舞台「結合男子」に出演。自身が企画・プロデュースをする舞台「Stray Cityシリーズ『Club ドーシャ』」の上演が8月に決定。舞台化が発表された「ハンドレッドノート」ではプロデューサーを務める。

【番組情報】

「奪われた僕たち」
MBS 木曜 深夜1:29~1:59
TVK 木曜 深夜1:00~1:30
※地域によって放送日時が異なります
※TVer、MBS動画イズム、ほかにて見逃し配信あり

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【締切】2024年5月29日(水)正午

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取材・文/山本恵代(MBS・ TBS担当) 撮影/蓮尾美智子 (須賀)ヘア&メーク/佐藤由貴 スタイリスト/立山功 



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